ジャミに転生した 作:みじ
転生したら馬だった。
ドラゴンクエストっていうゲームに出てくる『ジャミ』という馬のモンスターだった。
筋肉ムキムキで普通に立って歩くヤベー奴。
主人公の仲間には、ならない。ジャミが登場するドラクエ5はモンスターが仲間になるが、ジャミが起き上がって仲間になりたそう目でこちらを……などという展開は有り得ない。
色違いの『ケンタウラス』って奴は倒すと仲間になることもあるんだが、ジャミは倒したらそれで終わりだ。まあ、悪の幹部だし。主人公の父親の仇の一人というか一匹だし、ろくでもないことばっかりするしで死んでよし。
ここでジャミの悪行を振り返っておくと、まず主人公の父親をリンチして殺害。トドメを刺したのはゲマっていうジャミの上司だが、リンチしてる時点で同罪である。それが主人公の幼少期。
次に主人公の青年期に、出産したばかりの若妻を誘拐して監禁。助けに来た主人公に倒されるも、悪あがきの石化魔法で主人公夫妻を石像に変えた。
印象に残ってるのはこの二つで、登場自体は多くはないが実にろくでもない。そして、そんなクソみたいな
『ぬおーーーーーーーーーっ』
『お、お父さんっ』
転生を自覚したのは、主人公の父親パパスが焼死した瞬間だった。いきなり取り返しがつかない。
なんでそこなんだよ。もっと前なら正義に目覚めても良かったのに、パパス殺しちゃったら後戻り不可避じゃねーか。極悪人ならぬ極悪馬だ。物語は俺の知っている通りに進み、いずれ俺は主人公にぶち殺されてしまうのだろう。
(いや、死にたくねーわ。ムリムリ、運命受け入れろとかムリだから。こうなったら、原作破壊してでも生き残ってやる)
パパスが死んだ後、物語中の時間は一気に進む。
主人公は友人の王子様と一緒に奴隷落ちして、怪しい神殿で強制労働させられることになる。物語としては、幼少期から青年期に進んでからのスタートになるのだが、細かい描写はカットされていた。
幼い姿ではなく青年奴隷からのスタートだ。成長するまでの時間はゲームではプレイできなかったが、ここでの俺はその間も生活しなきゃいけない。当たり前の話だが、スキップ機能とかはなかった。
「時間あるし、生き残るために修行でもするか……? でもなぁ、人類が負けても後味悪いしどうするかなぁ」
やることはあんまりなかった。ぶっちゃけ暇だったので、ひとまず体を鍛えまくることに。
ジャミがレベルアップするのかは不明だったが、何事も物は試しだ。海に潜って半魚人を倒しまくり、水泳で肺活量を鍛え、ストレス解消のため夜空に向かって『夜空ノムコウ』を熱唱した。
そんな日々を送ること数ヶ月、いきなり軽快な音楽が鳴り響き、レベルアップ! 30から31に上がったわ! お前レベル30だったのかと一人ツッコミを入れつつ、強くなれることに歓喜!
しかも、呪文を新規習得もできるようだ。レベルアップのついでに『モシャス』という変身呪文を覚えた。これは面白い。将来的には全ての呪文を習得……は無理だとしても、かなり強くなれる希望がある。
俺は俄然やる気になって鍛えまくり、その辺に封印されてた『ブオーン』とかいう謎存在をぶっ倒したりしながら、着実にレベルアップを重ねていった。
そして、あっという間に時が流れた!
「やばい。もうちょいでビアンカ誘拐しに行かなきゃじゃん。ちゃんと計画立ててからいかないとダメだな、うん」
経験値ばかり求めていたら、いつの間にやらジャミのメインイベントがすぐそこに。
王国の国王となる主人公の妻、ビアンカを誘拐して塔の屋上に監禁する重大ミッション。たしか、本当に重要なのは双子を攫ってくることだった気がするのだが、なんで王妃だけ攫われてたんだっけ? よく覚えてないが、ビアンカが子供を隠して自分だけ攫われてきたんだっけか?
