__パチン
勝手に動いた唇が、僕の知らない言葉を紡ぐ。その途端、首輪はあっさりと外れて落ちた。自分が魔法を使ったなんて感覚は湧いてこない。同じ言葉を呟いたって、何も起こらない気がする。重ねられた手が不自然に熱い。少し意識を傾けると、なんとなくシルヴィアと繋がってる感覚が残っているだけだった。
「……」
「……」
沈黙。
見つめ合うような距離で、僕らは顔を逸らしたまま、何処を見ていいのかも分からなかった。目の前には裸の異性。触れもしたし、舐めもした。
汚れてるなんて、嘘だ。僕がしたのは埃を払う程度。それも、夢中になって。
少し磨けば、彼女はすぐに綺麗になった。達してくれたのは嬉しい。もしかしたら、その逆だって考える。触れてほしいし、舐めてもほしい。それから、その次は……っ。
逃げなきゃいけない。
なのに、頭の中はシルヴィアのことばかり。
今なら、許してもらえるんじゃないか。勢いで押し倒したら、あとは流れで。
荒れた鼻息が、不自然な呼吸に変わる。
違う。
彼女が僕に肌を許したのは、二人で生き延びるため。
それを分かって……。信頼を裏切れない、が。強く、手を握ってしまった。
振り払ってくれてよかったのに。作り物めいた指先は、きゅっと握られ、ゆっくりと解けていく。
「……痛く、ないの? その、それ?」
シルヴィアからの問いかけに、目も合わない。頷くしか出来ない僕に、彼女はただ「……そっか」と呟くだけ。彼女がじぃっと見つめていたのは、僕の股間だった。
正直に、辛い。触れてくれたら、どんなにか。スルスルと、ズボンが脱がされていくのをいいことに、僕は止めもしなかった。
男の象徴。
遠慮がちな指先に撫でられる。想像して、胸がムカムカする。
僕にとってのそれは、女性に乱暴を働いている印象しかない。何人も、男たちに騙されてきた。無理矢理に犯されて、売れたら売るか。カナリアとして飼われるか。助けを求められたって、僕は自分を守るのに精一杯だ。
そんなのが僕にもあって、膨らみかけてるのが許せない。
どうにも中途半端。シルヴィアにも、それは伝わってしまってる。
僕へ伸びた指先は、彷徨うように宙を泳ぐ。大きさの問題じゃない。彼女を貫いたものと比べば、あんまりにも気が抜けていた。こんなんじゃ、上手く挿りもしないだろう。
「んっ、あ……ダメだって」
「いいから」
腰を引いて、逃げ出した。シルヴィアを止めようとして、逆に手を払われる。
追いかけてきた指先が僕を掴まえると、そっと包皮を撫でられた。鼓動が弾み、血は巡る。甘やかな痺れに包まれて、吐息が零れた。期待に膨らんだ僕は、包皮を押しのけ亀頭の先を覗かせてしまう。
けれど、そこまで。
刺激が鈍ると、すぐに萎えた。
ムスッとして、残念そう? 悔しかったのか。僕に絡む指の力が強くなる。
遠慮がちだったシルヴィアの仕草は、目的を持ち始めていた。僕の反応が良くなる方へ。上下に扱かれる。引っ張られた包皮が伸びて、完全に顔を出した亀頭の先に雫が浮かぶ。
確かに気持ちはいい。
繊細な少女の指が触れる。柔らかい指の腹に、亀頭をなぞられた。
絡んだ先走りがヌラリと光り、指先で塗り拡げられていく。一本、二本、三本と、指が閉じ、手のひらに包まれる。
望めば多分、シルヴィアは最後までしてくれるのかもしれない。
裸で抱き合って、もっと近くに。こんな幸運。一生に一度もあるかどうか。まるで、火付きの悪い藁のよう。燻って、赤くはなるけど、端から萎んで冷えていく。せっかく捲れた包皮も、雁には引っかからないまま、元に戻ってしまっていた。
「ごめん。私、初めてで……なにか、違ってた?」
あんまりに反応の悪い僕に、シルヴィアにまで弱音を吐かせてしまう。
