空中城塞は相変わらず殺風景だ。俺が来ないと物が増えないんだよなここ。今日はもののけ姫シリーズでコダマを作っておいた。光らせるのってどうやればいいんだろうか。
久々にペルギウスと謁見した。
お土産の蛇の眼と牙を渡したら、牙は喜んでいた。色々と使い道があるそうだ。眼は邪眼(蛇眼)扱いとなり、いつか誰かの交渉材料として使えるかも、とか言っていた。
ペルギウスにアイシャを紹介すると、アイシャの事を大層気に入ったようで、2人でティータイムをするらしい。『この席は2人席だからお前の席は無い。悪いなルーデウス』とスネ夫みたいな事を言われたので、久しぶりにナナホシに愚痴を聞いてもらう事にしよう。
「ナナホシ〜?ナナホシさんや〜?どこ〜?」
いつもならその辺にいる引きこもりが今日はどこにもいない。居そうな場所を見て回ったが姿がない。ナナホシの部屋を見ると、相変わらず絶妙に汚い。居候なんだから綺麗にしとけよな。ふと、部屋の隅にナナホシが転移してきた時の制服が目に入った。
あの制服をシルフィに着せたら………………
よし、借りよう。
いつもナナホシには色々作ってあげていたし、これで貸し借り無しだ。シルフィと制服プレイ楽しんだら返すよ。ありがとうな、ナナホシ。制服を持ち上げると、白いブラジャーがパサリと落ちた。チラッ(タグ確認)。大きさは予想通りだった。
ブエナ村は今日も平和だ。
ノルンは冒険者への憧れを胸に抱き、剣術を父から習い始めた。午前に父から剣術を教わり、午後にシルフィor俺から魔術を教わるハードスケジュールだ。まぁ剣術といっても最初は体力作りだけどね。
魔術指南書(初級)はロキシーからの承認も貰えたので出版開始。迷宮踏破の報酬があるので、ワンコインで売ることにした。ご飯一食我慢すれば買えるという価格破壊だ。
売れば売るほど赤字なので流通量は調整する必要があるが、売れ行きは好調らしい。ロキシーの教えが世界に広まっていると思うと感慨深い。
時折り、大口注文が入るのだが、転売目的な気がしたので拒否している。転売ダメ、絶対。欲しいなら正規ルートで手に入れなさい。
魔術指南書(中級)はアイシャ(本の構成調整)とシルフィ(先生役)とエリス(生徒役)に手伝って貰いながら製作していた。中級になると才能の有無で出来る出来ないが顕著になってくる。
実際エリスは水風の中級がうまくできなかった。出来ない人の為の本なので、ここをしっかり体系化して、なんとか中級が出来るようになれる本を作ることができた。
エリスも攻撃4種の中級が出来るようになったので、実績解除だ。アイシャは天才だからすぐ中級を覚えていた為、天狗にならないように出来ない人の為の本作りの手伝いをした事はいい経験になっただろう。
魔術指南書(初級)の出版から半年後。魔術指南書(中級)を出版開始。
ロキシーやペルギウスから、中級は人を殺せる威力だから注意が必要と言われていたので、仕方なく本の値段は吊り上げた。巷で出回る魔術書の半分くらいで設定し、魔術指南書の中に警告文や、魔術師としての心得みたいな欄を追加している。
中級の本は売れば売るほど利益が出る。初級は今も売れてるベストセラーなので、初級と中級の売上でプラマイゼロってところだ。中級本に対しても相変わらず大口注文が来てたので拒否した。転売ヤー死すべし。
魔術指南書(上級)はシルフィと共に現在執筆中。ノルンに上級を教えながら、内容にフィードバックさせている。
「お兄ちゃん、上級の本は無理だと思うよ?」
「アイシャもそう思うか?俺も書いてて自信無いんだよな……今のままじゃノルンの教育日誌になってるし」
「やっぱり上級からは治癒と解毒のスクロール販売だけに絞るべきだよ、ペルギウス様も協力してくれるし」
「スクロールの大量生産も案はあるんだけど、先にそれやっちゃうと本が売れなくなっちゃうしなあ」
「スクロール販売だけでもお兄ちゃんの名声は上がると思うけどなぁー便利だし」
アイシャは迷宮から戻ってきて以降、ほとんど毎日ずっと俺にベッタリとくっついている。迷宮の難易度を見た事で、俺がいつ死んでもおかしく無いと感じ、甘えれる時に甘えておきたいのだとか。今もアイシャは俺の膝枕を楽しみながら、今後の展開について真面目な話をしている
フィリップに呼び出された俺はアイシャと共にボレアス家に向かった。とうとう結婚の話を纏めるのだろうか。
応接間に向かわされると、偉そうな魔術師っぽい人が居た。
「初めまして。私はラノア魔法大学校長のゲオルグです。隣にいるのは教頭のジーナスです。本日はお時間作って頂きありがとうございます。」
「初めまして。ルーデウス・ボレアス・グレイラットです。こちらこそ、お待ちさせてしまい申し訳ありません。」
特待生の招待に関しては以下の実績
・水聖級魔術師&武術大会準優勝&ボレアス家婿
・上記に加えて、Sランク冒険者&迷宮踏破
に対して合計2回の招待を貰っていたが、2回ともお断りしている。もしかして、断られたことに腹を立てて乗り込んできたの?
