今日も今日とて生徒会に出勤だ。
そろそろプロムの準備を始めなきゃいけないし、忙しくなりそうで嫌だなぁ〜。今からでもプロムをやめるように一色に言ってみよっかな〜。などと色々考えながら生徒会室に入ると、雪ノ下が不思議そうな顔でこちらを見てきた。
「比企谷くん、今日は男子会があるって言ってなかった?」
「………忘れてた。戻るのめんどくさいしここでやってもいいか?」
「構わないわよ。」
「雪ノ下先輩、男子会ってなんですか?」
「比企谷くんと葉山くんと材木座くんと戸塚さんの集まりよ。定期的に集まって色々話してるらしいわ。」
「私の生徒会室を雑談場所に使わないで下さいよ。あれ?先輩〜?男子会なのに私達いても大丈夫なんですか?」
「聞かれて困るような事を話すわけでもないしな。メール一斉送信完了!さてと、準備しておくか。」
せっせと椅子と机を用意して会合の場所作りをする。気分は鳥の巣作りである。まあ4人分だからそれほど手間は掛からないんだけどな。
「ヒッキーそんなことしてたんだ〜。隼人くんと彩ちゃんって部活で忙しいのによく集まれるね」
「あの2人にもメリットある話をするからな。部費の増額とか使用許可とか、副生徒会長の権限で色々やれるんだよ。2人にとっては部長の仕事の一環って名目だ。」
「なんだかんだ先輩も職権濫用してますよね。」
10分ほど経ってメンバーが集まったので会議を始めるとするか。女人禁制の男子会だ。周りの女子生徒会メンバーはジャガイモとでも思っておこう。
「2人とも部活はどんな感じなんだ?」
「サッカー部は問題ないな。3年が引退して少し気が緩む時期だし、練習試合を組もうと思ってる。相手が決まったらまた相談させてくれ。」
「追加の遠征費は要相談だな。プロムで予算がちょっと怪しいから今回は相手校を呼ぶ形にできるか?以前にこっちが出向いた相手校とかなら交渉し易いだろ。」
「それなら今回は相手校を呼べる基準で選ぶことにしておこうか。少し手間取りそうだから、総武のグラウンドの許可取りは任せていいか?整備含めてできれば一日全面使いたい。」
「その辺は問題ないな。サッカー部が遠征行ってる時に全面使わせた恩は念押ししてある。日程を言ってくれればこっちで調整しておくから安心しろ。」
「助かるよ。もし必要なら俺も顔は出すから言ってくれ。」
「必要無い。顔出す暇あるならボールでも蹴ってろ。戸塚はどうだ?」
「僕の所は大丈夫かな。今の所は部費も結構余ってるし。」
「部費は使い切ってくれよ。余ってると来期の予算で減額対象にされかねん。出来ればサッカー部みたいに足りないくらいのアピールが欲しいな。」
「そっか……なら贅沢にガットの張り替えとかしちゃおうかな。やっぱりガットの張りが新しいとやる気出るからさ。」
「ふむ、戸塚氏よ。それならば全員分張り替えるべきであろう。予算が足りぬなら我の奉仕部の余剰分から出せばよい。どうせ余っていても使い道がない予算なのだ。」
「ほんと?それはすごい助かる!あっ、でも、サッカー部に悪くないかな?遠征行きたいよね?」
「気にしないでいい。俺のところはただでさえ遠征で追加予算を貰ってるから、これ以上は他の部から嫉妬されるかもしれないからね。テニス部も結果出さなきゃいけないだろうし、今回は材木座君から貰っておくといい。お互い頑張ろう。」
「ありがと!お互い部長として頑張ろうね!八幡はプロムの準備はどう?僕たちが手伝うことありそう?」
「来週から海浜と打ち合わせ開始だ。校内調整も雪ノ下と進めてるが概ね問題ない。これから少し忙しくなるけど、手伝ってもらうほどではないな。なんかあったらお願いするかもしれんがとりあえず2人は部活に集中してていいぞ。」
