ヒップラインがくっきり見えるトレーニングウェア最高です。
一章 無自覚テンプテーション
「ラスト一回!」
休日である。
以前の私ならシャーレでだらだら過ごすか、残ってしまった仕事をこなすか、急用の案件をこなすか、連絡をくれた生徒に合わせて行動をしていた。けれども、今は。
今、私は、ミレニアムのフィットネスエリアにいる。
あくまで自主的に。なんて健康志向な人間だろうと余裕綽々に胸を張りたい気持ちだが現実はあまりに重苦しい。いや、これもある意味で胸を張って? いる。マシンチェストプレスに座ってグリップを握ったまま、胸を大きく広げているのだから。
あと一回。その一回でやっと十回に到達できる。そうすれば、今日のノルマは達成だ。
「うおっ、ぉぉ……!」
ちなみにスミレは軽々と五十回も終えてしまった。私よりもずっと負担を重くして。
生徒のお手本ともなるべく先生なのに情けないと胸の内で叱咤しながら胸筋に意識を向けて内側に腕を引く。腕を戻して手を離し、ある種の達成感に浸った。
「あー……もう今日は、むり……」
「お疲れさまです、トレーナー」
生きるための活力をすべて手放して虫の息となった私と違って、笑いかけてくれるスミレはまだまだこれからと言わんばかりの力が漲っていた。実際、目の前でまた別のトレーニングを始めようとしている。
けれども、スミレはそのオーバートレーニングのせいで倒れたことがある。
その現場に居合わせたことで知り合い、トレーナーと呼ばれるようになった。
そして、休みの日に一緒にトレーニングに励む仲へと発展したのだった。
週末は一日をかけてスミレと過ごしている。今の私は皆の先生であり、スミレのパートナーでもある。午前中にトレーニングを終えたら併設されているシャワーで体を洗い、一緒に昼食を摂って、買い物をして、一緒にシャーレに帰ることがほとんどだ。
常に肉体に最適な食事メニューを考えることばかりに執着していたあの頃に比べれば、スミレの食事のレパートリーも増えたとは思う。それでもレストランで料理が届くたびにカロリーを気にする性格は直っていない。それもまたスミレらしさだった。
買い物に行くときに必ずプロテインを購入するのもまた、らしい。
「すみませんトレーナー。いつも買ってもらって」
「大丈夫だよ。同じの飲んでるんだし」
「……そっ、そうですね。はい。同じの、ですもんね」
街を歩けば見知った顔とも出くわす。そういう時はいつも「筋トレを教わっている」というていではぐらかしていた。先生と生徒という関係を超えてしまったことを曝け出せるほどの胆力はない。
以前シロコと遭遇した時はてっきり一緒にトレーニングをしたいと言われるかと身構えたがそんなことはなかった。そしてなぜか平日に二人でランニングをしようと提案された。スミレと波長が合いそうだと思ったんだけどな。
最近は腰や肩の痛みに悩まなくなった。
代わりにこの関係が露見してしまわないかどうかで悩んでいる。
連邦生徒会に見つかれば……クビか? クビで済むか? 済むと良いなぁ。
なんて呑気なことを考えている内にシャーレに到着。スミレのおかげで変な子に絡まれることも少なくなった。生徒のお手本としてはやはり不本意である。
「ちょっと、菜園を見てきますね」
「ありがとう」
筋肉にしか興味がないと思われがちなスミレだが、実はガーデニングにも審美がある。それにくまのぬいぐるみが好き。
仕事の合間に少しずつ手入れしていこうと思いつつもほとんど手を付けられなかった菜園のほとんどは生徒のおかげで整理された。スミレもその一人だ。
「さて……」
買った物はすべて仕舞った。スミレの荷物もいつも通りまとめてある。
お腹は減っていない。喉も乾いてはいない。午前中に降り積もった疲労は程よく解消されている。このまま寝てしまうのも悪くない陽気な昼下がり。
「トレーナー、戻りました。枯れそうな植物はとくにありませんでしたよ。皆元気です」
「それはよかった」
外を歩いて乾いたトレーニングウェアを無意識に注視する自分がいた。
「……あの、トレーナー」
お腹の前で指を組み、視線を床に向けるスミレ。
常に冷静で動じることのない少女のようで、彼女にも弱点はある。
「このあとは、どう、されますか?」
黒髪のポニーテール。どことなく鋭さを思わせる藤紫。丁寧で芯のある喋り方。
