聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
サーガではガッサハールとマツエスコーの戦いは『わりと面倒だった』などとさらっと歌っていたが実情はかなり違う。
イーズモーの暗黒卿が築城技師達に造らせたのは、鉄砲や連弩、連続発射に叶う投石砲を想定しての縄張りを持つ代物だった。
難攻不落と噂高いガッサハール本城は三角形の砲台をいくつもならべて丸鋸のような姿をしており、マツエスコー城市の外郭に至っては、射撃が容易になる見晴らし良い防塁がいくつも重ねられていた。
しかもガッサハールとマツエスコーの間には、いくつも砦があった。迂回作戦や同時攻撃作戦は容易ではなかった。抜くのは難しい。けれどもピピン王子はイーズモーやチンゼーの武将の強い後押しを受けて取り掛かった。
パラッツォ教側の動きで、ヘンリック=イプセンが戻ったのは本当のことである。彼の事実上の妻であるヴィルマの妊娠もさることながら、イーズモーの反抗が激しくなって押し戻されつつ遭った大陸西側の戦いに出向かわざるを得なかったからだ。
けれども代わりに入ったイナーヴァニアの武将らは、なかなかにしぶとい連中ばかりだった。もともとパラッツォ教徒である彼らはよく兵士たちを励ました。ガッサハールでは敵方の投石砲の集中攻撃に耐え忍んだ。
とはいえガッサハールは陥落した。ミレイユが出した攻城案をもとに、チンゼーの命知らずの猛者達が切り込み突撃を敢行して城の要所を破ったからだ。連合軍と籠城軍ともども、多大な死傷者を出した。
それに続くマツエスコー攻めはもっと過酷であった。堅い砦や防塁を抜けた先は、暗黒卿の性格の悪さが顕著な、複雑怪奇な陣地が待ち構えていた。
城壁には魔法による火炎放射する兵器が並べられ、付近には地雷が埋め込まれていた。やみくもに突撃したチンゼーの先発隊はほぼほぼ全滅。
まだ治療にあたっていたイズヴァルトがタネガシマスカルから率いて来た戦士達は皆この戦いでいなくなった。ピピンも触手姫のお世話になる怪我を負った。
作戦は一旦中断。イズヴァルトが回復した2日後に再開。覇王の剣で壁を突き崩して突破。しかし残る城内戦闘は彼を懲らしめたイーガの魔法戦士団に苦しめられた。
段差が設けられ、守り手側のシューティング・ゲームがそこかしこで行われていた城の戦いは厄介極まりなかった。挑発しても一切出てこず固く守って矢弾を撃ってくるだけの敵に、イズヴァルトは辟易した。
城壁を落とした後の攻防が半月以上も続く。攻めるのはじわじわとでチンゼーの武将は半分ぐらいが死傷する苛烈な戦闘だった。
そこで準備を整え終えた連合軍本隊が参加。総掛かりの戦いとなったがマツエスコーはしぶとかった。攻め手側はますます死者が増えた。
埒が明かない。ショージュ=オーウェンは城攻めと取りやめて別の案を練る。内側から崩す方法は無いか。
数日が経った。捕虜から聞いた情報をもとに城内をスパイにさぐらせていたエレクトラが申し出た。その夜、彼女は城に潜入した。
その翌日だ。イーガの魔法戦士団が突如として城に火の手をあげて大事な本丸を占拠した。ショージュ=オーウェンは再度総掛かりの攻撃を命じた。マツエスコーの軍事的要衝は奪取した。
けれどもパラッツォ教の抵抗はやまなかった。今度は廃墟ばかりの旧市街に籠もる。ヘンリック=イプセンはある程度の魔法結界を備えた砦と生じる防塁を築かせていた。兵糧や武器の集積場もあった。
その上、イナーヴァニア国境付近やヨナーゴ地方にいた軍が援軍に現れた。パラッツォ教徒は弱兵ばかりだが数が多く負かすのは苦労した。疲弊しきっていた連合軍側はなかなかに勝てなかった。
イーガの魔法戦士団の協力はあったけれど、勝利には1ヶ月もかかった。寝返った時は3000名という公称だったが、前の戦いからの激戦で2000まで数を減らし、満足に動けるのは1000も満たなかった。
そしてその魔法戦士団は、傭兵ではなくれっきとしたイーガ王国軍、魔道騎士団の第四軍の一部であった。そもそも、これらを率いていたマレーネ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーは王太子の妹である。サーガで謡われる傭兵団の長ごときでは釣り合わない地位にある。
