聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
------
スオニアよ、奮い立て。 スオニアよ、剣を取れ。
スオニアよ、列を為せ。 スオニアよ、敵を討て。
マハラの神に守られし国。
スオニアは、神の国。 スオニアは、古き国。
スオニアは、無窮の園。 スオニアこそが浄土なり。
マハーヴァラの光とともに我ら在り。
スオニア軍歌 『我らは神の国の刃なり』 の冒頭より。
------
各地の砦や陣庶から、スオニアの軍歌、 『我らは神の国の刃なり』 の演奏が続いている。
吶喊の声や木々を揺らす音、断末魔の声があちらこちらであがっていた。
自刃させた妾達の首とハースティンの遺骸を乗せた輿が、多数の将兵らと共に、突破を目論んでいた西ではなく、東に向かって降りて行く。
そちらにゲースティアの精鋭部隊を含む備えがあった。ハースティンが背中に矢を受けたのは、その部隊との交戦中にであった。
ハースティンの本陣から西側の下り坂にいたエレクトラは、僭主の軍団の断末魔を聞き続けていた。男達に輪姦されながらだ。副官達が獣欲を満たし、家来衆の順番となっていた。まだ攻勢比較的穏やかなのをいいことに、出来る限り楽しむらしい。出番を待ちきれなかった兵士達は自分のもの晒しだし、こすって放っていた。
イッツク=シーは基地の島である。街はあったが西と東の麓に。猫の額程度の広さしか無かった。住民達はスーエイニア軍が攻めて来るという事で、老人以外は別の島に避難していた。犯されているエレクトラを見て手淫する兵士達の為の、はけ口用の女はごくわずかだった。
総大将を失い、連携を絶たれた各所の砦のスーエイニア軍はそれぞれの陣地で、勝手な動きをしていた。
固く守る砦。玉砕に出る猛将。白旗をあげて許しを乞う武将。捕えられた後のことを考えて味方を攻撃し始める薄情者達。
ゲースティアの勝利は目前であった。
「へへ。お殿様がいう通り、いいあそこをしてやがる」
エレクトラに割り込んで犯していた武者が笑った。締まりがいい。精液まみれになっても絡みこんでくる膣肉だ。亀頭でこねて陰茎の裏側の縫い目あたりの皮膚で愉しみ、精を吐き出した。
「もう1回いいか?」
「馬鹿を言うな。俺達の番はどうするんだ?」
「くそ。これが人生最後の性交になるとはな」
武者はエレクトラのヴァギナから引き抜いた。彼女は虚ろな目をして空を見上げていただけだったが、魔法を使う為に精神統一をはかっていた。
が、矢についた痺れ薬で思う様に動かなかった。ゴブリンの毒とは別種のやつだ。まだ詳しくまわっていないチンゼーの毒だろう。
「交代だ」
次の出番の男が勃起を。汚された穴に突き込んだ。強姦されても彼女の生殖器は快感を覚えていた。悦に浸れる余裕があるのだ。頭脳とは違って。
「確かに良い締まりだ。たまらない!」
相手の男が荒っぽく息を弾ませながら腰を振る。エレクトラも喘いだ。生来は好き者だ。だが、状況が状況だから、か弱い被害者をいつまでも演じたくはなかった。
相手の腕が自分の脚を高々と持ち上げ、前のめりに覆いかぶさった時である。兵士達が一斉に叫んだ。悲しい叫び声だった。刃が鳴りあう音と甲が叩き切られる音とがした。その音は間近になった。
エレクトラを襲っていた男が、首から上を無くした。血を噴き出しながら胴体は左に倒れた。エレクトラは目を閉じた。顔に血しぶきがかかったからだ。
身体は何者かにって後ろに引きずり出された。膣から引き出された陰茎が死の間際に子孫を遺そうと、びゅる、びゅる、と精液を放っていた。
「だいじょうぶ?」