何て言おう? 「ごめん」じゃない気がする。「ありがとう」でも、言葉がたりない。伺うような視線に、不安が混じる。流石に、呆れられたのかも。ゆっくりと、体を離したシルヴィアは、おもむろに頭を下げた。
「ちょっとっ、ダメだってっ!」
慌てた僕は、彼女の顔を強引に上げさせる。
華奢だった。両肩を掴んでも、まだ細い。それに、力も弱い。抵抗されてないとはいえ、乱暴しようと思えば、どうにでもなりそうな予感はある。
「……できないと思って」
「そういうんじゃ……ないけど」
不満が顔に書いてあった。
負けず嫌いか、女の意地か。ここまでやってもらって、煮えきらない僕が悪いのはそう。顔を近づけたのだって、シルヴィアには覚悟がいっただろうに。
「私じゃダメ?」
「汚いとか、思ってないよ?」
「恥ずかしいのは、分かるけど……」
違う、それも違う。どれも違う。
シルヴィアに悪い所は一つもない。見た目だって、今まで見た誰よりも綺麗だ。
汚されていくのが許せなくなって、つい体が動いてしまったくらいには。
「私には散々したくせに、して貰ってばかりなのは……ズルい」
ズルかろうが。それでも、僕はその話題に飛びついた。
「そうだよ、魔力。首輪も外れたならさ……」
ー
「じゃあ、尚更でしょう?」
「へ?」
もっと近くに。
レノアくんの肩を掴まえて、彼の方へ肌を寄せる。
大きいんだ。細くは見えても、意外とがっしりしてた。角張った体に、柔らかさは感じられない。女の子との違い。頭にあった知識が、実感として腑に落ちる。
「逃げる分の魔力……足りないの。あの人達も倒さなきゃでしょ? 遺跡から出なきゃいけないし。街までも戻らなきゃ。もう一回……今度は、レノアくんにも、ね?」
指折り数える間も、拒絶はされない。でも、抵抗だってなくならない。
遠慮でも、緊張ともまた違って、反応は鈍いまま。興味を持たれてるのも確かなのに、やっぱり苦手意識か。彼の視線の中に、それはある。性的な熱と、冷めた憐憫。
レノアくんにとっての私は、魅力的である以上に、男たちに乱暴されていた可哀想な女の子。もっと、それ以前からかも。私以外にもきっと、何人も。そういう光景を見てこれば、苦手なんて簡単な言葉じゃ収まりきれない葛藤も理解はできる。
魔力、か……。
都合の良い言い訳だ。二人で逃げるためだから。
そんな建前がなければきっと、もっと強引に引き剥がされていたかもしれない。
なんだか胸がチクっとする。他に頼れる人がいないから、縋りたいだけだ。
彼と助かることで、いつか自分ができなかった穴埋めしたいだけかも。自分の弱さが見せる幻痛。愛情のような胸の高鳴りも、快感で脳がバグってるだけ。
私なら作業に貶めることも出来た。
愛情を確かめ合う行為から、快感だけを取り出すことだって。
刺激に反応するなら、魔法を使う手だってある。時間だって、待ってはくれない。それなのに、どうしても……。
「キスは……初めてだったんだから」
脅迫だ。
不貞腐れて、開き直る。
私の唇に、どれほどの価値があるかは知らない。それを決めるのは私じゃない。
けれど、魔力のためとは言え、最後に残った処女性まで差し出したんだ。
今ぐらいは本気になってもらわないと、割に合わない。
「……」
沈黙が落ちた。重なった唇の隙間に、鼓動の音さえ吸い込まれていく。
肩を掴まれ、押し返されそうになっても、私はレノアくんから離れない。
ぐぅっと、お腹が鳴ったのも魔力が足りないせいだ。行き交う唾液が、蜜のように甘く感じられる。
もっと近くに。
擦れ合った肌が次第に熱くなる。私だけじゃない。レノアくんの肌も汗ばみ始めていた。ちょっと、息苦しい。肩を掴む指に力が入った。押し返す力が少しずつ、彼の方へと傾いていく。
鼻息、くすぐったいな。
それでも、離れようとは思わない。
