聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
ツックイーのエルフ、イナンナ=イセルローン。
彼女は古代ムサシノ帝国時代に、『森の蝮』として恐れられた暗殺者であった。
殺した相手は数百とも、数千とも言われている。古代ムサシノ帝国時代の暗殺者で双璧を為したもう一人の『やまねこ』とは、殺害数で競い合っていた。
イズヴァルトの時代の今でもカントニアで恐怖されている『やまねこ』とは違い、その商売においては彼女は引退した身であった。しかし腕は鈍っていない。暗殺においての人気者であるゴブリンや、ゾウズジャヤのエルフなど鼻で笑える程度の技術を持っている。
「オラがサキュバスさんたちと組めば、この2か月でほぼ全員の大貴族の首をあげられるズラ」
そうなるとその貴族の遺臣どもと追いかけっこをするハメになるだろうが、こちらは1万年を生きるエルフである。相手が先にへばる。どう逃げ切るのかに問題があったが。
「イナンナさん。そんなこと申し出ちまっていいのかよ?」
「かまわねえズラ。それで、イズヴァルトさんとトーリさん。どうするズラ? オラのことが信用ならねえってのなら、いっぺん実演してみせよっか?」
これは本心ではなかった。イズヴァルトを試していたのだ。先ほどまで怒り狂っていたイズヴァルトは急に青ざめていた。
(……根性なしのたわけが。)
でもそれでいい、とイナンナは安堵した。マルカスがイズヴァルトをなだめ、思い直すよう務めてくれるのにも助かった。
(おまんはそれでええズラよ。オラがやっていたような薄暗えことはしちゃなんねえ。)
けれどもイナンナはこの後、自分の心を試したことを後悔した。ペニスから口を開放されたトーリがかぼそい声で独り言を。
「できれば、ヨーシハルトスあたりを……」
(おまん、何を言っているズラか?)
トーリが振り向く。一瞬だけ彼女の瞳が紅くなり、3本足の鳥のようなものが映っていた。何かの魔法だろうか。イナンナは疑うのをやめた。
トーリはマルカスとイズヴァルトにも目を向けた。それからイナンナにこう言った。
「イナンナさん。その考え、ありだと思うわ。でも、最後の手段にするべきだと思う」
「ほうズラな。オラの提案は卑怯極まりないズラ」
イナンナはトーリの尻穴から指を抜いた。ほんのりと茶色く染まり、甘いにおいが漂っていた。ニンゲンよりも遥かに鼻がきくエルフでも、うっとりしてしまうようなにおいだった。
「イズヴァルトさん。そういう乱暴なことは考えちゃいけません。もっと平和的なやりかたで行きましょうよ」
「そ、そうでござるな……」
イズヴァルトもうなずいた。すっかり表情が落ち着いていた。マルカスはほっとため息をつくと、トーリに近づき勃起を彼女の口に近づけた。
黒々とした亀頭をトーリがついばむ。美味しそうに舐り、咥えていった。フェラチオを施しながら彼女は考えた。
(でも、その最後の手段は近いうちにやることになるわ。)
ヨーシデンに南天騎士団のうち約2万が集結。南天騎士団を探らせている、キャンディスというサキュバスから知らされていた。ルッソの子供を産んだ後、軍属の娼婦として潜入していた。
集めたのはヨーシハルトスと南天騎士団四大大公。イズヴァルトへの弾劾裁判目的だという。この2万の軍に関してはイズヴァルト達も知っていたが、軍事演習を兼ねた巻狩り程度だと考えていた。ド田舎のヨーシデンはよく、そうした訓練場になったからである。
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翌朝。昨晩遅くまでの兵士達に忠誠への『ごほうび』でついた汚れを沐浴場で清めたばかりのトーリのもとに、マルカスがやって来た。リリカとともにだ
。
2人はめいいっぱいセックスをして仲良さそうに連れ添っていた。マルカスの恋人のクリスタだが、ここ最近ずっと、王宮にいると気分が悪くなると理由をつけてトーリのもとに訪れなかった。街中見物をやっているという。
「おはようございます。マルカスさん」
「おはよう。トーリさま。で、昨日の話だけどよ?」
昨日、トーリに何度も濃厚な精を与えてくれたカントニア人に濡れた瞳を向けながら聞く。
「手を貸すぜ。もちろん、イナンナさんが承知してくれたらだがな」
「マルカスさん……」
「サキュバスの転移魔法は魔力消費が激しいってリリカに聞いたからさ、そん時は俺が一緒について行ったほうがいいと思ったのさ」
リリカがはにかんだ。マルカスのちんぽから出る精液にどれだけ身体が喜んだのかを思い出して濡れてしまう。それとマルカスの精力絶倫ぶり。貪婪だが子宮がろくに仕事をしないエルフが、子を孕むのも確かだろうと思った。
