聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
カミラとヤスミンカはまんまと逃げた。サクラウチの奇襲で出来た隙を突いて、ソゴプール=エルフの男が手引きしてくれたのだ。姿隠しの魔法を使って気づかれないように離れ、転移魔法で飛んだ。
飛んだ先はアネガウ大河とタッカテオッキ河の間にあるナーガハーマではなく、タッカテオッキの北岸にあるヨコタールの街の郊外だ。
ヨコタールは川沿いの河岸街と北の丘にある住宅地とに分かれている。丘の一番高い北側と西側は絶壁だ。元々はナーガハーマ防備の砦が置かれていた。そのさらに前はナーガハーマを巡る合戦が幾度も行われていた。
その北側の絶壁を見上げる街道に、カミラとヤスミンカは立っていた。急いで逃げたから全裸のままだった。『六枚銅貨部隊』の男たちのよだれや脂、精液が真っ白な肌のあちらこちらにこびりついて、臭いにおいを放っていた。エルフの男は鼻をつまんでいた。
「ひどく臭う。早く風呂に入ったほうがいいだろう」
「そうしたいのはやまやまよ。でも、早くエチウに入らないと」
「カミラ様。このあたりに温泉があるそうですから、そこへ寄ってからにしませんか?」
次の転移でツルーガニスクまで飛ぶのだから不要だろう。あそこには協力者がいる。そこで沐浴と服を貰えばいい。我慢しようとカミラは返した。
「だろうがお前たち、相当臭いぞ……」
ソゴプール=エルフは鼻をつまんだままだ。水浴びばかりで風呂に入らず、体臭がきついのばかりいるシマナミスタン出身者でも堪えるにおいということだ。
「こう言ってますよ? やっぱりそうしましょうよ?」
「仕方ないわ。ワタシ達にとっては子宮にくるたまらないにおいになるけれど……」
話しは決まった。かくして彼女達はヨコタール付近の山地にある温泉へと向かった。
□ □ □ □ □
その温泉は険しい崖に囲まれた山の中にあった。ニンゲンが近寄らず、獣や亜人のみが知っていた。
泉質はアルカリ性。リウマチと婦人病によく効く。サキュバスに関しては乳首と背中の感度が1.2倍良くなるという効能があった。
「そうなんですよ」
カミラは湯の中でヤスミンカに背中を指でなぞられた。
「……あっ♡」
感じてしまいのけぞってしまった。大きな乳房が揺れ、白くにごった湯面に波紋を起こす。確かに感度が良くなった。
「カミラさま、ここもですよ……くりくりくり」
「はうっ……♡」
乳首もいつもより感度がいい。つままれて幸せいっぱい、ごきげんよ。乳首は2つあるから幸せも2倍。サキュバスは2つ持っている。ニンゲンの男も。
「ほらほらほら」
「ああうっ♡ はあっ♡ あおおおっ♡」
つままれ、こすられればサティスファクションが。カミラは子宮の入り口をふわんふわんと開け締めさせながらヤスミンカの指を堪能した。
「はあっ♡ はああっ♡」
カミラは果ててしまった。美しい顔が悦で蕩け、湯の中に彼女の愛蜜がとろとろとこぼれて溶けてしまった。乳首からもじんわりと、白いものがにじみ出てしまっている。この温泉の効能はやばすぎる。ただでさえ赤子への授乳で感じ易くなっていた彼女の乳首が、妊娠前の感度の数倍になってしまっていた。サキュバスの乳首の感度はそもそもが、ニンゲンのクリトリスを超える感度だ。
「す、すごいわ……♡」
でも何か物足りない。彼女は下腹に手を当てて思った。自分の身体の奥を満足させてくれるものが欲しい。温泉の外で2人を見守る黒髪エルフの男に呼びかけた。
「ズルイルさん、一緒に入りませんか?」
「いや、俺はここで待っている」
「そんな。一緒に入って温まりましょうよ。寒いでしょう♡」
「やりたいことはわかっているよ。けど、俺はくたくたなんだ」
今日のところはもう勃起はできない。精液もたんまりの飲ませる事はできないと返した。しかしこれは嘘だ。寿命を縮めてまで生殖のリミッターを外した男達と混ざって、12時間もセックスに興じても亜人の彼にはこの2人を失神させるまで抱く自信はあった。しかしサキュバスの性欲と付き合うのはきりが無い。
「俺の仕事がおろそかになるからな。あんたたちをエチウまで連れて来るのが俺の仕事だ」
「……頼りになるわ♡ だとしたらますますご奉仕したくなっちゃう♡ ヤスミンカもそう思わない?」
「はあい♡」
