聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
三の砦の戦いで勝利し、続く四の砦での戦いも激戦となった。
炎の剣を持つイズヴァルトが、長く伸びた火炎の刃で柵破りを試そうとしたが、これでもか、というぐらいに柵に施された魔法除けの結界で阻まれてしまった。やはり乱戦で決するしか無かった。
この砦はドワーフ達の数が多かった。イズヴァルトは四方を囲まれての一斉攻撃を受けた。十人相手に奮戦し、うち2人を討ち果たしみせて退かせたものの、戦いの最中に背中を斬られ深手を負っていた。これ以上の攻め入りは、付き従っていたイナンナに止められてしまった。
陣屋に戻って具足を脱ぎ、イナンナに傷の手当をしてもらうが、その最中、できれば自分が砦内に一番乗りしたかったと嘆いた。
「くやしいでござる……」
「仕方がねえズラよ。長いいくさ旅で、流石のイズヴァルトさんも疲れ切っているみてえズラ」
サイゴークでの戦いは、かれこれ3年が経っていた。イズヴァルトは大きな武勲を挙げようと常に先頭に立ち続けた。
しかしいくら無双の勇者といえど、長く戦いを続けていたら不調になってしまう。
「オラも疲れ始めたかもしれねえズラ。ここんとこ流れ矢を避けられずに、ぶっ刺される事が多くなったズラ……」
イナンナも近頃は医者だけでなく、戦士としても合戦に加わっていた。弓矢はともかく剣でもかなりの腕の持ち主だが、ドワーフに出会うと大いに手こずっていた。
相手の動きはのそりとしている。なれど膂力がとんでもなく強い。なかなかどうして、カントニアでの戦いの頃の様にはいかなかったのである。
治療が終わった。イズヴァルトはすぐにでもまた合戦に加わりたかったが、無理やり引き留められた。夕方頃、連合軍の鬨の声が砦からこだました。兵の数で押し切る様な、犠牲をものともせぬ戦い方で勝利したのだ。
四の砦の戦いは、イズヴァルトが先駆けて血路を開き、連合軍が後に続いたようなものだった。本来であれば鬨の声の号令をかけるのはイズヴァルトのはずであったのに、総大将たるピピン王子にその役目を奪われた格好だった。
己を誇れぬその事実は、騎士にとって、武者にとってあまりにも辛い話であった。不意に、イズヴァルトはピピン王子への嫉妬心を感じてしまった。王子を批難するつもりはないが、わなわなと震えて己の怒りが落ち着くのを待ち続けた。
翌日、回復しきったイズヴァルトは砦に入った。討ち果たされた自軍の兵士や敵方のパラッツォ教徒らの墓穴を掘るチンゼーからの部下達に励ましをかけながら砦の奥へ入る。どうにも空気がどんよりしていた。
兵士はおろか、武将や血だらけの包帯を身体のあちこちに巻いていたパオレッタやオクタヴィアらも含め、皆が浮かない顔をしていた。
「どうしたでござる? エレクトラどのがまだ見つからぬから、その様な顔をなされているのでござるか?」
口を開いたのはオクタヴィアだった。
「それもあるけど他の事もあるずら。立て続けの激戦で、連合軍のニンゲンもおらたちも、すっかり参ってしまっているずら」
タフな亜人も疲れてしまうものなのだ。オクタヴィアは乱戦の時に用いた壊れた盾や、いささかひん曲がった感もあるミスリルのロングソードをイズヴァルトに見せてこう告げた。
「ここが正念場っちゅうのはわかっているけど、どうにもドワーフの数が多いずら。あいつら、すっかりパラッツォ教に心服してしまったずらか……」
ドワーフらの動きについては、イワッミーに派遣したスパイに探らせているが、なかなかに帰ってこない。内情がわからずどこまで教団と手を組んでいるのかがわからなかった。
「なるほど。それは辛い話でござるな。さて、ピピンどのはいかがでござるか?」
「あのぼうず……どうやらここまでみてえずら」
何事かと思い、イズヴァルトはピピン王子の元に案内して貰った。家臣らが見守る中、王子は敷いた毛布の上に寝かされ、ミレイユとマリアに治療魔法の光を注がれていた。だいぶ傷ついたようで、腕と両脚に包帯が巻かれていた。
「ピピンどの……」
呼びかけても王子は答えない。深い眠りについていた。気になったのは右手。やけに足りないと思ってのぞけば、掌が親指の付け根からごっそり無くなっていた。
「ピピンどのはどうなされたのでござる」