戸塚も葉山も部長として順調だ。材木座の奉仕部はそもそも裏金だからバレたらマズイ金だし、テニス部の為と称して使い切るのが無難だろう。あーだこーだと葉山と戸塚の部活方針に茶々を入れていると、一色が身を屈めながら近付いてきた。一色じゃなくてジャガイモ1号か。
「先輩先輩。思ってたよりマトモな話してますね。」
「当たり前だろ。何想像してたんだ。」
「なんか、エロ本の隠し場所の相談とか。」
「2人とも忙しいからそんな話してる暇は無いんだよ。」
「えー、聞いててつまんないです。恋愛話して下さいよ!」
「一色の暇つぶしの為の集まりじゃないんだぞ……」
来週からプロムの準備でそれなりに仕事は増えると言うのに自覚はあるんだろうか。いや、ないだろうな。どうせ玉縄と横文字使って遊ぶことしか考えてないはずだ。
「あはは。生徒会室を使わせて貰ってるのは確かだし、たまにはそういう話もしよっか。八幡は最近、雪ノ下さんとどうなの?」
戸塚は一色に気を遣って話題を本当に恋愛話に変えてしまったようだ。まぁたまにはいいか。俺も戸塚の恋愛事情とかめちゃくちゃ気になるし、これをキッカケに聞き出すのも悪くない。
「どうと言われても、そんなに変わらないな。強いて言うなら、雪ノ下が可愛過ぎることくらいか。日に日に可愛くなってないか?」
雪ノ下の可愛さは今はまだ合法だけど、来週くらいには違法になってるかもしれない。今のうちに愛でておかないとな。
「僕から見たら前とそんな変わらないと思うけどなぁ…」
「我もそう思うな。雪ノ下殿は我が初めて会った時から変わらず総武高校一の完璧美少女という印象だ。葉山氏は雪ノ下殿と旧知の仲だと聞いてるが、どう見える?」
「幼馴染の俺から見ても材木座君と同意見だ。流石に子供の頃と比べる気はないが、少なくとも高校時代は変わらず完璧だったんじゃないかな。」
雪ノ下が完璧か。俺も前まではそう思い込んでたから人の事は言えんが訂正くらいはしておくか。
「雪ノ下は結構抜けてるとこあるし完璧ではないな。出会った当初なんか行き当たりばったりな事多かったし、それを力技で上手く対処してたからなぁ、懐かしい。」
「そうなんだ。僕からしたら失敗してる雪ノ下さんってあんまり想像付かないけど……」
「俺はずっと雪ノ下の横にいたからな。雪ノ下のやることなす事見てると色々見えてくるもんだ。」
「つまり雪ノ下殿は完璧ではないということか。彼氏故の見え方かもしれんな。目から鱗である。」
「ん?いや?雪ノ下は完璧だぞ?」
「一瞬で矛盾しとるではないか。」
「そういうことじゃない。雪ノ下だけなら完璧じゃない。俺がいるから雪ノ下は完璧なんだよ。」
「俺がいるから、か。比企谷にしては珍しい言い方だな。いつもの自虐はどうしたんだ?」
「ふだん自虐的なのは認めるが、雪ノ下に関しては自虐的になるつもりはない。変わったんだよ。俺も雪ノ下もな。」
「確かに比企谷は変わったが雪ノ下さんもか?変わったと言う割には関係は変わってないように見えるな。」
「お互い変わったけど、それでもお互いを好きなの変わってない。俺は昔の雪ノ下も好きだし、今の雪ノ下も好きだし、これから変わっていく雪ノ下も好きだからな。雪ノ下も同じ気持ちだ。」
「……ふむ。八幡よ。怒らず聞いて欲しいが、どう変わるか分からんのに好きになれると言えるのか?」
