聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
「わはははは!」
馬上の武者が高らかに、騒々しく笑い続ける。3メートル近くのランスを棒切れの様に軽々しく振り回す大男。この者こそが鉄騎団の長のエドワード=ルーカスだ。それから無慈悲に教団の弱兵らを踏みつぶす騎兵らは彼の部下達。
エドワードらはこの時、この総がかりが始まるのを待っていた。ミョージバーグの門からではなく背後から攻めて来たのは抜け穴を用いたからである。馬はパラッツォ軍の背後に潜伏していたヒッジランドの部隊から貰い受けたものだ。
この作戦を立案したのがエドワード本人であった。彼はこれに乾坤一擲の大勝負と思っていた。なので嫌でも意気高々となってしまい笑いが止まらない。
「わははははは!」
エチウやイナーヴァニアの兵士や武者らはたじたじだった。鉄騎兵エドワードはまるで隙が無い。しかも馬鹿力。一度に数人が殴り倒された。何を思ったかエドワードは馬から降りた。重い自分を連れてきて疲れた顔をした馬のたてがみを撫でてやる。
「よし。ここから先に行くとお前は死ぬかもしれない! ここから先は徒歩で行くから戻ってくれたまえ!」
「ひひーん…… (お達者で……)」
エドワードが馬から降りると他の鉄騎兵らも馬から降りた。ヘンリック=イプセンと差し違える覚悟であった。それだけヘンリックは敵方からも名が知られていた。イズヴァルトにびびって逃げたがその後ろの守りを固めた出来る奴、という評価だった。
「ははははは! パラッツォ軍の君達、馬から降りた騎兵は首を討ちやすくできるぞ!」
そう告げて大笑いしながらエドワードはランスを振り回した。今度は吹っ飛ばされるどころか衝撃で身体が千切れる兵士達が現れた。暴力的な戦闘力を持つエドワードは、まさにヒッジランドの守り神であった。
彼に続く鉄騎兵達も歯止めがきかない。地に足つけて踏ん張ることで力が倍加されたようだった。この東門攻めの部隊は背後から恐慌と混乱が始まった。
門を攻めるヘンリックに悲報が続出する。後備えの魔法戦士隊長の誰それが首を討たれ、イナーヴァニアの某という騎士が壮絶な最期を遂げたと。ヘンリックは驚愕した。
ただの『脳みそきんにく』だと内心馬鹿にしていたエドワードとその一隊が、想像を絶する相手だったことに。イズヴァルトといい勝負の戦闘集団だ。親友でヒッジランド占領地統括長のジャン=シベリウスが「あいつはナメるな」という忠告に従えばよかったと嘆いた。
「……門の攻略は諦めますか」
「でも、もうすぐ破れるはずだと破城槌部隊は言っております!」
「城内にも精鋭がいるのですよ。そして背後にはエドワード=ルーカス。門が開けば挟み撃ちということでしょうね」
ならばここで討ち死にをしようとヘンリックは覚悟を決めた。他の部隊の救援も来つつあるが、エドワードの一隊が斬り込む速度は尋常じゃなかった。
「第十三部隊。固まりなさい! 私とともにエドワード=ルーカスを討つのです!」
ヘンリックのもとに部下の魔法戦士が集まった。まじないの言葉を唱えて印を切る。強力な魔法を使う時の儀式の様なものだ。
イーガの魔法戦士傭兵団から学んだ、『アイギースの鉄盾』の術式である。とはいえ本家本元に比べ劣っていた。しかも50名では硬さは保証できぬ。それでも鉄騎兵と生身で戦うよりいくらかはマシと言えた。
前方で魔法の気配を察し、エドワードは部下達に呼びかけた。皆が印を切る。彼等の両腕と各々が持っている武器に得体の知れない力が帯びる。
「はははッ! 魔法には魔法をだ! とはいえ我らは武辺ものゆえいささか拙い。が、是が非でも競り合っていただけないだろうか! 勝負勝負!」
エドワードがランスで前列の敵兵らをぶん殴る。ヘンリックは何が起こったかしばらくわからなかった。空に真っ黒なものが舞ったのだ。物体、いや液体も含まれた。
ヒッジランド最強の鉄騎兵に殴られた数名は文字通り砕け散っていた。身体は原型をとどめていなかった。エドワードは無慈悲に突き進む。第十三部隊の前にいた兵らは泣きわめいて逃げて行った。
とんでもなく恐ろしい敵。ヘンリックらは生きて帰れないだろうと思った。エドワードらを倒せても半分は生き残らないかもしれない。
しかし彼等は死を恐れていなかった。誰もが十数名以上の子を為している。己の血をつなぐという男児の大事業は終えていた。それと、パラッツォの教えは死ねば輪廻の理(ことわり)に従い、新たな人生へと向かうと説く。マハラ教も同じことを語っている。
「わははは! 死をもって新たな生へと向かうか!」
