俺の成人式はボレアス家で盛大に行われた。
俺が10歳の時はボレアス家の中でひっそりやっていたが、今回は結構大々的にやってくれてロアの町に出ると、道行く人達にも祝ってもらえたくらいだ。
現在はサウロスがフィットア領領主でフィリップがロアの町長というわけで、俺にもどこかの町の町長になる話が出たが断っておいた。
魔術師としての仕事(大学)が残っているし、そもそも貴族付き合いは苦手だ。サウロスが引退したらその時はロアの町長になることになるので、その時までは自由にさせてもらえることになった。フィリップの政治絡みのゴタゴタには参加させられる事になりそうだが、それくらいならヨシとしよう。
今年の魔法大学での講義も残りわずか。
大半の魔術師の卵達は中級をしっかり使えるようになっている。色々な種族・年齢の者達に教えたことで、魔術指南書(上級)の執筆も順調だ。クリフの助力に感謝しかない。
ザノバの人形製作も、奴隷のジュリも無詠唱が使えるようになったので、ここから土人形作りは加速していくと思う。あとは練習あるのみだからな。
加えて、暇つぶしに探検をしていたらいきなり襲ってきた高性能な自動人形の解析もクリフと共に進んでいる。人形に魔法陣が組み込まれていて、かなり複雑だ。魔法陣の専門家であるナナホシが空中城塞から帰ってきたら手伝ってもらうとしよう。
アリエルはエリスと仲良くなったようで、たまにエリスはアリエルと学校にいる。貴族同士の繋がりが元々あったのかもしれないな。エリスだけでなく、たまにシルフィも学校で見かける。家にいても暇なのは分かるが、、、この大学のセキュリティ緩過ぎるだろ。
授業は順調。友人関係も順調。妻との関係も順調。
しかし困った事が起きてしまった。
アイシャの配下である獣人組が発情した。
獣人には発情期なるものがあるらしく、なんというか酷い。
獣人組はアイシャの配下なんだが、アイシャは俺のメイドなので、獣人の雌は群れのボスである俺に発情。特にリニアプルセナは酷かった。
「ボス〜。わたしらもボスのハーレムに加えて欲しいニャ。いっぱい子供産むニャ」
「そうなの。ボスは群れの長としてわたし達を孕ます義務があるの。使命なの。ファックなの」
アイシャの制止も聞かずにベタベタ擦り寄ってきて身体を触ってくるのだ。アイシャも最初は振り払ってくれたりしていたが、数が多いので手が回らない。
「ハーレム作る気は無いし、長になったつもりも無い!あーもう!近付くな!獣臭いんだよお前ら!!」
発情した獣の臭いはいつにも増して獣臭い。仕方ないので発情期が終わるまで獣人雌組は俺の土魔術で拘束・監禁することになった。
それで話は終わりかと思ったら、獣人雌組の長である俺に対する決闘状が山のように届いた。長じゃないって言ってるのに……。
ほとんどの挑戦者はザノバに処理してもらった。ザノバは普段は人形狂いだが、実際は神子(肉体強度マシマシのキン肉マン)なので、純粋な近接戦で勝てる者はそうそういない。
ただ、2人、面倒な挑戦者がいた。
・魔王バーディガーディ
前に俺が討伐した大蛇が魔界大帝キシリカキシリスの元仲間だったらしく、様子見しに来たのだとか。キシリカはバーディガーディのフィアンセらしい。仇討ちというわけではなく、単なる興味本位とのこと。腕6本あって、見た目は完全なアシュラマンである。金色の鎧とか着たら似合いそう。………なんか嫌な予感するけど気のせいか。
・剣神ガルファリオン
エリスの才能に興味増し増しなオッサン。エリスに久々に会いたくて訪ねてみると、決闘祭りがやってたから参加してみたとのこと。祭りじゃないです帰ってください。七代列強第六位。有名で強い人。
2人とも獣人の発情期に何の関係もないし、なんなら2人とも魔法は使えないらしい。マジで帰ってください。ここは魔法大学です。
説得するが頑として帰る気はないので、お互い命は取らない約束で決闘する事にした。
VS バーディガーディ
「ルーデウスよ!貴様、あの大蛇の鱗を破壊したと聞いたぞ!俄には信じられん!あれは人の手で破壊できる類の物では無かったはずだ!」
6本の腕を組みながら『フハハハハ!』と笑いながらバーディガーディは話しかけてくる。俺のイメージの魔王(ドラクエ)と違って明朗快活だ。
「そこにいる剣神もあの大蛇を輪切りにしていましたよ?俺は瀕死の蛇に魔術(超電磁砲)を撃ち込んだだけですよ」
「死んでいればそれ程でもない!魔力が通ってなければただ硬いだけだ!それでも普通は斬れる物ではないが………流石は剣神といったところだな!」
そう言えばエリスも斬っていたし、改めてエリスって凄いんだな。夫婦喧嘩はしないようにしておこう。
「………ふむ!大蛇を殺したというその魔術を我に撃ってみよ!どれほどの威力か味わってみたい!」
「それは構いませんが……その、大丈夫ですか?」
超電磁砲は人に向けて打ったことはない。空中城塞とバカでかい蛇に向けてしか打ったことがないので、正直言ってどうなるか分からない。
「構わん!我は不死魔王だからな!あの蛇とは違い死なん!」
そういう事なら問題ないか。射線に注意して、バーディガーディに向けて超電磁砲を放つ。
放て!心に刻んだ夢を未来さえ〜♪
不死魔王らしいので気楽に例の曲を思い出しながら撃ち込んだのだが、直撃したバーディガーディは爆散した。肉が焼け焦げた臭いもする。
え?これホントに生きてる??公開殺人に周囲がザワついている。俺はブタ箱行きだろうか、臭い飯は嫌だ!