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「……まるで、みじめな合戦でしたわね」
瓦礫と遺跡ばかりの旧市街の原っぱ。並べられた両軍の死体を見てマレーネがぼやく。横にいたショージュ=オーウェンとエレクトラは沈痛な面持ちだった。2人にとってこれは負け戦のようなものだった。
とにかく犠牲が多かった。連合軍は死者が1万。パラッツォ側は3万以上にも及んだ。教団側の半分近くはイーズモーやイナーヴァニアの者だ。復興に大きく禍根を残すだろう。
いくさにこそ勝ちはしたが、マツエスコー市内では親パラッツォ側の潜伏兵がゲリラ活動を行い始めていた。連合軍側はその対応に苦慮していた。
「軍の再編成をせねばな、エレクトラ殿」
エレクトラはうなずいた。チンゼーの軍も半分に減った。けれどもイズヴァルトの名を慕って残ってくれている。
「でもチンゼーの諸国は来年も増援をくださるみたいですよ。アソマリアのデボラ様とフロウラ様は国元に戻りますけど、代わりに2万以上の軍と兵糧を寄越してくれるそうですねえ」
「……奪回地の防備にまわそう。シマーヅ王らの厚意に甘えるわけにはいかぬ。なにせ、サイゴークのごたごたじゃからな」
しかしイーガの魔法騎士団の助力は乞う。ショージュはマレーネに目を向けた。いまだ疑いを抱く気持ちが表に出ていた。
「そろそろ、本当のことを語っていただこうか。なにゆえパラッツォ教団に手を貸した? 貴公らの祖国が裏で交流しておる教団の頼みで、魔道騎士団をよこすなどという表立った行動を為す訳がなかろう?」
マレーネは薄く笑った。イズヴァルトを連れてきてほしいと告げた。
「……やっぱり、イズヴァルトさんがらみですかね?」
「そうですわ、エレクトラお義母さま」
最初、マレーネは半ば『厄介払い』でここに来たと言い張った。しかし彼女が率いる第四軍は猛者が勢揃いだった。連合軍を困らせた『アイギースの鉄盾』と『亀神たちの鉄壁陣』が使える魔道騎士はそうそういない。
イズヴァルトが連れて来られた。血なまぐさい激戦が続き、すっかり笑顔が消えていた。タネガシマスカルからの部下たち全員が、戦死や負傷でいなくなったのも、彼の心を暗くしていた。
「……何用でござるか?」
スーエイニアから出発した頃よりも声が小さく、目はうつろだった。内心では未だ戦いが続くヒッジランドに早く向かいたいと焦っていた。ショージュがここに呼んだ理由を告げた。
「イーガのマレーネ姫が貴殿に話をしたい、とな」
「拙者はマレーネどのとは話をしたいと思っておらぬでござる。魔道騎士団を連れて早々にイーガへ帰られよ。イーガのこともマイヤのことも、耳にしたくないでござる」
イズヴァルトは捕虜となったり寝返ったイーガの戦士から遠ざかっていた。金の亡者となったマイヤと、それに手を貸すイーガの話は聞きたくなかった。
マレーネはイズヴァルトとマイヤの仲について知っていた。イズヴァルトは相当にひどいことを言って義姉を置いていった。
理解はできている。イズヴァルトはホーデンエーネンで世直しの乱を起こそうとしていた。そうなれば四肢を失ったマイヤは最大の弱点となる。けれどもだ。今はもう事情が違う。伝えたかった。
「おねえちゃまは常々おっしゃっておりましたわ」
「拙者を深く恨んでいたでござろう?」
「いいえ。一緒に夢を見れなくなって……とってもくやしいって」
ばかなことを。マイヤは今、栄耀栄華を極めているはずだ。世界に名を馳せるマイア=テクニカの経営者であり様々な魔道具や兵器のプロデューサー。イーガ国内外で『世界の珠玉』と呼ばれるようになっている。
セイン王を手のひらであやつり、実質的なホーデンエーネンの支配者となりつつある姉の補佐としてホーデンエーネンの経済長官でもある。幼い頃から目指していた、総合大学を建てるという夢を叶えつつある。
マイア=テクニカの利益とイーガからの援助でもって、『えくすぷれす』をサカーイにまで延長する計画を進め、総合大学ができるヨーシデンに一大学術都市を建設するまでに至っている。