彼女を一言で言い表すなら『美しい』。それは一人の女性としての意味であり、日頃の鍛錬によって磨かれた肉体的な意味としても。
「……そうだね」
剥き出しの肩、お腹。女性特有の膨らみはスポーツブラに艶めかしい曲線を与え、アンダーウェアのぴっちりとしたラインが欲情を煽る。
「……一緒に汗、流そうか」
たとえそれが、無自覚であっても。
二章 本音と建前
私とトレーナーの距離が大きく縮まったのはとある生理反応によるものでした。
トレーナーがなにかマシンを使う時は必ず私がお手本を見せてあげたのです。姿勢について要点を説明しても、すぐには正しい姿勢でできませんでした。初めてだから慣れていないのだと、初めは推測していました。
その理由が他にあったと分かったのは、ある日。
私と入れ替わって座ったトレーナーの、その、パンツの一部が、盛り上がって。
トレーナーはそれに気づくといきなり立ち上がって私に背中を向けました。最初は私も動揺して動けませんでした。振り返ったトレーナーの顔は、一キロのランニングをした後よりもよっぽど真っ赤で……私を見て興奮してくれたのだと気づいたころには、トレーナーを引っ張って、二人で女子トイレの中に入っていました。
そして私は、トレーニングに集中できるようにお手伝いをしてあげて。
そうして。
今は、一人ではできないトレーニングのご指導をお願いしているのです。
「じゃ、上げるよ」
「はいっ……」
トレーナーの自室に二人きり。僅かな吐息だって感じ取れる静けさ。距離感。
なのに、空気の中に溶けていきそうな返事です。常に腹式呼吸を意識しているのに、この時間の時だけはお腹に力が入りません。
トレーナーの指がスポーツブラの下から入り込んで、ゆっくりと上昇します。
布地が捲れて、一種の解放感が肌をなぞり。同時に、重力の感じ方が増して。
「ん……」
直立不動の体が余計に硬くなり、なにかから身を守るように肩甲骨が強張るのです。この空間にいる時だけは、頭上のヘイローが不規則に変形している気さえします。
心臓の鼓動が強まり、速まり、やかましい。街中でチンピラに絡まれる時よりも。
「もう乳首硬くなってる」
「いっ、言わないでください」
トレーナーに特別トレーニングをしてもらえるのは週に一度できるかできないか。
平日はお仕事で忙しいですし、週末だって急な仕事が入ることも珍しくありません。
だから……触れられるたびに体が悦んでしまのは仕方ないんです。貴重だから。
後ろから抱き着いてくるトレーナーが密着して、下半身から伸びる確かな感触をぐりぐりと擦りつけてきます。けれどもその銃口が向けられるのはまだ先。服に残った汗の匂いを嗅がれるのは困りますが、トレーナーはこれが好きらしいです。
乳房が揺らされます。外から内にむけてぽよぽよと、震動を送られて。トレーナーはまず私の体を表面的に刺激するのです、準備運動をするように。葡萄の皮をゆっくりと剥いて、完全に露わになった実を一口で堪能するかのように。
「こっち向いて」
言う通りに首を回せば唇を奪われます。ぢゅるぢゅると唇を吸われて、こちらも吸い返して。生まれた隙間から舌が侵入してきて、私の理性をバラバラに崩していくように口内で暴れるのです。
最初は慣れなくて、されるがまま。
今は……ある程度は、戦えます。
「ん、はッ……ちゅぅ、ちゅりゅ、ァ、んぅ~……」
トレーナーは体力こそありませんが器用な方です。私に熱烈なキスをしながら指の動きに一切の衰えがありません。
ぶるんぶるんと時計の針のように大きく胸を撫でまわして堪能して、今度はお腹に指が向いて。
曝け出したお腹が魅惑的だと言われた時は、ウェアを買い替えようかと思いましたが。
でも、トレーナーが好きなら、いいかと思って。
今はすっかり、トレーナーに開発され尽くしてしまった、ダメな腹筋です。
肌の上から少し強めに指圧を受ける度、腰骨の辺りが痺れます。前から刺激を受けているはずなのに後ろへ貫通しているように。見た目だけなら誇らしく美しい筋肉美ですが、その中身は、トレーナーの指に押し負けてしまうくらいに脆いのです。
お腹の中にあるなにかが、じわじわと侵食されていって。
そうしてさらに下に向かうかと思われた手は、臀部へ。
