聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
「ヒッターチ軍が我が国に攻め入った」
コーガ王国の真の支配者『大御所』であるヘファイスティオン=キツレティスがその知らせを聞いたのは、侵攻から10日してからだった。
それまでずっとウツノミーアにいた。領主達に招かれてだ。おっぱいが大きな女オーガたちが酌婦となり、ふっくらとした乳首を吸いながらの大宴会を楽しんだ。
しかし大きなおっぱいを嫌というほど楽しんだら、小ぶりの乳房が欲しくなるものだ。
自分の代わりに魔道要塞『サイコ=ロップス』発掘の視察をしてくれているエレクトラの、小ぶりで形の良いちっぱいをしゃぶるのを愉しみにコーガに戻ったのだが。
「なんだと! どうしてそれを早く言わんかった!」
ヘファイスティオンは激怒した。『傀儡』のエヴァンゲロス=オユミレトスがヒッターチの侵攻を知らせてくれなかった事にだ。
あろうことかこの愚鈍な操り人形は、ヒッターチの侵攻を虚報だと思っていた。せいぜいが、ツックバー北部で暴れまわっている盗賊団か、流浪の傭兵団ぐらいであろうと。
「す、すみません……」
「やっぱりオユミレトス家は儂から天下を奪えぬよな! お人好しの呑気者にもほどがある!」
「あ、でも大御所様も、ウツノミーアじゃオーガ女のでかぱいに溺れていたわけですよね?」
「否定はせん。しかし国に居たそなたは何をしておった?」
仕事をしておりました、とエヴァンゲロスはきっぱりと答えた。西の河岸都市の商工会が経営する楼船ホテルでの、5月のお祭りのスピーチを考えていたという。
「うん……それもまあ、大事な仕事ではあるがね」
「ついでに自作の詩を取り入れようと思っていたのです」
「できたのか?」
「それだけは直ぐにできましたよ。えっへん」
「ほう……どんなのだ? いいから暗唱してみせい」
大御所に求められると、エヴァンゲロスはその場をぐるぐると歩きながら朗じはじめた。
「船を浮かべて楽しむは、母なる恵みを我らに与える豊かなキーヌの流れなり。
幾千年月経てもなお、流れはやまず。
国と人が滅びても、キーヌはこの大地を潤し続ける。
アプサラーの女神のガンガとインダの姉妹、こぞって天より降りて水辺で遊ぶ。
もし叶うならば。この船上の楼閣で美女達を呼び入れて盃をかわし、共に美酒と水波に酔いしれんことを」
どうです。エヴァンゲロスは得意満面だ。しかしヘファイスティオンは眉をしかめていた。
「おい、今の詩は」
「なんでしょう、大御所様?」
「儂がその楼閣船の進水式に詠ったものとそっくりではないか!
20年前のものだぞ!」
「いやはや。どこかで読んだ事があるなあと常々思っておりましたが。大御所様の詩だったとは?」
「自分が造ったものを出せ、エヴァンゲロス!」
文才さえ無いとは。つくづく、この王はどうしようもない阿呆だとヘファイスティオンは嘆いた。
ちなみにだがエヴァンゲロスがそらんじたのは、べろべろに酔った大御所が戯れ程度で作ったものである。それを記憶するだけでも大したものだ。この不肖の傀儡だが、本当は豊かな詩の才能を持つ人物であった。
【ギルバート=カツランダルク注:後年、エヴァンゲロスは国中の詩人の作品を集め、『コーガ勅撰集』なる書を何巻も世に出した。彼自身も『ぱくり』ではない名作をいくつも世に送り出している。政治的には無能だったが、文化の担い手としては一流だった。】
「で、ヒッターチ軍はどうなさるおつもりでしょうか、大御所様?」
「こうなったら後には引けんよ。戦う」
ただし、戦うのはヌマタラシュクのエルフ達である。コーガの防衛兵団は絶対に手を出させない事に決めた。ヒッターチとヌマタラシュク=エルフらをぶつける方法は考えてあった。
大御所は早速、要塞発掘の『名目上』の総指揮者、エルフのミヒャエルを呼び寄せた。エルフ族にしてはいまいち美男ではない彼は、先日見た時よりも、もっと美美しい鎧で輝かせていた。
てっぺんに高さ50センチもある亀頭と陰茎の兜をかぶり、鎧にはエルフの男女の色付けされた交合図。小手やすね当てには宝石が散りばめられており、左右の肩甲にはきゅうりでの自慰でおしっこを漏らす、エルフの童女の銀細工像が取り付けられていた。
この華美にも程があるいでたちを見たヘファイスティオンは、どこからこんな具足を作る金が出ているのだと尋ねた。