エドワードが叫ぶ。魔法戦士達の剣が火炎をまとわせた。
「その心意気、よし!」
ぶつかり合った。『アイギースの鉄盾』は不十分ながらも確かにかかっていた。パラッツォ教団の魔法戦士はイーガ程ではないが出来る者ぞろいであった。対してエドワードは武力一辺倒と言われている人物だった。
なのにエドワードのランスを剣で受け止めた者の腕がもげ、槍先がかすった者の顔の皮が千切れて首の骨を折った。エドワードのランスはそのまま、他数名の肉と骨を砕いた。悲鳴があがった。
信じられない光景である。副官らはすぐさまヘンリックに申し伝えた。あれはドワーフの破砕魔法に似た術式がかかっているかもしれない。ヘンリックはようやく思い出した。エドワードはドワーフを祖母に持つ。その他の鉄騎兵達も彼ほどではないがその血が濃い。
ドワーフが得意とする破砕魔法や土の魔法もいくらか使いこなせるということだ。イナーヴァニアでわかれた護衛のトールキンを思い出した。あの男はそうした魔法の使い手でもあった。
【ギルバート=カツランダルク注:破砕魔法は衝撃の波を使う魔法である。トールキンはドワーフの一族でも名族に生まれた人物。彼が持つ『鬼殺の大斧』には破砕魔法の力が込められていることで有名だが、彼自身も幼い頃から破砕魔法を習得していた。本人から聞いた話だがこの魔法を出来る限り弱くして陰茎にかけると、女性器や直腸の快感を増幅させるらしい。私は彼に尻穴で試してみろと誘われたが断った。トールキンのはサーガで言及された以上に大きかった。あんなのを入れたら切れ痔どころか一生健やかな大便ができない生活を送ることになってしまう。】
ヘンリックの部下達は隊長の為に命を捨てる事もできる者達だった。彼が前に出ないようにエドワードに立ち向かった。50名がみるみる内に削られていく。第十三部隊は全滅間近になった。
万事休す。ヘンリックは己の采配の誤りをしっかりと認めた。握っていたミスリルの剣を構え直す。しかしエドワードは踵を返した。強い風の音を聞いたからだ。同時にヘンリックは自分の脳裏に、聞き覚えがある誰かの声を受け取っていた。
後ろの方の鉄騎兵達が空を舞っていた。高々と吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。いつの間にかエドワードの前に小さな人影が立っていた。
10歳ぐらいの娘。しかし、戦場にはあるまじき、あまりにもばかげた格好だった。むしろ真冬のヒッジランドにはあるまじき姿だった。
肘や膝までの小手つき手袋やブーツはともかく、二の腕や腹や太ももは何もつけておらず白い肌が露出していた。
よろっているものは胸甲、というより乳当ての様に胸部をわずかばかりに守る鉄の甲。それから腰部は鎖かたびらを腰布みたく巻いただけのもので、黒い下履きがのぞく。兜の代わりに額と脳天を覆う鉄の被り物を身に着け、長くて波がかった金髪を風に舞わせていた。
「ははは。何者かね君は?」
随分と整った顔立ちの娘さんだ。そう言いながらエドワードは戸惑う鉄騎兵らに目くばせした。彼女が両手に持つ青白い光を放つ細身の片刃剣に眼を向けた。どこかで見覚えがあるとつぶやいて尋ねた。
「その姿、教団の魔法戦士だと見受けられるが、名前を聞かせてもらおうかな? 私はエドワード=ルーカスという!」
「うふふ♥ ヘラ、と覚えておいてね、おじちゃん!」
「……ヒッジランドではあまり聴かない名前だな?」
「あたし、イナーヴァニアに住んでたの! エチウにお引越ししたけどね!」
ヘラと名乗る娘が足を踏み出す。エドワードが周囲の鉄騎兵達に散れ、と命じた。ヘラはエドワードにではなく鉄騎兵らに襲い掛かった。
粉雪を噴煙の様に舞わせながらヘラの姿が消えた。右にいた鉄騎兵らの兜が首ごと飛んでいた。ヘラは彼等の後ろで血刀を持って笑っていた。空を浮いていた。
凄まじい速度よる斬撃だ。しかも浮遊魔法の使い手。いや、飛翔魔法だった。そのヘラがエドワードを見てにんまりとする。
「おじちゃん、ヘラと遊ぼうよ?」
ヘラの姿がまた消えた。しかしエドワードはランスを左側でぶんまわす。何かにぶつけた衝撃を受けてよろけた。
左側ではヘラが雪の上で倒れていた。腹の肉がいくらか削がれて泣き叫んでいた。彼女のへその上の肉がエドワードのランスにこびりついていた。
「いだあい! いだあい!」
ヘラの腹は血が流れ、内臓が少し見えていた。幼子とはいえ恐るべしと思いエドワードはとどめを刺そうとする。しかしそこに勇んで襲い掛かって来たパラッツォの兵士らに邪魔された。
