※この作品はR-18です。

依存性ゆきのん   作:葵転青

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雪ノ下陽乃_前編

「ひっきが〜やくん♡今日はお義姉さんとのデートの日だよ♡早く起きて起きて♡」

 

雪ノ下母と話した翌日の朝。

 

陽乃さんに布団を引き剥がされて無理やり起こされた。

 

時間を確認すると朝の6時だった。勘弁して欲しい。

 

「比企谷八幡の営業時間は10時から15時までです。お引き取り下さい。」

 

モゾモゾと身体を丸めて二度寝の態勢に入る。布団が無くても俺は寝れる。多少の寒さなら俺は長男だから我慢できる。

 

「そんな定食屋さんみたいな営業時間じゃ足りないよ〜♡お義姉さんは比企谷くんと沢山残業したいな〜♡」

 

陽乃さんに身体をユサユサと揺らされて仰向けにされる。くそ……完全に目が覚めてしまった。そもそも今日は平日だ。学校行く前に陽乃さんと散歩なんてして体力を使いたくない。

 

「約束なら土日にしてくださいよ。学校挟んで朝と夜に拘束されたくないんですけど……」

 

この調子だと放課後に夜10時くらいまで拘束されるかもしれん。それなら土日の昼間に拘束された方がまだマシだ。

 

「比企谷くんは学校お休みして私と1日デートだよ♡雪乃ちゃんとご両親には許可貰ってるし、今日はずっと私と一緒に居られるなんて比企谷くんは幸せ者だね〜♡えいっ♡えいっ♡」

 

ベッドに横になって天井を見つめる俺の頬を陽乃さんが指で突いてくる。陽乃さんの貸し出しは来週の土日のどっちかと思っていたが、まさか平日に襲ってくるとは……。

 

「そのキャラ何なんですか……」

 

「母さんも雪乃ちゃんもクール系だから、ラブラブ系の方が比企谷くんも新鮮で嬉しいと思ったんだけどな〜♡ほら、私の事はお義姉ちゃんって呼んでいいよ♡えいっ♡」

 

絶対いやだ。そもそも雪ノ下は普段はクール系だけど、俺と2人きりの時はめちゃくちゃラブラブだしデレデレだからそのキャラは間に合ってる。

 

「あっ!もしかしてベッドの上では雪乃ちゃんはラブラブ系かな〜?比企谷くんは朝からエッチだね〜♪」

 

「身内の下ネタはドン引きですよ。とりあえず着替えるので出てってください。体力無いので遠出は無理ですからね。」

 

「流石比企谷くん♪着替える服は用意したからこれ着てね!今日は制服だと行けないところに行くからさ♪」

 

陽乃さんを部屋から追い出して、できるだけゆっくり丁寧に時間を掛けて着替える。服は陽乃さんチョイスなだけあってセンスが良い。無地のデザインで黒が基調だが、仕立てがキチンとされているのだろう、着るだけでシルエットが綺麗に出る。俺の身体にピッタリだ。なんで俺のサイズ知ってるんだろう。怖い。

 

着替え終わってしまったので仕方なくリビングに降りると、朝ごはんを食べる暇もなくリムジンに乗せられてしまった。今日は疲れる1日になりそうだ。

 

「やっぱり私の見立て通り似合ってるよ比企谷くん!ほらこっち向いて〜!カッコいい〜♡」

 

車内でパシャパシャと携帯で撮られる。もしかして1日中このノリなんだろうか。とてもじゃないが相手してられないぞ。

 

撮られるのは好きじゃ無いのでデータ消そうかと思って携帯を奪おうとしたら谷間に入れて隠されてしまった。すごい、携帯が挟まってる。雪ノ下じゃ絶対出来ない芸当だ。

 

「それで、こんな朝早くから何処行くんですか?とりあえずお腹減ってるんですけど…」

 

腹ペコってわけじゃ無いけど、今日のハードスケジュールを考えると栄養補給はしっかりしておかないと身が持ちそうに無い。

 

「あれ?言ってなかったっけ?私の大学だよ!ウチの大学は朝も学食やってるからそこで一緒に食べようね♡」

 

「あそこにマクドナルドあるので朝マック買いましょう。運転手さん!ドライブスルー入ってください!そこです!左曲がってください!曲がっ……もういいです。お任せします。」

 

めちゃくちゃ無視された。減速すらしなかった。まあ大学の学食自体は興味あるし奢って貰おう。1番高いの頼んでやる。

 

「学食を食べるにしても朝早過ぎませんか?」

 

「学食食べる前に合気道部の朝練に寄るからね。運動してからの朝食は格別だよ♪」

 

