高望みしない彼は今日もゴミ女とセックスする 作:しゃしゃしゃ
放課後を告げるチャイムが鳴り響くと同時に、卓郎は素早く荷物を鞄に押し込んだ。
案の定、視線の先では紗羽が「タクロー、今日の一緒に――」と、肥大化した自尊心を隠しもせず近づいてこようとしていたが、卓郎はそれに捕まる前に「悪い、今日部活あるから!」と爽やかな笑みを残し、逃げるように教室を飛び出した。
あの巨大な勘違いモンスターの相手をこれ以上まともにしていたら、こちらの精神が崩壊してしまう。
グランドに出て適当にウォーミングアップをこなすフリをしながら、卓郎の目はある男子生徒の姿を探していた。
(あいつか……)
いた。グラウンドの隅でキャッチボールをしている、朝の噂の元凶となった野球部員の男子だ。
卓郎は親しみやすさを装った笑みを浮かべ、バットを肩に担いでひょいひょいと近付いていった。
「よお。お疲れー」
「お、浅井! お前、今日クラスで大変だったらしいな! 噂、マジで一瞬で広がったろ?」
能天気に笑う部員に対し、卓郎は目元だけで薄く笑いながら、あくまで「浅井卓郎」という爽やかで誠実な仮面を破らない絶妙なラインで、静かに圧をかけていく。
「いやー、本当に参ったよ……お前が変な噂流すからさ。朝からクラスの男子どもに囲まれてやいのやいの言われて、マジで大変だったんだからな?」
「へへッ、悪い悪い! でもさ、あんな超絶美少女と歩いてて『彼女だ』なんて言われたら、そりゃあ話のタネにしたくなるって!」
「冗談半分で言ったつもりだったんだけどなー。おかげで俺、朝から完全に彼女持ち扱いされて、変な注目の集まり方しちゃったじゃん。……次からさ、そういうの広める前に一言聞いてくれよな? ホント、勘弁してくれよ」
困り顔で頭を掻いてみせる卓郎。口調こそ軽やかで冗談めかしてはいるが、その瞳の奥には冷ややかな不快感が一瞬だけ滲んでいた。
「あ、あはは……ごめんって浅井。悪気はなかったんだよ」
卓郎の絶妙な嫌味とどこか引きつった笑顔の圧に気圧され、さっきまで調子の良かった部員も少し縮こまり、苦笑いを浮かべて謝罪口調になった。
(……チッ、これくらいで勘弁しといてやるか)
これ以上強く追求すれば、自分の「完璧な好青年」という評判に傷がつく。嫌味をチクリと刺してスッキリした卓郎は、「ま、次は気をつけてくれよなー」と爽やかに肩を叩いてその場を後にした。
表向きは笑って許した形を取りつつも、卓郎はグラウンドの泥を蹴り上げながら内心で吐き捨てていた。
(まったく、バカの相手は骨が折れる。……だがこれで、少しは静かになればいいんだがな)
しかし、一度回り始めた狂気の歯車が、そう簡単に止まるはずもなかった。
卓郎がグラウンドで適当に汗を流すフリをし、噂の元凶となった部員に嫌味を刺してストレスを紛らわせていた、ちょうどその頃。
彼のまったく知らないところで、夕闇が迫る放課後の教室という密室で、小さな――しかし決定的な事件が発生していた。
オレンジ色の夕日が生徒のいない机と椅子を長く伸びた影で染め上げる教室。そこに残されていたのは、相原彩綾と加賀原紗羽の二人だけだった。
二人はお互いに卓郎の幼馴染同士。
当然、お互いの存在を認識している。だが、これまでまともに言葉を交わしたことなど一度もなかった。
彩綾にとっての紗羽は、「いつも卓郎くんに図々しくまとわりついている、性格の悪い不快なデブ」であった。
卓郎が嫌がっている(ように見えた)にもかかわらず、ズケズケと距離を詰めてくるその無神経な存在は、彩綾からすればただただ不快で見るに耐えないものだった。
