聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
イズヴァルトが驚いた話というのは、ウーラ要塞の北に突如として1万以上の大軍が現れたということだ。白馬騎士団の目を盗んでツックバー領内に入り込んでくるとは。
別の早馬の知らせによれば、南方から国境を越えて攻めていたツックバー軍2万は、5日前の戦いの後に這う這うの体で国境付近の城市に戻ってきたという。
ヒッターチ軍は総じて騎兵、という話であった。ヒッターチは良馬が育ちやすく牧場が多い。市井の者にも騎馬を嗜む者が多かった。
「行軍途中に左右から騎馬矢を射掛けられ、たじろいだところで猛突撃を喰らいました。我が方は惨敗です。あれは多分、ヒッターチの速攻弓騎兵団と突撃騎兵団が出てきたのでしょう」
ヒッターチは騎兵主体だ。弓騎兵と白兵戦専門の突撃騎兵を、局面に応じて交互に併用する戦法を取っていた。
近年は投石や爆雷投げも行う騎兵団も創設された。『
停戦の使者を出したというのにお構いなし。ツックバーの重臣らはため息をついた。
カントニア最大の規模を誇るウマヤーノを除けば、軍事でヒッターチに勝てる国はなかった。
ツックバーはマリーヤやウツノミーアと組んだ上で、やっと勝てるための策を考えられる、という規模。人口こそ多かったがヒッターチと比べ、軍事に力をかけていなかったのだ。
「ヒッターチがいよいよ攻めてくる。イズヴァルト殿……」
スガヤツク公がイズヴァルトの部屋に訪れて尋ねた。下半身丸出しで。全裸の女エルフの尻を掴み、立派にそそり立ったペニスでアナルを叩き貫きながらであった。
「お”っ! お”お”っ!! スガヤツクさんのちんぽ、気持ちよすぎ……ズ、ラ、よ”、ッ!!」
「……スガヤツク公どの。尋ねる前におちんちんはお控えいただきたいでござる」
「やや、すまない。つい夢中になってしまってな……」
ツックバーの重臣・廷臣らはもれなく女エルフ達とのただれたセックスの虜になってしまっていた。
しかし数千年の経験を積んだ極上のフェラチオを受けたり、極上の娼婦にも勝るめくるめく性交の最中でも、政治や軍事のことに頭を巡らせられる。英才教育の賜物だ。
「手を貸していただけるか? 貴公の武勇を頼んでのお願いだが?」
「何かがおかしいと思うのでござるが、まあお引き受け致そう」
イズヴァルトはすぐさま戦支度をしてウーラに向かった。パオレッタとマリアが同行した。一番脚が早くて頑丈な馬を借りたから、要塞までの道を、ほぼほぼ全速力で駆け抜けた。
ウーラ要塞に到着した時、イズヴァルトは北門の方角にたくさんの篝火を燃やすヒッターチの騎馬軍団を見つけた。ついてきたマリアに呼びかけた。
「あれに突っ込めばよろしかろう。ヒッターチ武者の実力。とくと目に焼けつけさせてもらうでござるよ」
「いや、そもそもオラ達を雇ったのがヒッターチなわけズラ。敵が違うんじゃないか?」
「これはツックバーに対する義理というものでござる。しかし決して相手を討ち滅ぼすことはせぬゆえ、ご安心めされよ」
さあ弓矢を。代わりにパオレッタは小型の連弩を渡した。魔法で射程距離を300メートル近くにまで伸ばしている。諸国の武者がよだれを垂らして欲しがる代物だった。
「これ、あまり鍛錬の成果が見られぬゆえ、好いてはおらぬでござるよ?」
「わがまま言うなズラ。へんにカッコつけるとろくなことにならねえし。矢に『爆炎弓箭』を封じ込めて脅しておけ」