「え?朝から運動なんてめちゃくちゃ嫌なんですけど。」

 

「うちの大学の合気道部は緩いから部外者の比企谷くんを連れてきても大丈夫なんだ。とはいえ流石に初心者には難しいから私がマンツーマンで簡単な合気道の技を教えてあげるよ♡」

 

「めちゃくちゃ嫌なんですけど。」

 

「世間一般では合気道は偽物だ演技だって言われてるけど、うちの部活はヤラセは無しの人間工学に基づいた物だから面白いよ。比企谷くんなら理解は出来ると思うし、楽しみだね♪」

 

「めちゃくちゃ嫌です………」

 

ダメだ、まったく話を聞いてくれない。とはいえ合気道自体は雪ノ下もやってると言っていたし、少しは興味がある。ベッドで雪ノ下に絡め取られた時に身体が全く動かせなくなる時があるが、あれも合気道の応用なのだろうか。俺も合気道を極めれば雪ノ下を組み伏せる事ができるかもしれないな。

 

「あれ?比企谷くん、なんかエッチなこと考えてる?」

 

「世界平和について考えてました。」

 

そんなに顔に出てただろうか。いや、雪ノ下関連だから顔に出ていてもおかしくない。まだ寝起きで本調子じゃないのかもしれんな。切り替えていこう。

 

「陽乃さんって合気道部に入っていたんですね。」

 

「そうだよ〜。乗馬が好きだけど、うちの大学は馬術部とかが無かったからね。何も入らないのもつまらないし、昔からやってる合気道部に入ってるんだ。」

 

「文化祭やクリスマスにギター弾いてましたが、軽音楽部とかには入らなかったんですか?」

 

「あれは弾けるってだけだよ。趣味ってわけじゃないの。」

 

取り留めのない話を陽乃さんとダラダラと話していると、大学に着いたようだ。やっと頭が働いてきた。数分間キャンパスを歩き、練習してる武道場に着いたが、中には3人くらいしかいない。朝練をやってるはずでは?

 

「陽乃さん。もしかして廃部寸前なんですか?」

 

「朝練は自由参加の自主練だからこんなもんだよ。ほら、貸し出し用の道着に着替えてきて。道着の着方とかも更衣室に貼ってあるからそれ参考にしてね。」

 

陽乃さんと別れて更衣室で貸し出し用道着に着替える。最後に帯をギュッと締める動作は、何となく身が引き締まる気がする。この感覚は割と癖になりそうだ。三年時は体育の選択科目で柔道があったし、今年は選んでみるのもいいかもしれん。

 

更衣室から出ると陽乃さんが入り口で待っていた。黒色の袴に金色の刺繍で雪ノ下陽乃という文字が施されている。厨二病ってわけじゃないが、かなりカッコいい。雪ノ下にも今度袴姿見せて貰おう。

 

合気道は礼に始まり礼に終わるらしい。道着を着てからの陽乃さんは朝のふざけた態度とは一変して真面目だった。約40分ほど、陽乃さんの指導のもと合気道を教えて貰ったが、確かに面白かった。姉妹で流派が違うという事はないだろうし、雪ノ下にも今度教えて貰おう。

 

 

「やっぱ比企谷くんはセンスあるよ、身体の使い方が上手い。合気道って出来ない人は全然出来ないんだよね。」

 

「ありがとうございます。ちなみに雪ノ下ってどれくらいの実力なんですか?たまに『私は合気道やってるから大丈夫』みたいな事を自慢げに言ってますけど。」

 

「そこそこかな。私ほど才能はないけど、自慢できる程度の実力はあるよ。雪乃ちゃんと喧嘩したら投げられちゃうから気を付けなよ?」

 

雪ノ下と喧嘩か。するとしたら俺達はどんな理由でするんだろうか。お互いにお互いの嫌がることはしないだろうし、全然想像がつかない。

 

「喧嘩なんかしないから大丈夫ですよ。それよりも流石にこの時間だと人増えてきましたね。」

 

「食堂が混む前に行こうか。言い忘れてたけど、比企谷くんは私の彼氏役だからしっかり演じてね!」

 

「はい?雪ノ下から許可取ってるんですか?」

 

「取ってないよ?雪乃ちゃんは嫉妬しちゃうだろうし。お義姉ちゃんと比企谷くん、2人だけの秘密ね♡」

 

「取っといてくださいよ……。俺から雪ノ下には言っとくので、後で雪ノ下に怒られといてください。」

 

「内緒にしといてよ!比企谷くんのイジワル〜!」

 