これはか弱い女の夢どころか、野心ある男児の大望にまさる壮大な偉業だ。しかもマイヤは今、19歳である。まだ少女とも呼べる歳だ。イズヴァルトはマイヤを誇りもし、嫉妬もしていた。あの女、やりやがったでござる。
けれども夢を叶える為に金の儲け方に手段を選ばない。新式の鉄砲を格国に売り飛ばす、しかもパラッツォ教にも。それが気に食わなかった。
「夢などとは……貴殿の鉄砲はサイゴークの両陣営で盛んに用いられ、殺しあっているぞと申し伝えよ」
手を汚すのは散々血を浴びた自分だけでいい。そこは口にしなかった。マイヤなら汲んでくれるはずだ。マレーネは阿呆ではなかった。イズヴァルトが一番言いたいことを想像できた。マレーネは穴に納められ、埋められていく骸たちを見ながら言った。
「人は、生きれば生きるほど汚れていくものですわよ。おねえちゃまも同じ。私も同じ……」
でもここへは人生論を言い合いに来たのではなかった。マレーネは何も言わず虚ろな目を墓掘り達に向けるイズヴァルトに事実を告げる。何故自分とイーガ軍がここへ来たのか。
「そもそも……なかなかホーデンエーネンから戻ってこないおねえちゃまをイーガに連れ戻すでしたの」
「なかなか戻ってこない、でござるか? マイヤはイーガとホーデンエーネンを行き来していたと聞いていたでござるが?」
「経済長官というのになってからですわ。それが確か2年ほど前……」
マイヤがホーデンエーネンに戻り、マイア=テクニカの第二工房をヨーシデンに建てたあたりである。トーリの推挙によりマイヤは経済長官となった。それからイーガには戻って来なくなった。それまでは半年ごとにイーガとホーデンエーネンを行き来する約束だったのだが。
「それは、トーリどのを補佐するのに熱心だったからでござらぬか? そもそもが、マイヤはホーデンエーネンの、王家のカツランダルク統の姫君にござるよ?」
「それはわかります。でも、おねえちゃまは私やマルティン兄さまを好いてくれた。おねえちゃまは寝台の上でたっくさん甘えてくれたほどだし、執事のオットーとも仲が良かったわ」
オットーがマイヤと仲良くしている事は初耳だった。あの人物はマイヤが迷惑な相手だと感じられた。信じられぬ、という顔をイズヴァルトはしていたのだが、すっかり仲良しになった、とマレーネは返した。
「私が連れて来た魔法戦士達は、ただの第四軍じゃございませんの。王国の魔法騎士団の精鋭を集めたもの。魔道学問所のパルパティアさんをどうして連れて来たか、おわかりになられなくて?」
「パルパティアどの……」
パルパティアは魔道騎士団の中で緒戦で捕まった。イズヴァルトがガッサハール本城で見かけ、厄介な相手でもある彼女を生け捕りにしたからだ。
捕えられたパルパティアは厚遇されたが、イズヴァルトに「かっこよくなったべえなあ!」などと喜んではねだってきたのでとうとうねんごろな仲になってしまった。
オクタヴィアらとも知り合いらしく、彼女はすっかりイズヴァルトの天幕に入り浸っている。子供もできてしまったらしかった。行為の最中におなかをさすりながら、最近無性にすっぱいものが食べたいとぼやいていた。
「なじるつもりはありませんわ。あの人とそういう仲になったことは」
「とやかく言われるつもりはござらぬよ?」
「パルパティアは、もともとイズヴァルトさまを狙っていたようでしたしこれ以上言うつもりはございません。でも、おねえちゃまが知ったら、なんと思うことか」
もう無理ができない身体なのに、がむしゃらに働いて頑張っているというのに。
「無理ができない? どういうことでござるか?」
「これは隠しておいたことですが、お話いたしますわ。エレクトラお義母様もご存じではなかったはず」
イズヴァルトはエレクトラをちらと見る。彼女も面を喰らったような顔をしていた。粉雪が舞う中でマレーネは風に邪魔されぬよう口をはっきりと動かした。
「おねえちゃまはもう、赤ちゃんを産めない身体ですの。お腹に病魔が巣くっていたんですの」
イズヴァルトの視界が一瞬だけぼやけた。
「何を……どういうことでござるか?
