聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
ホーデンエーネン王国暦355年11月といえば、サイゴークの諸国とパラッツォ教団との和平が成った月だと歴史書には記されている。
代わりに我らが聖騎士イズヴァルトは、かの教団に半ば捕虜、半ば客将として招聘され、司祭騎士の長、という地位につくこととなった。
司祭騎士はパラッツォ教の聖職であり魔導騎士だ。平時は教団の寺院にて信徒の前で経典について語り、お祈りの時間である『合同法悦』にあっては、相手がいない女信徒と交わって歓びあう。
しかしである。イズヴァルトはパラッツォ教の経典なんぞ1ページも知りはしなかった。ゆえにまずは、物を教えるのが得意な司祭から学ぶことになったのである。
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「おかしいでござるな……」
カナザワース島にある本山の学問所にて、イズヴァルトは机の上に開いた経典を前で腕を組んでいた。
聞いたことも無いような名前の地名や人物が、さも実在していた歴史上の著名人の様に記されていたからだ。
「もーぜ? えじぷと? なんなのでござろうか、これは?」
立ち机の上に乗せてイズヴァルトが開いていたのは、パラッツォ教の経典のうちの1つであった。
『いにしえの神約』。初代コージュが記したという。その上巻。下巻は大工の息子が神学を修め、いたるところの神学者らに口喧嘩を吹っ掛ける内容となっていた。
エルフもドワーフも出てこない。わけがわからぬ。イズヴァルトは真向かいの席で、別の机で書を開いていた講師役の司祭騎士に向け、手を上げた。
「イプセンどの。おかしいでござる」
司祭騎士のイプセン。サイゴーク大陸での戦いではパラッツォ教団軍を実質的に指揮し、イズヴァルトが加わった諸王国の連合軍を散々に苦しめた知将でもあった。
「この経典は、違う世界のことが書かれているでござるよ?」
「違う世界? ふうむ。どこで貴方は気がついたのですか?」
「どれも異界の立派な方々のお名前でござる」
かつての侍女、マイヤが語ってくれた話に出ていた。彼女の前世の世界の、西側にいる人々の伝説だという。
「そのえじぷとというのがまたまた面白い国らしく、歴代の王様は砂漠の中に三角形のおっきなお墓を築いたそうでござる。マイヤがいたという『にっぽん』の『こふん』よりも、それはそれは大きいらしいでござる!」
座っていたイプセンは思わず立ち上がり、机から身を乗り出した。
「大きいとは……いったいどれ程なのでしょう?」
「どうも、お山ぐらいに大きいらしいでござる。ウラスコーの街があるあのおやまのように。えじぷとの王様は石を積み上げ、お墓でもある築山を作ったということでござろうな」
「それほどの大工事を……異界とは、とても豊かで素晴らしい技術や文化が存在するのでしょうね」
「ということでござろう」
イプセンは目を輝かせた。『えじぷと』について、他になにか続きはございませんかとイズヴァルトに尋ねた。
「えじぷとのやんごとなき方々のご遺体は、内臓を抜いて特殊な薬液につけ、ミイラにするそうでござる」
「それは何故にでしょう?」
「いずれ現世に復活するらしいからでござる」
「……となると、その世界は輪廻転生の
「もしかしたらでござるが……いても『くるくるぱー』と思われていたのでござろうか?」
「と、いいますと?」
「どうもマイヤの世界は、魔法というものがインチキだと思われていた世界らしいでござる。手品とおんなじだと思われていたそうな」
「となれば……その世界の住人らは魔力がとんでもなく弱い、となるでしょうね。あるいは、魔法について力を貸してくれる精霊たちの力が弱いのか……」
イズヴァルトとイプセンは2人して腕を組み、首をかしげた。黙りこくっていると聖騎士の下腹のほうから、ぱちゅんぱちゅん、という景気のいい音が響くようになった。そして机の中では高い声色の喘ぎ声が。
見れば、ひとつなぎの貫頭衣を胸までめくりあげ、イズヴァルトの下腹に尻をつけ、狂ったようにでかい尻を揺らす若い女がいるではないか。真っ白な肌の背中と腰の動きに合わせてゆったりと揺れ動く、大きな乳房。腰と尻が異様に発達した金髪の女だ。パラッツォ教徒だった。