どうせ断っても無理やり彼氏役をやらされるんだろうし、拒否するだけ無駄だ。雪ノ下には陽乃さんに無理矢理やらされた事をめちゃくちゃ盛って報告しておこう。

 

「彼氏役って言っても何すればいいんですか?そもそも彼氏いなかったんですね。」

 

「おや?私に彼氏いないのが意外かな?」

 

「告白はめちゃくちゃされてそうなので、ダミー用の彼氏くらいは用意してる物だと思ってました。」

 

陽乃さんは見た目は美人でスタイルが良く、中身は文武両道。性格はお茶目で親しみやすい。これでモテないという方が無理がある。しかし、陽乃さんはそんな自分を好きになる相手を好きになるような人じゃない。かといって自分に興味がない人を好きになるわけでもないだろう。難儀な人である。

 

「酷いな〜。でも割と正解かな。部活の先輩にその役をお願いしてたんだけど、もうすぐ卒業しちゃうからね。比企谷くんにはその跡を継いで欲しいんだよ。」

 

「それなら部活の他の人に頼めばよくないですか?」

 

「校内だと揉め事に巻き込んじゃいそうだから悩んでたんだけど、ちょうど良い彼氏役がいたからさ♡」

 

「俺も揉め事は嫌です。言っときますけど雪ノ下に迷惑掛かるかもしれないような事はやりませんよ。」

 

「迷惑が掛かるのは比企谷くんだけだから安心していいよ、今日はこんな可愛い彼女がいることを楽しんでね♡八幡君って呼んじゃおっかな〜♡」

 

「まあ雪ノ下に迷惑掛からないならお任せしますよ。」

 

これは本当に疲れる1日になりそうだ。陽乃さんに腕を取られて胸を押しつけられるが、今日の大変さを考えると陽乃さんの大きな胸の柔らかさなんて全然楽しめそうにない。全然。谷間に腕が挟まって腕全体に柔らかさが伝わってなんかいないんだ。全然。あ、やっぱ無理だ。雪ノ下助けて!

 

 

 

 

 

 

「ほら比企谷くん、お口開けて〜♡」

 

「値段の割に美味しいですね。陽乃さんもどうぞ。」

 

「ん〜♡比企谷くんに食べさせて貰うと100倍美味し〜♡」

 

彼氏役を周知するということで、食堂のど真ん中で陽乃さんと朝ごはんのデザートを食べさせ合いっこさせている。当然めちゃくちゃ目立つ。こんな風に堂々と人前でイチャイチャするなんて正気の沙汰じゃない。頭がおかしいとしか思えないな。

 

「陽乃。そいつは陽乃の彼氏なのか?なんで俺じゃないんだよ。それにそんなデレデレして陽乃らしくないぞ。」

 

暫くイチャイチャしていると、葉山が成長したようなイケメンが話しかけてきた。もしかしたら陽乃さんは大学でこんな風にデレデレキャラをしている可能性も考えていたが、どうやら違ったようだ。

 

「最後の葡萄も比企谷くんにあげちゃう♡比企谷くん葡萄好きだもんね♡ほら早く口開けないと落ちちゃうぞ〜♡」

 

陽乃さんは男をガン無視である。葡萄が好きなんて言ったことないし、そこまで好きじゃない。口にグイグイと葡萄を押し付けられてるので仕方なく食べるけどさ。

 

「………」

 

「………(モグモグ)」

 

「………」

 

俺が葡萄を食べ終わるのを待っているのだろうか、話しかけてきた筈の男も黙ってる。え?俺が何か話す感じ?そっちから絡んできたんだから話を続けてくれていいのに。葡萄を飲み込んだが、やはり相手から話す素振りがない。めんどくさいな。

 

「何か用か?」

 

「君は陽乃の彼氏なんだよな?」

 

一触即発の雰囲気になり、朝から喧嘩が始まるんじゃないかと野次馬が増えてきた。人が増えてから作戦開始と言われていたが、まあこんなもんでいいだろう。

 

「見ての通りだよ。用はそれだけか?」

 

「君は1年生か?どうやって陽乃と付き合ったんだ?君の事は初めてみるが、もしかして他大学か?どこだ?」

 

嘘の設定は陽乃さんから貰っている。俺は他大学の一年生で、陽乃さんをナンパして見事に射止めたという設定らしい。しかし、今回は使う必要は無さそうだな。

 

「俺の事なんか知ってどうするんだよ。アンタが知りたいのは雪ノ下陽乃の事だろ?」

 

「君が陽乃の彼氏かどうかで話が変わるからだ。」

 

「なら俺は雪ノ下陽乃の彼氏じゃない。これで俺は無関係だ。雪ノ下陽乃と好きに話して貰って構わないぞ。」

 

