※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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第一回

 さて、時は移り変わってホーデンエーネン王国暦349年の1月。

 

 イズヴァルトは遠くカントニアにあるサガミニア地方の奥地にある、ツックイーの森のエルフの里に移り住んでいた。

 

 ツックイーに住む銀髪白肌のエルフ達は、サガミニア=エルフと呼ばれている。風と森の精霊達の末裔である彼等彼女達は、恐ろしく優れた魔法を扱う戦士でもあり弓の名手であったが、平時は穏やかで呑気者だった。

 

 イズヴァルトがここに居ついた理由は諸説ある。その内で一番有力なのは、旅の最中に死に瀕する病に倒れてしまった。この里に住むエルフの女医のイナンナの治療を受けていたからだという。これははっきりとした事実であった。

 

 おおよそ4年。イズヴァルトは病気と闘い続けたせいですっかり変わり果ててしまった。かつては茶色かった髪は全て銀に近い白髪になり、立派な体格もいくらか細くなってしまった。

 

 そして彼は傷心の日々を送っていた。結婚を約束するまで愛していたマイヤ=カモセンブルグが、心変わりを起こして知り合ったイーガの王子と結婚してしまったのだ。もっとも、あまり身分が高く無いので妾という立場であったが。

 

 しかしマイヤとその王子は仲睦まじく、フェアディナントという男児まで為してしまった。高貴なる者に恋人を寝取られ、奪い取られてしまったイズヴァルトはすっかり騎士の意気が失せ、惰弱になってしまった。

 

 別れを切り出された時マイヤは、豪奢なドレスに身をまとい、濃い化粧をして宝石をじゃらじゃらと身に着けていた。まるで人格が変わったかのように、高慢で自分の美貌を鼻にかけたような笑い方をして、イズヴァルトを不愉快にさせた。

 

 それだけではない。夫である人物に「昔のセフレ」などとそっけなく紹介した後、イズヴァルトを激しく罵り、嘲り笑った。

 

「あんたなんてちんぽが取りえの貧乏騎士、もう愛想がつきましたの」

「イズヴァルトは好きなだけ、いろんな女の子といちゃいちゃしていればいいと思うよ!」

「さようなら私の子供時代のいい人! 思い出として残したいのでもう二度と醜い今の姿を見せないで、ばいばい!」

 

 あれだけ愛し合ったのに、どうしてここまで心変わりをしたのか理解できない。けれどもマイヤは新しい人生に希望を抱き、幸せそうにする姿をイズヴァルトに見せつけ、絶望させた。

 

【ギルバートによる注:講談もののこの部分の記述はあくまで脚色である。実際のマイヤはこの様な別れの切り出し方をしたとは、ホーデンエーネンでのみ言い伝えられているだけである。】

 

 そうしてイズヴァルトは剣を取って武を振るう事をやめてしまった。今はエルフの村で隠居老人みたくのんびりと暮らしていた。

 

 親しくなったエルフの子供達と趣味のギターやリュートをかき鳴しては謡う。その夜に始まった宴会で、イズヴァルトはギターを持ってエルフの子供達とともに舞台に立った。

 

「一曲。謡わせていただくでござる」

 

 エルフ達が拍手をし、口笛を吹いて喜んだ。子供達の中にトランペットを持つ娘がいた。一番年上のオルタンス=イタベルティア。今年で1402歳になるサガミニア白エルフの少女だ。

 

 オルタンスはトランペットの名手でもある。イズヴァルトはギターを持って立ち、かき鳴らし始めた。じゃーじゃんじゃじゃん。生の音ではない。電撃魔法を封じ、激しくてたわんだ音を鳴らせる、エルフ達の魔法楽器であった。

 

 じゃーじゃんじゃじゃん。嘆きの慟哭なのか怒りの叫びなのか、どちらともとらえられる気難しいかき鳴らし方だ。イズヴァルトはギターの名手でもあった。

 