「雪ノ下がどう変わっても俺は雪ノ下を幸せにするし、俺がどう変わっても雪ノ下が幸せにしてくれる。幸せになると分かってるなら好きになるに決まってるだろ。これからどうやって雪ノ下を幸せにしてやろうか考えるだけで毎日楽しいんだよ。」
「なるほど。無粋な質問であったな。そこまでくるとお主達が結ばれるのは必然だったのだろうな。『何度ループしてやり直しても結ばれてしまうカップル』というネタで小説でも書いてみるか。」
「いや、それは無いな。やり直しなんかしたら同じ結果にはならないよ。間違いなく破綻する。」
「比企谷。それは違うだろ。君も雪ノ下さんも、2人ならもっと良い結末に進める筈だ。」
「葉山は俺と雪ノ下を買い被り過ぎだ。俺も雪ノ下もお前が思うほど優秀じゃない。俺も雪ノ下も限界ギリギリでだったから成立したんだよ。どちらかが優秀過ぎてもダメだったんだ。俺が雪ノ下を救って、雪ノ下が俺を救ってくれたから、俺達は前に進めている。」
「……そうか。これが、比企谷にとって最高の結末ということか。見当違いな事を言って悪かったな。」
「いや、許さん。連帯責任だ。罰として雪ノ下が幸せになっていく様子をお前ら3人にはずっと見てもらうことにしよう。」
「あはは。葉山くんのせいで僕と材木座くんも巻き添えだね。」
「まったく、葉山氏には困った物であるな。むむ?雪ノ下殿、どうなされた?」
材木座が俺の後ろを見てたので振り返ると雪ノ下がいた。なんだろう。目が血走ってるし、少し呼吸も荒そうだ。生徒会入った時は普通だったけど、体調崩したのかな?
「比企谷くん。今日はもう帰りましょう。さっき小町さんには私のマンションに泊まると伝えておいたから今日はお泊まりよ。早く荷物を……いえ、めんどくさいわね。荷物は置いていきましょう。」
首根っこ掴まれて生徒会室から引き摺り出されてしまった。まだ男子会は途中だったし、戸塚の恋愛話を聞けてないんだけど!?というか荷物!せめて荷物くらい持って帰らせて!
雪ノ下雪乃は比企谷八幡を連れて生徒会室を後にした。
4人で始まった男子会は1人抜けて3人。
「ふむ。雪ノ下殿は我慢できなくなったと見える。」
司会進行していた八幡がいなくなっては今回は解散だろうな。八幡が居らずとも男子会を続けても良いが、どうせまた来週か再来週に集まるのだから話すならその時で良かろう。
「八幡が雪ノ下さんのことを他人にどう言ってるか聞いたのは初めてなのかもね。どうしよっか、解散する?」
戸塚氏も同意見のようだ。
うむ、解散だ!さらばだ諸君!
「俺として材木座君の恋愛話も興味あるな。姫菜は元々は俺のグループだったわけだし、奪ったのだから話すのが筋だろう?」
「葉山氏は八幡のせいで性格が悪くなっておるぞ。」
「でも僕も気になるかも。仲良くやれてる?」
「うむ、仲睦まじきことこの上なしだ!」
海老名殿はよく奉仕部に来てくれるのでありがたい。元々小説は1人で書いておったが、海老名殿はプロットの修正や肉付けをしてくれるので助かっておるのだ。
「付き合ったりはしないの?2人が話してる姿を見かけた時はカップルみたいに見えたけど。」
「あれは友達の延長である。オタクというのは距離感がバグっておるからな。」
「姫菜が俺のグループにいた頃は、材木座君ほど仲良くしてる感じはなかったけど。」
「我はその当時の海老名殿をよく知らんから何とも言えんな。仲は良くても付き合うとかは当分無さそうである。」
「もしかして既に告白して振られ済みとか?」
「単純に我も海老名殿も互いをよく知らんからだ。」
「知らない……?材木座君は姫菜とあれだけ話してるのにかい?」
