「みなさん、初めまして。
私はルーデウス・ボレアス・グレイラットです。
立場上は講師になりますが、校長の計らいで特待生クラスにお邪魔させて頂きます。
私が行うのは初級と中級の講義なので、復習がてら興味がある方は是非参加してください」
特待生クラスが集まるホームルームが丁度あるということで自己紹介をした。
異世界転生して学校で自己紹介だなんて、まんまラノベの主人公ムーブである。
特待生クラスの人にも自己紹介をして貰った。
天才魔術師クリフさん。
魔術を上級まで使えるとのこと。
上級本製作のサンプルになりそうだ。
教師の質が悪いので困ってるんだとか。
シーローン王国の神子(?)ザノバさん。
力持ちだそう。喧嘩無敗の最強王子様だとか。
シーローン王国ってどっかで聞いたことあるけどどこだっけ。
獣人デドルディア族のリニアさん。
同じく獣人アドルディア族のプルセナさん。
なんか聞いたことある種族だけど、もしかしてギレーヌの親戚かな?
ボレアス家的には獣人はメイドとか使用人ってイメージだ。
以上である。人数が少なすぎる!
あと1人、サイレントさんって人が居るが、ホームムールには来ないらしい。
仕方ないから後で直接挨拶しにいこう。
「おい、お前、さっき中級教えるって言ったけど、上級は教えないのか?それとも使えないのか?」
クリフは口が悪そうだ。
こうやって天狗にならないように
ノルンには教えていかないといけないな。
「攻撃4種と治癒解毒なら聖級まで使えますが、教えることができるのは中級までですね。
上級は授業はまだまだ先になりそうです」
天才って事なら俺も天才だし、隣で興味なさげにしてるアイシャも天才だ。
シルフィも天才だし、ノルンは……努力の天才だ。
絶句した表情のクリフ。
よし、鼻を叩き折れたな。精進したまえ。
俺とクリフが話してると、ザノバと獣人コンビが一触即発していた。
喧嘩だ!やれ!やっちまえ!
「ザノバぁ、もっぺん言ってみるニャ」
「群れるだけの獣人なんて何匹居ても変わらない、と言ったのですよ」
「むっかぁ〜、もう許さニャいからな、オモテ出るニャ。
そのメガネ叩き割って水に沈めてやるニャ」
ラノア魔法大学、番長決定戦開幕。
タイマンかと思いきや、2対1で始まり、ザノバは敗北。
ザノバめっちゃ悔しそうにしてる。
ザノバは戦利品をリニアを受け渡『あっ、ちょっと!ストップ!』
それ、俺が作ったロキシー人形じゃないか!
なんでここに!!
「なんニャ。これは私の戦利品ニャ。正々堂々な決闘の末、勝ち取った獲物ニャ」
堂々としてるが2対1のどこが正々堂々だ
「それ、俺が作ったやつっぽいんだよ。
色々確認したいことあるし、できれば俺に譲って欲しいんだけど」
「嫌ニャ。欲しいなら力づくで奪ってみろニャ。講師って言ってるけど、中級しか教えれない雑魚には無理かニャ??」
煽られても苛々はしない。さっきの戦いを見る限り負ける要素がない。なんなら魔術無しの剣術だけで勝てるかもしれんし。ザノバは五体投地して『カミィ』と呻いてるがなにやってるんだ?
俺と獣人コンビで2回戦開始かと思われたが、アイシャが割って入ってきた。
「お兄ちゃんを雑魚呼ばわりは許せません、獣(ペット)の躾はメイドの仕事。お兄ちゃん、私が代わりにお仕置きします!」
アイシャが珍しく怒ってる。
ボレアス家メイド(仮)として獣人には思うところがあるのかもしれない。
アイシャちゃん杖持ってないけど大丈夫?
そういやザノバもリニアもプルセナも杖使ってないな。
ここ魔法大学だよね?世紀末じゃないよね?
「ニャハハ!ガキは引っ込んでろニャ。それともお前の兄貴はガキに守られなきゃいけないほど弱いのかニャ?妹より弱い兄なんて情けねーあにぬぐっー?