やや低めな女の声だ。エレクトラは右腕でまぶたにかかった血をぬぐって開いた。右手を差し出していたのは、返り血まみれの具足にまとった背の高い、襟元で髪をばっさり切ったブロンドの女だった。顔中に古傷をこさえていたが、とても美しい顔ときめ細かそうな肌をしていた。
それから左手で握る血まみれの剣。1メートル半もあるその剣は恐ろしい程に頑丈な美品であった。右の腰に差していた細い剣も気になった。魔道士でもあるエレクトラは予感する。あれは魔剣だ。
「あ、あなたは……」
「スーエイニアのラスフェニ子爵配下の傭兵、ヴィクトリア=アルグレイブ。子爵が解雇を言い渡したので仲間達とともに逃げているところよ」
□ □ □ □ □
エルフのロシェとシマナミスタン=エルフのヴィヤーサは、エレクトラに治癒の魔法をかけ、秘部を清める為の水を与えた。2人はヴィクトリアが率いる、20名程の傭兵部隊の副官格だ。
「この連中に犯され続けて痛かったろう? 街へ逃げおおせたら孕み止めの薬を作ってやるき。しばらくはがまんせいよ?」
ロシェがヴィヤーサを見ていう。彼の故郷、シマナミスタンのモノノベダール地方のドワーフは薬づくりが得意なのだと。砂漠サソリの毒で作った強精剤や、棘のある樹の皮で作った傷薬などは、そこらのゴブリンが作ったもの以上の効果があるのだと。
「私はロシェ=ユラニソフ。ヌマタラシュク=エルフだ。わけあって500年以上前から、ヴィヤーサとともにサイゴークに移り住んでいる」
それから3メートル近くの槍を持って、高台で物見をやっている髭もじゃのドワーフはウィリアムといった。ケツの穴をほじくるのが大好きな男色家で、ヴィヤーサも何度かやられたという。なかなかに腰さばきがうまい。女たちも彼に啼かれっぱなしだという。
「ウィリアムは色魔だから気をつけろ。まあ、『ひめさま』が傍にいる限りは、そんなことは起きないだろうが」
「ひめさまですかい?」
「ヴィクトリア様のことじゃき。あんお方はヒッジランド王家の末裔じゃよ。守り神にあの触手姫さまがついておるんじゃ!」
噂では聞いたことがある。ヒッジランドの北西部の辺境に、水魔と呼ばれる魔物が住み着いているのだとか。前のヒッジランド王家の守り神であった事までは知らなかった。
そのヴィクトリアは、部下達にあれこれと指図をしていた。砦からの攻撃は無いか。これから向かう西の港にはどれくらいの兵がいるのか調べてこい。
ヴィクトリアがやって来た。エレクトラに事情を説明する。彼女は半年前、お家再興をかけてハースティンの軍に加わったが、ある話を聞いて保険をかけることにした。
信頼置けるビジネスパートナーのつてを頼り、ゲースティア側にも連絡をとっていたのだ。イッツク=シー島の西の対岸の兵団がそれだ。
司令官とはヴィクトリアも面識があった。10年前にゲースティアとイーズモーで起きた小競り合いで知り合った。ヴィクトリアはゲースティア側についていた。その時の上官がその人物だった。
「つまりヴィクトリアさんたちは、昔の味方と戦っていたわけですかい?」
「そういうわけよ。傭兵だから忠義は問われないわ。実際、このイッツク=シーでも私たちは、防塁から矢を適当に射かけるだけしかしなかったんですもの」
ハースティンの軍において傭兵らは、全く期待されていなかった。殆どの仕事が弩弓の射手であった。武功はスーエイニアの武将や騎士に、というのが僭主の心遣いであった。
ただ、女の兵士や傭兵の境遇は悲惨だった。食事や洗濯などでこき使われる上に、夜は騎士や武将らの慰安婦にされた。船の上では寄ってたかって男達に囲まれ、輪姦が続いたという。
「そりゃひどい話ですね。あたしは戦場妾としてお殿様についてきましたが、そういう話は耳にしておりませんでしたよ……」