「本日はルーデウス様にお願いしたい事があり、直接お伺いさせていただきました。確認なのですが、こちらの魔術指南書(初級)(中級)はルーデウス様の著書で間違いないでしょうか。」
「はい。魔法大学の方に見せるには拙い物かと思いますが、この本が何か問題ございましたか?」
やべぇ、間違ったこと書いちゃってたかな。ロキシーもペルギウスも問題無いって言ってたから信じたけど……いや、ロキシーが合ってると言ったらそれが正しいんだ、間違ってるとしたらそれは世界の方が間違っている!
「やはりそうでしたか。ぜひこちら、正式に大学で参考書として使用させて頂きたく、そのお願いに来た次第です」
「そういう事でしたらご自由になさってください。元々は魔術を広める為に書いた物なので、広めてくれる分にはこちらからお願いしたいくらいです」
「ありがとうございます。それで、勝手なお願いで恐縮なのですが、流通している本を大学に優先していただく事は可能でしょうか。もちろん、代金はそちらの言い値で構いません。私どもも手は尽くしているのですが、初級・中級、共に現在は手に入りづらく、この本を入手した生徒としていない生徒で成績に大きく差が出てきてしまっています」
「それなら教科書として授業で使って貰って構いませんよ?親が子供に読んで聞かされるレベルまで掘り下げていますし、生徒のレベルに合わせて取捨選択なさってください」
「そこが問題なのです。我が校の教師はみな、自信と誇りがあります。ルーデウス様の本をそのまま読んで聞かせるだけなど、プライドが許さないからしないと言うのです。しかし、我が校の教師はみな、正直言いますと、この本以下の指導者しかおりません」
「それは………さぞかし大変でしょうね」
「はい。なので、『参考書』として全校生徒の手に渡らせたく考えています」
「私も売るのは構わないんですが、色々事情がありまして出版が滞っており……」
原料が足りないのだ。本の原料がある大陸の農場付近で魔王が暴れたらしく、原料畑が壊滅的被害。さらに魔王討伐のために冒険者が集まったせいで交通網が麻痺。入荷の目処が立っていない。
「例の魔王の件でしょう。大学でも紙不足になってますので厳しいかなと思っております。ですので、どうでしょうか、ルーデウス様に講師として我が校で教鞭を握って頂くというのは」
「教師ですか……」
上級本の出版に向けたサンプル集めにもなるし悪くは無いけど、エリスやシルフィと離れるの嫌なんだよなぁ
「報酬は言い値でお支払いします。お住まいもこちらでご用意させて頂きます。ルーデウスさまの奥方を2人ともご一緒なさって、是非ラノアにいらしてください」
「それなら悪くないですね。……あと、メイドを1人、追加しても良いでしょうか。身の回りの世話をして貰いたいので」
アイシャが後ろからグイグイと服を引っ張ってくる。分かってるからやめなさい、服が伸びるでしょうが!
「メイドでしたらこちらでご用意しますが?」
「メイドは不要です………いえ、やはりメイドは2名お願いします。詳しくはウチのメイドが取り仕切りますので、人員の手配だけお願いします」
アイシャが指文字で指示してくる。なぜ2名なのかわからないが、まぁアイシャが言うんだから2名必要なのだろう。
エリスは貴族の躾を無事クリアしていたので旅行の帯同を許された。ただし、ラノアで暴走したら強制送還である。迷宮踏破の際に剣神から剣を略奪し、ついでに剣王と名乗って言いと言われたららしい。ギレーヌとの模擬戦を観戦してみたが、剣速が速すぎて何も見えなかった。
シルフィにも確認したところ、OKを貰えた。こんな事もあろうかと、土魔術でブエナ村の土地区画整理を進めており、俺とシルフィが居なくても問題無いようにしているのだ。堤防作ったり道路舗装したり、シムシティとマイクラの知識を総動員した未来都市だ。
ノルンには魔術指南書(上級暫定版)を渡し、日記を付けながら練習を続けるように指示した。魔術を見てやれないのは申し訳ないが、1人で試行錯誤する時間というのも後々でノルンの力になると思うことにしよう。
馬車に揺られて十数日。
ラノア王国に着いた。フィットア領と違って色々な種族がいる。エリスもシルフィもアイシャも、もちろん俺も興味津々だ。
今回はラノア魔法大学が経費でお金を落としてくれるらしいので、よほど豪遊しない限りはお金の心配もない。
ブエナ村での食事も美味しいが、やはり違う土地の食事は良いものだ。ラノアの食事に舌鼓を打ちながら、シルフィは薬草関係を、エリスは武器関係に興味があるようだ。この様子なら2人がラノアで暇になる事はなさそうだ。
俺とアイシャは明日から出勤する魔法大学に向けて、色々と細々した物を買い揃える。
ちなみに、アイシャは大学でも俺に付いて回るらしい。表向きはメイドとして、実際は女の影をシャットアウトするためらしい。妻2人と来てるのにナンパなんてするわけないじゃないか。まったく……
とりあえず俺は他の教師と区別するため、特待生クラスの臨時講師として雇われることになった。定期的に魔術指南特別授業(初級)と(中級)を大講義室で行うんだとか。それ以外は暇だろうから、特待生と仲良くなると良いと言われた。どうやら特待生は俺と同じように才能に溢れた人達の集まりらしいので気が合うだろうと。どんな人がいるのか少しだけ楽しみだ。