 子供達がドラムやベースを鳴らし始める。するとオルタンスはトランペットを吹き始めた。ぷいーっぷぷぷーぷぷぷぷぅ。抑圧された者のくすぶった心情を表しているようだ。

 

 彼女の悩まし気なラッパの演奏が続いた後、イズヴァルトは大きく声を張り上げて歌い始めた。

 

「嗚呼、悲しいかな。街のお空は晴れ晴れでござるのに、人の心はドン曇りでござる!」

 

 山も谷も越える様な積みやまぬ苦悩はあの青空にはない。けれども人は歳を重ねるごとにわからない事や望めないものばかりが増えていく。ああ、なんて空しいのだろうかという悲し気な歌詞を、エルフ達をしんみりさせるような美声で歌い上げた。

 

 演奏が終わる。万雷の拍手だった。やっぱりイズヴァルトさんは素晴らしい歌い手ズラよ。女達が大げさに褒め、男達は目に静か涙を湛えていた。

 

 褒めまくられたにも関わらず、イズヴァルトの顔は生気が無かった。それもそのはず、心の中では別れたマイヤのことばかりを思っていたからだ。自分がふがいないゆえに彼女に捨てられてしまった。その寂しさと虚しさだけが胸に残るのみ。

 

 舞台から降りると頭つるっぱげの大男が、ぱちぱちぱち、と拍手して迎えてくれた。この里で知り合ったエドニア人の元傭兵・マルカス=サダルファスであった。イズヴァルトより13歳ほど年上。

 

「いやあ。いつ聞いてもイズヴァルトさんの演奏と歌声は素晴らしいぜ!」

 

 一緒に商売をやれて良かったなあと涙ぐむ。この男は剣を振るのをさぼり、歌ばかりを謡うイズヴァルトの才能に目を付け、彼専属の『げいのうまねーじゃー』となった。イズヴァルトをエルフの里近くのニンゲンの村や町に連れて演奏会を開くのである。

 

 イズヴァルトの歌にはニンゲン達も歓喜し、演奏会は毎回満員御礼であった。マルカスはエドニアでも凄腕の戦士であったが、こういった商売事も得意だった。

 

「で、明日はアーツギで演奏だからな。今夜は酒を飲まずにゆっくり休めよ?」

「わかっているでござるよ。マルカスどのも長旅に備えてゆっくり寝るがよいでござる」

 

 おやすみでござる。そう言ってイズヴァルトはオルタンスらにも頭を下げると、下宿先でもある女医のイナンナの家に戻った。

 

 イナンナは宴に参加せず、集めた薬草をすりつぶして調合を行っていた。彼女はいつもこのような薬づくりを行っている。

 

「イナンナどの。先に眠らせていただくでござる」

「わかったズラ。オラももうそろそろ寝るから明かりを消すズラ」

 

 イナンナは天井にぶらさがっていたカンテラの中で燃えていた炎を、左手で印を切ってかき消した。家の明かりは彼女の魔法によるものであった。

 

「お休みでござるよ、イナンナどの」

 

 イズヴァルトは着ているものを全て脱ぎ、寝床に着くと、すぐに寝息を立てた。イナンナは服を脱いでそっと寝床に入り、イズヴァルトの懐に潜り込んだ。

 

 すやすやと寝息を立てる彼のペニスは、とても大きく膨らんでいた。イナンナはそれを指でこすり、弄んで硬くさせた。

 

 イズヴァルトを仰向けに倒した。そこにまたがり、潤んでいる秘所に沈み込ませた。イナンナは甘い溜息をついて腰を動かし始めた。

 

 下腹で強い性感が起こる。エルフの膣はサキュバスほどではないが鋭敏だ。腰を動かすたびに快楽が強くなる。イズヴァルトも気持ちの良い夢を見て笑顔になっていた。

 

「ううっ……マイヤどの……」

 

 もっとオラの夢も見て欲しいズラ。そうつぶやいてぐい、と腰を動かした時、イズヴァルトは射精の快楽を夢の中で経験した。

 