肌にぴっちりと張り付くパンツの上に手のひらをぺったり張り付けて、指先をしならせてもみもみと揉みこんできます。ピアノでも弾くかのようになめらかで、指の動きに合わせて声帯が躍ってしまう私でした。
トレーニング中、トレーナーに背中を向けていると特に視線を感じるのはここです。
前は、気のせいかと思っていましたけど……トレーナーはえっちな人です。
やがて手が離れ、脇腹を伝って上へと戻りました。
「アッ……あッ、あぁ……あ、ぅ……」
トレーナーに食べられるためだけの肉の房。
その先端は早く構ってとアピールするように尖っています。
房の中心にある芯の芽。
それが遂に摘ままれて、歓喜を上げるように背中がびりびりと震えるのです。
ずっと続けば、お尻がキュウッと締まり、果汁が漏れるように急所が濡れます。
口では呼吸ができません。ずっと稼働して、空気を排して。鼻の小さな孔から取り込む酸素では不十分で、ゆっくりと意識が抜けていくような心地よさに抗いながら立ち続けます。
これも、トレーニングの一つですから。
顔が離れる頃には、濃い透明な糸が伸びて、垂れ落ちて。
「じゃあ、耐久力テストしようか」
「っ……はい……」
トレーナーが前に来ます。瞳はその辺の暴漢よりも荒々しいのに静かで、映るのは肌色。
「あッ……! あ、ぁぁああ……!」
開かれた口の中に、乳首の片方が吸い込まれました。そのままぢゅるぢゅると、さっきまでのキスと同じくらいにはしたない音がびちゃびちゃ響いて鼓膜が浸水します。唇に挟まれて、強く吸われて痺れて、舌でころころ転がされて。
手は、大人しくしているはずもなくて。
アンダーウェアに指がひっかけられて、するすると脱がされます。中途半端に、太腿の真ん中あたりまで。ショーツも同じように降ろされ、いかに空気抵抗を抑えたユニフォームであっても隠す恥部が空気の流れに舐められます。
異様にひんやりとしてしまうのは、きっと。
「んふゥ!?」
くちゅッ、とどこがでぬめった水が波打ちます。
出所は私の躰。乱してくるのは、男性特有の太指。ぬぷぷ、と簡単に入り込んだ異物が、言葉ではない方法で私の身に起きた惨状を明白にしてくれるのです。
全体が上下して、水音が絶えず耳の上をなぞります。鍋の中を棒で掻き回すように遠慮がありません。音と、動き。二方向の同時攻めで、湧き上がる刺激は何倍にも膨れ上がります。
糸を引きながらトレーナーの顔が離れます。ピンク色の塊がびっちょり濡れて、暖かかったはずがすっかり冷えて。
もう一つの芽が食べられて、なぶられて。下から感じる侵入者が、動きを変えます。
「あ゛ひ゛っ!」
くいっ、くいっ、と。
爪を壁に引っ掛けるような動作が見えないところで行われていました。なにかを探り当てるような動作は、私の反応を見るや一点に固定されて。傷をつけられて装甲が剥き出しとなった部分に集中砲火を浴びせられるような、痛みまでも錯覚させる波がじゃぶじゃぶと湧き上がってくるのです。
「まッて、イク、イきます、イっ、~~……! ~~ぁぁッ……!」
流されてしまわないようにしがみつくものを探して、咄嗟にトレーナーの頭を抱き寄せます。少し息苦しそうな声が聞こえましたが離せませんでした。膝がカクカクと震え、間接は固まってしまったように動きません。
体が自由になるまで長い時間を要した気がします。
氷がゆっくり解けるように、筋肉がほぐれていって。
やっと抜かれた中指は、全身が艶を帯びていて、手の平にも及んでいました。
恥ずかしい声を聞かれてしまったことへの慚愧でどうすることもできずにいる私の目の前で、トレーナーはいつも通りにてきぱきと動きます。
お手本のように。
「次は口のトレーニングをしようか」
仁王立ちをするトレーナーの前に跪いて、両手を繋ぎます。これは口のトレーニングなので手は使いません。指まで絡めて、なにがあっても放しません。
びきびきと硬さを主張する赤黒い棒。上反ったソレの先端にまずはキスをします。顔を近づけると微かにオスの臭い。一度はシャワーを浴びてもその後も歩きましたからね。ここは蒸れますし、臭いも強いですし。
それに、私の好きな香りですから、いいんです。
唇を一度離して、開けて、迎え入れます。ぱくっと先端を咥えて、歯が当たらないようにゆっくり顔を押し込みます。皮を押しやるようにずろろろと音を立てながら。唾液を纏わせるように舌を休めることなく動かして、お掃除をして。