唇を開いて、舌を伸ばす。前歯の境をくぐり抜け、口内へ。温かい。むしろ、熱いくらい。舌先が触れ合った途端、奥へ引っ込み逃げていく。目を開くと、目が合った。慌てて視線を逸らしたレノアくんの顔は、途端に赤くなる。
肩を抓ってやった。
別にさ、見ているのは構わない。
でも、本気でイヤじゃないのなら、せめて応えるくらいはして。受け止めて、受け入れて、絡め合う。掠めた前歯から、固い音が頭に響いた。
下手なんだ。お互いに、上手くは出来ない。
それでも、キスを続けている内にこなれてくる。呼吸のタイミングから、唾液の啜り方。コクリと喉を鳴らすと、レノアくんの視線が胸元に焼き付いた。
私も同じ。
彼の喉が、大きく動くのを見てられない。
イヤに頬が熱かった。唾液を飲まれているだけでしょう? 精液や愛液に比べたら、何のことはない。いつもの私が自制しようとするけれど、鼓動はなかなか落ち着かなかった。
意識が、吸い込まれるみたい。
それを無視するには、あんまりにも気にかかる。
二人の間に挟まれた熱い塊。さっきまでの意気地なしは嘘のように、男に変わっていた。
ー
裸でシルヴィアと抱き合っていると、どうしても。
状況に流される。状況がそれを許す。一生に一度の幸運。明日、死んでるかもしれない人生で、神様が死ぬ前に見せてくれた夢のよう。あれだけ汚された後なのに、僕の腕の中にいる彼女は「白雪姫」のまま。今度こそ、今度は僕が汚してしまうんじゃないか。雪解けのように夢から覚めて、目覚めた僕は一人きり。
切なさに、胸が締め付けられる。
重なる唇の熱さも。抱き合う肌の温もりも。腰を包む甘い痺れだって。
全部本物だ。シルヴィアは一生懸命に、僕と感じ合おうとしてくれている。でも、それが魔力のためだと思うと少し寂しくなった。
「いま、余計なこと考えたでしょ?」
「うっ……」
「やっと素直になったと思ったのに」
「ごめん」
勝手に気まずくなって、一人でに俯いて、目の前が真っ暗になった。
頭を抱かれている。柔らかな膨らみが鼻を掠めた。シルヴィアの香りが強くなった途端__ドクンっ。鼓動が胸を叩く。薄桃色の気配。もっと匂いの濃い方へ。甘酸っぱい汗の味。谷間に浮かんだ雫を辿って、舌を這わせていく。
__ニチニチ。
絡みつく水音に、頭がどうにかなりそうだ。「できるじゃない」耳元で囁かれて、股間が熱を取り戻す。僕の上を行ったり来たり。挿りそうで、挿っていかない。だんだんと、イライラしてきた。女の子とエッチする。僕にある知識はそれしかない。シルヴィアは何も悪くないのに、乱暴な気持ちをぶつけたくてしょうがなかった。
やっぱり、僕も男なんだ。
逃げるように離れた腰を追いかけた。苛立ちのまま膨れ上がった肉棒を、自分から押し付ける。しっかりと顔をだした亀頭の先で、割れ目を引っ掻いた。糸を引いた愛液の雫が、お腹の上へ落ちてくる。
「ねぇ……はぁ、ぁ。レノア、くん。あんまり……ふぅ、動かない、でっ」
「そんなのっ、シルヴィアだって……ぅぅっ」
あまりに僕らは不慣れだった。
向き合って、抱き合って、不安定な体勢だったのも悪い。二人の動きは重ならないまま、いつまでたっても行ったり来たり。ようやく引っ掛かったと思えば、滑りを帯びた亀頭の先は、割れ目にそって逃げてしまう。焦らされてるんじゃないか。言葉の端にまで、不満が滲み出す。
挿れたい。
挿れたい。
挿れたい。
頭の中が真っ赤に染まっていく。
シルヴィアを抱く手に力が入り、胸板に彼女の膨らみが押しつぶされる。
見つめ合った僕たちは、引き寄せられるようにキスをした。でも、すぐに息苦しくなって唇を離してしまう。
右へ、左へ、乳首の先が互いの肌を擦り合い、ゆっくりと腰が落ちてくる。
亀頭が、埋まる。行き過ぎては、少し戻って、ようやくシルヴィアはその動きを止めていた。
分かる。亀頭の先に感じる奥行きは、彼女に続いているのが。
