聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
その声の主はとても美しい金髪の少女であったが、左足が不自然に大きく曲がっていた。生まれつきびっこを引くのを余儀なくされていたので、常に杖を持ち歩いていた。
とはいえ今は鎖帷子を身にまとい、腰には細身の剣と短銃とを携えている。ただのひ弱な女ではないと思わせた。
この人物がここにいたことをすっかり忘れていた。イプセンは亀頭から精汁を垂らしながらじっと見つめた。
「交尾に励んでいらっしゃったからかしら。全身からイカ臭さがにじみ出ておりますわよ、司祭騎士ヘンリックさま?」
「お気分を害してしまい、申し訳ございません。でもこれがパラッツォの教えというものですよ」
「くっちゃいきんたまみたいな宗派の教えなど、乞いたくもございませんわね。おほほほ」
随分と高慢な少女だ。しかしこの娘は侮ることなかれであった。魔道に詳しく肝がすわっている。率いる部隊3000は、パラッツォ教団が礼を尽くして迎える程の猛者ばかりであった。
この美少女の名はマレーネ。マレーネ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーというのが名と姓になる。この時16歳であった。
それから彼女が率いる3000の兵は、皆が魔法戦士。中にはエルフやゴブリンとの混血児の姿もある。その実力はパラッツォ教団の魔法戦士団を凌いでいた。
ヴィルマはこの娘をややこしいと思っていた。パラッツォ教の経典について語る機会が何度かあったが、いつも小馬鹿にした返し方を受けたからだ。
「パラッツォ教の教えなど、雑に洗ったちんぽを男らしさの象徴だと思うぼんくら男ぐらいが信じるでしょうよ。魔道王国イーガの者の心を動かせませんよ。おほほほほ」
マレーネはマハラ教徒であると聞いていたが、その教義や戒律も否定する様なことをヴィルマどころかヘンリックの前で言った。生来の不信心者であろう。聖俗で言えば俗界にどっぷり浸かった娘である。
「無駄話の時間などございませんわ。パラッツォ信徒のやりまんさまがたと楽しんでいる最中の部下を急ぎ集め、死の一歩手前とやらに向かいましょう」
マレーネは杖をつきながら館の外へ出た。正門には厚手のマントと鎖帷子に身を包んだ武者たちが待っていた。
おおよそ500名。男だけではなく女もいる。エルフやゴブリンが片親にいそうなのとか、眉間と目元に渋みを効かせた年寄りなど。
そのうちの1人が前に出た。真冬のイーズモーだというのにズボンではなく、太ももが半分ぐらい見える丈の短いスカートを巻いた金色エルフの女だ。
一応はマントを羽織って魔道士らしく見せていた。イーガ母国では魔道士の修練場の教官であり、この軍勢を率いるマレーネの副官。パルパティア=シディアスというハーフエルフであった。
「マレーネ姫様。おのおの、配置に付きました」
「うふふ。皆さん。パラッツォ教の信徒の皆さんたちとお楽しみだったのに、急なお仕事で残念でしたね? パルパティア。特に好き者のあなたは無念じゃなくって?」
パルパティアはエルフの血を引く女であるがゆえ、最低でも毎晩、性交をしないと気がすまない体質であった。平時であれば昼夜問わずである。
「大丈夫ですべえ」
パルパティアは笑った。母方のなまりがひどくなった。産みの親はミナッカミニア出身のエルフであった。
「今朝がたまで、ずるむけでかったいちんぽとはめはめして、たっぷり楽しんでおりましたべえ。このいくさたびに来てから、とーちゃんが死んでからからになっちまったべっちょが毎日潤っておりますべえよ」
「あら、喜んでくれるのなら嬉しいかぎりだわ。パルパティア」
マレーネは杖を持たぬ左腕をあげた。パルパティアが印を切り始め、彼女の側にいた者が持っていた軍隊ラッパを取り、口にあてた。
「これからやって来るのは、あなたのおまんこをじゅぶじゅぶに泣かせる『無尽蔵乱射巨大子種棒』を持つ、ホーデンエーネン一の無責任孕ませ男よ。あなた達を残らず腹ボテするために襲いかかってくるわ」
「そりゃあ楽しみですべえ」
「でも残念。膣の中に飛び込んできたきったない精虫みたくこっちに向かってくるけど、残念ながらこっちにはイーガ産の避妊術がありますの」
マレーネが腕をおろした。パルパティアが印を切り終わりラッパが鳴る。この館と周囲の区画に、強烈かつ硬い魔道結界が生まれた。
イーガの魔道士が100人以上集まって力を合わせる事によりできる大規模結界魔法、『亀神たちの鉄壁陣』である。
【イーガ王立魔道士協会注釈:『亀神たちの鉄壁陣』は我が国において、魔法防壁としては最高の、物理攻撃に関してはそこそこの効果がある魔法結界となります。魔法に関しましては魔力計算機『すかうたー』でいうところの、1000万の数値のものであれば容易に防ぐことが可能です。これはナハリジャーヤ=エルフが10人でかける大技『ナハリの大時化』に値します。】
うっすらと光がかった膜のようなものが展開された。オルタンスはそれをいち早く目にし、本丸へ進まんと意気込むイズヴァルトに注意した。
「なんだかオラの魔法ごときじゃ通らなさそうな結界ズラよ!」
「ならばやってみようでござるよ!」
オルタンスは抜いた小剣の先で印を切る。最大出力の『紫電砲』。彼女の前に紫色の術式陣が幾層も現れ、白い紫色の光が勢いよく飛び放たれた。
彼女の紫電砲も馬鹿には出来ない威力である。なれど、その光はイーガの魔法戦士達が築いた魔法の防壁に当たると、一瞬でかき消されてしまった。
「ありゃあ無理ズラ」
「ならば、拙者がなんとかいたすでござる!」
イズヴァルトは覇王の剣に念を込める。刀身の周囲で揺らいでいた淡い炎が色を増し、真っ赤になった。
その色が更に青に変わる。同時に炎が伸び、天を貫く程となった。
「アソマリアの炎神の力、とくと目に焼き付けておくでござるよ!」
数百メートルにも及ぶ青い火炎柱が結界を襲う。しかし青白い煉獄の炎でも焼き通す事は出来なかった。恐るべし、イーガの魔道結界!
