sideボレアス家
ルーデウスが去った後のボレアス家。
1人の家庭教師がいなくなっただけ。
前と何も変わらない毎日………にはならなかった。
最初に困ったのはギレーヌだ。
剣の修行が出来ない。
エリスは聖級の実力になった。
私は王級とはいえ、立ち会えば無傷とはいかない。
ルーデウスの聖級治癒術は素晴らしいもので、四肢が飛ぼうが胴体が切られようが、即死しなければ治してくれていた。おかげでエリスの修行は捗ったが、こうしてズルのツケが回ってきた。決して賢くない頭を使い、ギレーヌは稽古の方法を考えなければいけなくなった。
次に困ったのが、料理人達だ。
ルーデウスは頼めば何でもしてくれた。
綺麗な水を無限に出してくれる。バーナーのような高火力の火入れもしてくれる。熱湯も出してくれるし、乾燥や脱水だってやれるのだ。
屋敷仕えの料理人として一度上がった料理の質を落とすわけにはいかない。
そして、何より困ったのが女性陣だ。
ルーデウスはお湯を無限に出せて、消せる。お風呂が入り放題だったのに、これからはそんな贅沢は出来なくなる。生活レベルがガックリと下がるのだ。
ルーデウスの有り難みをみな、ひしひしと感じていた。
ルーデウスが居候してた部屋にエリスはたまに訪れている。特に何かをするために来ているわけではない。
「………待ってなさいよ、ルーデウス」
ここに来ると、少しだけ気が引き締まる。
side空中城塞
私の名前は七星静香。転移者だ。
最近は転移の魔法陣の勉強ばかりしており、休憩時間は外を眺めている事が多い。空中城塞は荘厳で素晴らしい城だが、娯楽のような物は少ない。
少し前までは、ルーデウスが城に現れて、土魔術で謎のオブジェクトを作ったり、彼が再現した日本のボードゲームやカードゲームで遊んだりした物だが、最近はめっきり顔を見ない。ペルギウスにとうとう出禁でも喰らったのだろうか。
そういえば、家庭教師に期限があって、終われば実家に帰ると言っていたのを思い出した。ペルギウスに伝えると、『そうか』と言いつつ、件の村に空中城塞を移動させていた。ペルギウスも新しい物好きな人なので、なんだかんだルーデウスの事が好きなんだろう。
『お、ラピュタじゃん。バルスww』久々に見かけたラピュタに、テンション上がったルーデウスの超電磁砲の威力は凄まじく、空中城塞の防御を貫き城の一部が欠けていた。普段から怒ったような顔のペルギウスの顔が般若のようになり、流石のルーデウスも土下座をしていた。
午後、ルーデウスから炭酸を貰った。風魔術で空気を圧縮し、土魔術で強化した入れ物に空気を押し込んで無理やり作ったらしい。炭酸はそこまで強くなかったが、懐かしい喉越しだった。ペルギウスも気に入ったようで、配下に作り方の研究を更にさせるつもりのようだ。
空中城塞は、今日も平和だ。
sideブエナ村の村民視点
村の駐在騎士パウロの息子。ルーデウス君が奉公から帰ってきた。
ルーデウス君は毎日シルフィエットちゃんとイチャイチャしている。
とはいえ遊んでるだけではなく、昔、村に居たロキシーという魔術師の弟子ということで、ロキシーと同じようにお金を払えば何でもしてくれる便利屋になっている。ロキシーの話題を出すと簡単に値切れてしまうチョロい男だ。
それから変わったことといえば、彼が来てから数ヶ月後。御伽話と思っていた空中城塞が、村の近くから見えるようになった。最初は皆興奮していたが、最近は10日に一回くらい見るようになったので、もう誰も気に留めていない。
ルーデウス君が引きずられながら謎の人物に連行されて行くのも空中城塞が見えた日の恒例行事になっている。何をしているんだろうか。