薄く唇が開いた。何かを言いたそうで、何も言えず。僕だって、頷けもしないままだ。腰を抱いて、お尻を掴む。シルヴィアの細い腕が、僕の背中に回された。
逃さないように、離れないように。
顔が近づいてくる。股間が重苦しい。抜け掛かる流れに逆らって、下腹に力を込めた。亀頭の先が沈み込むと、いよいよ歯止めはきかなくなった。シルヴィアの体重に圧されるまま、肉棒が飲み込まれ。
__トンっ
そこで、行き止まり。
根本まで飲み込んで、飲み込まれて。繋がった場所を見つめながら、僕らは動けない。どうしよう? 青白い瞳が、赤く染まって見えた。気づけば、問いかけてくるように、シルヴィアは僕の顔を覗き込んでくる。
どうって……。
このままでも十分だ。
煮えたぎるような熱感が、根本に集まっている。
柔肌が僕に寄り添い、きゅっと隙間なく包みこんできた。出したい。けど、出ていかない。気持ちいいとかじゃなかった。奥に届いたときに出せなかったせいだ。息を呑んだ僅かな一瞬、押し込んだ性欲が、根本でダマになっている。
ドップリと、溢れた汁は違うもの。
尿道を遡る感触に、背筋が伸びた。
腰がガクガク震えて、肉棒がビクビク跳ねる。捌け口を求めた僕は、つい腰を突き上げてしまった。衝動が、感情を置き去りにしている。柔肉と亀頭が擦れて、頭が痺れる。腰が抜けるほど気持ちがいいのに、抜けない、抜きたくない。
「はぁ……んぅ、ふぅ……はぁ、ゃっ、あっ♥」
シルヴィアの艶めかしい吐息が、耳をくすぐった。
背中に爪が立つほど、強く抱きしめられる。痛みですら、気にならなかった。胸が潰れて、乳首が擦れて。僕も、もっと……。不器用に腰を動かす。
付かず、離れず。擦れ合うだけだった乳首の先が、深くキスをするように、柔肌へと沈んでいく。
なんだろう?
僕に合わせてくれていたシルヴィアの動きが、僅かに迷う。
嫌がってるわけじゃない。こっそりと、忍ばせるみたいに。逃げようとするどころか、もっと肌を寄せてくる。腰の固いところがぶつかった途端、彼女の肩が小さく跳ねた。キュッと、中が締まったかと思えば、恍惚と溜息を漏らす。
その繰り返し。
頬は染まり、耳まで真っ赤。
バレてないと思っているのか。気を取り直したシルヴィアは、背筋を反らして、また腰を擦り付けてくる。小さな しこりが擦れるたび、吐息を弾ませ、息を呑んでいた。
ー
「それが、いいの?」
ポツリ、零れた問に動けなくなった。
レノアくんに抱きついたまま、顔も見れない。
自分からクリトリスを擦り付けるみたいに、彼の体でオナニーしてた。また、人をバカにして。バレるわけ無いと思って。何も、学ばないんだ。
なのに、どうして? 胸がドキドキしてる。口を開けば心臓が飛びだしそう。まるで、バレることさえ望んでいたみたい。
なに、されるんだろう……。
男たちに犯されたときも。スライムに無茶苦茶にされたときだって。
私の意思はおかまいなし。正しい愛され方なんて、知るわけなかった。きっとレノアくんだってそう。いまに押し倒された私は、乱暴されるに違いない。薄っすらと、口の端が持ち上がる。気が緩んだその瞬間だった。
「……んひっ♥」
クリトリスを密着させたまま、掘り返すように中を混ぜ返される。
胸が揺れて、乳首が擦れた。一斉に性感帯を覆う刺激に、目を回した私は言葉を見失う。
__とんっ
__トンっ
__トンっ!
繰り返される刺激に、何も出来ない。
背中を抱かれ、お尻を掴まれ、どんどんとレノアくんはペースを上げていく。
必死に吐息を漏らして、犬みたいに腰を振って。突き上げられるたび、鼓動が弾む。快感が全身を巡って、肌が火照った。
「シル……ヴィアっ。ごめん、ぼく……優しく、できないっ」
「いいっ。大丈夫だから……もっと、レノアくんもっ」
何が、違うの?