「あ、あううう〜♡ し、司祭騎士団長さまぁ♡」
女は悶えきっていた。イズヴァルトが着ていた足首までの長さの法衣は、へそのあたりから割れていた。普段はうまくスカートのように包みこんでくれるのだが、めくると陰茎と陰嚢とを外に出てしまう。
ばちゅばちゅという音は、イズヴァルトが丸出しにした巨茎と女の陰裂が弾き合う音であった。教主・コーザの『聖根』の次に大きく美々しいとされる聖騎士イズヴァルトの肉棒を奥までくわえ込み、パラッツォ教徒の女は至福を覚えていた。
「いっ、いっちゃいます……♡」
「承知したでござるよ。どうぞお好きになされませい」
「ち、ちがうの♡ 司祭騎士団長さまがいくかどうかきいているのにぃ♡」
女の声は切なげだった。イズヴァルトは女のでか尻をぺちぺちと叩いて、「いまいちでござる」と嘆いた。
「なにがでございまして? わたしはこんなにイキ狂ってるのに♡」
「おしりのたたき具合がでござるよ。ぺちぺちぺち、とやっても、可愛らしい響きが聞こえて来ぬでござる。拙者はぷりっぷりのぷにぷにおけつが好みなのでござるよ。貴殿のはちょっとふわっとしてたらんとし過ぎでござる。つまりは鍛錬したほうがよろしいということでござる」
つまり何かというと、この女の締りが悪かったのだ。ふにゃふにゃとしすぎて大変具合がよろしくない。この女は肌と肉体に張りはあったが、30を過ぎていた。パラッツォの女教徒は、それはこういうことを意味していた。
パラッツォ教徒の女というものは、4歳頃から始まる性交の習慣を毎日繰り返す。相手には大人の男もいた。ゆえに膣の肉がすり減ってしまう。
それから度重なる出産で筋肉が弱まり、締まりがぶわぶわになってしまうことが多かった。イズヴァルトの陰茎を呑み込んであえいでいる女のそこも、ひどくゆるゆるでがばがばだった。膣の構造は起伏が乏しく、つるつるである。
「ううむ……」
物足りぬ。イズヴァルトは不満でならなかった。この女人のみてくれは良いのだが、肉体の中は年相応、過酷な生殖によって衰えてしまっている。聞けばこの女人は8歳の頃から数えて、17人もの子を産んだそうである。産みすぎだ。しかしエチウのパラッツォ教徒の女は、これが普通であった。
「ああっ♡ おっきい♡ でかくて飲み込みごたえがありゅ♡ あーっ♡ ああーっ♡」
相手の女は勝手に絶頂、つまりパラッツォ教でいうところの『法悦』の境地に入ってしまった。顎をのけぞらせて唇を震わせ、上目をむいて生きる喜びといものを噛みしめる。そうしてやっとのことで腟内の具合が良くなった。
イズヴァルトは自分から腰を動かし、相手に悦を与えながら自分を高めたあと、いそいそとした射精を唸り声もあげずに施した。まだ全然硬いままのものを引っこ抜いた。女が声を高くしてねだった。
「司祭騎士団長さまぁ……♡」
「挿れてから30分以上はとっくに過ぎているでござるよ? さあ、貴殿は務めを果たしたゆえ、さっさと戻るでござる」
「冷たいのですね。ひどい……」
イズヴァルトは突っぱねた。女は手で股間を抑えながら、すごすごと去っていった。イプセンはちょっと非難がましい目でイズヴァルトを睨めつけた。
「『法悦』を為した奥方に対し、あまりにも素っ気なくはございませんか?」
自分と肉体を交わし、『法悦』を感じあった男女同士なのだから、もう少し情愛というものを持つべきだ、と批判した。しかしイズヴァルトはうなずけなかった。
「こんなもの、身体と情を満たし合う行為とは呼べぬ! ただの仕事でござる! 牛さんや豚さんの種付けと一緒でござるよ!」
さっきの女が去って今度は別の裸女が近づいてきた。30手前ぐらいで腰から尻が壺みたく広がっているタレ目の女だった。美貌は申し分なかった。もちろん乳房もだ。白いスイカだった。
「そもそも、拙者にかようなおまんこをさせるのは教主どのでござらぬか!」
その新たな女がイズヴァルトに抱きつき、大きな尻を彼の股間に押し付けた。濡れきった陰裂に勃起したままの巨根が入り込む。女が尻を動かし喘ぎ始めた。
「1日に20人も! ひどいときには30人! ここに来てから。これが2ヶ月も続いているでござる!」