「フェアディナントさまを産んだ直後に卵巣を切除しました。それから、お医者様からは長時間のお仕事は出来ないと……」
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マレーネらはマイヤが卵巣の病気にかかったと語ったが、本当は違う。マレーネとマルティンの父である故・アドルフ王子が生前に仕掛けた魔法のせいであった。
マイヤを不具の慰み女にし、2人の子を産ませたアドルフはマルティンの胤で孕んだのが判明した後、この時限爆弾を埋め込んだ。非人道的な人体実験を繰り返していた闇魔道士・ヒッポタルトが編み出した術式だった。
発動条件はマイヤにかけた洗脳魔法が解け、自分が思った言葉でしゃべる事ができるようになったら。アドルフはフェアディナントの出産後にそれが解けるようにした。
そうまでマイヤを苦しめたかったのはゆがんだ愛情からである。かわいい動物をナイフで切り刻みたくなる類のものだ。それと、一番の決定打はマイヤの先祖であるナントブルグの女王が、イーガ王家の先祖の主君であったこと。
イーガ王国はナントブルグの王国の滅亡後、彼女達の一家を迎え入れ、捲土重来を果たそうとした家来が作った国だった。しかし数百年たった今、その様な目的を叶える事などできない。アドルフは先祖が果たせなかった夢を今の王国が巻き込まれるのを恐れてマイヤを閉じ込めたかった。
とはいえマイヤは魅力的な『生産装置』だった。アドルフは彼女に溺れた。それからマイヤが初恋の人だったマルティン王子に譲った。これはまあ、先祖の夢をある意味で果たしたかもしれないだろう。ナントブルグの女王の子孫がイーガの王家に迎え入れられたわけだから。
マルティンとの子となるフェアディナントの出産後、マイヤは出血し潰れた卵巣の摘出手術を受けた。但し医者の診断は、病気による破裂であった。巧みな術式だったのだ。
マイヤは適切な治療を受けて回復はした。しかし四肢を斬られた身体で長い眠りの日々と虐待とが、彼女の身体から快活さを著しく奪った。長時間働く事を連日続けられる身体ではなくなった。
けれどもイズヴァルトに「捨てられた」後は、まるで悪霊に取り付かれたように働き続けた。マレーネは言う。仕事中に喀血して倒れたことも何度かあったと。ホーデンエーネンに向かった頃はかなり痩せて眼が血走り、ぎらついていた。
サーガではしまいまでは五体満足で欲深で高慢ちきな女と描かれたマイヤの実情はその真逆だった。イズヴァルトとの恋愛が破綻した彼女は、ただただ夢を追うだけの生きた屍になってしまった。
マレーネはそのことを語る。もう子を産めない身体のマイヤ。可哀そうなおねえちゃま。イズヴァルトとエレクトラは暗たんたる思いだった。
「マイヤが……マイヤが病気でもう赤ちゃんを。拙者はなんと馬鹿なやり方で、かわいいマイヤを遠ざけてしまったのでござろうか」
四肢を斬られ、長い間アドルフの慰みものになったのだとマレーネからも聞かされた。胸が苦しくなるほどつらい。そしてこの娘は仇・アドルフの娘でもある。この場で斬り殺してしまおうかと念話魔法でエレクトラに問う。
「それだけはだめです。マレーネちゃんには何の罪もありません。やるなら、アドルフをグレさせた元の妻の私を殺してくださいよ。常々言っていることでしょう」
アドルフの話についてはすでにエレクトラが教えてくれている。しかしマレーネを殺す代わりにエレクトラの首を刎ねるなどとは、今はもう出来ない話だ。
エレクトラはエレナの母親だったし、『かわいい義弟』でもあるピピン王子の大事な妻の1人だ。彼女は悪党の策士を気取っているが義侠心や愛情に溢れている。快男児みたいな女だ。病弱で王子という身の上で縛られているアドルフが惚れたのは無理もない。