「俺も剣と魔法はそれなりに使える。イズヴァルトはホーデンエーネンを正すまでここにいるだろうから、俺もそれまで付き合いたい。登用してくれ。警備兵団でもなんでもいい」
マルカスは聖騎士団に入団できる実力の持ち主だと、イズヴァルトからは聞いていた。イズヴァルトには近々騎士団に戻ってもらうようにトーリは王に働きかけていた。
セインから提示されたのは団長補佐だ。ゆくゆくは今の団長のエルヴィンの跡を継いでもらう。このことはエルヴィンにも伝えていた。
北方にいるエルヴィンだが、通信魔道士から受け取った報告でこんなことを考えていた。イズヴァルトのことだから本陣にどっしりと構えず命令が出せないだろう。
軍略に長けた団員を副団長にして指揮の代行をさせたほうがいい。その為にはライナーが目をかけた人物を抜擢しよう。数名ほど。その中にはライナーの部下としてナガオカッツェにいる、ベートーベンが入っていた。
マルカスはカントニアで、傭兵部隊の隊長として活躍していたともトーリは耳にしていた。イズヴァルトの副官にぴったりだろう。しかし彼女の考えは別のところにあった。
「トーリさま。ホーデンエーネンで俺を雇ってくれ。話をつけてくれないか?」
「わかりました。近々、マルカスさんの仕官についてお返事いたしますね」
トーリはこの2日後の夜、マルカスだけを呼んでこう伝えた。アスカウ=タカイチゲンシュタットの家臣とする。ただし待遇は良い。トーリの直属の与力だ。事態によってはトーリの代わりに手勢を指揮する事もある。
「俺を、親衛隊にですか?」
「聖騎士団に加入いただくのも考えたけれど、マルカスさんにはイズヴァルトさんと私の兵団との連携役を務めて欲しいの。もしよろしければ、カントニアからマルカスさんのお友達を呼んでいただけないでしょうか。アスカウ領はいつも兵士を募集しているから歓迎よ?」
マルカスははしゃいだ。カントニアにいる傭兵仲間はいくらでもいる。ホーデンエーネンに来たい奴を呼び寄せるとトーリに誓った。
カントニアの武者は魔法が使える者が多くいた。火の玉を出すぐらいであるが、魔法がろくに使えないホーデンエーネンの武者よりも優れているとは言えた。
例え未熟でも魔法戦士なら心強い。トーリは王家との直接対決の為に手駒を揃えたかった。イーガ王子の妾となったマイヤが動いてくれるのも期待していたが、あちらは不確定過ぎた。
今夜もセインは他の妾のところだった。一向に孕まないトーリにばかりとするのはよくないとたしなめられたから、廷臣たちから意見申し立てがあり御成りはもう1週間伸びる事になった。
来て。ベッドに引き入れたマルカスは荒々しかった。トーリは散々に啼かされて絶頂に浸り続けた。夜明け前にマルカスが出ていくと、トーリは報告にやって来たカミラに早速尋ねた。
「南天騎士団は今どのあたりかしら?」
「ナガオカッツェ領に入り、ヨーシハルトス様の隊と合流しました。総勢2万1千といったところです」
「2万。何か起こっても王都を落とせない。でもアスカウは通るつもりかしら。そうはさせないわ……」
主街道でナントブルグに向かうと、進行ルート上に必ずアスカウ=タカイチゲンシュタットがある。そこを素通りさせるつもりはトーリには無かった。別のルートで行って貰う。
「ナガオカッツェ山地の裏手にヤマート大河の分流がある盆地があったでしょう。そこに枝街道があったはず」
「ヤマザキッヒ盆地ですね。確かに近道ですが、あの辺りは土地の起伏と森が多く、盗賊や山賊が良く出るという話でナガオカッツェ公は用いぬと思いますが……」
ナガオカッツェの西、ヤマザキッヒ盆地とそのさらに西にあるタンバレーネ高地はホーデンエーネン王家の統治外だ。険しい。土地質や天然資源は多いのだが、もとから住んでいた山の民の激しい抵抗のせいで、直轄地にも封地にもせず、王国は自治領として認めてしまった。
山の民はナガオカッツェの住民とは親しかったが、ヨーシハルトスを激しく嫌っていた。しかしこの山の民と山賊たち、もとはといえば戦国時代にホーデンエーネンの支配から逃れてきた他国の落ち武者らが先祖だった。
カミラ達カツランダルク本家に忠誠を誓うサキュバスらは、このタンバレーネの土着民らと通じていた。ホーデンエーネンへの反抗心で繋がりあっていたのだ。
「『山の民』らに話をつけてきて、カミラ。ヨーシハルトスの近辺に潜ませている女達にも、ヤマザキッヒ盆地を通る様に工作しておいて」
「承知いたしました。アスカウにいる武者達には、他領の武者を通さぬように伝えておきましょう」
「私からも他の領主らに働きかけておくわ……南天騎士団とナガオカッツェの兵は乱暴者ばかりですもの。平気で村を襲ったり旅人をカツアゲしたり。あんなのが通ったら経済が冷え込んでしまうわ。いまいましい……」