イズヴァルトの『斬馬刀』の威力に、女が白目を剥いて舌を出し、「あうえへっ♡」とよがる。今度のはもう少し締まりは良かったが、イズヴァルトは女肉との交わりに耽溺する気になれなかった。
「拙者好みの奥方を寄越してくれるとはいえ嬉しくない! 休みをいただきたい! 週に2日ぐらいはおまんこ無しの安息日を要求するでござる!」
イズヴァルトは相手の尻をがっしと抱え込み、そのまま動けなくさせた。強い力で抑え込むから女は快感を味わえなくて辛いと思いきや、彼の存在感がとても有るものをしっかりと感じられるようになったから、なおさら幸せそうな笑みを浮かべていた。
「しかしですね……教主様は司祭騎士団長様に、まずは100万人のあかちゃんをこさえて欲しいのですよ。この10年以内に……」
教主・コーザの願いはこうだった。司祭騎士団長イズヴァルトの子種をできるだけ多くの信徒の女に納めて孕ませ、次世代につなげたいのだ。
イズヴァルトの子というのは、男も女も健康かつ頑強に育ち、武術や魔法に才があると知られている。教団はこんな情報を支配下に収めたオーキ島で掴んでいた。
「オーキ島の北東の沿岸部に、優れた魔道の素質がある娘たちが10人20人もいる」
「どの娘もたいへん美しく、おっぱいとおしりがたゆたゆんに育ちそうだ」
「どれも同じ父親の種らしい。どうも10年程前に島に訪れたホーデンエーネン人の少年がその父親のようである」
更に、島で一番良い宿屋の娘のうち1人が産んだ子も、他の娘らと同じぐらいに強い魔力があることを調べ上げた。スエッツァーという家がやっている宿屋だ。どうにもこってりとした味がする『こなもん料理』で有名だった。
「ゆえに……イズヴァルト様のおちんぽは、乾く暇が無いのです」
でもそれこそが、男児の本懐でもあるだろうにとイプセンはつぶやいた。イズヴァルトは陰茎と精巣と前立腺を酷使する目に遭っているが、問題は無いはずだ。
そもそもが1日射精しないと夢精を起こすほどに生産力が旺盛である。それから、『はんぶんエルフ』の改造手術を受けた。1日に20回ぐらい射精しても大丈夫な身体のはずだ。
その上更に、絶倫の薬として有名なサキュバスの愛液を金玉に毎日注射している。並のニンゲンの男ならちんこの長さが5センチが長く太くなり、精巣が4割重くなる強烈な強精剤でもある。ただし『甘露(アームリータ)』は服用していない。『はんぶんエルフ』の耐毒体質のせいで、効きがきわめて悪くなったからである。
「イズヴァルト様は次の世代のエチウの民の、『お父さん』となる偉大なお方になるべきだ、と教主様もおっしゃっておりましたし」
「……解せぬでござる」
「解していただきたい。これはエチウの、人類にとって良きことなのですよ。貴方はそういう星の下に産まれたわけですから」
そうは言うものの、イプセンは少しばかりイズヴァルトに反感を覚えていた。ここに来てから特別待遇で甘やかされ過ぎている気がする。イナーヴァニアの貴族や王族に教主が与えた、『名誉司祭騎士』と名のつく連中みたいだ。彼らはエチウの旧貴族衆と同じく、それなりの忖度がなされていた。
「さて、イズヴァルト様、そんなことより『えじぷと』のお話を致しましょう……それで、なにゆえあちらの神は輪廻に向かう者と現世に留める者を選ぶのでしょう? 『えじぷと』の神の教えは人を選ぶ、つまりは差別を前提に作られているのでしょうか?」
「だと思うでござるが、この世界にも輪廻から外れている魂というものがござろう。風の精霊の末裔たるエルフに、土の精霊の子孫のドワーフ。彼らは死ねば身体が塵となるが、魂は少しばかりの記憶を残したまま、精霊のもとへと戻るそうでござる……その話は御存じか?」
「……初めて聞く話ですね」
亜人達と交流はするが、そういう話をしたことが無いとイプセンは答えた。イズヴァルトは付け加えた。亜人の魂のうちごく一部は、精霊のもとに帰らず、すべての父たるマハーヴァラ神が示す、異界への輪廻の道に向かうらしい。
「……まったくおもしろい話をなされますね。おちんぽをおまんこに納めながら、そういったことを語られるとは」
教主が期待をかけているだけ優れた者の素質がある。まさに高僧にふさわしい。
