聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
イズヴァルトが案内されたのは城のすみにちょこんとだけある稽古場であった。そこではでっぷりとして体格立派な黒い肌の男達が、敷き砂の上に丸く描かれたものを囲って見守っていた。
全員が全裸だった。しかもどの男達も陰茎はふてぶてしく陰嚢は大きくて伸びている。その囲いの中でひときわ大きい、15歳ぐらいのチンゼー人の少年が相手の男と脇腹の肉をつかみ抱き合っていた。
2人とももみあげの辺りの髪の毛は剃っている。後ろ髪が長く、結わえてちょんまげにしていた。どちらも甲乙つけがたい魁夷な顔立ちであるが、大きいほうは若干顔つきが幼く、愛らしく見えた。
「ややっ! これは何でござろうか? 新手の男色でござるか!」
「ちがうわ。これは『おすもう』よ」
背後から若い女の声。振り返ると少女が腕を組んで立っていた。身長は160ぐらいだろうか。前髪で右目が見えなかったが、なかなかに目を引く美人であった。白髪でチンゼー人の様な顔立ちなのに肌が真っ白だ。
しかし彼女は全裸であった。ほっそりとしているが、尻と乳はそれなりに肉をつけ、股と腋にうっすらと毛が生えていた。とはいえ恥ずかしさを顔に出さず、しかも無骨な武人の気配があったから、イズヴァルトは欲情を抑えた。
「おすもう? シマナミスタンでよく行われる格闘術でござるか?」
「そうみたいね。けど、あれはシマーヅ流。『おすもう』の本家本元よ」
乳首が上向きでやや大き目の乳房を揺らしながら娘は言う。膝をつけたり丸いわくの外に出るまで負けとならないシマナミスタン流とは違い、シマーヅ流はとことんやる。相手が参ったというまで投げ飛ばす。
どんなに弱くて負け続けても、最低5回は取っ組み合わないと『タマ無し野郎』と罵られ、周囲からリンチを受ける事になる。つまりは勇猛果敢な者しか出来ぬ武術だという。
過酷である。聖騎士団の乱取り稽古に匹敵するとイズヴァルトは思った。ただ、聖騎士団のはめげても先輩達が励ましたりアドバイスを与えるのを積極的に推奨している。団員全員が無双の戦士になることを聖騎士団は目指したのだ。
それに引き換え、シマーヅの『おすもう』はやや蛮勇的で過激であった。体格大きな若い武術家が相手を投げ飛ばすと、起き上がらぬ者を周囲の者は蹴り飛ばして囲いの中に入れようとする。その取り組みは10番まで続いた。
若い武術家が全勝した。次の相手とも取り組む。それを白髪の娘は潤んだ目で眺めていた。恋する女の目であった。
「して、貴殿はなにゆえすっぽんぽんでござるのかな?」
「一緒に『おすもう』の鍛錬をしているのだ。この次が私の番なのだ」
「もうちょっと、でっぷりとならなければ勝てぬでござるよ?」
「いいや、勝てるとは思っていない。特にあのピピン殿とはな……あの若い武術家がそうだ」
今度は6番勝負で終わった。ピピンというでっぷりとした若い武術家が全勝。娘が前に出ておすもうの取り組む。
「はっけよい!」
審判役の全裸の武術家が叫ぶと、ピピンと娘とが「ちぇすと!」などとわけのわからぬ雄たけびをあげた。両者の肉体が勢いよくぶつかる。稽古場全体に響いた。
わりと細身であるが、娘の腰はなかなかに丈夫で膝を屈しなかった。大きな少年は股間を勃起させて彼女の下腹にぐりぐりとひっつけていた。
少年のペニスだがこの場にいる者の中で一番大きい。20センチは超えているだろう。しかも太くて黒い。武芸者のみならず性豪でもあるのではないだろうかとイズヴァルトとエレクトラは見て思った。
娘は投げ飛ばされた。けれどもすぐに立ち上がってもう一番。決して強くはないが勇猛果敢だ。5回勝負。娘は一度も勝つことが出来なかった。
「ピピン様! ここで一旦休まれてはいかがですかな?」
男達の中で一番歳上の、生え際が頭のてっぺんまで後退している男が呼びかける。剣や槍を持てばなかなかに手ごわそうだとイズヴァルトは思った。かなりの古豪だろう。
「わかったよ、じいや。一旦休もう」
ピピンは空いていた椅子にどっかりと座り込んだ。ペニスはぎんぎんになっている。そこに男達の中から1人、背が低くそれで目を引く姿が彼に寄って来た。
白髪であの少女によく似た顔つきの、全裸の娘である。彼女も体中を砂で汚していた。取り組みに混じっていたらしかった。身長は145にもならぬ。乳房もこぢんまりとしていた。
「ピピン様、いらいらが続いてお苦しいでしょう?」
