負けヒロインが多すぎる!〜八奈見さんの空腹対策(精液補給)から始まる、文芸部と生徒会の狂信ハーレム〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「……ぬ、温水」
放課後の文芸部室。
パイプ椅子や机を壁際に押しやり、広くなった中央のスペースで、小鞠知花は文庫本を両手でギュッと握りしめたまま、上目遣いに俺を睨みつけていた。
黒目がちな瞳はかすかに熱を帯び、薄桃色の唇が不満そうにキュッと結ばれている。
「どうしたの、小鞠。原稿の締め切りなら、まだ先だったはずだけど」
手元の文庫本から目を離さずに返すと、パタパタと足音を立てて距離を詰め、制服の袖を弱々しく引っ張ってきた。
「し、締め切りじゃないっ……! ……私は、ずっと納得いってないぞっ!」
「納得がいかない?」
「だ、だって……っ! こないだ……っ! 八奈見とか焼塩とか白玉と一緒に、全員まとめて……っ、だっただろ!?」
顔を林檎みたいに真っ赤に染めながら、小鞠は必死に声を潜めて抗議してくる。
「わ、私は、知ってるんだぞっ! 一番最初、八奈見のときは……2人きりから始まっただろ!? なんで私の時は、いきなりあんな……みんな一緒のドタバタで済まそうとしたんだっ!?」
「……なるほど。『順序』についての不服申し立てか」
静かに本を閉じ、論理的な思考回路を回転させた。
「確かに小鞠の言い分にも一理ある。あの時は現場の目撃が連鎖した結果、緊急避難的な『多角的一括補給』を余儀なくされた。だが、本来の実験手順としては、基礎的なアプローチからの段階的なデータ採取こそが正道だ」
「す、少しくらいは、わびろ。私だって文芸部員なんだから……ちゃんとした過程を踏んでないやり方なんて、納得できるわけないだろ……っ!」
「ごめん」
と言葉を重ねる。
「小鞠が執筆しているBLや恋愛小説のリアリティという観点からも、追い詰められた主人公が相手の体液を口にして絆を深めるシチュエーションは、基本中の基本と言える。作品の質を高めるためにも、ここで基礎補給の検証を行うことは極めて妥当性が高い」
「う……っ、ぬ、温水……なんで急に私の小説の話になるんだ……っ! 恥ずかしいこと言うな……っ! 死ね……っ!」
小鞠は頭からジャージをかぶらんばかりに身を縮こまらせたが、その瞳には拒絶ではなく、作家としての歪んだ好奇心と、秘められた欲求がはっきりと揺らめいていた。
「わ、私……ご、強引にグイグイ来られると、な、なんか断れない……ほ、本当に……『取材』なんだよな……?」
「ああ。双方の合意に基づく個別再定義のプロセスだ。……部室の鍵はかけておいたよ」
「ひぅっ……!? い、いつの間に……っ!」
おどおどと周囲を見回しながらも、パイプ椅子にちょこんと腰を下ろした。
震える指先が、制服のスカートの裾と、自身の華奢な胸元をぎゅっと握りしめる。
「ぬ、温水……っ。手加減しろ……? 私、八奈見みたいにガツガツできないからな……っ!」
「大丈夫だよ、小鞠。焦らず、一定のピッチで粘膜の密着度を高めていこう」
視線を合わせると、息をのんで顔を背けたが、ゆっくりと膝を開き、ズボンに両手でおずおずと手を掛けてきた。不器用で、極度に人見知りな震え。
だが、その小さな唇が解き放たれ、昂ぶりを遠慮がちに咥え込んだ瞬間、文芸部室の静けさの中に、甘く湿った「個別の補給」の音が密やかに響き始めたのだった。