凄く愛されたい。
自分から、彼を求めて腰を振る。一瞬でも離れていたくなかった。
気持ちよくなりたい。気持ちよくなってほしい。なのに、なんでそんな苦しそうなの? 我慢しないで出してほしい。伝える言葉は、届かない。首を振ったレノアくんは、苦しげに息を吐いた。ビクっと腰を振るわせて、だけど性の熱は感じない。
「くっ、あっ……シルヴィアは? だいじょう、ぶ? 魔力……ちゃんとっ、うぁっ」
辛い。
中で、出されて。私も一緒に……。
いよいよ肉棒が子宮口に届く。知らず知らずに私も腰を落としていって。もうダメって時なのに。一瞬、気が遠くなった。きゅっと、下腹に力が入る。おっぱいにしゃぶりつかれて、乳首を吸われる。前歯が擦れるたび、甘辛い刺激が胸を覆って、痛いのに気持ちがいい。
「ダメ……っ。レノアくんも、一緒じゃ、ないと……私っ、ゆるさなっ」
肩を叩く。
グーで叩く。
「ちょっ、え? なんで、シルヴィア、痛いってば……やめっ」
私を抱いたままの彼は、避けることもできずにされるがまま。
魔力のため。二人で逃げるため。その言い訳が今は邪魔。私に快感を与えることばかりに必死で、自分を抑え込まれたんじゃたまらない。私にだって出来るんだ。「白雪姫」もなにもない。レノアくん一人満足させられないで、お姫様扱いばっかりされたくなかった。
乱暴に腰を落とす。ぐっと、下からお腹を押されて、ちょっと苦しい。
驚いたレノアくんは、腰をひこうとして、私はそれを許さない。根本まで咥え込んだ肉棒を、一番深いところで受け止める。上でも、下でも、キスをする。抱きしめたまま離さない。グリグリと腰を動かし、おっぱいを胸板に擦り付けた。
「待って、シルヴィアっ!? そんな。されたら、でちゃっ……僕、我慢がっ」
「いいっ。我慢とかいいっ。いいのっ。だして、出すことだけ考えて、私を使って、犯して、一杯中に、ね? ね?」
__トンっ!
子宮口に亀頭が突き刺さる。今から、ココに、出すから。
触れ合うだけのキスが深くなる。何度も合図を贈られて、縋り付くように太ももが閉じた。
「そんなこと、いうからっ。シルヴィアがっ……もう、しらなっ。僕っ、はぁっ!」
「あはっ♪ じゃあ、だしてよ? だして……みせて? レノアくんっ!」
煽る。
煽る。
言葉で、行動で。彼の欲に火をつける。
腰と腰とがぶつかって、潰れた水音が鳴り響く。中をグチャグチャに掻き回されて、息が出来ない。大きいのが、くる。背筋が伸びて、腰が引きずり込まれた。
__ドックンっ!
噴き上がる精の熱に下腹が燃え上がる。
口をパクパクさせながら、レノアくんにしがみついた。頭が、真っ白。本物のエッチ。体だけじゃない。心まで幸せに満たされる。いつもの私を押しのけてまで、私は彼にみてほしい。