根元まで届くことは叶いません。
トレーナーのモノはそれくらい長くて、太いので。
息苦しさと圧迫感を頬張りながらゆっくりと顔を前後にスライドします。口の中でどんどん唾液が生成されて潤滑油となり、次第に口から零れるほどに。トレーナーも感じてくれているのか、握り返してくる手が時々力みます。
なるべく奥まで咥えこんで、思い切りぢゅぅ~~と吸い込みます。
こうやって強く圧迫されるのが好きなんです。特に喉に近い場所で亀頭を包まれるとより。
「うぅっ」
私を散々虐めた人を逆に喘がせるなんて、なんだか反抗期みたいです。
そのままぢゅうぅぅッ……と搾り続けて、離します。流石にずっとはできません。
休息を兼ねて舌を伸ばし、先端部分だけをれろれろと嘗め回します。男性が最も感じやすい部位です。心臓のようにびくんびくんと脈打つソレを追いかけるように舌を駆使して、目線を上に。見下ろすトレーナーは呻き声みたいなものを上げていました。
もうそろそろですね。
ぱくっと、もう一度真っ赤に充血しきった先っぽを咥えます。今度は顔をほとんど動かしません。敏感ですべすべしてぷにぷにしているのに中はしっかりと硬い部分を、舐め尽くします。飴のように。
どれだけ舐めても甘くはなりません。
代わりに苦いおつゆが漏れてきます。
苦いけれど、それすらも求めていたかのように飲み干す自分がいるのです。
トレーナーの手の握力がどんどん強くなっています。なにかから耐えるように腰を突き出して、つま先立ちをして、荒く息を吐いて。それでも私は絶対に手を離さないで口を動かし続けます。
出してください、トレーナー。ドロドロで青臭いものを。はやく。
奉仕の一心でひたすらその時を待ち続けて、ついに、ぶるりとした震えが舌に伝わります。
白く濁った、ご馳走が。
口から溢れてしまいそうな量をドびゅっ、びゅッ、と噴射して。
それでもなお立て続けに連射してくるのはショットガンのようでした。酸欠気味な頭を酷使してなんとか喉を通過させます。だって、これには亜鉛などの栄養素がたくさん含まれていますから。
一週間分の、トレーナーの栄養。美味しいです。
射精したばかりの敏感な器官には申し訳ないのですが、充分に搾り取れるまで口は離しません。ぢゅーぢゅー吸い取ります。暫くは我慢してもらわないと。
お腹で直接摂取するのもいいのですが……口からだと胃が膨れて満腹感があります。
「……ぷはっ、は……あっ、まってください、トレーナー。まだ――」
「えっ、あ、ちょ」
こんなにどろりとした液体ですから、狭い管をすんなりと通れるわけがありません。
時間差で垂れ落ちてくる一滴を待ち望んで舌を突き出し、零れてきた欠片を舐めとります。
「んちゅっ……ごちそうさまでした、トレーナー」
なんだか辛そうな表情を滲ませていますが、トレーナーのココはまだまだ元気です。
「では、次のトレーニングをお願いしますね」
いつものように。
「それでは……いきますね」
「うん」
ベッドに横たわったトレーナーに跨ります。右手で硬い棒を握って、穴にあてがって、そのままゆっくり、ゆっくりと、
「ふぅゥっ……! あッはぁ、ぁ……はいり、ましたぁ……」
自分から腰を落としてトレーナーを迎え入れるのは、今も恥ずかしいです。
ミチミチと頭の中に音が響いて、なにかを飲み込んでしまったような違和感で圧倒されます。雌の声を出してだらしない顔を晒しているこの状況を、真正面から見られている現実から、目をつぶって逃げたくなる。
でもこれもトレーニング。スクワットのトレーニングです。
両足はしっかりとベッドに固定して蹲踞の姿勢となり、両手は頭の後ろで組みます。そのまま膝を使って体を持ち上げ、腰を下ろす。トレーナーと繋がったままの上下運動を計百回。これをこなすまで、私はイってはいけません。
もしトレーナーがイったら、トレーニング終了です。
もし途中で私がイったら……その時は、回数リセットという決まりです。
「いっ、かい……! く、ふぅ……に、ぃかい……!」
回数は自分で数えます。腰を落とすごとにワンカウント。肌と肌がぶつかる度、胸が軽くプルンと視界の下で揺れています。
乳首を触られることはありません。このトレーニングの際は、動くのは私だけ。
