※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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『決別』

 イズヴァルトはエレクトラの申し出を断った。北キンキ(オーミゲニア)の王様になれとはいきなりすぎる。しかしホーデンエーネンが荒れているということは見過ごせ無かった。

 

 イナンナやクリスタ、助太刀してくれるというマルカスを連れ、まずはイーガに向かう。イーガで『かなり』の名声を得た、マイヤに力を貸してほしかったからだ。

 

 マイヤはわが世の春を謳歌(おうか)していた。イーガの王家に連なる人物の妾である身分から、イーガの国営魔道具工房『マイア=テクニカ』の主となり、莫大な私有財産を物にしていたのだ。

 

 高級住宅地に大きな自分の屋敷を建て、金の力に任せて様々な調度品を揃えていた。壺や名画はいわずもがな。大理石で作った女神像や立派な男根像などを自宅や別荘に飾って、人に誇っていた。

 

 はたまた、この女は自分が最も『かわいいところ』を熟知しており、全裸になった自身がしゃがみこんで尻からうんちをひねりだすところをかたどった、金めっきの像もいくつも造らせ、自宅や別荘の中庭に並べていた。

 

 家具も悪趣味と罵りたくなる様な、華美で数奇なものばかりである。エチウ諸島の美術工芸みたく、金箔を張りまくったベッドやテーブル、タンスばかりだった。イーガの『成金向け』工芸家が作ったものばかりだった。

 

 特に珍妙なのは、ムーツのオーガの里で作られているような、擬人化した牝の動物のぬいぐるみだ。ツノが生えた亜人の女達に人気のものだ。『めすけも』という言葉で言われているそれは、しっかり女性器も作り込まれていた。可愛いがどこか悪趣味なそれを、マイヤはたくさん集めていた。

 

 しかし彼女の家はどこにも、本棚や書庫は存在しなかった。少女の頃に漁る様に買い、ちんちんを咥えてたりおけつからうんちをひねっている間も読み続けた、文字という名の麻薬はもう摂取していなかった。

 

 イズヴァルトは彼女に会う前に、今のマイヤの様子を人々から聞いた。あまりにも尊敬を抱き難い成金婦人となってしまった。しかし人としての心はまだあるだろう。そう思って会う約束を取り付けた。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 イーガの王都・コーヅケーニッヒの北の郊外にある彼女の邸宅で、イズヴァルトはマイヤと3年ぶりに会った。その邸宅はかつて、貿易商人が愛人とイチャイチャするために建てた別宅だったという。

 

「あら。お久しぶりね、イズヴァルト?」

 

 マイヤはますます美しくなっていた。もともと背が高い方であったが身長は160を越え、おっぱいは100センチ以上にまで実っていた。けれどもかつての純朴さは伺えなかった。

 

 少女の頃にはしなかった派手目の化粧をし、黒にも見える蒼い髪には至る所に金細工を飾っている。クジャクの羽根でできた扇子を手にし、胸の谷間をあらわにした黒いドレスをまとっていた。そのドレスだが、ところどころに宝石を散りばめていた。

 

「お久しゅうござる。お元気そうで何よりでござる」

「おほほほほ。もう一児の母ですのよ? 15歳でおかあさんと呼ばれる立場ですわ。おほほ」

 

 マイヤは扇子で顔を扇ぎながら語った。妻となり、子供を持つ母となった。そうなると全身に漂う甘い香りが、更に濃くなってしまった。そのにおいのせいで出会った殿方から言い寄られるので、夫に許可をもらって口淫での浮気を続けているという。

 

「……ふむ。さようでござるか」

 

 イズヴァルトは動揺していた。愛らしいすけべえさは、『妖艶』と呼ばれるものに変わっていた。もともとあった人懐っこさが失せ、代わりに人を惹きつけて狂わせる魔の気配が漂っていた。

 

 イズヴァルトは歳月の流れの残酷さを知った。しかし彼女にはご助力を願いたい。知性や知識はもう期待できなさそうだが、財力やイーガにできたコネクションがある。思い切って申し出た。

 

「……そんなことを頼みに来たの? 森のカメムシくさいエルフさんたちを連れてきて、乞食をやろうとしているの? 見損なったわ!」

「そ、そんなわけでは……!」

「情で人を動かそうだなんて汚らしったらありゃしないわ! そんなに金がほしけりゃ、強盗でもすればいいじゃない!」

 

 怒り狂った彼女は聞く耳を持たなかった。家来を呼びつけ、数枚のイーガ銅銭を受け取った。それを掴むと、雨に濡れた子犬の様な目で見て来るイズヴァルトに投げつけた。

 

「さっさとお帰り! 陰気臭いお前の顔なんかもう見たくも無いわよ! あたしゃ忙しいんだからね!」

 

 イズヴァルト達は追い返された。懇願してもマイヤはもう二度と会ってはくれなかった。

 

 マイヤとの会合にエレクトラは同行していなかった。彼女は実家や知り合いの騎士たちに助力を願った。しかし相手の返答は冷たかった。

 

「独立国を作ってイズヴァルトを王位に? 冗談もほどほどにしろよ!」

「我が国がホーデンエーネンと仲が良いのはわかっているよね? 昔は戦争していたことは、もちろんご存知だろ? またあの国と殺し合う時代に戻るのはごめんだね。だから却下」

 

 イズヴァルトもエレクトラも、うまくいかなかった。無力感に苛まれた。それでもホーデンエーネンを正さねば絢爛豪華だが人の心とかが無い、冷酷無情なコーヅケーニッヒを後にし、ホーデンエーネンへ向かう事にした。

 

 魔道で動く列車『えくすぷれす』に乗り込んだ後、イズヴァルトはその便所に籠って1人嗚咽した。

 

「ううう……マイヤ。マイヤ! もう拙者は貴殿に憎しみしか抱かぬでござる! 目にもの見ておれ! ホーデンエーネンの大将軍となり、貴殿を超える英雄となってみせるでござるよ!」

 

 かくしてイズヴァルトの長い野心と苦悩の旅が始まった。その傍らにいた者こそが、エルフのイナンナとイーガの女魔法戦士・エレクトラであった。

 

【※ギルバート=カツランダルクによる注:この出だしとその後の本編は、事実に相違するところばかりである。注釈を必要とする。】

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