負けヒロインが多すぎる!〜八奈見さんの空腹対策(精液補給)から始まる、文芸部と生徒会の狂信ハーレム〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
静寂を取り戻した夕暮れの部室。深く噛み合わされていた接合部がゆっくりと解放されると、糸を引くような粘熱の余韻とともに、静かな気密破断音が空間に響く。指先をゆっくりと離し、舌先で唇の端を舐めまわしながら、ゴクリと喉を鳴らして嚥下(えんげ)した。
「ん……んっ……く……ふぁ……っ、温水君……っ。すっごい濃厚……。生臭くて……でも後から旨味とお出汁みたいな塩気が口いっぱいに広がるの……っ」
喉奥からは、まるで極上のディナーを平らげた直後のような、どこか艶めかしくも脱力した吐息が漏れ出ていた。粘膜から口腔、そして咽頭を通り胃袋へと送り込まれた濃厚なタンパク質は、体内器官によって極めて高い効率で代謝され、その全身に満ち足りた熱量となって循環しているのが伺える。ほのかに赤らんだ頬や、じんわりと汗ばんだ首筋、そして口内に残る特有の生温かい風味にうっとりと舌を這わせる仕草が、先ほどまでの過剰な熱量のやり取りを雄弁に物語っていた。
「はぁ……はぁ……、まったく、急に力いっぱい締め上げるからヒヤヒヤしたよ……」
荒い息を吐き出しながら乱れた呼吸を整えていると、余韻に浸るように自分の腹部にそっと手を当て、唇に残る未練を味わうように舌先で触れながら呟いた。
「だって……温水君が出してくれたプロテイン、舌触りはとろっとしてて重いのに、飲み込むと喉がカーッと熱くなって……じんわり染み渡ってくるんだもん。なんだかすごく身体が軽くなってきた気がする……!」
「それは単にカロリーと熱量がダイレクトに補給されたからだと思うけどね……」
溜め息をつきながら、歪んだ眼鏡のポジションを指先で直した。
「……八奈見さん。プロテインを補給して満足したようだね。それ以上に、思いがけないイベントに喜びを隠しきれないこの……い、いや、なんでもない」
乱れた衣類を整えながら冷ややかな視線を向けると、それまでの艶めかしい表情から一転、いつもの身勝手で図々しい「八奈見杏菜」の顔へと一瞬で戻ってみせた。胸を張り、ドヤ顔でこちらを見下ろしてくる。
「そういうとこだよ温水君。健気な女子高生が勇気振り絞ったんだから……あとはわかるよね?」
「もうなにがなんだか。八奈見さんの強引な誘導のせいで、体力が完全に削り取られたよ」
「私の気持ち、返してよ! 温水君、途中で声を上げて気持ちよさそうにしてたよね!?」
「それは物理的な圧力と生化学的な刺激による不可抗力だ」
慌てて言葉を返すと、ふんと鼻を鳴らした。パイプ椅子から立ち上がると、自分のカバンをひょいと肩にかけ、部室のドアに手をかけながらいたずらっぽく笑った。
「あ、……明日の放課後も、プロテインが足りなくなったらまたお願いするからね。温水君のタンパク質、……味も、慣れてきたら癖になりそうだし!」
「これって同意したことになるの……?」
「毎日の十分な栄養管理が不可欠なの! それに、一度こうやって効率的な補給ルートを確立した以上、途中で打ち切るなんてナンセンスでしょ? じゃあね、温水君!」
爽やかな放課後の挨拶とともに、軽いステップを踏むように部室を去っていった。ガチャリと扉が閉まり、静まり返った室内で、一人深々と溜め息をつく。
残されたのは、わずかに漂う特有の甘酸っぱく生温かい匂いと、身体に残った圧倒的な疲労感だけだった。
「……そんな急展開、処理できるわけないだろ」
こうして過剰な「栄養補給」という名の日常は、終わるどころか明日からの不可避な日課として決定づけられたのだった。
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