「ははは。国元のおっとうが寄越してくれたものだべえよ。ヌマタラシュクの里で作った、新品の鎧だべえ」
「戦いにいささか不向きな感じもするが?」
「わははははっ! むしろこの鎧の美しさにビビってしまうべえよ!」
「……そうなることを期待したいが、さて、私からも貴殿に贈り物がある」
ヘファイスティオンは右腕につけていた、黄土色の腕輪をミヒャエルに手渡した。『サイコ=ロップス』の操縦者の証であった。
「お、おれにこんな大事なもんを預けてくれるんだべえか!」
ミヒャエルは感激した。彼とてヒッターチ軍がコーガ領内に侵入している事を知っているはずなのだが。
「もしよろしければ、の話であるが」
「なんだべえ?」
「移動要塞をヌマタラシュクに譲りたい。すでに魔法動力炉が動作できていると報告にあがっている。浮遊実験も完了し、あとは最終的な整備で終わるそうだ」
肝心の魔道兵器に関して、調べていたエレクトラから報告があった。
「一番上の階には沐浴場がある。中は200以上にも及ぶ部屋がある。便所が各階の共同というのはいささか辛いが、住まいとしてなかなかに良いだろうね?」
「ん? 何言っているんだべえ? おれは動く砦として用いるつもりだべえよ!」
要塞をヌマタラシュクに持っていくとミヒャエルは言った。
「早く動かして、カタシナシュフのキファニアにがつんと言わせてやるべえ。あいつらにいつもけちょんけちょんにされてるからなあ」
「なるほど。ミナッカミニアにか。ところで、発掘にかかった費用はいかがしよう」
「んなもんいらねえべえよ。カタシナシュフが持ってるミスリル銀山とかをさっさと奪えば、お釣りがたくさん出てくるぐらいになるべえ。あっはっはっ!」
ミヒャエルはからからと笑った。発掘や警備に従事するヌマタラシュクのエルフたちは、発掘完了後に報酬が与えられる契約だった。食事と資材と寝床はコーガ持ちだが。
腕輪を持ってミヒャエルが去った後、ヘファイスティオンは書記を呼びつけた。書記は丸まった紙の筒を抱えていた。
「儂がいないあいだ作らせた、あれはできているか?」
「はい。そうかと思って持参しました」
書記はその紙を広げた。正四角形のさいころの様な物体が、空に浮かんでいる絵が描かれていた。その紙の中には新規入居者募集中、という文字が。
「ふむふむ……古代ムサシノ帝国の栄光は不滅。長き時を経て空に浮かぶそれは、在りし日の輝かしさで今を飛翔する、
「さようで。これでコーガはサイコ=ロップスを『空飛ぶ住宅地』として国外に喧伝することができます」
「うん。そうだな。ああそれと、何かあった時の為に秘密文書を消し去りたいから、後で家来にかき集めさせろ」
「はい。お心のままに……」
ヘファイスティオンは安心した。それから数時間してからである。コーガで見つけた愛人にフェラチオをさせていたミヒャエルの元に、ヒッターチ軍侵攻の情報が届けられたのは。
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大御所が居ない間、エレクトラは発掘現場に入り浸っていた。移動要塞の随所にある魔道技術を調べるのが楽しかったからだ。古代ムサシノ帝国、恐るべしと驚かされるばかりであった。
ただし経年劣化が著しいのは否めなかった。古代文書によれば1キロメートルぐらい上空を浮かぶ力を持つと言われていたが、今の力では果たしてどれくらいになるのか。
なかなかに充実した毎日を過ごしていたのだが、その日が彼女の調査の最終日となってしまった。
昇降機のからくりをエルフ達と調べていた時、美々しい鎧に身を飾ったミヒャエルが、多数のエルフの武者を連れてやって来たのだ。
「ほう。おめえが十文字槍のエイオンの愛人だった、イーガのエレクトラだべえな?」
ミヒャエルの顔にいやらしい笑みが浮かんでいた。女を値踏みする目だ。彼はエレクトラを、多少歳がいっているが上物とみなした。
それをエレクトラは気づいていた。抱かれてやってもいいのだが、あまり大物になれそうにも無い、利用価値が無さそうなエルフの青年だと思った。
「お初におめにかかれます。とは言うものの、ミヒャエル様は私より前に、コーガに来られたんじゃあございやせんかね?」
「発掘の仕事以外にも、おれはたくさんの用事を抱えていたべえよ。おめえ、エイオンが言ってけど、とても強い魔法戦士らしいべえな?」
「強いかどうかは保証しませんが、魔法戦士というのは確かでさぁ」