「下々の揉めごとだもの。殿様方や騎士様あたりは見て見ぬふりよ。女兵士や傭兵というのはだいたい、農家の娘や後家がやるものだからね」
しかしヴィクトリアは違った。小さいながら傭兵団の長だった。並みの男が手出しできぬ力量もあった。とはいえこれまでの戦場稼ぎで何度も強姦されかけた。大抵は寝込みを襲われてだ。しかしヴィクトリアは勘が鋭く、優れた戦士であったから免れた。
「ハースティンの軍はそれが他の国より悪目立ちしていたわ。出世を賭けたけど……やっぱりろくなもんじゃなかった」
博打に負けた。というわけで撤退だ。ヴィクトリアは坂の下に目を向けた。知己の武将の部隊がいるのがあそこだ。いよいよ西側の最後の防塁が突破されかかっていた。
エレクトラは立ち上がり、白い布を持って向かえばいいと助言した。ヴィクトリアはうなずいた。エレクトラはスーエイニア兵の死体から槍と剣を取りあげた。
「鎧を着ていたけど……貴方も戦えるの?」
「へえ……たしなみ程度でなら。こう見えても剣と槍は幼い頃、道場に通った事がございますんで」
「見かけに寄らずなのね。わかったわ。でも、前に出るのはおよしなさい。貴方、片手なんだし」
ヴィクトリアはエレクトラの右手首をちらと見て言った。体格も小柄で細身だから期待できないとも思っていた。
女戦士や兵士は大概、体格の良い者がなるものだ。ヴィクトリアは身長が165ほどあるが、それより背の高い女もいた。エレクトラは155センチ程度しか無い。
けれども、どんなに図体がでかくても、屈強な男数名相手だと取り押さえられる。女戦士や兵士というのは私生児を産むことが多かった。堕胎も。不本意な生殖で産まれた子は大概、有能な武者になることが多かったけれど。
□ □ □ □ □
最後の防塁を突破し、先手をつけてきたのはゲースティア軍ではなかった。チンゼーの海賊達だ。しかしこの海の猛者どもは身のこなしがすばしこかった。白旗が矢に射かけられ、問答無用で殺すと言われたヴィクトリアは悟った。
「……チンゼー諸国の海兵も、紛れ込んでるわね」
最初に斬りかかった者を『覇王の剣』で叩き斬る。後続の者らは怯えなかった。構わずにヴィクトリア達に襲い掛かる。眼が血走り、煙草や大麻とは違うタイプの煙ったさをまとっていた。狂戦士にする麻薬の残り香だ。
ただの海賊がこんなものを吸うわけが無かった。事実、ゲースティアに協力した海賊達だが、半分ぐらいはチンゼー諸国の正規兵達だった。南の各国や領主らはゲースティアに恩を売り、水上交通や貿易で利益を得ようと考え、彼等を派遣したのだ。
チンゼー人は集団戦法が不得手だが、個人個人は剽悍だ。膂力もある。ヴィクトリアが4,5人を屠ると、後ろの方の敵兵らが指で印を切り、まじないの言葉を唱え始めた。
エレクトラが前に出た。右手首で印を切りながらヴィクトリアの前に出た。彼女の前方で突如として紅蓮の炎が巻き起こった。
「エレクトラ!」
ヴィクトリアが呼びかけたが彼女は無事だった。エレクトラの目の前には防護魔法の結界が張られ、炎は彼女の目の前で真っ二つに分かれていた。草だけを燃やした魔法を放ってきた者達をうかがうように顔を向け、エレクトラは印を切る。
「魔法ってのがどんなものか、教えてあげないといけませんねぇ……」
彼女の頭上に、紫色に輝く術式陣が浮かび上がる。第二波の炎が彼女の回りを取り囲んだが、焦がす事は無かった。彼女はカントニア=エルフ仕込みの魔法防壁にしっかりと守られていた。
そして、術式陣から紫電が奔った。ヴィクトリアはおろか、エルフのロシェでも驚愕する様な威力であった。