聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
「そうか。戦争が始まったか」
ホーデンエーネン暦348年3月4日。アノーヅの屋敷にいたアドルフは、王国の西側で起きている事件をオットーから聞き出した。
「ホーデンエーネン側はシガラーキを焼き討ちにし、続く周辺の街や村も襲って被害を出している様子。国王陛下は魔道騎士団の第一軍から第五軍をもって、迎撃に務めるとのことでございます」
そして国王は、コーヅケーニッヒに留まるという。そこに住まうマルティンと妾のローザもだ。アドルフは報告を一通り聞くと、オットーにこう告げた。
「お前も向かえ。ここにいる私の妾と子供達を全員連れてだ。マルティンとローザを励ましてやってくれ」
「殿下?」
「許してくれよ。私はあいにく、このところ体調が悪い。本当ならば軍団の指揮をして迎え撃ちたいのだが、そうもいかない」
いぶかしむオットーにアドルフは催促した。急ぎ支度を整えよ。忠義深い小姓は従わざるを得なかった。
イーガが負ける、などとはアドルフは思ってもいなかった。それに、この情報は1日前に受け取っている。セイン王は果敢だが統制がとれていない。
(言われなくても、勝つのは我が方だ……)
ホーデンエーネンは近年、魔道士部隊の充実に務めているが数も実力もイーガとは雲泥の差がある。ホーデンエーネン軍を殲滅させる作戦案をイーガの第一軍の武将達に、別ルートを通じて届けさせていた。
ホーデンエーネン軍は兵糧が心もとない。短期決戦で挑んでくるはずだ。一番の最短ルートで向かう。つまりは、『えくすぷれす』の道沿いで進撃するだろう。
平坦な道が続き進軍がしやすい。しかし途中にあるハットーリ大河で立往生するだろう。そこはかつて何度も決戦の舞台となったところだ。
いにしえの戦いでは、ハットーリ大河を渡ろうとしたホーデンエーネン軍を攻撃して撃退した。その上流が戦場になった事もあったが、同じ戦法で打ち破った。
しかし今度のホーデンエーネン軍は、『えくすぷれす』の敷設で築いた橋を使うだろう。そこが狙い目だ。
西側に魔道士を潜ませる。敵の全軍が渡るのを待つ。渡りきった後に橋を爆破。向こうに背水の陣を敷かせる。更にトーバコフからの水軍衆を用いて挟撃を仕掛けられれば上々だ。
この戦いでセイン王は戦死するだろう。多くの猛者や勇将も。ホーデンエーネンの弱体化はアドルフは常々狙っていた。もう1つ、その為の仕掛けをこれからやる。
翌日、家族達がアノーヅを去って行った後、彼は『病気』だというのに北の館に向かった。そこにはエチウから客人を密かに招いていた。
パラッツォの教主・コーザが目をかけている、司祭騎士のヘンリック=イプセンがその人物であった。アドルフはまず、体調が優れぬと3年前に言われた、ヘラという娘についてのその後を尋ねた。
「おかげさまで。ヘラはぴんぴんとしておりますよ。最近は教主様におちんぽぺろぺろをするぐらいにやんちゃです」
教主はヘラに、パラッツォ教の教えにちなんだ育ち方をさせていた。3歳過ぎだが、既に小さな男の子との性交で処女を卒業している。毎日セックスによってきゃははと喜んでいるのだとか。
「末恐ろしいな。まるでどこぞの『おしゃぶり姫』みたいだ」
「左様ですね。あの薬のせいかもしれませんよ?」
ヘンリックが苦笑する。あの妙な薬を教主の目を盗んで飲ませるのにどれだけ苦労したか。ヘラが美味しそうに飲み干して元気になった後、コーザは何を飲まされたのかを知って、酷く嘆いたそうだ。
「しかし気がかりなのは、食人鬼のゴールの血です」
ゴール。アドルフはその種族の名を聞いたことがある。もとは世界各地にいた。各地の大陸では討伐の対象にされたから、賢明なのは人食いをやめて亜人と夫婦となり、血を薄める者が多かった。