「オタク話とかはしておる。ただ、お互いの話はしておらん。先程も話したが、葉山殿のグループにいた頃の話を我は聞いておらんし、我も海老名殿と出会う前の話はしておらん。趣味が合うから話が尽きんというだけなのだ。」
「趣味がバッチリ合っちゃうのも考えものなんだね。じゃぁ付き合いたいとかは考えてないの?」
「めちゃくちゃ付き合いたいでござる。」
「だったらお互いの話をすればいいだろう。何だったんださっきまでの話は。」
葉山氏にため息をつかれてしまった。
「我としては友達付き合いも楽しいのだ。八幡と雪ノ下殿ほどではないが、我と海老名殿も理解し合っている。我らはオタク友達として仲良くやっていきたいのだ。海老名殿も同じ気持ちなのである。」
海老名殿ともっとイチャイチャしたくないのかと言えば嘘になるが、海老名殿の顔を見れば分かる。海老名殿はまだまだ友達として我と仲良くしていきたいはずだ。
そもそもここは生徒会室だから、この会話は海老名殿にガッツリ聞かれている。馬鹿正直に公衆の面前で付き合いたいなど宣言するほど我は馬鹿では無い。
後は海老名殿が何かしらオチを付けてくれれば終わりであろうし、奉仕部に戻って小説の続きを書くとしよう。生徒会室の視線が海老名殿に集まり、海老名殿が口を開いた。
「いや、私はもう材木座君とオタク話するの飽きてきたし、普通の話したいかな。次オタク話したら怒るからね。」
「…………ふむ!!理解し合えてるな!!!」
「どこがだ??」「見事なすれ違いだね。」
どうしよう、全然違ったでござる。オタク話抜きで海老名殿と何を話せばよいのだ。まるで分からん。我を掴んでくる海老名殿の笑顔が怖い。
「さて、材木座君。奉仕部に戻ろっか。私とこれからたくさんお話しようね。」
「海老名殿。部長権限で奉仕部への立入は禁止でござる。」
「ござる?ちゃんと正しい日本語を使いなよ。真面目な話するんだからさ。できるよね?」
「ごめんなさい。真面目に話します。」
「よろしい。では行きましょうか。」
海老名姫菜は材木座義輝を連れて生徒会室を後にした。
4人で始まった男子会は更に1人抜けて2人。
「さてと、俺達も部活に戻るか。」
「葉山君は三浦さんとまだ付き合わないの?」
「………まだ、もう少しだけな。」
「僕はそろそろ大丈夫だと思うけど。」
「…………そう見えるか?」
「あんまり待たせ過ぎるのは可哀想だろうし、八幡を見習ってみたら?葉山君も素直にならなきゃ。」
「…………そうだな。優美子。これからサッカー部に戻るけど、一緒に来てくれないか?時間は取らせないから」
「…………いいん?あーしはまだ待てるけど。」
「俺が待てないんだよ。」
「そっか。なら行く。」
葉山隼人は三浦優美子を連れて生徒会室を後にした。
「私の生徒会室で立て続けにラブコメを展開して欲しくないんですけど。いつからここは乙女ゲームの聖地になったんですかね。」
「ヒッキーとゆきのんだけじゃなくて、みんな幸せそうだったね〜。いいなー羨ましい〜。」
「2人は好きな人はいないの?」
「生徒会長は学校が恋人です!」
「私はまだそういう人いないかなぁ〜」
「2人にも良い人見つかるといいね。」
「もうみんな居ないですしスイパラ行きましょー!女子会やりますよ女子会!」
「そうしよ!男子禁制の女子会!!たべまくろー!」
「2人とも元気だね。そういうことなら僕も今日は帰ろうかな。テニス部は今日は休みだし。」
「え?戸塚先輩も参加ですよ?」
「うん!彩ちゃんも参加してよー!」
「女子会なのに参加していいの?」
「え?女子会だからですよ?」
「え?男子が参加したら女子会じゃなくなるでしょ?」
「え??」「え???」