もし触られてしまったら、きっと、いいえ絶対に、持ちませんから。
そんなことをされなくとも、今の私は興奮しています。
アンダーは完全に脱いだのにスポーツブラだけは捲ったまま。中途半端な姿の方がそそると言われましたが、私として胸にチクチクと穴が開くような恥じらいが募るばかり。脇を見せつけるように腕を持ち上げているのも一因です。もちろん処理は万全ですが……なんだか、私が見せたがりみたいで。
この状況に興奮してしまっている自分が、なによりも。
「よん、じゅういちぃ……よッん、じゅぅ……にぃぃ……」
どこかで雨漏りが発生していました。
私の視界が下がる度、ぱちゅんと、水溜まりを脚で踏むような音が鳴るのです。
おかげでふとももがすっかり濡れてしまいました。
「ろ、く……じゅう……ご……」
かつてオーバートレーニングで倒れてしまった私ですが、流石に自分の体を自分で痛めつけていれば限界がいつ来るのかはなんとなく推測できます。
おそらくは、あと一回。
次の腰ふりで、私は達してしまいます。
「はっ……はァっ……」
膝が止まります。
達してしまったら、ふしだらな声を上げてしまう。
壊れた玩具のような挙動で踊るところをトレーナーに見られてしまう。
けれど、止まっていいのは五秒以内と決まっていて。
「スミレ? 大丈夫?」
「は、はい……だいじょぶ、です……」
言葉だけなら心配しているようですが、笑っています。
ニヤニヤと嗤っているんです。こういう時のトレーナーは。
「ろく、じゅうぅ……」
ゆっくりと腰を持ち上げます。するすると息苦しさが消えて解放されるようでした。このまま腰を上げきってしまえばいいのでしょうが、そんなことはしません。これもまたトレーニング。鍛えることのできない私の弱点おまんこのためにトレーナーが時間を割いてくれているのです。
なんていう建前があっても。
やはりイキ顔を見られるのは体中から汗という汗が噴き出てしまいそうなほどで。
「うぅぅぅっぅ……! ぅ、ふぁ、ぁッ、ぁぁああ……!」
ゴリゴリと自分で自分を削って、体の中で溜め込んでいたなにかが破裂します。
カクカクと両膝が暴れて、せめて我慢しようと口に力を込めても変な声が出るばかりで。衝撃を紛らわせるためにべこっとひっこめたお腹を前後に揺すっても誤魔化せず、下から上に駆け巡る大きな流れには逆らえませんでした。
体全体が縮まったみたいで、迎え入れた異物の感触がより鮮烈に伝わります。
「イった?」
「は、はひぃぃ……イき、ましたぁ……」
絶頂したらちゃんと申告しないといけません。恐らくはトレーナーも気付いているのでしょうが、言葉で伝えることに意味があるのだそうです。
最も、達した時は真っ先にヘイローでバレてしまうので誤魔化しようがありません。
「じゃあ、初めから」
途中でイったら、回数リセット。
少しだけ時間を置いて、決まり通りに再開します。
けれども、体というのは。一度達してしまうと我慢が効かなくなってしまうもので。
「ごじゅ、う、あッ、く! イク、イきます!」
栓の緩んだボトルのように、抑え込むことが段々と難しくなるんです。
「にじゅぅぅ……ぅあ、ああぁッは、あああ……!」
段々と限界値が小さくなっていきます。
五十回。四十回。二十回。十回。終盤では腕を支えにしないと体が倒れてしまいそうで、もうそれってトレーニングじゃなくて単にトレーナーを貪っているだけなのではないかと自問する自分がいて。
元からそのつもりだったのだから構わないじゃないと突っぱねる自分もいました。
「ひゃぅッ! ぅッぅぅぁ~~……! とれ、な……も、むり……むり、れひゅ……」
結合部の雨漏りは悪化する一方です。肌と肌が離れるたびに糸を引いているような気さえします。実際、以前にトレーニング中の写真を見せられたら無数の糸ができあがっていましたから。
その時の顔は、本当に自分のものなのかと見違えるほどに溶けて崩れていて。今もきっと、トレーナー好みの相貌をしているのでしょう。
「まだ終わってないけど、諦めるの?」
「はいっ……」
体力はまだ残っているはずなのに体はろくに動かせそうにありませんでした。
弾薬は残っているのに、引き金が壊れてしまったみたいに。
