聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
古代城塞の調査はまだ続いていた。あれから魔法で隠された隠し部屋がいくつも見つかった。財宝こそ無かったが、この城が誰によって建てられたのかがわか判明し出した。
「カツランダルク王家の城だったのか……」
城の地下3階の、様々な壁画が描かれているその部屋に立っていたルッソは、学者が貸してくれた調査書の原稿を読んで感慨にふけっていた。彼が持っている紙の束には、隠し部屋の壁面に刻まれていた古代文字の翻訳が記されてあった。
(太陰暦323年……こりゃあナントブルグの王国の暦らしいけど、その年の9月にナントブルグの王家は、アスカウのホーデンエーネン家に都を追われた……これはトーリとカミラさんたちが教えてくれたな。トーリと同じ名前の初代の女王様の15代目ぐらいの孫の長女姫と、ホーデンエーネン部族の御曹司との結婚式で騙し討ちにあったんだっけ?)
その時初代はご存命で『太后さま』と呼ばれていたそうだ。カミラによるとトーリによく似ているが、おっぱいが尋常でないほどでかかったそうだ。サキュバスなので300年たっても若い美女のままの姿。彼女の孫あたりまでは魔族として生まれたらしい。ひ孫からはニンゲンよりちょっと長いだけの寿命になった。
初代から3代目までは、おおよそ200年ぐらい。それから120年の間に11代も女王が変わったそうだ。殆ど初代とその娘、孫娘達が国の運営を切り盛りしていたので、4代目からはお飾り程度だったという。
(婚礼の最中にホーデンエーネンがひそかに集めていた軍隊が乱入してきた。手引きしたのはナントブルグに通じる各街道を守っていた男児達の分家。スカルファッカー、オルガスムナ、ソーローの三家。その他の分家の多くを引き込んで王国をホーデンエーネンに売った。裏切った『息子たち』はホーデンエーネンの王家に組み込まれた……か。)
そして今も残っているのが、大きかったカツランダルク御三家だ。四代目女王の息子たちが祖となった。女王の名はミレーナだ。
ミレーナは13にもならぬ歳で長男を、14の歳で次男、17の歳で三男を産んだ。それぞれがオルガスムナ、ソーロー、スカルファッカーという分家を作った。
(けど、ミレーナ=カツランダルクは長く生きられなかったんだな。31の歳で急逝か……これは初めて知ったな。崩御の翌日に15歳になる長女のアイリアが5代目の女王となった、か。)
サキュバスの血は健康を約束しているわけじゃないのだな、とルッソは思った。
(アイリアは、その時既に3人の娘の母親だったとはねえ。11歳で最初の子供を産んでから立て続けにってところだろうな。)
何だか気が早いような。でも、性交が大好きで気持ちよくて仕方がない女というのは、避妊の手立てがないときっと、そうなってしまうのだろう。
(トーリのごせんぞは早くに出産するんだなあ。)
ニンゲンとして生を受けた4代目以降の女王は、早くに出産して30ぐらいで死ぬ者が多かった。かくいうホーデンエーネンの奇襲で命を落とした14代目のメディアーゼも、享年は32歳だったという。
カツランダルク家というのは、早熟で多産で早死にの家系といえた。男も女も、分家筋も含めて50まで生きられる者がほとんどいなかった。ルッソはこう言いたい。お前らの家系は呪われているのか?
(……トーリに悪いことしちゃったかな。こういう法則が出て来るとトーリも早死にしちゃうよ。オルフレッドはイズヴァルトさんの子なんだけどさ。)
ルッソは原稿を読み進める。奇襲により14代目の女王とその長女、次女、三女と四女と五女が命を落とし、逃げまわっている最中に二代目と三代目らとその姉妹たち、まあつまり初代女王の娘と孫娘たちは、魔族殺し専門の戦士の手にかかって命を落としてしまった。
14代目女王の末っ子たる、まだ赤ん坊だったリリーナが15代目に就任し、その乳母でもあった初代女王とともに友邦のタンバレーネ王国を頼り、この城を拠点にした、と書かれていた。
(タンバレーネだけでなく、ナガオカッツェや南のコーノフェルトとかと同盟を結んで頑張っていたけど、リリーナ姫が16の歳に初代さまが暗殺された……殺されたのは知っている。けど、ナガオカッツェ王家や南天騎士団の四大大公さまのご先祖が、トーリのご実家を助けていたとは知らなかったな。)
だからトーリの魔法にかかってから、あれほどまでにトーリを崇拝していたのかとルッソは思った。彼女が誘惑した大貴族の中で、彼等は熱心な崇拝者達だったからだ。
そうでもあるから、トーリの一族はマイヤが『お貴族』として居住権を得たヨーシデンに移住させた方がいいかな、とルッソは切実に考えた。壁の絵を見直してみる。
(それにしてもだよ……すけべえな絵ばかり描かれているなあ。)
頭にツノを、背中に翼が生えたボインボインの美女が、男のちんぽをしゃぶったり前後の穴にハメて喜ぶ絵ばかりだ。ここはトーリのご先祖やサキュバスの家臣らが、男としっぽりやる為のお部屋だったのではないだろうか。
(この階、ここ以外にも同じ様な壁画がある部屋がいくつもあるんだよな。おまんこをやる為の地下室だったのかな。)
物思いに沈んでいると、隣の部屋から聞こえて来た。
「ああんっ♡ きもちいい……♡」
ピルリアの声だ。相手はアナキンである。夫婦はもう調べ尽くして誰も見向きもしなくなった部屋に入ってセックスをするようになっていた。その為に藁を持ち込んでいたりしている。
(相も変わらずおさかんだな。かといって文句を言えないけどね。)
昨晩もピルリアからの誘いに応じてしまったのだ。ピルリアは肉体的な欲求からルッソとセックスがしたかっただけだから、後腐れという恐れは無かったが、トーリにはなんだか申し訳が無い気がしてしまう。
とはいえ彼女は魅力的だ。技巧も良い。でっかいふわふわとしたおっぱいで擦りながら舌でくすぐる技がたまらなかった。それに関しては達人の域に達していた。
ピルリアはその『乳コキ』を、実の兄に仕込まれたという。挟んでしごきながらいろいろと話してくれた。兄とのセックスのイロハを学んだそうだ。幼児の時から村の大人とたくさんしたらしい。その手の倫理が皆無なのはエルフの血筋だからだ。否定しても仕方が無かった。
「ぼ、ぼ、ぼっちゃん……♡」
ピルリアの喘ぎ声がうるさい。「聞いていてたまらないよ、ちんちんがいらいらしてくる」という意味で。気を取り直して原稿の続きを読もう。
(15代目女王のリリーナは最後の決戦で敗れ、ホーデンエーネン王家に捕まえられた。とんでもないド田舎に捨て扶持を与えられて放っておかれたらしい……こういうことが壁に書かれたのだから、部下のサキュバスがくやしがって書き連ねたんだろうな、たぶん。記したの、シャロンさんかな?)