瞬間、リニアの足元が崩れてバランスが崩れる。
顔面がさがる。
闘気を纏ったアイシャの回し蹴りが炸裂する。
リニアは竹とんぼのようにグルグル回転しながら校舎の壁に叩きつけられた。
俺はリニアに近づき気絶した事を確認すると両手をクロスさせて審判を下す。
一発KOだ。カンカンカンカン。
顔もそうだが、全身が壁にぶつかり重症だ。
俺の治癒術使えば怪我は治るからいいけど………
アイシャが治癒されてるリニアの元に近づいてくる。
リニアは『にゃゃゃ許して欲しいにゃ下僕になるにゃ』とガクブルに震えて腹を捲り上げて見せている。あっ、これ服従のポーズだ。
アイシャがチラッとプルセナを見ると、プルセナは持ってた肉を落として『降参なの、リニアみたいになりたくないの』と震えていた。
アイシャはわずか一日で特待生を武力制圧した。
魔法大学なんだから、せめて魔法で勝てよ……。
騒ぎを聞きつけて人が集まってきた。
おや、なんか雰囲気が違うTHE・お嬢様的な人が出てきた。
「失礼します、何事でしょうか」
「こども同士のちょっとした喧嘩ですよ。
この学校の生徒はみんな元気があるようですね」
「あなた……もしかして、噂のルーデウス様でしょうか」
「噂が何か分かりませんが、ルーデウス・ボレアス・グレイラットです。失礼ですが、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「あっ、こちらこそ名乗らず申し訳ありません。
アリエル・アネモイ、アスラです。この学校の生徒会長を務めています」
生徒会長!やっぱあれかな、『生徒会長権限であなたは追放ですわ!』みたいな展開なのかと思ったらそんな事はなく、俺の功績をやたら褒めてくれるし、大講義室での講義を楽しみにしてくれてるらしい。優しい。なんか隣の男にめっちゃ睨まれてるけど何だろう。
「ルーク・ノトス・グレイラットだ。俺の父親は、君の父パウロさんの弟だ。ボレアス家に婿入りしたと聞いたが、ノトスを出てボレアスに行き、ずいぶん節操が無い家系なんだな」
あらやだ親戚さんでしたか。父も俺も節操ないのはその通りなので何も言えない。血筋です。
アリエルがルークを制している。まぁ、従兄弟同士でいがみ合う必要もないだろう。元々ボレアス家とノトス家は仲悪いとは聞いていたが、最近はペルギウスが出入りしてるせいでボレアス家は例外になっているらしい。ペルギウスがやってる事はヤクザと同じなのだ。サウロスはショバ代とか取られてないよな?
「妹さん、お強いのですね。お兄様であるあなたは言うまでもなくなのでしょうか?」
アイシャはリニアプルセナを正座させて何か言い聞かせているようだ。ザノバも正座してこちらをチラチラ見ている。視線がウザい。
「普段はもっと大人しいんですけどね、まだ8歳なので大目に見てあげてください。それと、私はそれほど強くありません。少し魔術が上手いだけです、それではまた機会があれば」
アリエルに別れを告げ、アイシャの元に戻る。
リニアとプルセナは俺の事をご主人様と呼んでるし、ザノバは俺の事を師匠と呼んでるし、なんじゃこりゃ。
講義1回目。
1000人くらい入るであろう大講義室に人がひしめき合っている。俺が話すのって基本的には本の内容と同じだから、本を開きながら聞く気満々な子たちは聞く意味ないと思うんだけどなあ。
講義は1年かけて前半初級、後半中級を行う。
記念すべき1回目、魔術とはなんぞや?詠唱とはなんぞや?という基礎の基礎の話をしていく。詠唱が違っても同じ効果の魔術が発動する原理など、本にも書いた事をつらつらと説明していく。アイシャと小芝居を交えつつ、できるだけ面白くなるように話したつもりだ。
3回目くらいで魔術を実際に使ってみようって段階になるんだが、この状態だとそれ無理だよな。同じ講義を午前午後で分けるとかしなきゃいかんかもしれん。
講義は問題らしい問題が起きる事なく終わった。
校長に聞いてみたが、講義はあんな感じでいいとの事で、人数に関しては事前に確認して調整してくれるらしい。
特待生の人達との関係も1日で変わってしまった。
クリフは俺の講義を聞き、考えを改めたようだ。素直な男は好感が持てる。上級本の製作にも積極的手伝ってくれるとの事で、彼とは仲良くなれる気がする。
ザノバは俺の人形製作に感銘を受けているらしく、師匠となった。師匠と呼ばれて思い出した、ロキシーが家庭教師をしていたのがシーローン王国だ。これも何かの縁、人形製作のコツを伝授してやろう。
リニアとプルセナは、アイシャの部下になったらしい。アイシャの事をボスと呼び、俺の事をご主人様と呼んでくる。変な誤解されそうだ……
そんなこんなで講義をしたり、クリフと情報交換したり、ザノバに人形製作を教えたり、アリエルと政治絡みのよく分からん話をしたりして、一カ月ほど経過した。
大学の生活も慣れてきたので、まだ会えていない残りの1人の特待生であるサイレントさんに会いに行くことにした。
食堂にはナナホシ焼きという唐揚げもどきがあり、サイレントさんはサイレント・セブンスターという本名らしく、大学の中でも飛び抜けて謎の人物なんだとか。気になるなー(棒読み)
サイレントは研究棟の3階の最奥の部屋を貸し切ってずっと引き篭もっているそうなので、強襲した。
カチコミじゃぁ!!