オラ達に教わった通りにやれ、とパオレッタが助言した。爆炎弓箭ならイズヴァルトも習得している。本家本元らに「ぶったまげた!」と言わしめる程の威力であった。
いざゆかん。イズヴァルトは単騎駆けでウーラ要塞の北門を出た。要塞の北側は荒涼とした平野が広がっていた。このあたりは肥えているが防衛の為、畑作りは許されていなかった。
ゆっくりと馬を歩かせて相手の出方を伺った。篝火はあまり動いていないようだった。もしや松明によるめくらましの偽計と思い千里眼の魔法で物見をしてみたが、違った。
「暗黒卿の計略の逸話を思い出してもしや、と思いきや、違っていたでござるな。それではやらせていただくでござる」
手綱を引き、馬の鼻を横にそらせた。鞍の物入れに入れていた連弩と矢束が入った箱を取り付けると、印を切った。爆炎弓箭の魔法が矢の1本1本に封じ込められた。構える。
「武の神、ハチマンウーサの名にかけて。とくとご覧ぜよ、ヒッターチの武者らよ!」
連弩を高く掲げ、幾本もの矢を放った。しばらくしてあちらちらで爆炎があがり、熱風が起こった。
篝火らは大きく揺れ、ちらほらと動き始めた。合図となる角笛。ラッパの音が闇夜に響いた。
来るでござる。イズヴァルトは『覇王の剣』を鞘から抜いた。今度ばかりは大軍を相手の戦いとなるから布を巻き付けない。多少の死傷者は致し方がないと自分に言い聞かせた。
「ここからは修羅でござる! 女神ガンガに遭わばガンガを斬り、極悪オーガに遭わば極悪オーガを斬る! いざ、でござる!」
夜の荒野をイズヴァルトは駆けた。闇夜というが、空高く見上げれば無数の星々がまたたいていた。夜戦を学ぶ絶好の機会とこの猛者はほくそ笑む。
しかしヒッターチ側の様子は違っていた。向かってくるのは全軍ではなく二十騎ほど。しかも白旗をあげている。降参か和議の時に掲げるものだ。
「待たれよ! 待たれよーッ!」
「我らは和平の為の使者だ! 戦うなどサラサラも無い!」
おろ。イズヴァルトは馬に呼びかけた。武者として存分に暴れたいという欲求を抑え、やって来た二十騎に問いかけた。
「和平! 貴殿ら、何者でござるか! 拙者はホーデンエーネンのイズヴァルト! わけあってツックイーのエルフどのらにお味方し、ついでにツックバーの先手衆を請け負っているでござる!」
向かってきた二十騎のうち、中心にいたやや背の低い鎧姿の者が、「なにっ!」と叫んだ。
「イズヴァルト! ホーデンエーネン最強の若武者と言われた者がなぜカントニアに? 僕は騙されているのか!」
□ □ □ □ □
ヒッターチ軍の二十騎はイズヴァルトに、すぐさまツックバーとの和平会議を行いたいと呼びかけた。
二十騎のうち1人はヒッターチ南方軍の大将、ハザル=センボノクス。ヒッターチ皇帝家の親戚に連なる人物でもあった。アキレウス皇帝が信頼する猛将とも聞き及んでいる。
「ピサロ=アマルフィというやつが空飛ぶ動物に乗って知らせに来てくれた。彼奴は我らとも知り合いだ」
「そ、そうだったでござるか。して、ピサロどのは?」
「多分絵を描いているだろう。あの……ワイバーンだったっけな。そいつの尻穴を詳しく調べたいらしい」
女や美少年ならともかく、動物の肛門まで絵に描きたいという趣味はよくわからんとハザルは苦笑した。
しかしイズヴァルトは、どうにも気になって仕方がなかった。一番背の低い若武者。ハザルに尻穴を貸す陣中色小姓と聞いたが、どうにも只者ではない気配がぷんぷんと漂っている。
「イズヴァルトさま。急がねば。はやく謁見させてくださるようお願いいたします」