そうしてトレーナーは上半身を起こして、そのまま流れるように口づけをしてくれます。私もそれに応じて。舌は使わない、けれど唇を濡らし合うようなキスを。頭を撫でながらしてくれる口の愛撫は、労ってくれているようでもありました。
いつものように。
「じゃあ……ペナルティオシオキ、しようか」
「っ……はい」
優しい手が、髪留めを外します。スルスル抜けて、長い長い黒髪がトレーナーに引っ張られて。そして拘束を解かれたように自由にさせられて。
「やっぱり髪留めがないとイメージ変わるよね」
微笑を湛えながら呟いて、押し倒されて、覆い被さられて。
接続が途切れないようにしながら体位が変わって、空気も変わります。
暖かい声援が、生温く湿って、彩られて。
「ひッ、はッ、あ、あぁんっ! とれな、もッゆ、くりぃぃっ……!」
全体重を乗せた重々しい一撃を何度も何度も喰らいます。杭を打たれるような衝撃です。痛みはありません。代わりに体の奥で雷でも鳴っているのでは勘違いするほどの痺れが爆発しています。
「スミレっ、舌、出して」
「へ、ぇッ? ぁッぁッ、や、んんッ……! あっ、あー……」
間近で顔を覗き込んでいたトレーナーに舌を差し出します。口の形が変わって、喘ぎもくぐもったような、発声するために使う筋肉が変わったような声になりました。
トレーナーもまた、舌を私に伸ばして。そうして、顔の距離を保ったまま、私たちは二つの意味で繋がります。
「あ゛ッま、へ、い゛く゛、オ゛ッ、いキ゛ま、あ、あっあっあぁぁ!」
自分で動くのと違って、外から突かれるのはペースが不鮮明で。
遠慮なくお腹の中にある弱点を突かれる度に脳まで震えるようでした。
ばすっ、ばすっ、と攻撃的で激しい音が生まれて、ベッドのスプリングもさっきとは段違いな金切り声を上げる始末。私が出す音はどれも体液で塗れています。
トレーナーに握られた両手は無意識に力が入って、形勢逆転させられたことを強く思い知らされているようです。
「俺も、イクよ……!」
短い合図とともに、細胞が蠢くような動きが一瞬。
それに対して、私は肯定を送ったとは思いますが、なんと言ったのかはよく覚えていません。
ただ、激流に全身を持っていかれるような感覚の大渦に飲み込まれたのは確かで。
たっぷり注ぎ込まれた熱で、火傷をしてしまいそうでした。
暫しオーガズムの余韻に浸りながらぐったりしていると、トレーナーが訊いてきます。
「スミレ、ご両親には連絡してある?」
「……あっ……はい。友達の家に、泊まると……」
「なら、大丈夫そうだね」
「……よろしく、お願いしますね……トレーナー」
そこからは。
後ろからだったり足を広げたままだったり立って片足を持ち上げたり。
ソファの上だったり窓のすぐ傍だったり動画を見ながらだったり。
お風呂に入り、一緒に夕食を作った後にも求めあって。
そういう、とても充実した休日を過ごすことができました。
エピローグ
「おはようございます、トレーナー」
ぱちりと目が覚め、横から声が飛んでくる。のそりと首を動かせば、こちらを眺めて頬を緩めるスミレの顔が映った。
やっぱり髪留めがないと雰囲気違うよなぁ。
綺麗なのは綺麗で……そこにさらに艶が増すというか。他の男には見せたくない。
「寝顔、変だった?」
「いえ。散々私のことを食べたくせにあどけない顔をするなーと思って」
「そりゃあ寝てる時は意識がないからね」
一週間分の性欲を一気にぶつけたのだから仕方ない。下手すると数週間分の劣欲を発散した時だってある。その時は翌日の朝から昼も体を重ねていた。
ゴムをするのが面倒くさいからピルを飲むと申し出てくれたおかげだが、もしスミレがピルを飲み忘れていたら完全に孕ませているよなぁ……。
昨日の乱れっぷりが嘘のように、スミレの顔は朗らかだ。
「あの、トレーナー。平日も……特に、用事がなくても、会いに来てもいいですか?」
「えっ? そりゃもちろん。ああでも、他の子も来てることが多いから、二人きりにはなれないと思うけど」
「はい、大丈夫です」
他の子と浮気でもしているのではと疑われているのか。
それとも本当に、ただ同じ時間を共有したいだけなのか。
たぶん、聞いてもはぐらかされるだけだろう。
考えてみてください、と。
なので、とりあえず。
両腕でしっかりと抱き締めてみることにした。
〈終〉