だからこそ自由を求め、マルティンだけを産んで去ったことがイズヴァルトには許せなかった。けれども彼女を信頼し始めてしまっていた。イズヴァルトは殺意を捨てた。
「マイア=テクニカは信用できる部下に任せればよいでござろうに。経済長官の仕事もそうでござる」
「そういうわけにはいかないのです。マイア=テクニカは今のところおねえちゃまがいるから新製品が作れるような状況ですの」
経済長官もまたそうだ。壮大な計画はマイヤだからこそ青写真が描ける。トーリの懐刀となって、マイヤは身を粉にして働いているらしかった。
「でも、私はイズヴァルトさまに、すぐにでもホーデンエーネンに向かっていただき、おねえちゃまをさらうべきだと思いますの」
けれども無理だろう。マイヤは命を削ってまでトーリに献身しているように見える、と周囲が言うぐらいであった。マレーネはホーデンエーネンにいる外交官からそのことを聞いた。だからマルティンに頼み、兵を連れ使節としてホーデンエーネンに向かおうとしたのだが。
「……ヨーシデンに入ってから先、しばらくの記憶がございませんの」
「マレーネちゃん。そりゃ、どういうことですかい?」
エレクトラにマレーネは。気づけば全員が船でサイゴークのヨナゴルグにいた。まわりはパラッツォ教団の兵ばかり。
それを聞いてエレクトラはつぶやいた。誰かに洗脳され、記憶を消された。いつの間にか。マレーネは信じられないと思ったが、イズヴァルトは誰がそうしたのか、おぼろげながら見当をつけた。でも口にはしなかった。
「それから、コーザ=ストーンマウント本人と会いましたわ」
「教主とでござるか!」
「はい。底知れない魅力を感じるお人だった。2つに1つ選べってと言われました」
教団からイーズモーを奪還する軍に加わるのか。加わるならばパラッツォが占領した地域までの身の安全を保証する。
あるいは自分に手を貸してほしい。パラッツォ教団の軍事顧問団として。司祭騎士や魔法戦士団、教典の巫女達にイーガの戦術と魔法を教えて欲しい。
マレーネが選んだのはパラッツォに手を貸す事だった。教祖は何も言わなかったが、ヘンリック=イプセンが力を貸してくれたらイーガとの交易をもっと増やす、マイア=テクニカからの製品をもっと輸入すると言ってきたからだ。
マイヤが己の夢の為に私財をつぎ込んできたのを知っている。マイア=テクニカの利益はそのまま、夢の学術都市・ヨーシデンの建設費だ。彼女の新製品はそれほど莫大な利益をあげていた。
「もう1つ。ヨーシデンの街の建設費には、パラッツォ教団からの寄付でもまかなうようになりましたの」
「……ホーデンエーネンとは戦争が続いているのはないのでござるか?」
「詳しいことはわかりません。でも、あの国はもうパラッツォといくさはしておりませんの」
奇妙な話だった。コーザもマイヤに入れ込んでいるのだろうか。いや、考えられるとしたらトーリだろう。彼女はセイン王を篭絡するどころか、コーザとも身体と利害で結びついたのか。
「……わからぬ。まったく、わからぬでござる」
「イズヴァルトさま。マイヤおねえちゃまを救っていただけませんか?」
マレーネがねだる目つきでイズヴァルトを見つめる。今すぐに向かいたい。でも、サイゴークで起きている戦いを思うとうなずけなかった。
「ヒッジランドを救ったら……」
それが答えだった。わかっていた、と嘆きながらマレーネは悔し気にうつむいた。
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「もう1つ。おねえちゃまからは常々、頼まれたことがございましたの」
マレーネがささやく。夜。マツエスコーの城にあるイズヴァルトの部屋で。
「もしイズヴァルトを気に入ってくれたなら、私の代わりにあかちゃんを産んで欲しい」
