聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
一方、マイヤは苦悩する姉とは違い、充実した日々を過ごしていた。新しい屋敷の建設の指示を進めながら、ヨーシデンの学問都市の青写真を描き終えた。いよいよ街の土台づくりだ。
方々からかき集められた人夫達が続々と集まって来た。今のところは5000人足らずだが、内乱が収まればもっと集まるだろう。さらに、マレーネがイーガから船で土木工事用の機械を取り寄せていた。魔法で動くクレーンや掘削機などだ。魔道士が魔力を注ぎ込み、操縦するのだ。
「すごい!」
目の前で易々と土を削る機械を見て、マイヤは目を輝かせていた。前世の世界にあったブルドーザーみたいな機械である。アレに比べると小型だが、すいすいと動き、長時間仕事をしてくれる。マイヤだけでなく、ホーデンエーネンの者達は魔法王国の不思議な機械に目を奪われていた。
(こんなものがイーガにあったなんて。この世界は人力とお馬さんばかりがこうした仕事をしていると思ったけど、なかなかに進んでいるじゃない!)
魔法という力があるからだが、それでも前の人生の世界にあったものに負けず劣らずの道具があることに驚嘆した。穴を掘る機械のメンテナンスをしていた技師エルフの男に、機械はどうやって作るのかを尋ねた。
「強化魔法と重力魔法が使える者なら、手軽なものが作れるだろう」
「そうじゃなくって、機械の設計だよ!」
「ああ。書物にあったものを見様見真似だ。こうした土木機械は昔からあるんだよ」
これらの道具の設計がなされたのは、古代ムサシノ帝国時代にだ。3000年程前から設計は変わっていない。すでに完成されているのだ。改良の余地は無い。
「そうなの! もっと大きな機械にするとか、いろいろ考える事があるでしょう!」
「何を目指しているのか理解に苦しむが……」
「歴史に残る一大『もにゅめんと』を建てる為に決まっているじゃない!」
マイヤは熱弁する。ニンゲンはでかいものが大好きだ。それも100年や200年、いや、1000年先も残るものを。人の命は短いからそいつを欲しがる。この気持ち、ニンゲンから見て永遠に近い生命の亜人達にはわかるまい。
「そりゃあ、カントニアには今もたくさんあるさ。私の故郷があるヒッターチの皇帝のお住まい、アンコティノトンはナントブルグ城よりも高くて大きいさ」
「やっぱりそうじゃないの! 古代帝国時代もそうだったでしょう?」
「まあな。ムサシノ帝国時代には、アンコティノトンなんて比べ物にならないぐらいに山みたいに大きな建物を造っていたよ。しかし今の時代は違う。人々はばかでかい建物をあまり欲しいと思っていない。身の丈にあったものでいいと望んでいる。夢は無いが堅実でよろしいかと思うよ」
マイヤはうなずいたが心の中で違う、と言いたかった。それじゃあこぎれいにやっているのが好きな連中だけ充実する。でかいことをしたい奴は鬱憤がたまったままになる。あこがれは止められないんだよ。私みたいに!
(うん。そういう人をだまくらかして、ヨーシデンをおっきな街にしよう! でっかいことはいいことだ! イズヴァルトのおちんちんみたいに! うん! うん!)
しかしイーガに別の大陸の魔法文明の技術が伝わっている事が気になった。多分だがあの禁書図書館にいくらかあるだろう。読んでみたい。
その夜の沐浴中、マイヤはいつも一緒に風呂に入ってくれるマレーネに問いかけた。古代魔法の書物が収められている図書館とか書庫とかある?
「たっくさんありますわよ。禁書図書館だけでなく、学問所や魔道伯の書架にも。今でも使えそうなのは写本を作っておりますの」
「ありったけ、私が作る総合大学の図書館に納めてくれないかな?」
「もちろん尽力いたしますけど……」
マレーネは背後から抱きしめていたマイヤの下腹に手を伸ばした。18になるのに陰毛は少しだけしか生えていない。整えていないのに割れ目の周囲は無毛だった。指で陰唇をこねる。風呂で温められたマイヤの身体に喜びが奔った。
「うんっ……!」
指が入り込む。快感に貪欲な膣は壁を狭め、マレーネのか細い指を舐めていた。
「おねえちゃまのここ、とっても吸いついておりますわよ?」
「マレーネたん……もっとおはなしをしたいから、そのてをとめて?」
「嫌です。意地汚いここが欲しがっているじゃありませんか?」
マレーネは中指で膣の上部を盛んに撫でた。手足の無い身体が狂おしくよがる。クリトリスの神経に近いそこをほぐされてマイヤは湯の中に分泌液を溶け込ませた。真っ白で粘っこいものの塊がちょっとずつ。仕事中にヴァギナで労をねぎらった男の精液だった。
「あらあら。おねえちゃまはおまんこの中にちんちんを隠し持っていらっしゃったの? 汚いせーえきがどんどん出て来るわ?」
「今日の午後は3人の大工さんとしたから……やだよう、もうやめて……やめて……」
