※この作品はR-18です。

転移事件が起きない世界   作:葵転青

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グレイラット家

扉を開けると、パウロ、ゼニス、リーリャ、ちっこいメイドがアイシャで、目をぱちくりさせてるのがノルンかな?が昼ごはんを食べてるところだった。直ぐにその内の1人が駆け寄ってきた。

 

「ルディ〜!!こんなにおっきくなって〜!ママより大きくなってるんじゃない!?」

「はい母様!この5年でだいぶ身長も伸びました!まだまだ伸びますよ!」

ゼニスは身体全身で喜びを表してくれている。こんなに喜ばれると、なんだか気恥ずかしいな。

 

「おぉ…ルディか………そうか、もう5年か……早いもんだな、そうかそうか」

何故かよそよそしい。パウロよ、もしかして忘れてたんじゃないか?しかし、美人な妻2人と娘2人に囲まれた幸せな生活してたんだ、その気持ちは分かる。

 

「ルーデウス様、お久しぶりです。お元気そうで何よりです、お荷物お持ちします」

「ありがとうございます、リーリャ」

リーリャは変わらないな。完璧メイドだ。ボレアス家のメイドは全員獣族だったから、メイドに獣耳や尻尾がない事に違和感を覚える俺がいる。煩悩退散!煩悩退散!

 

「お兄ちゃん!アイシャ・グレイラットです!お兄ちゃんのメイドです!!よろしくお願いします!!!」

雇った覚えのないメイドが腰にタックルをかましてきた。

リーリャとアイシャがアイコンタクトをしている。リーリャもアイシャも伸び伸び暮らせている証拠ってことかな。

 

「ノルン…………です。宜しくお願いします。」

おっかなびっくりって感じ。まぁ、身に覚えのない人からいきなり『兄です!』と言われても実感ないだろう。さっきから腰にくっついて頬擦りしてるアイシャが異常なのだ。リーリャさん?どんな教育したんですかね?

 

「まだ2人が赤ちゃんの時だったから覚えてないかもしれないけど、お兄ちゃんです。2人とも、これから仲良くしような」

「はい!!!」「……はい」

 

久しぶりの家族揃っての食事。話の種は尽きない。なにせ5年ぶりだ。話したい事も聞きたいことも山ほどあるのだ。

 

「それで、ルディ。これからどうするんだ?俺との約束を守ったんだ、学校に行くでもいい、他にしたい事が出来たならそれでもいい。なんでも叶えてやるぞ。金に限度はあるがな」

 

そう。元々はラノアの魔法大学に行くためのバイトだった。しかし、ペルギウスに魔術を教わり、公表こそしてないが、既に俺は水帝級魔術師レベルだ。なんなら大学側から特別講師として呼ばれる立場である。面倒そうだから言うつもりもないけど。ん?お金貯めてたのって俺が大学行くためじゃないな

 

「シルフィは?彼女にも5年ぶりに会いたいです!」

忘れていた訳じゃない。あの幼馴染を忘れる訳がない。2人で遊んだ記憶が今も鮮明に蘇る……おっと、思い出したらマズイ記憶が過ってしまった。あれは忘れると決めたんだ。

 

「ルディ、シルフィちゃんは治癒魔術を上級まで使えるようになってね、今はこの村でみんなから信頼されてるのよ。もう貴方が守れないくらい立派な子よ。」

ゼニスは確か治癒は中級だったか。シルフィも魔法大学に行く必要なさそうだな。それに、あの容姿だ。今は更に可愛いだろう。もしかして彼氏とかいるんだろうか。やばい、そんなのもし見ちゃったら心が壊れる!

 

というわけで、シルフィには明日会う事にした。心の準備は必要だ。馬車の旅は疲れたし、今日はもう寝よう。

 

「父様、旅で疲れたので今日はもう寝させていただきます。明日の朝、剣の稽古を宜しくお願いします。ギレーヌから父様に修行の成果を見てもらうように言われていますので」

「おぉ、そうか!久しぶりだな。よし、どれだけ強くなったか見てやろう。」

 

ギレーヌからパウロの弱点はいくつか聞いている。

魔術無しでも善戦くらいはできるはずだ。ギレーヌから剣神流中級の認可を貰えたのだ、負けてなるものか。

 

「お兄ちゃん!私の部屋使っていいよ!元の部屋からあんまり模様替えしてないから寝やすいと思う!」

どうやら元俺の部屋はちびっこメイドの部屋になってるようだ。相変わらず腰にタックルかましたまま器用に部屋に誘導される。このメイド、俺の重心を的確に押さえている。

 

アイシャは今は6歳だ。部屋はかなり綺麗に片付いているし、机には勉強の跡が見える。この歳でリーリャにメイドの基礎を叩き込まれたのだろうか、それともおままごとの延長なのか。

 

寝ていいと言われたから遠慮なくベッドに入るとお日様の匂いがした。直ぐ眠れそうだ。アイシャもベッドに入ってきて、腰ではなく胸に顔を埋めてきた。

 

「お兄ちゃん、私も寝ていいですか?初めて一緒に寝るのはお兄ちゃんがいいです。」

リーリャさん?娘に変な事教えてないですよね?