2人はズルイルをちらちらと見て、ゆっくりと身体を持ち上げた。手は乳房に添えられていた。バスト100センチを超えるデカ乳を押し上げてゆらゆらとさせる。指が食い込んでいてとても柔らかかった。彼はあの2人の乳がどれだけふんわりしているかを存じていた。男を夢中にさせる魔物だ。
「湯から出たら出発しよう。だが……」
ズルイルは懐から何かを取り出した。剣に巻き付く蛇を模した護符だ。銅製で美しく輝くそれは黒髪エルフ達の魔道具である。
「エチウからのお迎えを呼ばなくちゃな。お前らは約束をすっぽかしそうだからな」
カミラとヤスミンカは悟った。この男は敵だった。護符は投げられてすぐに込められた魔力を開放した。この温泉場一帯に魔封じの結界が張られてしまった。魔族に対しては特に効き目のあるやつだ。
ズルイルの背後に、いつの間にか若い男がいた。パラッツォ教の聖職者を示す純白の法衣をまとった黒髪の男だ。カミラは見たことがあった。カヅノ=セイジだった。
「でかした、ズルイル。それと……イーガ国王陛下のご愛妾であらせられる、カミラ姫さまとお付きのデブ。お久しゅうございますな?」
カミラはカヅノ=セイジとはイーガ王宮で会ったことがある。彼が国王に酒のあてを献上しに来た時にだ。エチウで獲れた鮭のとばとおばけニシンの塩釜だった。おばけニシンは普通のニシンの4倍ぐらい大きく、油たっぷり。エチウでは5番目ぐらいに高価な魚だ。美食家なら生涯に必ず1度は食す。
ヤスミンカはカヅノがトーリに性接待をしている時に何度か同席した。デブと罵ったが行為の時には必ず、彼女の太っ腹にちゅっちゅとキスを施していた。
「カヅノ=セイジ。どのような目的でこんなことを?」
「ふん。決まっているじゃないか。お前らを殺す為にだ」
カヅノが目くばせするとズルイルは口笛を吹いた。この辺りに潜んでいたカヅノの部下が矢を放つ。魔封じの力を込めた矢だ。2人はハリネズミとなった。流れた血が湯に落ち、赤く染め始めた。
「こんなことを……カヅノ=セイジ。裏切ったわね……」
「まあな。裏切らせていただいたよ、お前の主君があまりにも危険過ぎるからな」
カヅノは首にかけていた『預言者』の像を取って口づけした。
「トーリの底が浅ければつきあってやったさ。だが、あれは早いうちに片づけておくべきだ。今は力を失っているようだが、いずれは元に戻るだろう」
ナーガハーマで自分と兄を圧倒し、教主コーザの膝を付かせた化け物だ。場合によっては敵となりうる。そうなったら勝つ気がしない。だから、弱いうちに叩き潰す。
「トーリ様は……」
「パラッツォ教と仲良くしたいのだろう? わかるさ、だがな、あいつは底知れないんだよ。そいつがとんでもなく怖いのだ」
そんなものに信頼を抱く事などできない。カヅノはズルイルに告げた。この2人にとどめを刺せ。ズルイルは剣を抜き、もう一度口笛を吹いた。彼と同じ部族のエルフや、髪が金色のが剣や槍を手にしてやって来た。
「魔族殺しの剣で思念体ごと斬っておけ。できるな?」
「当然だ。イーガの使い手が教えてくれた術式はわかっている。もう使える」
イーガの使い手?
(イーガはカヅノ=セイジと同じ考えだというの?)
カミラは叫んだ。誰だ。誰が魔族殺しの剣を?
「……今は亡きアドルフ王太子の忠臣達にさ。世界各国を飛び回っている諜報達の中に使い手がいるのさ」
「何のために……?」
「お前ならわかっているだろう? あの国は『カツランダルクのご一家』を根っこのところで信用していないのさ。再び力を得れば、せっかく呪縛から解き放たれたイーガを、また手足のごとくこき使うだろうと恐れているんだよ。特にアドルフが恐れていたらしいな」
カミラは激しく後悔した。イーガも一枚岩ではない。そのことを念頭に入れて近づくべきだった。そもそもマイヤはイーガのアドルフによって惨い姿にされたのだ。
(昔の恋心に囚われ過ぎていた。ワタシはもっと、国王を、イーガを疑うべきだった……。)
力を封じられ、全てをあきらめきった顔のヤスミンカと苦悶の表情を浮かべるカミラ。カヅノ=セイジはズルイルに命じた。満身創痍のカミラたちは串刺しにされ、滅多裂きに遭い、その思念と共に朽ちて行った。塵となって湯面に散らばった。
赤と塵に染まった湯に向け、カヅノは小声で、
「この件にイーガ王は巻き込んでおらん。あくまで俺と枢機卿たちの陰謀だ、カミラ。安心して逝ね」
これは本当のことだ。空しく聞こえる慰めだった。