「うふふ。拙者はもうあかちゃんのもとをだせないでござるよ? どうしてそんなに入れたがるでござるか?」

 

 眠りながらぼやきつづけるイズヴァルトを、イナンナは気が済むまで慰め続けた。何度も覚えた快楽の波で彼女も心地よく眠りにつくことが出来た。イズヴァルトの寝言を聞きながら眠りについた。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 同じ頃である。ヒラッカ河口にあるヒラッカの港町に、騎馬の民の装束で身を固めた一団が船から降り立っていた。真っ暗闇の港から馬に乗って出る彼等はおよそ2000。その中に『ひめさま』と男達に呼ばれていた娘がいた。

 

 闇の中でもクッキリと見えるような金髪を垂らした、10歳ぐらいの少女だ。背中には弓と箙を背負い、気の強そうな顔をしていた。

 

「ここがヒラッカの街か。お前たち?」

「はい。博打が楽しめると評判だそうで。ひめさまも『ぱちんこ』や『すろっと』を楽しんでいかれますか?」

 

 側にいた者が尋ねると、彼女は手に持った鞭で相手の腕を叩いた。その様な遊戯にふける暇はない。我らは皇帝陛下の頼みを受けてここまで来たのよ。

 

「快楽や財物に目をくらまされるな! 目指すはツックイー! エルフどもを狩るのみぞ!」

 

 皆にひめさまと呼ばれた少女は告げる。まずはこのヒラッカに滞在するミツクニュモス=ミートパトロスという男を探し出し、馬を駆って北へ向かう。

 

 立ち寄る途中の城市で、自分達を盗賊と思い込んで兵を繰り出す者がおればそれを皆殺しにし、街の前で首を掲げてやれ。ただただ突き進むのみである。

 

「ヒッターチの餓狼ども! 我に続け! 偉大なる大帝国の尖兵として、サガミニアにて功を成し遂げよ!」

 

 応。皆が鬨の声をあげ街を騒然とさせる。果たしてこのひめさまは街はずれの賭博場でミツクニュモスという男を見つけて連れ出し、2000の騎馬の民と共に一心不乱に北へと向かった。

 

 明けて次の日。奇妙な一団が北へ向かっているという話がヒラッカ河沿いの各自由都市に広まった。サガミニアには1つの国は無い。広い平野に自治都市が点在して同盟を結んでいるだけだ。

 

「もしや、東のエドニアが攻めてきたのか?」

「いいや、騎馬を駆っているというからイワッキ=オータニアの騎馬軍団かもしれん」

「多分だがマリーヤだろう。北方の騎馬の民みたいな格好をしていると聞いた。多分あいつらに金を渡してサガミニアの混乱を狙っているのだろう」

 

 よくわからぬがこれは一大事。諸都市は守備兵を出し合って軍団を結成した。たかだか5000にも満たぬが、それでもこのサガミニアでは大軍だ。

 

 果たして、サガミニア諸都市の軍勢と2000の騎馬の民は、ヒラッカとツックイーの中継地点であるアーツギの街近郊で対峙した。

 

 騎馬の民は恐ろしく獰猛だった。騎馬弓で連射を仕掛けて連合軍をたじたじにさせ、ひめさまと呼ばれる少女がサーベルを抜いて突貫をかけると、命知らずにも突っ込んで斬りまくる。

 

 ものの20分で連合軍は惨敗し、彼等が逃げ込んだアーツギの街は大混乱だ。即座に籠城戦の支度が始まったが、騎馬の民はそれに目もくれず戦場に打ち捨てられた敵と仲間の死体を置き去りにして北へと去ってしまった。

 

 この話は2日後に、ツックイーのエルフの村へもたらされる事となるのだが、さて、イズヴァルトはこの騎馬の民らと刃を交える事となるのであろうか?

 

 その続きについてはまた、次回にて。

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