無論、俺の息子も反応なんてしない。守るべき妹だ。

 

「もちろんです。一緒に寝ましょう。」

5年ぶりの家族の再会だ。楽しかった。明日は村の人達にも挨拶して回ろう。うん、楽しみだ。

 

ここ最近では、1番ゆっくり眠れた日だった。

 

 

 

 

朝起きると、ノルンも横になって一緒に眠っていた。2人とも俺の体を枕代わりにしている。ノルンには避けられてると思ったが、距離感が分からなかっただけなのかな。なんにせよ、ゆっくり仲良くなろう。

 

二度寝をして起きたら2人ともいなくなっていた。起こしてよ!!お兄ちゃんは寂しいよ!!

 

「ルディー!起きたかー?いつまで寝てんだー?」

パウロが庭から話しかけてくる。そう言えば稽古するんだった。軽く着替えて庭に出ると、アイシャとノルンは既に座って待っており、特等席で見学するようだ。ノルンはパパとお兄ちゃん頑張れって応援してくれている。アイシャはお兄ちゃん頑張れとしか言ってない。哀れパウロ。1日で娘を奪われるとは。

 

稽古の結果は惨敗。流石は上級を納めてるだけある、流石に剣術じゃ勝てないな。ノルンはパパ凄いって言って改めて尊敬してるようだ。アイシャはパパが油断してるから今なら剣投げれば勝てる!とか言ってる。将来が怖いよ。

 

「よし、ルディ、次は本番だ。魔術を使ってもいいぞ。少しは魔術も鍛えたんだろ?少しは俺を驚かせてみろ」

「いいんですか?僕が勝っちゃうと父親の威厳が無くなっちゃいますよ?魔術ありなら負ける気がしません」

「ほぉ?やけに自信あるな。言っとくが、この間合いで魔術師が本気の剣士に勝てると思うなよ」

 

次の瞬間、パウロが消えた。

 

早い。目で追うのがやっとだ。本気のパウロがこれ程とは。さっきまでの剣の打ち合いは手加減してくれていたのだろう。この間合いで詠唱など間に合う訳がない。だけど、無詠唱ならギリギリ届く。

 

次の瞬間、パウロは特大の水の塊の中にいた。構わず水中で剣を振ろうと振りかぶる。上級ともなると水牢くらいは剣技で脱出できるのはギレーヌと確認済みだ。俺は水牢の中で水流を作り、パウロの剣を弾き飛ばした。

パウロは負けたと言わんばかりに水面に顔を出そうとする。俺は水流でパウロを押し戻す。何度か繰り返して遊んでいると本気で苦しそうだから辞めてあげた。水面から顔を出したパウロは凄い苦しそうだ。

 

「こらルディー!殺す気か!!剣士が剣を離したら負けの合図だろうが!!」

「父様、北神流は剣を投げると聞きますよ」

「北神流はいいんだよ!あんなのは剣士じゃねぇ!」

 

酷い言われようだな北神流。

 

「あーくそ、にしても凄いなルディ。これじゃ剣士は誰も勝てんぞ。ギレーヌには勝てたのか?」

「いえ、ギレーヌは剣の師匠なので魔術で攻撃なんて絶対しません。」

「もしかしてまだお前を騙したこと怒ってるのか?あれはお前の為を思ってだな……」

なにやらパウロが勘違いしているが、怒ってはいない。ボレアス家に行ったことは俺のいい思い出だ。パウロに魔術を使っているのは、俺なりの敬意なのだ。

 

「うぉぉぉおおおお!?」

 

いまだに水牢から出ていなかったので、水流を操作してウォータースライダーのごとく、パウロを縦横無尽に移動させる。水量も思うがままなので、パウロを錐揉みしながら飛び上がったりさせて、水と一緒に地面に放り出した。よし、これで気が晴れた。

 

「やっぱりお前、怒ってるだろ……」

「これで許してあげますよ。僕も大人になりましたから。」

 

手を差し伸べてパウロを起き上がらせる。

横を見ると、アイシャとノルンが人型をした水の化物と戦っていた。善戦虚しく、アイシャとノルンは水の化物に捕まり、洗濯機のような水流にグルグル回されて、キャーキャーと楽しんでいる。

 

「ルディ、前は水聖級っていってたが、今もか?ロキシーちゃんが当時水聖級って考えると、今のお前が同じとは思えないが」

「魔術師は級に応じた魔術が使えて、それを保証してくれる人がいて、初めてその級を名乗れるんですよ。僕の魔術の師匠はロキシー師匠だけです。師匠以外から保証される級なんて、僕には必要ありません」

「そうか……そうだな。ロキシーちゃん、元気にしてるかな」

「元気にしてますよ、師匠はどこにいても、大丈夫です」

 

よし、手紙を書こう。もしかしたらこっちに来てくれるかもしれないし。

 

 

ーーー補足ーーー

ゼニスとリーリャは原作同様に見守り隊なので、ルディとの絡みは今後も最小限です。アイシャはリーリャにルディの素晴らしさを胎教の段階で刷り込まれており、まだ御神体の事はバレていません。パウロはボレアス家からルディについて色々言われてるので、後ろめたさで少し腰が引けてます。ノルンはパパっ娘です。

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