オクタヴィアが答えた。砦内のドワーフらとの戦いで右手を斬られた。それから負傷したところで、もう1人から両脚のふくらはぎを深く斬られた。
傷は骨にまで達していて、治癒魔法をかけても治るには時間がかかる。1か月は安静させたい。
「でも、オラたちの治癒魔法じゃ、どうにもならないところがあるズラ」
「治癒魔法との相性だ。エルフであれば誰でも骨まで繋げる事ができるが、ニンゲンは個人差がある。ピピン王子は筋肉まではどうにかなる。問題は骨だ。私たちでは治らない」
触手姫の力が必要だった。ピピン王子はここしばらくは前線を退く事となる。代わりに総大将を務めるのはシマーヅの武将、ニーロ=ダヴァスとなった。
この男はピピン王子に先陣を切らせることをただ1人、反対していた人物だった。エレクトラとよく相談している姿を見かけた。
「あのお方か。なかなかの知恵者と聞いておるゆえ、安心できるでござる」
「でもニーロは私たちエルフを信じていないぞ。イズヴァルトさんも話しかけられた事が無いだろう?」
「1度だけでござる。イナーヴァニアとの連絡路を潰す作戦はどうかと問われたでござるが……イワッミーが協力している今、海路があるゆえ無理でござろうと返答した。チンゼーとゲースティアの海軍で封鎖するのは如何か、と訊かれたでござるが……」
話していたところでちょっとよろしいでしょうか、とシマーヅの武将が呼びかけて来た。
「ピピンさまの、大事なお時間の時が来ましたので」
「はて? どういうことでござろう?」
「まあ、イズヴァルトさんはここにいらっしゃっても良いのでございますが」
部屋に1人の見慣れない者が入って来た。エチウ人の若い娘だ。歳は17ぐらいで胸と尻が大きい。柔らかそうな胸の谷間がのぞける上着を着て、動きやすそうなひざ丈のスカートを身に着けていた。
娘はイズヴァルトにぺこり、と頭を下げて「お邪魔いたします」と小声で言った。笑顔ではなかったが、性格は明るそうな女だった。それから寝かされているピピン王子の枕元に座り込んだ。
「どなたでござる?」
「ウラスコーに籠っていたパラッツォ教徒の女です。小間使いとして雇った者のうち1人です」
娘はピピンの寝巻替わりの腰布を剥いだ。負傷して疲れ切っているのに、割礼された黒いペニスは高々と持ち上がっていた。イズヴァルトのそれといい勝負の子宝袋も、ふにゃんとしていて元気そうだった。
「小間使い……ミツクニュモスどのからこっそり聞いていたでござるが」
「ま、まあ。王子は特別ですから……」
小間使いの娘がスカートをたくし上げながら、ピピンの腰の上に乗る。それからスカートの中にあるぬかるみを、張り詰めたものにまとわせた。外側がふんわりとして柔らかくも、芯は鉄の様に硬い亀頭が彼女の奥を喜ばせた。
「……あのようなお嬢さんをいくさ場に連れて行くのは、軍法で禁じられているはずでござるぞ?」
チンゼーの武将らが言う小間使い。つまりは元が女捕虜の妾の事であった。
ショージュ=オーウェンが定めた軍法では、国元にいた妻や妾を連れて行くのはかまわなかったが、女捕虜を愛人にしていくさ旅に、引き連れる事を武将達に禁じていた。
しかし連合軍の武将達の間では秘密裡に、エチウ人のパラッツォ教徒の女を妾に囲っていたのだ。幼い頃からのセックスで自然に色気を得て、かつ、たいていがおっぱいぼいんぼいんであったから、サイゴークの武将らは、その魅力に取りつかれてしまったのだ。
ピピン王子がこうした女を侍らせていたとは。あるいは、家来に求められたのか。
エレクトラやエルフのお姉さん達が「まんまるくてかわいいかわいい。真っ黒な雪だるまみたい」と毎朝毎晩優しくしてくれたのに。もう彼女達に飽きてしまったのだろうか。
触手姫のブランカともまた、ウラスコーまでの道のりではいちゃいちゃちゅっちゅを繰り返したと聞く。ピピン王子はぷにぷにとした、ちっこくて愛らしい水魔の幼な児の、ぷるぷるしたヴァギナにどくどくと注ぎまくった。ただこれは、でっぷりとした男が大好きなブランカが進んで求めた事であった。
それとだ。イズヴァルトもまた王子と熱烈に愛しあった。義兄弟の契りとしてお互いのペニスや肛門をぺろぺろと舐めあったり突っ込みあったが、驚くほど身体の相性が良かった。既に相思相愛の恋人同士同然だった。