対する紗羽にとっての彩綾は、「私の優しいタクローが気回しで相手をしてあげているのをいいことに、ハエみたいにチョロチョロと群がってくる不細工な日陰者」である。
肥大化した認知の中で『誰もが羨むエッチで可愛いお姫様』を気取る紗羽からすれば、地味で影の薄い彩綾など『最高の美貌を持つ私と比較することすらおこがましい、惨めで惨めなドブス女』でしかなかったのだ。
お互いがお互いを嫌悪と蔑みで見下し、関わることすら拒絶している二人。
カツン、と紗羽が乱暴に机の横の鞄をひっつかむ音が、静まり返った教室に重く響く。
「……」
「……」
会話どころか、まともに視線を合わせることすら汚らわしいと言わんばかりの、息が詰まるほど重苦しく気まずい無言の時間が流れていた。
息が詰まるような重苦しい静寂を破ったのは、生徒指導で溜まりに溜まった苛立ちを爆発させかけた紗羽だった。
荷物を抱えて身をかがめ、惨めそうに縮こまっている彩綾の姿が視界に入った瞬間、紗羽の歪んだ自尊心に意地悪な暗雲が立ち込めたのだ。
こんな下等で不細工なドブス女に、自分との『格の違い』をまざまざと見せつけて溜まった鬱憤を晴らしてやろう――そう思い立った紗羽は、わざとらしく大きな溜息をつくと、彩綾の方を向きもせず、教室全体に響き渡るような大声で「独り言」を吐き出し始めた。
「ハぁ〜……ほんっと参っちゃうわよねぇ! あんたみたいなボッチでも、朝の噂くらいは嫌でも耳に入ってると思うけどさぁ! 私とタクローの噂が校内に広まっちゃって、もう朝から大変だったのよねー! ほんと困っちゃう!」
「……っ!?」
突然響き渡った甲高い大声に、彩綾は肩を大きくビクッと跳ね上げ、心底困惑した表情で紗羽を見た。
(な、なに……!? 急に大声で独り言……?)
彩綾からしてみれば、今朝校内で大騒ぎになっていた「卓郎くんの隠された美少女彼女」の噂など、他ならぬ自分自身と卓郎の関係のことだ。
自分のメイク姿を卓郎の部活仲間が見て、勘違いして広まった噂なのだから、自分がその渦中の当事者であることは百も承知だった。
当然のことながら、彩綾は「紗羽もまた卓郎の都合のいいセフレであり、二人きりでヤリまくっている」という衝撃の事実など知る由もない。
だからこそ、彩綾の頭の中は混乱で一杯だった。
――なぜ、この卓郎にウザ絡みしているだけの不快なデブ女が、自分と卓郎の噂を「自分と卓郎の関係」として語っているのか。
あまりにも突拍子もなさすぎて、彩綾には目の前の巨体女が突然頭のネジを飛ばし、現実と妄想の区別がつかなくなって狂った妄言を吐き出し始めたようにしか思えなかったのだ。
(えっ……なに言ってるの、この人……? 噂って……私と卓郎くんのことだよね……? なんでこの人が『私とタクロー』なんて言ってるの……? 怖いんだけど……)
ドン引きして固まる彩綾の心境など露知らず、紗羽はその引きつった表情を「私とタクローの深い関係に対する敗北感と絶望」だと都合よく脳内変換し、さらに調子に乗ってヒートアップしていく。
「二人だけの秘密にしておこうねってあれほど約束してたのに……噂になっちゃうなんてねぇ。タクローったら、私のことが愛おしすぎて、周りに自慢したくて隠しきれなくなっちゃったのかしら? ほんと、愛されすぎるお姫様ってのも罪よねぇ〜!」
身の程知らずな日陰者(彩綾)に、卓郎との絶対的な親密さをアピールして身の程をわからせてやろうと、紗羽の自虐風自慢は止まらない。