どうぞどうぞと身振り手振りで陽乃さんと話せばいいだろうと煽る。実際、俺は彼氏じゃないから無関係だしな。

 

「彼氏だろう。嘘をつくな。」

 

「俺が違うと言ってるし、そこの陽乃さんも否定してない。当事者2人が違うと言ってるのに嘘なわけないだろ。」

 

陽乃さんはいつもの顔でニコニコしてケーキ食べてる。

人にこんなの押し付けておいて随分と楽しそうだ。

 

「だったらさっきのは何だ。あんな陽乃を俺は見た事ないぞ。」

 

「さっきの?なんか変だったか?」

 

「当たり前だろ。あんなのは陽乃じゃない。」

 

「そうなのか?だったらそこにいるのは雪ノ下陽乃じゃなくて偽物なんだろうな。こんな所で油を売ってないで本物の雪ノ下陽乃を探してきたらどうだ?」

 

勝手に俺の残りのケーキも食ってる陽乃さんは偽物だったんだな。よし、俺も帰ろう。本物の陽乃さんが家で待ってるかもしれない。

 

「ふざけてるのか?俺は真面目に話してるんだ。」

 

「真面目な話だろ。俺は偽物の雪ノ下陽乃をデレデレさせまくるだけだから気にしないでいいぞ。」

 

「……ちっ。陽乃をデレデレさせないでくれないか?」

 

えぇ…こんな分かりやすい誘導にも乗っちゃうのかよ。こんなの俺じゃなくてもどうにでもできただろうに。今日はこんなのを沢山相手にしなきゃいけないのかと思うと頭が痛くなってくるな。

 

「アンタは雪ノ下陽乃が好きなんだろ?

好きな女の意外な一面が見れたんだから喜ぶべきだろ。

それとも、

雪ノ下陽乃がデレデレしてたらマズイ理由でもあるのか?」

 

「だから、デレデレするのは陽乃じゃないって言ってるだろ」

 

「話が戻ってるぞ。馬鹿じゃないなら俺の言ってる意味わかるよな?同じ問答を繰り返すつもりはないぞ。」

 

「それは………その……」

 

「難しい話じゃないだろ。思ってる事を言うだけだ。なんでデレデレしてたらダメなんだ?答えてくれ。」

 

「…………」

 

少し踏み込んだだけで無言になっちゃうのか。黙ってるようなら俺が全部言ってやるよ。俺は雪ノ下母みたいに優しくないんでな。

 

「アンタが好きなのは雪ノ下陽乃ってブランドだろ?

だからブランドイメージと違う事をさせたくないんだ。

 

だけど、雪ノ下陽乃はブランド品なんかじゃない。

 

1人の人間だ。」

 

目の前の男は陽乃さんを幸せにしたいなんて思っていないんだろう。陽乃さんを使って自分が幸せになりたいだけだ。だから、こんな風に陽乃さんを平気で物扱いする。最低な人間だ。

 

「陽乃さんは俺の大事な人なんだ。

 

お願いだから、

 

俺の大事な人をこれ以上侮辱しないでくれ。」

 

 

 

 

騒がしかった食堂はいつの間にか静まり返っていて、

俺の声だけが食堂に響いていた。

 

目の前の男は陽乃さんに謝りもせず、

足早に逃げる様に立ち去っていった。

 

 

 

なんで好きになった相手を最後に悲しませる様な事するんだ。

 

謝るだけだろ。

 

そんなにプライドが大事か?

 

陽乃さんがニコニコと笑ってるから大丈夫だとでも思ってるのか?

 

なんで陽乃さんを不幸にさせるんだ。

お願いだから、陽乃さんを不幸にさせないでくれよ。

 

 

俺は陽乃さんが嫌いだ。

俺をいつも揶揄ってくるし、

無理やり色々なところに連れ回すし、

俺の言うことなんか何も聞いてくれない。

 

俺は陽乃さんのことが嫌いだ。

 

だけど、

陽乃さんは雪ノ下が尊敬してる大事な人なんだ。

 

俺は雪ノ下に幸せになって欲しい。雪ノ下を幸せにするには、雪ノ下の大事な人にも幸せになってもらわなきゃいけないんだ。

 

陽乃さんは、幸せになって欲しい、俺の大事な人なんだよ。

次に読みたい話はどれですか?

  • 雪乃の独白(雪乃視点で文化祭以降を回想)
  • 葉山の独白(八幡と友達関係になった話)
  • 男子会と女子会のワチャワチャ話
  • 平塚先生の彼氏作りをお手伝いする話
  • 女たらし八幡の浮気疑惑裁判
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