キンキ大陸では事情が違う。ホーデンエーネンは大陸の戦国時代にかき集め、配下に仕立てた。彼等をオーガの戦士の様に特別扱いし、多くの女達と生殖させた。人妻や生娘まで必ず彼等の子を1人産め、という法律を作ってだ。そうして、強い戦士達の軍団を作り上げた。
ただ、ゴールの戦士は必ず先手衆だ。狂戦士部隊は使い捨ての駒だった。取り立てて荒々しいのは戦国時代に途絶えた。残るのはたまに犯罪行為に手をつける程度の、残りかすばかりである。
「ゴール族は知っている。キンキ大陸に残っているのはナガオカッツェあたりだ。人食いはやらないが、旅人をしょっちゅう襲うそうだな、村人たちがだよ」
あそこを通るのは注意しろとアドルフは忠告する。冗談半分だ。
「それは無いと思います。しかしヘラには余計な作用を起こすかもしれません。あの薬のせいで人食いの力が目覚めなければ良いのですが……」
「そうはならないだろう。私から貴殿、いや、教主殿に手土産を贈りたい」
アドルフはヘンリックに大きな箱を渡した。中には何が入っているのか。それは秘密だとアドルフは念押しした。エチウに戻ってから教主自らが開ければよい。
「さて、どの様なものでしょうね?」
「イーガとエチウの密約を祝してだ。手土産はこれだけではない。それなりの金銀もつけよう」
「では、その目的とは?」
ヘンリックが尋ねた。わかっているくせにとアドルフは笑う。パラッツォ軍の北ホーデンエーネン侵攻を進めて欲しい。
「沿岸部をちょこちょこと攻めているだけで、一向に内陸へ進めないのだな?」
「教主様よりその様にせよ、と命じられてでございますよ。信徒の保護とホーデンエーネンへの威圧。それだけに止めておく、のが今の戦略でございます」
「では、秘密の友邦たる我が国が危難の時、貴殿らはいかに立ちまわっていただけるかな?」
本題はそこだ。ヘンリックはうなずいた。これをきっかけに侵攻を本格化する。サイゴーク戦線はイナーヴァニアの制圧が終わり、ヒッジランドとイーズモーへの攻略については順調だった。まだ余裕がある。
「では、急ぎ戻って教主様を交えての稟議を行いましょう」
「わかってくれ。我が国の危難の時なのだ」
「さて、その割には随分と余裕がおありのようですね?」
痴れたことを。アドルフは薄笑いを浮かべた。イプセンの一団が去るとヒッポタルトを呼びつけた。
「はいはい。如何なさいますおつもりでしょう、殿下?」
「ロゼを本宅に移せ。あやつに男のちんぽを楽しませるのはもうおしまいだ」
「……殿下」
ヒッポタルトは嘆いた。あの可愛い童女はようやくフェラチオで彼を満足させ、果てさせる事が出来る様になったのに。喉奥まで陰根を咥え、おいしそうにしゃぶる姿が可愛かったのに。
「充分に楽しんだだろう、ヒッポタルト?」
「……処分はいかがなさるので?」
「気が変わったのだよ。ロゼには寿命まで生きてもらう。マルティンの養女にでもなってもらうつもりだ」
アドルフとて、マイヤが産んだ我が子が可愛い。最初は淫売窟にでもタダで放り込もうかと考えたぐらいだが、長らく育てて愛着を覚えてしまった。
ナントブルグの女王の血筋を絶やす策謀はもういい。諦めた。聞けばマイヤの姉には7人も子供がいると聞く。しかも襲ってきたサキュバスより、数段上の淫魔に守られているそうだ。殺しづらい。
その代わりにマイヤをイーガにとどめ置く事でよいと考えた。身体に制約をかけられた状態でなら、大人しくこの国で暮らしてくれることだろう。
イーガが戦争に勝って揺るぎない優位を保てば、マイヤやその娘達をホーデンエーネンに返す事はまず無いはずだ。残るはマイヤの姉。しかし牧童の家に嫁いだ平民のまま。何ができるというのだそんな女に?