流石に「学校でも家でも身体を重ねまくった」という生々しい事実まで学校で口にするような真似は、彼女の中にわずかに残ったお姫様としての慎みが踏みとどまらせたものの、それ以外の「事実」を誇らしげに喋り散らかす。
「この前の休日だってさぁ〜! タクローが私に会いたくてたまらないって言うから、わざわざ私の家の豪邸に呼んであげて、二人きりでたっぷりデート(笑)してあげたのよね! あんたみたいな地味で惨めなドブス女には、一生縁のない甘い世界でしょうけどぉ!」
あからさまな侮蔑が込められた高笑いが、夕暮れの教室に虚しく響く。
ここまで真正面から煽られては、いくら普段はおとなしく内向的な彩綾であっても、腹の中に黒々とした怒りが湧き上がるのを抑えきれなかった。
そもそも、紗羽がその歪み切った性格と肥大化した自尊心からクラスの女子全員を見下しているのと全く同じように、彩綾の側もまた、見た目が醜く性格も最悪な紗羽のことを内心で猛烈に見下していたのだ。そんな下等なデブ女から、勝ち誇ったような顔で煽られたのだから堪まったものではない。
何より、卓郎とのデートなら自分だって何度も経験している。こんな勘違い女が思っているような無理やり付き合わされるようなものではなく、もっと濃厚で甘々なデートだ。
腹の底から湧き上がる対抗心に背中を押され、彩綾はうつむいていた顔をゆっくりと上げると、消え入りそうな、けれど確かな棘を含んだ声で言い返した。
「……私だって、卓郎くんと遊んだよ……?」
「はあ? あんたが?」
紗羽の眉が不機嫌そうにピクリと跳ね上がる。彩綾は蚊の泣くような声ながらも、しっかりと紗羽の顔を見据えて言葉を続けた。
「電車に乗って……遠くの街まで行って……。それで……二人で、ずっと一緒にいて……」
(……流石に、ラブホテルに入ってずっとエッチしてた、なんて言えないけど……)
恥ずかしさもあるし、何より卓郎から「誰にも言うなよ」と強く口止めされている。だから具体的な内容は伏せたものの、彩綾としては精一杯の事実に基づいた反撃だった。
だが、それを聞いた紗羽の反応は冷ややかなものだった
。
「……ハッ! ギャハハハハハッ!!」
突如として教室内に響き渡る、品のない大爆笑。
「ちょっとぉ、面白すぎるんだけど! あんた、私の話を聞いて悔しくなっちゃったの? 嘘つくにしても、もうちょっとマシな嘘につきなさいよ! タクローがあんたみたいなドブスと電車に乗って遠出? 冗談は顔だけにしておいてくれないかしらぁ!」
紗羽は腹を抱えて笑い転げ、彩綾の話を「哀れな負け犬の惨めな妄想」として一蹴し、鼻で笑い飛ばした。
一方、そうやってあざ笑う紗羽を見る彩綾の瞳もまた、冷ややかな蔑みに満ちていた。
(……笑えばいいよ。どうせこのデブ女の言ってる『お家デート』だって、全部いつもの自分に都合のいい妄想なんだから。卓郎くんがこんなデブ女を相手にするわけないじゃん……ふふっ、哀れな人)
彩綾は彩綾で、紗羽の話したお家デートなど、卓郎にウザ絡みしすぎた紗羽が脳内で作り上げた哀れなファンタジーだと決めつけ、心の中で暗く嘲笑っていた。
「私の言ってることは全部本当だから! タクローは私のお姫様扱いだけで手一杯なの! あんたの出る幕なんてハナから無いのよ!」
「……勝手に言っていればいいんじゃないですか」
お互いに相手の言葉を1ミリも信じず、ただの妄想だと見下し合う二人。
自分こそが卓郎に選ばれた特別な存在であり、目の前の相手は惨めな妄想に縋る哀れな女だと疑わない――実情は二人揃って卓郎の都合のいいセフレに過ぎないという真実から目を背けたまま、二人の間の溝はさらに深まっていく。