少し経つと、子猫くらいの大きさになったバーディガーディが現れた。なにこれ可愛い。
「フハハハハ!我、大復活〜!」
吹っ飛んだ肉体を掻き集めるのに時間は必要だが、ちゃんと元の姿に復活するらしい。マジでビビった……。戦闘は続行不可能ということでこれにて終了。
VS 剣神ガルファリオン
「さっきの魔術面白ぇな。あんな速い魔術は初めて見たぞ。このまま続きをしようじゃねえか。いまの魔術あと一回くらいなら撃てるんだろ?俺にも撃ってこい、斬り落としてやるよ」
超電磁砲に興味深々なオッサンは自分にも撃ち込むように要求してきた。剣神流は速度が命。超電磁砲の速度を見て、斬ってみたくなったらしい。
剣神とマトモに決闘にして勝てる訳がない。ガルファリオンに当たらないギリギリに撃ち込むので、それを斬れれば勝ち。斬れ無ければ負け。ということになった。
ガルファリオンが構える。剣は魔剣。金色の刀身をしており、いかにも性能が高そうだ。この剣で斬ると魔力がレジストされるので斬ったかどうかは一目瞭然になるらしい。
慎重に間違って当ててしまわないようにしながら撃ち込む。轟音が鳴った。速すぎて詳細は分からなかったが、撃ち込んだ弾がガルファリオンの足元で真っ二つに割れて落ちているので、宣言通り斬ったのだろう。流石は七代列強第六位だ。
そしてガルファリオンの魔剣も真っ二つに折れていた。
俺のせいじゃない。いや、俺のせいなんだろうけど、斬ると言い出したのはガルファリオンなのだから責任はガルファリオンにある筈だ。弁償なんてしないぞ!
「今回は引き分けでいい……邪魔したな………」
決闘終了。明らかにトーンダウンした剣神様は折れた魔剣を回収し、観戦していたエリスと何やら話した後、エリスは剣神が腰に差していた予備の剣を強奪。剣神は丸腰で剣の聖地へ帰って行った。不憫過ぎる。
波乱の発情期が終わり、大学での魔術講義も無事終了。
そしてそして、めでたいことに、エリスとシルフィが同時に子供を身籠ったらしい!毎日してたのだから、そりゃそうだろうとは思うが、同時というので嬉しさも2倍だ!
2人にはお腹の子供のためにも安静にしてもらいたいのでフィットア領に帰る事にした。大学からはまた来年宜しくと言われてるが、妻と子供優先なので保留。
フィットア領に戻ると、ロキシー師匠から手紙が届いていた。
『拝啓、ルーデウス様
魔術指南書(上級)の校正をしたのでご確認ください。
わたしの個人的な感覚なのであまり当てにはせず、ペルギウス様やラノア魔法大学の教授にも相談してみてください。
そして、15歳の成人おめでとうございます。
5歳の頃に誕生日を祝ってあげたルーデウスが、もう成人ですか。あの時はわたしが家庭教師をしていましたが、今ではルーデウスが大学で講師をしているのですから、時が経つのは早いものです。
私もこちらでの仕事や用事が片付いてきたので、それが終わればフィットア領に行こうと思います。久しぶりに会うルーデウスがどのように成長されているかとても楽しみです。パウロ様・ゼニス様・リーリャ様にも宜しく伝えてください。
さて、皆さんに会うにあたり、私だけ成長していないというのは恥ずかしいので、フィットア領に戻る前に迷宮に挑戦してみようと思います。ベガリット大陸にある『転移の迷宮』です。以前ルーデウスが踏破した『混沌の迷宮』に比べれば格は落ちますが、危険度Sランクの立派な迷宮です。
これを踏破すれば私もルーデウスと同じSランク冒険者になれると思います。そしたら一緒に迷宮に潜ってみるのも面白いかもしれませんね。
ロキシーより
PS.フィットア領に行ったら何かお仕事を斡旋してくれると助かります。』