ミヒャエルは笑いながらエレクトラの肩を叩いた。ヒッターチ軍が攻めて来たから追い払うのに手を貸せ。ヒッターチ軍は東にいる。王都近郊に着くまであと5日も無い。
「つまり急ぎ蹴散らせねばならんべえ。この『サイコ=ロップス』を飛ばしてムサシノ帝国の破壊兵器を、あいつらに食らわせてやるべえよ」
その後にカタシナシュフをこれで制圧してやる。ミヒャエルは意気込んでいた。その手助けに狩り出されるわけだが、その日あいにくエレクトラはいつもの槍や鎧を持って来なかった。
「えへへ。丸腰ですんで、ちょっと部屋に戻って武器を取ってきてよろしいでしょうかねえ?」
「その必要は無いべえよ。たった今、おれたちの武器の替えを運び込んでいるところだべえ。ヌマタラシュクの里で鍛えた剣があれば槍も具足もある。俺に股を開く以外にも、おめえの活躍の場は作ってやるべえよ?」
用意がいいことで。エレクトラはにっこりと笑って頭を下げた。内心では逃げる口実が無くなったと悔しがった。
それとミヒャエルの態度と性格を見て、性交で楽しませてくれる様な男ではないと見た。こういうやつは物事をうまく運んでも、どこかで必ず失敗するでしょうね。
ついて来い、と言われたエレクトラは、昇降機に入って中央の階層に連れて来られた。
入り口から続々と、弓や槍を持ったヌマタラシュクのエルフ達が入って来ていた。この半年以上、発掘現場で働いていた者達だ。
総勢で900人ほどいた。しかし入って来たのは武器防具を渡された彼等だけではなかった。
やや丸まった尖り耳の娘たちが150名ほど。ニンゲンで言えば12歳から16歳ぐらいに見える。
どの娘も金髪かプラチナブロンドで愛らしいが、素足にサンダル履きで、鮮やかな色合いの衣と裾の短い貫頭衣を身につけていた。
「へえ。ハーフエルフの娼婦さんたちじゃあございませんかね?」
「おれらが慰安婦として連れてきた娘や、このコーガで出稼ぎに来ていたやつらを集めてきたべえよ。みーんなウマヤーノの娼婦だあ」
ウマヤーノのハーフエルフで、ニンゲンの街や村に娼婦として働くのは殆どが、ヌマタラシュクのエルフ男とニンゲンとの間の娘で、魔法や知能に恵まれない者達だ。
美人ばかりなのだが、かの国での暮らしぶりはひどかった。実の父親には無視され、母親は貧困層の女であるがゆえに教育は施されなかった。
そのせいで娼婦として生活せざるを得なかった。しかも最低ランクの『膣乞食』と呼ばれる売春業で働くのだ。
酒場の便所の娼婦や兵士達の慰安婦。旅の宿での添い寝係や街のそこかしこにある公衆便所の『精虫便器』と呼ばれる箱の中に、一日中入っていたりとしている。
半亜人ゆえの感じやすく強靭な身体と、長い寿命による遅い老化とで、安易な膣仕事に長く従事してしまうのだ。
彼女達のおかげでウマヤーノは、飯には恵まれぬが肉便器は充実していると昔から言われていた。
ただ、旬を過ぎた彼女達は大概、ニンゲンの弱者男性の中でも特にひどいの者の妻となるか、過酷な膣仕事のせいでハーフエルフとしては若死の部類で死ぬかだった。
「果たして、ウマヤーノなんかに戻りたいと思うでしょうかねえ?」
「何言っているんだべえよ? 故郷のほうが住心地が良いに決まっているべえ。けどよう、いまいちわからねえんだよな。どうして娼婦はコーガのほうが高いんだあ? ウマヤーノの倍はするじゃねえか?」
特にハーフエルフの娼婦は、ウマヤーノの市場の5倍ぐらいだとミヒャエルは教えた。そりゃそうだろうとしか言いようがなかった。
実際は30や40を越えているが、どの子も10代の若い娘に見える。しかも肌もあそこの具合も少女のものだ。においもである。
「あっしは思うんですがねえ。ヌマタラシュクの皆さんはニンゲンさんに産ませた娘さん達を、海外で働かせて金を持ってこさせる仕組みを作るべきなんじゃないかなとねぇ?」
「そんなめんどくっせえこと何故すんべえ?」
「あはは……面倒くさいですか」
だめな男だ。エレクトラはミヒャエルを見限った。逆立ちしてもカタシナシュフのエルフを打倒することはできまい。
兵士や娼婦や荷物が運ばれ、エレクトラが受け取った剣と鎖帷子を着込むと、魔道要塞サイコ=ロップスは浮かび上がった。
音も立てず発掘現場から出て大空に舞おうとする。東の湿原のその先には、続々と集結しつつあるヒッターチ軍とツックイーのエルフたちの部隊がいた。
かくしてヒッターチと古代ムサシノ帝国の超兵器がぶつかるわけとあいなるが、その勝敗はいかに?
その続きについてはまた、次回にて。