「さっきから聞いていれば、調子に乗んじゃないわよこのドブス!! 自分の顔を鏡で見たことあるわけ!? タクローがあんたみたいな地味で不細工な女を相手にするわけないでしょ!!」
紗羽の怒声が教室の壁に反射し、ビリビリと空気を揺らした。
お互いに相手の言葉を「虚勢」であり「哀れな妄想」だと決めつけたことで、二人の意地の張り合いは一気に沸点へと達した。
「……鏡を見るべきなのは、加賀原さんの方じゃないですか……?」
普段なら絶対に声を荒らげない彩綾も、下等だと見下す相手からの露骨な侮辱にカッとなり、ボソリと、けれど猛毒を含んだ言葉を打ち返した。
「な、なんですって……!?」
「だって……そうじゃないですか。自分では可愛いつもりなのかもしれませんけど……ただのデブじゃないですか。卓郎くんがそんな不潔な肉の塊みたいな人、本気で好きになるわけないのに……可哀想な人」
彩綾としては渾身の嫌味のつもりだった。だが、重度の現実逃避と肥大化した自尊心に支配されている紗羽の歪み切った脳内には、そんな言葉はかすり傷一つ与えられない。
「はあぁ~!? デブぅ~!? ギャハハハハ! 本当に何も分かってないわね、このドブスは!!」
紗羽は腹を抱えて大爆笑し、あからさまに哀れむような目で見下してきた。
「あんたみたいな色気のない女には理解できないでしょうけどぉ! 私は全身がもっちり吸い付くような、最高にエッチでスタイル抜群のナイスバディなの!! タクローだってこの私の完璧なプロポーションに目がなくて、いっつもトロトロの目で私に夢中になってるんだからね!?」
「……っ! 自分の見苦しさをそんな風に正当化できるなんて……気持ち悪い……ッ!」
自分の肥満を「完璧なスタイル」だと誇らしげに語る紗羽の異常な自己肯定感に、彩綾は心底不快そうに顔を歪めた。
「気持ち悪いのはあんたの存在よ!! あんたねぇ、自分の立場ってものを分かってないんじゃないの!? 私とタクローは昔からの幼馴染なのよ!! あんたみたいな影の薄い不細工女が、幼馴染のポジションに図々しく居座ろうとしないでくれる!?」
「幼馴染なのは……私も同じです……! 昔から一緒にいるのは私だって同じなのに、加賀原さんはいつも図々しくまとわりついて……卓郎くん、本当はすごく迷惑そうにしてますよ。学校でもいつも嫌そうにされてるの、クラスのみんな知ってますよ……?」
「はあぁー!? 迷惑!? タクローが私を好きすぎるからこそ、恥ずかしがって素直になれないツンデレな態度取ってるのに決まってるでしょ!! あんたみたいに毎日一生懸命勉強してるフリして、テストの点数が私と変わらない頭の悪いドブスに、男心も恋の駆け引きも分かるわけないじゃない!! 授業中も暗ーい顔で俯いてて、存在自体がジメジメしてて気持ち悪いのよ!!」
彩綾は真面目に授業を受けて一生懸命勉強をしているにもかかわらず、地頭が悪いためにテストの成績はいつもどん底だった。
勉強を一切放棄して生徒指導室に呼び出されている紗羽と同レベルの学力であることを突かれ、彩綾は悔しさに唇を噛み締めた。
「っ……私は、加賀原さんみたいに授業態度で先生に怒られて、卓郎くんに恥をかかせたりしてません……! 卓郎くん、品がなくてうるさいだけの頭の悪い人は大嫌いですから……! 卓郎くんの隣に立つ資格なんて、あなたには一ミリもありません」
「ハッ! 真面目なだけのドブスが何言ってんのよ!! 点数が同じなら一緒でしょ!! タクローが求めてるのは、自分を癒やしてくれる最高に可愛い私なの!! あんたみたいな地味な不細工がどれだけ真面目ぶろうが、タクローの男としての本能には一撃も響かないのよ!! 哀れねぇ〜!!」