「あぁっ♥ でて、レノアくんっ……の。中に……いっぱっ、んっ♥」
「バカッ、ばかぁ……シルヴィアの、ばかっ、ばかばかばかっ、僕……っ」
ちょっとだけ大げさに……なんて余裕はなくなってた。
バカって言われるたび、耳が溶けそう。頭が真っ白。お腹もきっと、一杯で。
バカっていう方がバカなんだ。バカみたいに射精しながら、バカみたいに動いて。気持ちいいって、出してって、私がイッた分だけ気持ちよくしようとしてくれる。
それでも、限界。
最後に一度、レノアくんは大きく震えあがると同時に、ドップリとお腹が重たくなる。彼の体にしがみついた私は、されるがままにソレを受け入れた。
もったい、ないな。
隙間から、白濁液が流れ出していた。入り切らないくらい、たくさんの。
ちょっと嬉しい。レノアくんが気持ちよくなってくれた証拠。私だって、いっぱい気持ちよくしてもらって、してあげられて。まだ、中に挿ったまま。
もっと、したいな。
でも、続きは……帰ってから。
「どう……だった?」
恐る恐るレノアくんに問いかけると、彼は俯いたまま頷いてくれた。
やんちゃなんだ。また、ちょっとだけ大きくなった。気持ちが同じなのは嬉しい。
ここまでされて、コレっきりなのは私もイヤ。
「じゃあ、逃げちゃおっか? あっ……」
「シルヴィア……急に立ち上がったら。もうちょっと休んでからでも」
「えへへ……」
立ち上がろうとした私は、バランスを崩して彼の胸元に倒れ込んだ。
ああ……バカになってるんだ、私。離れがたかったのもきっとあるけど、休んでばかりもいられない。私を満たす幸運が、手の中にあるうちに。
彼の手を引き立ち上がると、ぎゅっと握り返してくれた。
今なら何でも出来そう。魔力は万全。媚毒も、首輪の呪いだってない。
__バンっ!
強く扉が開くと、隙間に詰めていた小石が弾け飛んだ。
やっぱり、鍵にもならなかったか。一秒か、二秒はもったかも。呪文を紡ぐ。扉から顔を出した男は、私たちの有様に一瞬目を丸くして。三秒が経った。それだけの時間が稼げれば、今の私には十分だ。
「まてっ……ゆるしっ……あっ」
何のことはない。お行儀よく戦えば、こんなチンピラよりスライムの方がずっと手強いくらいだ。震える男の口に、魔法薬の瓶を押し込んだ。落とせば割れる。割れたら爆発する。手足を縛って、天井に吊り上げられた男たちは、ユラユラ揺れるミノムシみたいだった。
*******
「ねぇ、シルヴィア?」
数日後。
彼女の部屋で二人きり。僕らは一緒に、ベッドで横になっていた。
寝物語にする話じゃないけれど、やっぱり気になる。
どうして、殺さなかったの?
あんな事をされたのに。僕ならきっと、止めはしなかった。
黙っていれば、犯罪になることもない。ダンジョンで冒険者が死んだだけだ。
「仕返し、したかった?」
そうじゃない。そうではないけど。
衛兵に突き出した男たちからは、余罪はいくらもでてきた。嘘を一つつくたび爆弾の小瓶を増やされていく。口に咥え切れなくなって、いよいよ観念した男たちは、手のひらを返したように素直だった。その功績は、彼女の汚名を確実に雪いでいた。殺していればきっと、またパーティーメンバーを失くした女だと揶揄されていたはず。
真っ当な依頼を受けられるようになったシルヴィアは、みるみると実績を積み上げて……。僕なんかが一緒にいても、もう手伝えることは。たまたま花弁を拾っただけで、本当の彼女は相変わらず高嶺の花だ。もう、手の届かない所に。
__ズキッ!
シルヴィアの視線が、心臓に突き刺さるようだ。
「レノアくん……いま、私から離れようとしたね?」
「いや、それは……」
気まずくなって、顔を背ける。
それで、何を誤魔化せるわけもなかった。僕の体から奴隷の烙印は消えちゃいない。飼い主が、シルヴィアへと変わっただけ。身寄りのない僕が街で暮らすなら、たしかに彼女の奴隷という立場が手っ取り早い。
「一人にしないって……約束。ずっと一緒だって……私」
「分かってるよ。シルヴィア……なんか、その。ちょっと遠くに感じただけで。逃げようとかじゃ」
「やきもち?」
「だって、みんな声かけてきて、今さら……。それに、シルヴィアは綺麗で、だからっ!」
そのまま、彼女を押し倒す。
「いいよ」呟いたきり、抵抗もされない。毎晩、飽きもせず、お互いを求め合う。滅茶苦茶に扱えば扱うほど、悦ぶから。奴隷に犯されている状況も、彼女の興奮を助長させているようだった。
生み出された魔力が、烙印を通じて僕にも流れ込んでくる。
最初は一緒にいるための建前だったものが、いつしか呪いに変わっていた。際限無く快楽は膨れ上がり、見境無くシルヴィアを犯す。
一緒にいよう。
口約束だけじゃ足りない。
僕にはカナリアとして飼われた記憶があるし、彼女の背中にも後ろ指は突き刺さったまま。傷跡は無くなることもないんだろう。絶対に離れないし、離さない。彼女の下腹に刻まれた烙印が、淡く輝く。それは、僕とおそろいの奴隷の印だった。