おねえちゃまにとって、それが一番の無念だった。イズヴァルトには信じられなかった。まだ嫉妬し怒ってくれればいいのに。けれども美しいマレーネを前にして、下半身は言う事を聞いてくれなかった。
「1人や2人じゃなくて、欲を言えば5人6人……」
薄暗くした明かりの中、マレーネは自分の服を脱ぎ始めた。上着を脱いで胸元を空ける。まろびでたものはイズヴァルトの手に収まりきらない程の大きさと太さ。マレーネの乳房は思いのほか豊かだった。衣服に押さえつけられている時は平板に見えたのだが。
乳首はやや茶色がかっている。互いにそっぽをむいていて下側にあった。乳輪は大きく、赤ん坊の目につきそうだった。
「このおっぱいであかちゃんたちを育てて欲しい……触れてくださいませんか?」
イズヴァルトは差し出されたものに手を振れた。重い感触。マレーネは決して太ってはいないのに。けれどもマイヤのふんわりとしたものみたいに、赤ん坊に飲ませるものを多く含んでくれるような気がした。
「抱き寄せて、ください」
イズヴァルトはマレーネの体を抱きしめた。背は低くなかった。同世代の女よりも背が高く、165ほどあった。左脚がなえていなければ、姫君たちがやるような武芸もたしなんでいたかもしれない。
揉み始めるとマレーネは頬を桜色に染めた。熱い息がイズヴァルトの顔にかかる。彼女はスカートをたくし上げ、太ももを見せた。その先は薄くはあったがしげみがあった。
「ここ、なめてくださいませんか?」
マレーネが背中を倒し、太ももを顕わにした。手を乳房から離し、柔らかく太い腿に掌をつけて鼻を近づけた。酸っぱいヨーグルトのようなにおい。潤み始めていたそこに舌をつけ、太い草をかきわける。
マレーネのそこは酸味が強かった。舌がしびれを起こすような気がした。でも濃い女臭を吸い、女陰の味を楽しめば精巣が活発に動く。射精欲が高ぶり、陰茎ががちがちに硬くなる。
股襞をついばみ、陰核の周りをしゃぶり続けているとマレーネが腿で頭を強く挟みこんで来た。彼女は快楽に正直だった。イズヴァルトの熱心な舌と唇に身をゆだね、激しい波を感じ取った。
ヴァギナが蜜をしたたらせて盛んにうごめいた。とろりみある洪水を起こし、受け入れる準備が整ったそこにイズヴァルトは固く張り詰めたものでふさぎ込んだ。
「あ、うっ……」
マレーネがしがみつく。イズヴァルトは盛んに音を立てて絡んでくる女肉を叩き続けた。生命の種汁が尿道にせりあがって来る。
さらに激しく腰を動かした。マレーネの中で勢いよく爆ぜた。口を開いた子宮が余さず吸い取った。イズヴァルトはまた動き、彼女に悦を与え続けることにした。
皮肉や人を子馬鹿にすることを言うするマレーネだが、行為の最中はしおらしく、慎まやかだった。恥ずかし気に頬を染めながら、自分の中を乱すペニスが与えてくれる快感に酔った。
イズヴァルトも同じだった。柔らかい身体を押し付けて来る外側と、侵入したペニスを捕えて離さない内側。動かしながら何度も爆ぜた。精液にまみれたヴァギナの肉をなおもかき分けた。
「イズヴァルト、さま……」
1つに繋がる時間が続くと、マレーネは恋をする女の顔になった。イーガの女はイズヴァルトのようなたくましい体つきの男に弱い。彼女もまたその1人だった。荒々しい腰遣いに魅了され、ペニスが大きく脈打つごとに生殖を支配され、子孫の存続に奉仕させる充実感を得た。
行為が終わり、股を開いたマレーネのそこから、分け与えたものがこぼれ出るのを眺めてイズヴァルトは言う。拙者の丈夫な子を産め。この行為でマレーネはイズヴァルトの子を孕むこととなった。
サーガでも歴史書でも、マレーネはイズヴァルトの愛人としてたくさんの子を産んだと記されている。マレーネ=トードヴェル=キョウゴクマイヤー。
マイヤ死後のイズヴァルトにとっての、名目上の正妻となった女だ。