イズヴァルトはハザル将軍以下、二十騎を連れてウーラ要塞に入った。通信魔道士に頼みオダキソフィアに知らせてもらう。スガヤツク公が出て急ぎ支度を整えると返事があった。
パオレッタとマリア、数名のツックバー武者を加えてオダキソフィアへと走った。途中、小姓は2人の女エルフをしきりにちらちらと見た。
「……イズヴァルトさん、なんなんズラあのぼうずは?」
「オラたち、そんなにカメムシ臭えかなあ?」
彼女達は自分の美貌を誇らない。謙虚を徹する。爆乳でむちむちの『ドエロい』クリスタと、その医術の師匠で浮世離れした美貌を持つイナンナがいたからだ。
「南のエルフ衆を値踏みしているのでござろうか?」
「あまり気持ちよくねえズラな」
「どうもあのこぞう、薄気味悪い気配を漂わせているず」
絶対に貴人にけつあなを貸すだけの陣小姓ではないとマリアは見ていた。そこらの尻穴貸し少年が漂わせている色気や媚びが、あの小姓からは感じられなかったからだ。
オダキソフィアの宮殿に入った。玉座についていたのはオーダレイオス1世ではなく、その孫でありハッタール皇太子の長男・オーダレイオス2世だ。
新たなる皇位継承者となったこの少年はいきなり叩き起こされ、玉座に座らされた。心ここにあらず、といった顔でぼんやりと前を見ていた。
オーダレイオス2世はこの時14歳。体格と顔立がいかつく、髭が生えていた。妾が3人と子供が2人いた。祖父と父に受け継がれた股間の大砲と砲弾庫は、なかなかのものだった。
「わしはねむいぞ……」
そう言って目をこすったのは、3番目の妾のせいだった。まだ子を産んでおらぬ彼女はオーダレイオス2世に先月からせがみ始め、毎日相手をしていたのだ。
3番目の妾は陰部から、男の濃いわきがの様なにおいを放つ。それに悩まされながらねぶり、潤わせると代わりに己の陰茎や精液のにおいで中まで満たす。
しかも勃起が持続する催淫剤と、交合がさらに気持ちよくなる麻薬を用いてだ。だから彼とその妾は睡眠不足になっていた。沐浴後の同衾後、明け方まで寝ずにやってしまうからである。
オーダレイオス2世は目がどんよりとしていた。眼には隈もできていた。玉座に座りながら、身体がだるいとぼやき続けた。
「ねむい。わしはもう戻っていいか?」
ご辛抱なされませ、と廷臣たちが注意した。オーダレイオス2世は大あくびをした。英傑ハッタールは我が子を育てる前に死んでしまった。悔やむべきことだった。
イズヴァルトとヒッターチからの使者ら謁見の間に入った。ハザル=センボノクス以下、ヒッターチの武者達が右膝をついて頭を下げた。ハザルが丞相に呼びかけた。
「夜分の不意のご訪問、容赦願いたい!」
「こちらこそ、寒い夜風に吹かれてここまで来られたこと、恐悦至極に存じますぞ……さて」
ヒッターチ皇帝からの親書があればいただきたい。そう呼びかけるとハザルの尻小姓と名乗った若武者が立ち上がった。
兜を脱ぎ、金色に輝く髪とりりしい顔を顕わにすると廷臣のうち数名が目をまん丸くした。
「ツックバーの皇太孫殿下、重臣の皆様におかれましては、こたびの夜分の訪問、誠に申し訳なき候の儀! なれど事は緊急を要する! 皇帝陛下からの親書については、なにとぞご容赦願いたい!」
声を聴いて重臣たちはどよめいた。
「こ、小姓ではないぞ!」
「この若者は!」
まさか、という声があちらこちらに起こり始める。イズヴァルトとパオレッタは、眠たそうなオーダレイオス2世をじっと見つめる小姓に、敵意含みの視線を注いでいた。
さて、この若者はいったい何者であったのか?
その続きについてはまた、次回にて。