一丁前に鍵が掛かってる。無駄な抵抗だ。
土魔術で開錠してアイシャとともに突入した。
「ちょっと!!!誰よ!!……ルーデウス?」
「その声…………その顔………もしかして、サイレントセブンスターはナナホシだったのか!?!?」
「演技臭いわね。特待生クラスに来てたんだから知ってたでしょ。もっと早く来なさいよ」
やはりナナホシだったか。真実はいつも一つ!
「こっちにも色々事情があったんだよ。最初1000人ぐらいだった生徒が倍くらいになって授業数2倍だよ?過労死しちゃうよ」
「えらく人気みたいじゃない。面白いって評判よこのまま教師にでもなるの?」
「いや、一年契約だよ。来年にはオサラバの予定。ナナホシは何してるんだ?ペルギウスに追い出されたの?」
「私は転移魔法陣の研究よ。色々とこっちの方が都合が良いから、ペルギウスに頼んで特待生としてねじ込んでもらったの」
なるほど、空中城塞にいないと思ったらこっちに居たのか。
おや?アイシャが何か言いたげだ。どうした?
「お兄ちゃん、下着姿でずっと話してるこの人誰?変態?」
「そう、変態だよ。だから見ちゃいけません」
「鍵掛けてたのに突破されてそのまま会話を続けられただけよ。私は被害者だわ」
「やれやれ、ナナホシさんは言い訳ばかりだな」
ナナホシがそそくさとラノア魔法大学の制服に着替える。
ナナホシに興奮しないのは何でだろうか。
「それで、その転移魔法陣は上手くいってるのか?」
「全然ダメね。普通の転移はできるけれど、異世界に繋げようと思うと出力が足りないわ。ルーデウス、これ触ってみて」
「おっ、なんか魔力吸われた。鳥の羽?」
「鳥の羽よ。いちおう異世界の物の筈だけど、確証できる類のものではないわね。」
その後もせっせと魔法陣に魔力を吸わせるが、この世界にもありそうなものばかりが召喚されていく。
「まぁこんなところね。次はもうちょっと大きめの物を転移させてみるわ。私は基本ここにいるから、毎週時間見つけてここに来なさい」
「え、俺、結構忙しいんだけど?ナナホシは俺にお願いばっかりじゃん。少しはギブアンドテイクの関係築こうよ」
とりあえず肩でも揉んで貰おうかな
「そう言えば、前に空中城塞戻ったら、制服無くなってたんだけど、ルーデウス何か知らない?」
「お兄ちゃん、ナナホシさんの制服盗んだの?」
やばい、バレてた。
「え?借りてるだけだよ。ちょっと言いそびれてただけ」
「返しなさいよ。前世に帰る時にあれ着て帰るんだから」
「いや、俺もうすぐ誕生日だから、そしたら返すよ」
「誕生日に私の制服必要ないでしょ」
「シルフィに着てもらうんだよ、たぶん似合うし」
「それならいいけど、汚さないでね」
((いいんだ……))
ナナホシの部屋を後にして、アイシャと一緒に家に帰る。
「ナナホシさんって結局どういう人なの?」
「異世界から転移してきた人だよ。元の世界に帰りたいからペルギウスと一緒に色々頑張ってるんだ。アイシャも暇があれば手伝ってあげてくれ」
「ふーん、わかった。お兄ちゃんも異世界の人なの?」
「似たようなもんかな。ナナホシは年取らないけど、俺は年取るし、微妙に違うんだけどね。」
「お兄ちゃんも元の世界に帰っちゃうの?」
「いや?俺は妻もいるしアイシャもいるし帰らないよ。ただ、ナナホシは帰らせてあげたいってだけ」
「ふーん、良かった。」
おんぶしているアイシャの腕に力がこもってるのを感じる。
大丈夫、俺は帰らないし、妻もアイシャも好きだからな。
そ!れ!に!
来週は俺の誕生日なのだ!15歳の!!
しかも!邪魔する奴らはいないのだ!!!帰るわけない!