忘れた。まあいいや。
設定としては、主人公の子供達は魔王を倒す鍵になるから危険だ、みたいな話があったようななかったような。
「天空の血は根絶やしにせねばなりません。しっかりと始末するのですよ、ジャミ」
「ギガデイン!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
どうやら俺の記憶は正しかったようだ。
ゲマ様がやって来て教えてくれたので、お礼に最近教えた呪文をかけてあげると、ゲマ様は死んだ。
おお! ゲマ様、しんでしまうなどなさけない!
マジで消滅しちゃったんだが、大丈夫だろうか。
まあいっか。ギガデインの試し打ちできたし。ていうかジャミがギガデインってどういうことだ。普通に覚えちゃったんだけど、この世界バグってね?
「虐殺ルートもいけそうだな。だがしかし、俺は平和をこよなく愛するジャミだ」
無用な殺生は気分が悪くなるのでナシで。
ここは平和的にいくことにする。みんなハッピーになるようなエンドを目指していこうじゃないか。てなわけで、俺は前向きに動き出した。取り急ぎ、花嫁候補
ドラクエ5は妻を選んで子供を産ませるゲームだ。
候補のひとりが金持ちのお嬢様のフローラ。主人公はビアンカかフローラどちらかを選ぶのだが、この時空ではビアンカを選んでくれたようだな。
「君を振った男、大変なことになるから慰めてあげてね。よろしく」
「ど、どういうことでしょうか」
「しばらく石像になるから、よろしく! 奥さんは死ぬから、慰めてあげてー」
フローラに会いに行った時は、
いつしか俺は呪文をほとんどマスターしていた。
ハイスペックジャミの爆誕である。世界からしたら害悪でしかないが、生きる権利は俺にもある。人類に迷惑はかけないから許して欲しい。
「ジャミ、ビアンカはどこだ!」
「遅かったな国王。王妃は死んだぞ。食い殺してやったわ、ははははは!」
更に時は流れ、俺は見事に王妃を誘拐して檻の中に閉じ込めた。
のこのこやってきた主人公には殺したと伝えて、主人公一行は石化だ石化!
「許さないぞ、ジャミ!」
「黙れ小僧! お前は石像にでもなっていろ!」
「ぬわーーーーーーーっ」
原作の流れでは、ジャミが死ぬ時に破れかぶれの石化呪文で主人公夫妻を石にする。しかし、ここで石化するのは主人公だけだ。
後はその辺に放置して、フローラに拾いに来てもらえばハッピーエンド!
頑張って世界を救ってくれたまえ。魔王ミルドラースも倒しちゃっていい。その代わり、死亡扱いになるであろう王妃はいただく。
天空の花嫁ビアンカは、魔物の花嫁に強制転職だ。
ビアンカにとっては悪夢のようなエンドだろうし、ビアンカを選んだプレイヤー諸君にとっても同じだろう。しかし、実際に自分がジャミ(ウルトラハイスペック)になったと仮定すると、俺みたいな行動に出る奴も一定数いるのではないだろうか。
「どうした王妃、お前が股を開かないなら、街の娘を攫ってくるぞ。お前の故郷の村でもいい。若い娘を連れてきて、壊れるまでいたぶってやろう」
「この、人でなし!」
「残念だったな、俺は魔物だ。だが、知性もあれば話も通じる。交渉もできる。そうだな、まずは口で奉仕しろ。そうすれば周りに迷惑をかけることはない」
お馴染みの衣装姿のビアンカを脅迫し、魔物の花嫁としての教育を始める。
強く美しく、実に女らしく育った彼女は、本当なら幸せなエンドを迎えるはずだったが、ここでの結末は快楽漬けの花嫁だ。
双子を産んでからもうすぐ三年が経つから、そろそろいいだろう。念入りに耕してから、嫁としての役目を果たしてもらうことにした。