「できればお願い。なだめてくれるとうれしいな」
「気にしないで。じゃあ、はじめるわ」
ピピンが開いた脚の前に娘はしゃがみこんだ。そそり立つペニスを掴み、口を這わせる。ピピンは別の武芸者の取り組みを見物しながら愛撫を受けた。周りの者らは咎めるものはいなかった。
小さな口が這い、しゃぶる音が聞こえた。高まるとピピンはのけぞり、小さなうめき声を放った。娘の口の中でどろっとしたものが流れ込んだ。
娘はそれを飲み干すと、彼のペニスをしごいて鈴口から残りの精を絞りだして舐めて清めた。人前でおしゃぶりとはどういう教育をなされているのでござろう。イズヴァルト達が近づくとピピンという少年が立ち上がった。
「……あなたは?」
「片言のチンゼー語ですまぬでござる」
エレクトラが間に入った。通訳を受け持つという。少年はこの美貌の女に目を見張ってしまった。白髪の少女2人がエレクトラをにらみつけた。
「拙者はホーデンエーネンの騎士、イズヴァルト=シギサンシュタウフェンでござる。魔物退治に参加する為ここへ来たでござる。ところで、この国の王様に頼まれて貴殿らの部隊に加わる様に頼まれたでござるが、貴殿らはシマーヅの王様から派遣されたのでござるか?」
こうではないかと尋ねた。シマーヅの国王は魔物退治に『おすもう』の格闘家を集めたのだろう。ピピンという少年は違うと答えた。
「僕たちはシマーヅ王国の軍隊です」
「なんと、正規兵を派遣されたというのか!」
「さようですな、イズヴァルト殿。お噂はかねがね……ヒューガスタンとスミジアでは大いに活躍されたそうですね。キンキ大陸から来た神の子と、シマーヅでも噂されておりますぞ?」
傍にいた年かさの男がいう。自分はシマーヅ軍の精鋭隊の1つ『獅子の牙隊』の隊長だと。ドゴル=マンディという名前だ。この時代のシマーヅ国において、五本の指に入る猛者と恐れられていた。
「そしてこのお方こそ、現シマーヅ王であらせられるサンチョス=イザク様の第十五子、ピピン=イザク王子でございます。やや頭が高いですぞ?」
「ややっ!」
イズヴァルトとエレクトラは深々と頭を下げた。ピピンがドゴルをたしなめる。面を上げて欲しいと頼むと何故ここに来たのかを語り始めた。
「シマーヅ国は隣国で同盟国のアソマリアの窮状を救うべく、精鋭の五部隊を送り込んだのです」
シマーヅ国自慢の精鋭の五部隊。『獅子の牙』。『獅子の爪』。『犀の角』。『鰐の顎』。『鷲の嘴』。それぞれにピピンを含む第十一子から十五子までの各王子に率いらせているという。
「理由は何故でござろう?」
「武者達の間では口減らし、と噂されておりますが、そうじゃないんです」
魔物退治に志願した一般の武芸者らには、拝火教の巫女2人を嫁にするとアソマリア王は言ったが、シマーヅにだけは別の提案を提示した。アソマリア王国の次の国王の座だ。国王には男児がいなかった。
「シマーヅは古くからアソマリアに姫を送ったり送られたりと結びついております。アソマリアの王家も少しぐらいはイザクの血が流れているのですよ」
「で、あれば普通に婿を迎え入れればよいだけの話でござろうに?」
「そうもいきません。やはり王者としての資質が問われるのですよ」
わかりやすいのが勇猛果敢さ。魔物退治を誰が先に果たすかである。ピピンの兄達は愛人や子供こそいても正妻と呼べる人物を持っていなかった。兄達と言うが1年から数カ月ぐらいしか違わない。別の腹から出た兄達だった。
「そして僕はこの競争に勝ちたい。国元にいても次の王にはなれないから、このアソマリアの王族として名を刻みたいのです」
「その心意気、よろしいと思うでござるよ。ところで、ここにおられるお2人の娘さんはどこのどなたでござるかな?」
イズヴァルトは顔がよく似ている2人を見て尋ねる。ピピンは母方の遠い親戚と答えた。アソマリア王家の傍流の娘達。名前をデボラとフロウラといった。背が引くのがデボラで、高いのがフロウラだ。フロウラが毅然とした様子でイズヴァルトに呼び掛けた。
「武者イズヴァルト。明日になったらキクーチの森に出発だ。それまで部屋で休んでいるといい」
「承知したでござる。拙者は疲れたゆえさっさと温泉に入って休むでござるよ」
イズヴァルトは深く頭を下げてその場を去った。翌日の朝にはエレクトラとともに城の門で待つピピン率いる一隊と合流し、キクーチの森を目指すことに。
さて、聖騎士とシマーヅの王子らはアソマリアに災いを起こす魔物を倒す事ができるのか?
その続きについてはまた、次回にて。