※この作品はR-18です。

高望みしない彼は今日もゴミ女とセックスする   作:しゃしゃしゃ

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第三十七話 卓郎の受難(人生の墓場)

 

 

 

卓郎は絶望の淵で必死に思考を巡らせ、苦し紛れに口を開いた。引きつった笑みを貼り付け、声を震わせながら懸命に言葉を紡ぐ。

 

 

「か、加賀原さん……! お気持ちは本当にありがたいのですが……! ぼ、僕たちはまだ高校生ですし、将来の夢や進路だってまだ何も決まっていません! それに、紗羽を幸せにするためには、僕自身がもっと社会に出て一人前になって、生活力を身につけてからじゃないと……! 今すぐ結婚だなんて、紗羽のためにもあまりに無責任すぎます……っ!」

 

 

「誠実な好青年」というキャラクターを崩さないギリギリのラインで、必死に「時期尚早」だと訴えかける卓郎。

 

 

しかし、そんな未来の破滅や卓郎の必死の足掻きを予想できる頭脳など、愚かな紗羽が持ち合わせているはずもなかった。

 

 

卓郎の苦し紛れの言葉すら、「私のことをそこまで真剣に考えてくれてるのね!」と好意的に脳内変換してしまう。

 

 

「ちょっとタクローったら、固いこと言わないでよー! パパが良いって言ってるんだから良いじゃない! 私はタクローとなら四畳半のアパートでもどこでも幸せになれるわよぉ〜♥」

 

 

両親からの拒絶や家庭の崩壊などすっかり頭から吹き飛んだ紗羽は、理想のハッピーエンドに酔い痴れ、卓郎の腕に丸々と太い腕を力任せに絡めてスリスリと寄ってきた。

 

 

「ねぇタクロー、新婚旅行はハワイが良いなぁ〜! ドレスも最高に可愛くて豪華なヤツ選ばなきゃねぇ〜♥」

 

 

甘ったるい鼻声を出しながら、ブヒブヒと荒い息を吐き出して頬を擦り寄せてくる巨体。

 

 

(……ッッ! 離れろクソブス……!! うぜぇ……殺したいほどウザすぎる……ッ!!)

 

 

嫌悪感を遥かに通り越し、全身の皮膚が粟立つほどの烈しい殺意が卓郎の胸底から突き上げてくる。もはや完璧だった「好青年」の表情を取り繕うことすら不可能なほど、卓郎の顔は土色に引きつり、目元は痙攣していた。

 

 

だが、そんな卓郎の絶望的な顔色も、苦し紛れの反論も、紗羽の父親にとっては心底どうでもいい戯れ言でしかなかった。卓郎の訴えを完全に無視し、父親は静かに立ち上がった。

 

 

「いやはや、めでたい話だ。君のように責任感の強い男なら、きっと我が家から自立した後の紗羽をしっかり支えてくれるだろう。これで私も安心して離婚の手続きを進められる」

 

 

父親は表情一つ変えず、棒読みのような心のこもっていない祝福の言葉を二人へ贈った。

 

 

ただ面倒なゴミ処理が片付いたと言わんばかりの、冷ややかな眼光。卓郎の必死の足掻きすら嘲笑うかのように、地獄へのカウントダウンは着々と進んでいく。

 

 

 

「――ああ、それと当然だが……卒業して二人で一緒になった後は、紗羽のことはすべて君に任せたよ。……文字通り『すべて』ね」

 

 

卓郎の苦し紛れの訴えを冷ややかに聞き流し、紗羽の父親は最後に決定打となる一言を言い放った。

 

 

(……ッッ!?)

 

 

『すべて任せた』――その言葉の裏に含まれた残酷な意図を、卓郎は痛いほどに理解した。

 

 

高校を卒業したその瞬間から、加賀原家からの金銭援助は一切打ち切る。娘の食費、家賃、服飾費、遊興費に至るまで、すべての経済的負担を「夫」となる卓郎一人に押し付けるという無言の宣告。

 

 

「…………っ」

 

 

卓郎の膝からふっと力が抜け、がっくりと肩を落とした。もはや異議を唱える気力すら残っていなかった。

 

もしこの冷淡な宣告の真意が伝わっていたとしても、無思慮で現実が見えていない紗羽なら、「ふん、愛があればお金なんて関係ないわ! タクローと二人なら四畳半の極貧生活だって乗り越えてみせる!」などと映画のヒロイン気取りで勇ましく、自信満々に思うのだろう。

 

 

だが、現実はそんな甘いものではない。そして何より、その地獄のような現実を卓郎自身が一番よく知っていた。

 

 

