※この作品はR-18です。

負けヒロインが多すぎる!〜八奈見さんの空腹対策(精液補給)から始まる、文芸部と生徒会の狂信ハーレム〜   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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理不尽な栄養要求とアプローチの始まり

放課後の文芸部室。オレンジ色の夕暮れが差し込む室内で、八奈見杏菜は机に突っ伏し、大袈裟な溜め息をついていた。

 

「あー……ダメ。もう一歩も動けない。温水君、私ね、今すっごく栄養が不足してるの。このままだと枯れ木みたいに萎びちゃうよ……」

 

「ただのお腹の減りすぎでしょ。お昼に購買のパンを4つも食べておいて、何を言ってるんだか」

 

文庫本から目を離さずにあきれ顔で返すと、がばりと起き上がり、真剣な——けれどどこか濡れたような視線で直視してきた。

 

「違うの! これはもっと根本的な、タンパク質の不足なの! だから……温水君、ちょうだい?」

 

「は? 何を——」

 

「……温水君の……プロテイン、タンパク質のことだよ」

 

言葉の意味を理解しかね、僕は危うく文庫本を落としそうになった。だが、彼女の表情に茶化すような色はない。それどころか、頬をほんのり朱に染めながら、じっと反応を伺うような、切ないまでの必死さがその瞳に宿っていた。

 

(……待てよ。栄養補給なんて理屈、どう考えても無茶苦茶だ。なのに、なぜこんな突拍子もない提案をしてくるんだ?)

 

頭の中で冷静な分析回路が回る。

いつも意地を張りながら隣に居座り続ける彼女。普段の厚かましい態度とは裏腹に、視線や距離感は、ここ最近あきらかに変化していた。

 

これは単なる図々しさでも、非常識な悪ノリでもない。

不器用とプライドが「栄養補給」という理屈の鎧を纏うことでしか踏み出せなかった、必死のアプローチなのか。関係を不可逆なものへと押し進め、自分の存在を僕の日常に深く刻み込むための攻勢——。

 

「……八奈見さん。言っておくけど、そんな合理性の欠片もない理屈、世間一般じゃ通用しないよ」

 

「世間なんてどうでもいいの! 今は、温水君と私だけの問題でしょ……っ!」

 

椅子から立ち上がると、距離を詰めて制服の袖をぎゅっと掴んできた。震える指先と、上目遣いに見つめてくる瞳。強がりな言葉の裏で、彼女の心臓が早鐘を打っているのが伝わってくる。

 

「……分かったよ。そこまで言うなら、検証に付き合うよ」

 

「……本当? 途中で逃げたりしないでよ……?」

 

ホッとしたように表情を緩め、自ら文芸部室の鍵を締めに行くと、パイプ椅子を引き寄せた。

 

「じゃあ……始めるからね」

 

薄桃色の唇を舐め、小さく息を整える。その手つきはどこか緊張で強張っていたが、瞳には、もう「負けヒロイン」の弱々しさは微塵もなかった。こうして密やかな「補給」という名の接近戦が幕を開けたのだった。




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