(そのトーリという小娘が、天下取りを目論まなければ御の字だがな。サキュバスどもを手足として使っているようだが。しかし……)
トーリとマイヤの正体がばれてしまったかもしれない。そういう報告が間諜達からあがってきている。王家に連なる姉妹だとわかれば、本腰をあげてホーデンエーネンは立ち向かうはずだ。だからこそこの戦争で勝利したい。
その上にホーデンエーネンはパラッツォとの全面戦争が待っている。どう考えてもトーリが天下取りゲームをやりたがる雰囲気ではない。その為にいろいろと仕掛けも仕込んでおいた。
(俺はそう簡単に負けをみとめんぞ。小娘どもめが。)
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ロゼはすぐ、本宅に移された。アドルフが手を付けた、今は亡き村娘との間に出来た子供という話で迎え入れられた。
この屋敷はただでさえ子供が多いのと、地位の低い妾は何かと貴族出身の先輩達に虐められやすいから、その村娘にお金をやって育てさせた。
しかし一昨日、その娘が病気で亡くなってしまった。それが不憫でならない。ゆえに私はロゼをこの館で育てるつもりだと家来たちに告げた。
「とういわけでロゼ、皆に挨拶しなさい」
「はじぇめまして、わたしはロゼといいましゅ」
ちょっと舌足らずだが、ロゼはすっかり可愛らしく成長していた。母親と同じく蒼にも見える黒髪と紫色の瞳。母と違って細面っぽいのは、父親に似たからだろう。アドルフはドレスをまとって家臣1人1人にぺこぺことお辞儀をするロゼを、微笑ましく見つめていた。
ロゼが戻ってきた。アドルフは彼女を抱きかかえると小姓のうち1人を引きつれ、彼女のために用意した部屋に連れて行った。
「おとうしゃまあ。これからこのおやしきで、ロゼといっしょにくらしぇるんですね?」
「そうだよ、ロゼ。しかし、ここでは大人しくしないといけないからね」
部屋に入ると小姓を廊下に出ろと命じた。扉が締まるとロゼにいう。
「おちんちんはもうしゃぶってはいけないよ。おまんこを見せつけるのも駄目だよ?」
「どうして? おとこのひと、みんなロゼにそうされるとよろこぶのに?」
「ロゼはこれから、イーガ王家のお姫様になるのだよ。毎日の行いをみんなが見ている。お前はおしとやかなお姫様として、みんなのお手本にならなくてはいけないんだ」
ロゼはうなずいた。わかりました。彼女はちんぽを咥えて精液をちゅーちゅーしたり、幼女マニアの男達におまんこをしゃぶらせてばかりいたが、根は真面目でいい子だ。言いつけをちゃんと守る。
「では、私はこれから用事があるから、皆の言う事を聞いてお留守番をして欲しい」
「おとうしゃま、どこにむかわれるのでしゅか?」
「大事な、大事な用事なのだよ」
懐いている我が子に後ろ髪をひかれる思いで別れを告げると、アドルフは出かけると言って屋敷を出て行った。
向かうはコーヅケーニッヒにある北の隠れ家だ。そこには今、サキュバスのノンと、その他2人のトーリの『守り手』達が獄に繋がれていた。
(彼奴等に最後の仕事をさせる。)
彼は直感で、自分に残された時間はそれほど無いと断じていた。急がねば。彼は『えくすぷれす』を用いた南のルートではなく、北回りで遠回りのルートを用いた。エクスプレスは使わない。馬車でコーヅケーニッヒまで10日かかる。
そこまでの長旅ができる体力はまだあった。彼は長い間馬車に揺られて身体の不調を強く感じたが、眠れば少しは和らいだ。そうでもしなければならない理由がある。
ナントブルグの女王の血筋を絶つ、あるいは二度と再起できない様にする為の必殺の手段、魔族殺しの剣を目をかけた少年にマスターさせたい為である。
その方法は割と簡単だ。その手で、その術式でもって魔族を数人屠ればよい。その少年。ホーデンエーネンから来たアナキン=スカルファッカーには特別な思い入れがあった。
彼が転生人であり、エレクトラが前世で生きた同じ国に住んでいた事だ。時代はだいぶ違うが彼と話していると、何故かエレクトラのことを思い出して懐かしかった。
それはマイヤとこんな形にならず、仲良くなれば感じえたかもしれない。しかし彼女はイーガにとって忌まわしき一族の末裔でもある。カツランダルクの嫡流。憎き敵だ。
彼がたどり着いたのは14日後のことだった。部下が時たま苦しそうにするアドルフを気遣って、遠回りでももう少しゆるやかな道を選んだからである。
「アナキン=スカルファッカーをここに呼べ。彼だけだ」
北の隠れ家に入ったアドルフは、即座にアナキンの招聘を部下達に命じた。アナキンは今、魔道学問所で悶々とした日々を送っているという。祖国がイーガに戦争を仕掛け、何故こうなったのか考え込んでいるというのだ。
果たしてその3時間後にアナキンはやって来た。真夜中になっていた。アナキンが顔を見せるとアドルフは疲れ切った身体と、身体の節々から強い痛みを覚えつつも、柔らかな笑みを浮かべて彼を抱きしめた。
「よく来たね。久しぶりに会えてうれしいよ」
「殿下こそ。して、今日は如何なるご用事で、僕を?」
よく聞いてくれた。アドルフはアナキンに告げる。魔族殺しの剣の習得を完成してもらう。これまで飛ぶための基礎知識や技術を教えただけで、実践に使える技は体得させていなかったと語った。
「その為には……」
「邪悪な魔族を君の手で葬るのだよ。私は君の為に探して見つけた。このイーガで暗躍していた悪の手先をね」