なぜなら――紗羽をここまで「使い物にならない怪物」に育て上げたのは、他ならぬ卓郎自身の自業自得だったからだ。

 

 

幼い頃から周囲に「親切な幼馴染」と思われるために甘やかし続け、機嫌を取り、自尊心だけを異常に肥大化させた結果、今の紗羽はとんでもない大食漢で、金銭感覚が狂い切った重度の浪費家となっていた。

 

 

勉強は学年最下位を争うレベルでできず、掃除も料理も洗濯すら一切できない生活破綻者。

性格は我儘で傲慢、常に周囲を見下すため人間関係は最悪。

そして見た目は到底「彼女」として誰かに紹介などできない、ただの醜い肥満体。

卓郎にとって、陰で欲望をぶつける性処理用の「肉便器」として利用するぶんには重宝しても、生涯を共にして愛し続けることなど万に一つもあり得ない存在だった。

 

 

 

今、そんな生きる害悪のような紗羽が何不自由なく暮らし、認知を歪ませながらも精神を安定させていられるのは、ただ一つ――『金と余裕があるから』――に他ならない。

 

 

(……もし、加賀原家からの金が完全に途絶えたらどうなる……?)

 

 

自分の収入だけで、この女の狂った生活水準を支えきれるわけがない。

 

高級な食べ物を好きなだけ貪り食い、欲しいものを湯水のように買い漁り、家事一つせず部屋をゴミ溜めに変える女。

 

金が尽きれば即座に激しいヒステリーを起こして暴れ出し、そのすべてのツケとストレスは「夫」である自分に回ってくるのだ。

 

 

一生、金の無心と癇癪に怯え、働いた金を吸い上げられ続ける地獄。

 

 

そんな恐ろしい怪物を、資金援助なしで死ぬまで背負わされる己の最悪な未来を想像し、卓郎の視界は真っ暗な絶望の闇へと染まっていく。

 

 

 

絶望の淵で、卓郎の脳裏に真っ先に浮かんだのは「紗羽との関係を完全に断ち切る」という選択肢だった。だが――破滅的な現実がすぐさまその思考を冷酷に叩き潰す。

 

 

(……無理だ。逃げられるわけがない……っ!)

 

 

学校でも、プライベートでも、二人はあまりに長い時間を共に過ごしすぎていた。

周りから見れば「手のかかる幼馴染と、それに嫌な顔一つせず付き合ってやる優しい男」という切っても切れない関係として完全に定着している。

 

 

ここで突然、卓郎の側から一方的に絶交を突きつければ、周囲や教師から当然のように理由を追及される。

よっぽどの正当な理由もなしに縁を切れば、これまで命がけで築き上げてきた「誠実で優しい好青年・浅井卓郎」の完璧な仮面にヒビが入ってしまうのだ。

 

 

そして何より恐ろしいのは、仮に周囲を上手く誤魔化せたとしても、捨てられた紗羽本人が狂乱して真実をぶちまける危険性が極めて高いということだった。

 

 

今、紗羽が卓郎に従順で、大人しく肉便器として抱かれているのは、彼女の頭の中で卓郎が『私を世界で一番愛し、絶対に裏切らない完璧な王子様』という狂ったフィルターで補正されているからに過ぎない。

 

 

もしもその幻想を打ち砕き、一方的に彼女を捨てて裏切れば――彼女の肥大化した好意と執着は、一瞬にして激悪な憎悪へと反転する。

 

 

卓郎は、実の両親から見捨てられても平然としていた紗羽の姿を思い出して戦慄した。

自分を裏切った瞬間、卓郎もまた、両親や他の有象無象と同じ『お姫様である私(紗羽)に従わない、どうでもいい愚か者』へと急速に格下げされるのだ。

 

 

(……そうなったら、マジで終わりだ……ッ!)

 

 

 

「卓郎に酷いことをされた」「ずっと性処理道具として弄ばれていた」と紗羽が喚き立てるだけなら、周囲は彼女のいつもの我が儘や妄言として切り捨てるかもしれない。しかし、最悪なのはあの父親の存在だ。

 

 

娘という不良債権を何としてでも卓郎に押し付けたい父親は、卓郎を追い詰めて紗羽と結婚せざるを得ない状況を作るためなら、ためらいなくあの隠しカメラの映像を紗羽に渡すだろう。

あそこまで過激で淫らな肉体関係が、映像という絶対的な証拠付きで明るみに出れば、デブでクソな女と陰で交わっていたという醜聞とともに、「浅井卓郎」の社会的立場、学業、そして未来のすべてが木端微塵に破滅する。

 

 

断ち切ることもできず、従うこともできない。

 

 

 

 

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