一瞬くらっとなり、それから言葉を失う多幸感が長く続いた。大きな乳房を弾ませながらマイヤはマレーネに甘え出した。
年上の女を御守りするイーガの姫は身をよじったマイヤの好きにさせた。陥没しがちな右の乳首がついばまれる。思いっきり甘えん坊になっていた。
「ううん。マレーネたんのおっぱい。ちゅき!」
「うふふ。どんなに吸ってもおちちは出ませんからね。それはそうとこれから作る大学は、魔道士も養成するおつもりですの?」
大きな赤ん坊はうなずいた。ホーデンエーネン初の総合大学は学生に魔道も学ばせるつもりだ。魔法の適性はイーガ人と比べたら劣るだろうが、ホーデンエーネンにもしっかりと体系だった魔法学を教え、王国の良き魔道士となる人物を育ててやりたかったのだ。
「それからね……まだ知らない魔道のことをたくさん知りたいの! 私はもう使えないみたいだけど、才能ある人が大学で学んだ人ならきっと使えるはず。育てたいんだよ!」
「……おねえちゃまはまるで子供ですわ。夢があふれている」
それならばイーガのとっておきの魔道も伝えよう。義姉の好奇心がどこまで続くか、マレーネは試してみたいと思った。
□ □ □ □ □
2週間後、イーガから船が来た。運ばれた沢山の魔道書がマイヤを喜ばせた。200冊あってそのうちの10冊が、古代ムサシノ帝国時代の魔法をキンキ大陸の言葉で訳したものだった。その10冊がどういう代物なのかを魔道学問所時代の講師だったパルパティアの説明を受ける。
「これは、ただの肉の塊を挽いて様々な形の肉団子を造る装置の魔法ですね。焼き上がりもちょい生焼けから黒焦げまで選べるものです」
「すごい! こっちのは?」
「通信魔法で口喧嘩する時に頭の中で思った言葉を検知し、より強烈な罵倒語に変えて提案してくれる補助道具についての本です。古代ムサシノ帝国は『れすば』と呼ばれる、言葉での格闘が流行っていたと聞いておりますよ」
「すごいすごい! これは?」
「水と樹脂と特殊な薬を原料にした、恋人がいない男の為の女型造魔を作る為の練成術式ですね。古代ムサシノ帝国は珍奇な童貞がいて、声をかければすぐにやらせてくれるエルフとするのを恥だと思い、別のもので性行為をすれば純潔を守れる、と信じていたようです」
「すごいすごいすごい! さすが魔法文明! ……ところでこの本は?」
マイヤが義手の指で差したそれを見てパルパティアは手に取った。ぱらぱらとめくり眉をしかめた。
「……あんまり、人に教える魔法とは言えねえべえなあ」
「先生、カントニア語になっちゃっているけど?」
「すみませんね。で、この魔法の本は」
イーガでは禁止指定の魔法が書かれていた。使えば罰則がくだるしそれを乱用する者は処刑も免れない。禁書というやつだった。
「これはマイヤ様の書庫にしまっておくだけにしてください」
「ざっと内容を聞きたいんだけど?」
「いいでしょう……」
その書にあった禁じられた魔法というのは、精霊人を殺傷する為の術式だった。精霊人というのは亜人にあたる。風の精霊から産まれたエルフや、土の精霊の眷属であるドワーフなど、彼等の『根源』を傷つけ、深手を負わせる為の術式、
「カイロネイアのエルフ達を束ねたニンゲンの覇王、スーワシューロの魔剣の術式です」
「スーワシューロ? 確か、わがままなエルフの王様をやっつけてカイロネイアを平和に導いた英雄だったよね?」
「キンキ大陸には正しく伝わっていないようですね。その逆です。倒した相手が暴君だったのまでは正しいのですが、エルフ達を束ねた彼は、今度はムサシノ帝国を倒そうとしたのです」
強大な魔道士であり戦士でもあるエルフらの軍団を率いればムサシノ帝国も打倒し、我が物とできるはず。スーワシューロは大陸を制覇していた帝国に挑んだ。数では圧倒的に劣る戦争だったが善戦はした。だが、今のエドニア地方に侵攻する戦いの最中で彼は命を落とした。
「そうだったんだ……」
「それとこの本は彼の奥義の半分も書いていないはず。信頼できるニンゲンの武者の為に書いた『劣化版』についての書物でしょう。それでも、イーガでは禁書とされているのですよ」
この本に書かれた術式でも、マスターすれば『あいのこ』やクォーターエルフを一撃で殺せる。しかしイーガという国がそれを嫌う。なぜなら王家の源流はエルフだし、魔道伯や大貴族、魔道士やましてや平民にも亜人の血が流れている者が多かった。
「それにこの魔法は亜人たちを警戒させます。イーガは彼等の魔法を学ぶことで発展してきたのです。恩人を裏切る真似はできません」
「そうなんだ……わかったわ。この本は蔵にしまっておくね。けど」
こういう忌むべき本が眠っているのなら、写しを私に譲って欲しい。マイヤは薄暗いことを記した書物にも興味があった。前世からその方面の好奇心があったのだ。
もう1つ、彼女は知りたいことがあった。3年間、自分を幽閉して思いのままにさせた数々の闇の魔法や医術を知りたい。自分をこんな無残な姿にした闇の秘術をだ。