「うふふふふ」
生身であればただでは済まされない様な大火炎が結界の屋根によって打ち消されるのを眺めながらマレーネは笑う。
「もっと奥に来てから出さないと。おまんこの入り口で放ったんじゃ、赤ちゃんの部屋にいる卵子と受精できませんわよ、孕ませ魔さん?」
地ならしのための攻撃は失敗だ。遠距離から魔法で犠牲を少なくという方法ではまず無理だった。
もっと肉薄しての爆炎弓箭でもはじかれた。イーガの魔法戦士団はその場を動かなかったが、敵の数を間近で見たイズヴァルトは撤退を命じた。
「ありゃりゃ。逃げちゃいましたべえよ。おれにあかちゃんをこさえる前になんてせっかちだべえな?」
「本隊と合流して作戦を練り直すつもりでしょうね。中折れしたから強壮剤を飲んで再挑戦だ、みたく! うふふふふ……」
そうはいかないですことよ。マレーネはねっとりとした笑みを浮かべてラッパ吹きに命じた。
「ここしばらくはおきゃんたまがお仕事出来ないように、痛い目に合わせてあげなさい?」
高らかに鳴り響く。城市の門近くにまで逃げたイズヴァルト達は、左右に伏兵の矢を受けて悲鳴をあげた。死人は出なかったが矢を受けた。痺れ薬と魔封じの力が込められた嫌味ったらしい矢であった。
「イズヴァルトさん!」
「しばらく魔法がつかえねえズラ!」
まんまとやられた。だけど炎の剣はまだ使える。イズヴァルトは次の矢を払う紅蓮で仲間たちの身を守った。けれども城門をでてしばらくして騎兵達との追撃、乱戦に苦労した。
騎兵たちは20ほど。ニンゲンではなく、オーガとドワーフの猛者たちだった。パラッツォ教団が抱える亜人中心の戦闘部隊。イーズモーの出身のドワーフもいたが、もともとが傭兵である彼らに故郷を思う愛国心など無かった。
「うわっ!」
愛用の小剣で奮戦していたオルタンスが、敵のオーガの一太刀を背中に食らってしまった。
「いでええっ!」
倒れた彼女は背中にばっさり傷を負っていた。血があふれ出ている。イズヴァルトらはオルタンスをかばいながら、雪原を進んだ。
けれども追撃側はしつこかった。増援だ。マレーネは300程の魔道戦士達に命じ、馬に乗せて向かわせたのだ。
イーズモーの馬は雪に慣れている。しかも雪の硬いところを本能で知って駆けた。徒歩でしかも痺れ薬を食らわされていたイズヴァルト達は、とうとう追いつかれてしまった。
「くそっ、見誤ったでござる!」
彼にしては珍しく、泣きじゃくりたい気分だった。
「どすけべの達人の奥方の前戯のような用兵ぶりなり! もう少し余裕があれば、あっぱれと言いたいところでござるが!」
仲間も討たれかねない窮地で余裕は言えない。しかし白兵戦でのイズヴァルトは、マレーネが向かわせた300をびびらせおしっこをちびらせる、夜叉羅刹のごとき奮迅ぶりを示した。
【ギルバート=カツランダルク注:イズヴァルトの武者ぶりについてだが、『鬼神も泣いて土下座をさせる』といい頻度でいくつものサーガに出てくる、『ヤシャラセツ』というものだが、知り合いの転生人によると、失禁してしまうぐらいに強いオーガの戦士みたいなのを言うらしい。破壊神アエーシュマとかキンキ大陸の武人神・ハチマンウーサと似たものだろう。】
イズヴァルトは
服の中の男性的象徴物はいきり立ち、その先端と裏側は過敏になる。剣をふりまわすごとにこすれて白濁液を放つ。戦闘と快楽が結びついて徳と倫理を失った時、イズヴァルトは荒ぶる闘神となって死を撒き散らした。
オーガやドワーフの戦士たちは、決して修練を怠っていたわけではなかった。だが炎の剣を振り回すイズヴァルトに首をはねられ。雪の上に散らばる塵にされた。こりゃかなわんと生き残りが逃げ出した。
マレーネが送った300の騎兵もそうだった。一番やる気があって勇猛なのが討ち取られると、本陣のマレーネらに断りを入れて馬を城門のほうへと走らせた。
しかし闘争心に火が付き過ぎて闘いの現人神どころか狂神にまでなっていた、無双の騎士イズヴァルトは許さなかった。戦いを途中で切り上げての撤退など、言語道断である。
「臆病者どもめ、拙者と戦え! どちらが死ぬまでやりあうでござるよ! いざ! いざ!」
ならば単騎であの城市を滅ぼしてみせるとイズヴァルトは意気込んで前に進んだ。でも叶わなかった。後ろからなにかに絡め取られ、全身を覆う心地よさに浸って意識を失ってしまったからである。
さて、興奮しまだ戦おうとしていたイズヴァルトを背後から襲って捕らえた者は何者であったのか?
その続きについてはまた、次回にて。