かくしてカツランダルク本家は、フロリーナの時代まで不遇のままにあった。それでも女も男も美人ばかりだったから、立ちんぼやヒモみたいな副業などでひもじい思いまではしなかったらしい。セックスに関する才能も優れていた。
今度はアナキンが呻く声が聞こえた。果てたのだろう。ルッソはここの調査をそろそろ終えて欲しいと思った。宝が見つからなかったんだからもういいじゃないか。
(でないとアナキンさんとピルリアさんの仲良しぶりを見過ぎて、心が折れちゃうんだよ。トーリ……)
ルッソはトーリとまた暮らしたいと願った。アスカウの村に戻り、大きくなった子供達に会いに行くのもだ。
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同じ頃。城の物見台で魔道士たちと『げーむうぉっち』の対戦に興じていたパルパティアは、南の方角からとても大きな魔力の気配を感じた。
「どうしたんです、パルパティアさん?」
呼びかけた魔道士が見ていた彼女の顔は、戸惑いの色が隠せなかった。何を見てしまったのか。彼とこの場にいるその他の魔道士らは気づいていなかった。
「いきなり立ち上がって、なんで南の方に目を向けているんです?」
「びりびりと感じない?」
若い男の魔道士にパルパティアは言う。彼はにねっとりとした笑みを浮かべた。今朝がた、顔を洗いに川べりにやってきた時、水浴びをしていた彼女とばったり出会ってそのまま身体をもつれ合わせた事を思い出したからだ。今も腰にずんと来る疲れを感じるぐらいに激しかった。これまでで指折りとも言ってよい体験だった。
「感じるって……えへへ」
「あっちのほうじゃねえですべえ……途方もなく凄まじい魔力の圧。それを感じているかどうかだよ?」
「はあ……わかりませんね。ぼく、5代前まで先祖はニンゲンだし」
この場にいる魔道士たちもそうだった。ニンゲンはせっかちで気が早くて感覚が鋭敏、とパルパティアは思っていたがこいつらは違う。何せホーデンエーネンの魔道士だからだ。
パルパティアは外に身を乗り出した。
「パルパティアさん、どこへ?」
「外を回っている仲間を集めて南へ向かう。君らは城の中を調査している魔道士達を呼んで来てくれないか……ここを急いで引き上げる準備も」
パルパティアは櫓から飛び降り、落下しながら飛翔魔法の印を結んだ。地面すれすれのところで上昇し、森や川べりで山賊が隠れていないか巡回している仲間達に呼びかけた。誰もが戦闘が得意な亜人のハーフかクォーターだ。
「南に異変だ。こっちに向かってくる。戦闘が起こるかもしれない。撤退も視野に入れて欲しい」
承知、と返事をされた。そのうち1人から提案される。街道を1キロメートル行ったところにある、崖と川とで狭まっているところで集合しよう。パルパティアが言った。いや、崖の上がいい。そこで『亀神たちの鉄壁陣』をかけて様子を伺おう。
パルパティアが到着した時には、他の面々も到着していた。剣や槍を構えて術式陣の準備を整えていた。全部で8名。彼等はまだ、パルパティアが言う大きな魔力の圧、というものを感じ取れていないと答えた。この中で一番優れている彼女の感度が良すぎるのだ。
「我らでどうにか防げるでしょうかね。第三軍の精鋭と言われたパルパティア姐さんがいるから、安心はしているんですが」
ゴブリンとニンゲンとのあいのこである小男の魔道士に問われた。パルパティアはローブの中に隠し持っていた鞭を取り出した。
「油断はならねえ。気を引き締めてほしいべえ……もうそろそろ、来るはず」
術式の展開をと呼びかける前に、彼女は考えを改めた。魔道士としての勘が告げている。見誤った、と。
「もう来ている! できるだけ高く飛べ!」
パルパティアが印を切り飛び上がった。他の者もそれに続く。最後の1人が地面から足を離した直後、あたり一帯が濃密な甘い香りを伴った、生暖かくて黒い煙が起こった。
煙は街道を、森を、川を覆ったと思いきや、急速に失せていった。そして煙が消えうせると……。