あのでっぷりとした身体を愛らしく震わせながら、しりまんこにちょーだい、ちょーだいとせがむピピン王子の愛くるしさ。それを思い出してイズヴァルトは深く悲しんだ。男に浮気されて裏切られた女の気持ちが少しだけわかる様な気がした。
とはいえ自分も浮気しっぱなしの孕ませまくりの大悪人である。そう言い聞かせて気持ちよさそうに腰を振る小間使いを見ながら武将らに尋ねた。
「他にもおられよう。合計で何人でござる?」
「……ご内密にですぞ? 8名のエチウのお嬢さんがたをお妾に加えました。あと5名程追加する予定です」
「それでは、ピピンどのの身が持たぬでござるよ?」
「いえいえ。王子はイズヴァルトさんに負けぬ絶倫ですぞ。このぐらいはおちゃのこさいさいですよ。それと、そのうち3名にややこが出来たようです。ウラスコーに戻らせました」
「エレクトラどのはご存じでござるか?」
その場に残っていた武将らは、プライベートではエレクトラのことを『姐さん』と呼んでいた。強くて頭が良い。ピピン王子の妾の1人だが、実質的には母親代わりみたいなものだ。
シマーヅの国王やピピンの年の離れた長兄らはかつて、エレクトラを自分の妾にしたいと口にしていた。権力者はいろんな女を欲しがる。やさしい女や蠱惑的な妖女など様々な人格の女を。それらを妾として集めて、自分に従わせる悦に浸るのだ。
「あ、いえ……『エレクトラ姐さん』の指示なのですよ、実は……」
「なんと!」
驚きの事実にイズヴァルトはあんぐりと口を開けた。ピピン王子の妾を増やし、子を沢山儲けるのをなぜ、申し出たのか。
「……ことあるごとに年増、年増とつっかかる、アソマリアのフロウラどのへのやっかみでござろうか?」
「フロウラ様はあれはあれで、エレクトラ姐さんを尊敬しているのですよ。デボラ様は存じませんが。しかしエレクトラ姐さんを悪く言う妾はたいていが、低い階級の小娘ばかりです。何せエレクトラ姐さんは貴族の出身ですからね。他国のですが」
小間使いが動きを止めた。ピピン王子のペニスから精液が放たれたからだ。発射を何度か繰り返して動きが止まると、娘は再び腰を振り始めた。ペニスはぜんぜん硬かった。えぐられる様な挿入での快感は、絶頂に差し迫ってた。
エレクトラがピピンに沢山子供を造らせようとする理由を、武将らは詳しく語った。
子供を出来るだけ沢山作り、アソマリアやヒューガスタン、スミジアなどの有力な貴族に婿や嫁として送り出す。あるいは、遠く離れたイーガにもだ。
「なにゆえでござる? どうしてそんなことを、エレクトラどのは?」
「ご内密にですぞ。次の国王の座を狙う為にでございますよ」
「ただ、既に長兄様が次の王になることは決まっております。ピピン様の次の代にと、エレクトラ姐さんはお考えです」
ピピンの長兄は子だくさんであったが、どの子も娘ばかりであった。しかも数年前、精巣が病気になって切除して、もう子を望めなくなっていた。歳も40。老境の域であった。
「加えて国元の手紙によれば、長兄様はご病気で床に臥せているとのことでして、陛下は可哀そうだとお思いで、数年だけでも王位を継がすおつもりの様です」
「まあ、長兄様も自業自得なのですがね。若い頃から不摂生を繰り返して、酒や衆道遊びばかりに耽っていましたし」
長兄は数年のうちに死ぬ。次兄らもまた子供を沢山作っていたが、疫病ばかりのチンゼーの気候が多くの命を奪っていた。男児で国王の孫は、ウーゴとアソマリアにいる数名の男児しかいない状態だった。
【シマーヅの歴史家による注:ピピン王子の兄上様がたの男児の死去につきましては、疫病もございましたが、武術の訓練中の事故もございました。この当時のシマーヅ国の王子らは、少年の間まで過酷な武術の訓練を課せられており、2頭の馬を走らせながら交互に飛び乗ったり、牛と『おすもう』を取っ組み合うということまでなされました。ゆえに訓練中にご悲運に見舞われる事があったのでございます。】
その次の王位継承権を巡って、エレクトラは布石を打つことに決めたのだ。自身が産んだウーゴ王子あるいは、アソマリアにいるピピンの息子らが次の次、あるいはそのまた先の国王となる為にである。
「なにゆえその様な事を考えていたのでござる、エレクトラどのは?」
イズヴァルトに問われて諸将らは一斉に彼の眼を見つめた。それが答え方の1つでもあった。
さて、この武将らの行動が示す答えとは何だったのであろうか?
その続きについてはまた、次回にて。