「……卓郎くんは、私と二人でいる時が一番リラックスしてるし、私をすごく大切にしてくれてます。加賀原さんみたいにワーワーうるさいだけの勘違い女、本当は鬱陶しくてウザいって思われてるかもしれないのに……ふふっ、おめでたい頭で羨ましいです」
「なっ……っ!! あぁ!? あんた、よくもそんな口が叩けたわね!!」
互いに卓郎の幼馴染であり、揃って学力が低いという共通点がありながら、外見への認識と普段の態度の違いで激突する二人。
ネチネチとした嫌味と直接的な暴言の応酬はどこまでも熱を帯び、留まることを知らない。
二人はお互いに「自分こそが卓郎の特別な本命」であり、「目の前の女は卓郎にウザがられている哀れな勘違い女」であると信じて疑わない。だからこそ、互いのプライドと歪んだ愛情を賭けて、一歩も引くことができなかった。
爆発寸前の紗羽が、彩綾を押し潰さんばかりにドスドスと巨体を一歩踏み出す。
彩綾も怯むことなく、冷ややかな狂気を瞳に宿して真っ直ぐに睨み返した。
夕暮れの教室を支配する、ドロドロとした刺すような殺気。まさに次の瞬間には爪を立て合い、髪を引っ張り合う取っ組み合いの喧嘩が始まってもおかしくない極限状態――それを打ち破ったのは、唐突に響き渡った場違いな電子音だった。
『ピリリリリリ、ピリリリリリ――』
「チッ……誰よこんな時に……!」
紗羽は盛大な舌打ちを叩きつけると、ポケットからスマホを乱暴に取り出した。画面に表示された名前に露骨に顔を顰める。
「……ハッ、パパ? 珍し……」
ディスプレイに踊る『父親』の二文字。普段は紗羽の酷すぎる見た目や性格に嫌気が差し、実の娘をまるで『いないもの』として扱い、仕事を理由に滅多に家に帰ってこない男からの着信だ。必要最低限の会話すら避けるような父親からの連絡に、紗羽の眉間には深いシワが刻まれる。
紗羽にとっても両親への愛など微塵もない。自分に無制限にお金を振り込んでくれるだけの便利な財布――それ以上の感情などハナから抱いていなかった。
「……もしもし? なによ。今忙しいんだけど」
彩綾が訝しそうに見守る中、耳元から漏れ聞こえる電話口の気配に対し、紗羽は不快感を隠しもせずに苛立ちを声に滲ませる。
「はぁ? 帰ってこいって……なに、急に仕事早く終わったからって気まぐれ起こしてんの? 勝手にしてなさいよ、お金さえ置いておいてくれれば……あ、ちょっと! 何勝手に切ってんのよッ!?」
一方的に通話を切られた画面を睨みつけ、紗羽は「……チッ!! なんなのよアイツ、相変わらず態度デカくて胸糞悪い……! お金出す以外に何の価値もないくせに!」と心底苛立ちを吐き捨てた。
父親への不満を撒き散らしながら手持ちの荷物を乱暴にひっ掴むと、彩綾に向かってこれ見よがしに指を突きつける。
「パパから急用が入ったから帰ってあげるわ! 今日のところは見逃してあげるんだから感謝しなさい! じゃあね、勘違いブス女っ!!」
最後まで甲高い捨て台詞を叩きつけると、紗羽は校舎を揺らすようなドスンドスンという荒々しい足音を響かせ、教室を去っていった。
ガラガラ、バタンッ!と乱暴に扉が閉まる音が響き、静寂が戻る。
残された彩綾は、不快感で胸を上下させながら、彼女が去った扉を冷ややかに睨み続けていた。
(……何なの、あのデブ……。父親に呼び出されたくらいで慌てて帰るなんて、バカみたい)
嵐の去った教室で一人、彩綾はフッと小さく鼻で笑う。
(でも……これで邪魔者はいなくなった。卓郎くん、もうすぐ部活終わるかな……?)