彼等を蹴散らした時にはヘラの姿は無かった。しかし真上に強い怒気を感じ取ると後ろに飛んだ。大きな刃物で斬られた様に雪と土をえぐっていた。ヘラが降りて来た。彼女の腹の傷は癒えていた。
「治癒魔法の使い手でもあるか。すごいな」
あれほどの傷を一瞬で。相当な魔道の使い手だということだ。
「本当に痛かったんだから。ただ遊んでくれるだけじゃ済まないからね!」
ヘラが飛び掛かる。エドワードはランスで弾いたが、ヘラはよけきって空の上でまた身構えていた。破砕魔法も防げるかなりの強敵である。エドワードは嬉しそうに笑った。
「はははは! こんな強敵と戦うとは武人冥利に尽きるな! 君、ヒッジランドに寝返るつもりはないかね!」
またもや2人はぶつかり合う。エドワードのランスは少しへこんだがひしゃげなかった。空の上でまた姿を表したヘラがうっとうしそうに武人をにらんだ。
「楽勝だと思ったのに! さっさとやっつけてあかちゃんの素をいただこうと思ってたのに話が違うじゃん!」
「あかちゃんの素? よせよせ。私は君みたいなちいちゃいお嬢さんは趣味じゃない。もっとでっぷりとした、尻が大きな丸っこい女人が好みだ!」
「ヘラはさっさとあかちゃんをつくりたいんだよっ!」
ヘラが怒りエドワードがランスを振る。耳障りな音が連続し、エドワードの騎馬槍はへこみを増やしていった。この一騎打ちを誰もが固唾を飲んで見守っていた。
エドワードとヘラの戦いはなかなか決着がつかなかった。しかし勝負は思わぬ横槍によって終わった。エドワードは突然の終わりを背中に走った深い激痛で感じ取った。
「……面白くなったところで。不粋だな!」
弩弓の矢が数本、彼の背中に刺さっていた。命じたのはヘンリックだった。長く戦い続けていたヘラに疲れの色を見たからだ。ランスを持ちながら前に倒れたエドワードを見て、彼女は不服そうに頬を膨らませていた。
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エドワードがパラッツォの陣に連れて行かれ、生き残った鉄騎兵らが討たれたり逃げたのが、戦いの流れを変えた。ミョージバーグは数時間後に陥落した。パラッツォ教軍はめずらしいことに、略奪や強姦を加えぬ軍隊であったから城内の混乱はすぐに収まった。
【ギルバート=カツランダルク注:サーガでのパラッツォ教団軍の言及は歴史書や地誌にも書き残されている。パラッツォ教軍は一部を除き、占領地での狼藉を為さなかった。】
ヘンリックは全てを信頼できる武将らに任せて陣地に戻った。天幕では両手両脚をきつく縛られ、全裸にされたエドワードが小さな裸体にまたがれ、喘いでいた。
「うふ♥ うふふ♥ あかちゃんのもと、もっともっとちょうだい♥」
勃起したまま気を失い、倒れていたのはエドワードである。彼はエチウ島への護送が決まった。教団の女信徒達や教典の巫女らと交わらせ、強い戦士を産ませる役目に就かせる為にであった。
【ギルバート=カツランダルク注:エドワード=ルーカスはサーガの別の版ではヘラに討たれたとされている。しかし近年の研究をもとにしたサルティオル版サーガによれば、この後エチウに連れて行かれ、死ぬまで子造りに従事させられたと謡われている。】
その大きなものを小さな膣口でしっかりと咥えながらヘラは気持ちよさそうに腰を振る。彼女もまたパラッツォ教徒である。10の歳で出産がざらにある門徒の1人であった。
「ヘラ。まだ法悦を楽しんでいたのですね?」
「だって♥ このおじさんの、かたいままなんだもん♥」
「危ないところを助けていただき、感謝してますよ。本当に死ぬところでした。エドワード=ルーカス、恐るべしですよ……」
エドワードは生かす。しかしヒッジランドには彼が処刑されたと広めて戦意を削ぎ、降伏を早めさせるつもりだった。
「あうう……♥ ほ、ほーえつが♥」
ヘラが身をがくがくと震わせ、深い溜息をついた。エドワードのペニスはこの時もまだ硬いままだ。
「気に入ったようですね、ヘラ?」
「このおじさん、ヘラのあかちゃんづくりの為に傍に置こうと思うけど、どうかな♥」
「貴方の武勲です。好きなようになされるとよろしいでしょう」
ヘンリックが呼びかけるとヘラはだらしない顔で笑った。また法悦を得ようと腰をくねらせる。小さな尻がいやらしく揺れてエドワードの精をまた奥底で吸い取った。
このヘラという娘はこの後に、サーガにおいても、歴史書においても悪名を残す事になる。しかしこの時はまだ教団の幼き魔法戦士であったが。
さてこのヘラという娘、一体どこから来た何者であったのだろうか?
その続きについてはまた、次回にて。