「マハラ教であれば、イズヴァルト様は若いうちに大僧侶の位に昇りつめたことでしょう。スオニアの総本山の」
「……そのこと、言うなでござる」
イズヴァルトは不愉快そうに吐き捨てた。スオニアのキッカワンテス領にあるマハラ教の総本山は、彼にとって非情に忌むべき場所であった。母でキッカワンテスの『呪われた子』と呼ばれたセシリアが、辛い少女時代を送った場所でもあったからだ。
「先に語ったことがござろう、貴殿には?」
「失礼しました……」
気が緩みすぎたとイプセンは反省した。とはいえ、スオニアと言って思い出した。『えじぷと』の『ぴらみっど』なる大きな陵墓を、スオニアの代々の国王は築いていたのだ。ただし4代ぐらいの一家がまとまって入る築山だ。そしてその上には砦や灯台、マハラ教の神殿が築かれるようになっていた。
「しかし、大きな墓というのは憧れを感じますね。パラッツォ教の歴代の教主様やそのご親族も、そうした墓をお築きになられたほうが内外に威を示すでしょうね」
「そういう趣味は存じぬでござるよ。そもそも教義に反しているのではござらぬか?」
「あはは。そうでした」
イプセンは経典をめくりながら笑った。パラッツォの経典には、墳墓はできるだけ小さく、ひっそりとしたものにせよと記されていたからだ。
人の本体ともいえる魂は屍から離れるものだから、残骸を収める棺や墓を美々しくしても意味がない。新たなる旅に向かった魂に幸運あれ、と祈るのみ。そう教えている。しかし初代教主のコージュ=ストーンマウントの墓は立派だった。矛盾があった。
イズヴァルトとイプセンは、そこで他にもたくさんの話題を語り合った。それでも彼の陰茎は激しく勃起したままだった。入れっぱなしだったその女は、彼らの会話を熱心に聞いていたが、飽きを覚えると尻をがっしりと掴んだままのイズヴァルトに呼びかけた。
「あのーう♡ そ、そろそろほーえつをして♡」
「で、ござったな。かれこれ40分でござる。拙者のちんちんもそろそろへなへなになりたがっていたところでござる」
「よろしくおねがいします……うひゅっ♡」
イズヴァルトは女の尻を抱えたまま、勢いよく腰を振って高めにかかった。挿れられっぱなしで感じ続けていた女のそこは、さっきの女の倍以上に濡れてぬめっていた。
「おおっ♡ ほおっ♡ おおっ♡ ほおっ♡ おおっ♡ ほおっ♡ おおおっ♡」
「む、そろそろ果てるでござるよ?」
「むほおおおっ♡」
女はアヘ顔になってイズヴァルトの精を受け止めた。折よく排卵が起きていた子宮には、10ヶ月後に大仕事を為す未来が待っていた。たった40分そこそこの快楽に、分娩の数時間を含めた長い苦難が待っていたが、その女にとっては生涯で12回目の出産である。慣れていた。
その女がふにゃっとなったちんぽから離れた後、イズヴァルトは陰茎を洗い場で清め、イプセンとともに礼拝堂へと向った。昼飯時前の祈祷の為であった。パラッツォ教の総本山では、朝と昼飯前と夕食前、それと、就寝前に神に祈りを捧げる時間があったのだ。
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エチウ諸島の中央に位置するカナザワース島には、パラッツォ教団の都があった。都は30年ほど前の数倍の広さにまでなっていた。城壁が無かったから拡張が容易だったからだ。
都の人口はこの時300万を超えていた。その上島には1800万人もの人々が暮らしていた。諸島で3番目に大きなカナザワース島は山がほとんど無く、広大な平野が広がっていたから収容できたのだ。西のアサークラント島と東のエチゴニア島はもっと広かったが、山が多く人を入れるにはいささか狭かったから、教主コーザはここを本拠に置いたのだ。
その大きな都にはパラッツォ教徒が職人として、商人として暮らしていた。あるいは総本山の聖職者やその手伝いなどに。島に足を踏み入れた当初、イズヴァルトはこの都に圧倒された。イーガの都ほど立派な建築物は無かったが、とにかく人口の多さに驚愕したのだ。どこもかしこも溢れかえっていた。
そしてイズヴァルトが居を置く総本山は、都の北にある山に置かれていた。かつてあったカナザワース公国の本城をそのまま伽藍としたそこは、屋根や壁を、鮮やかな金と白と赤の塗料で塗りたくられたエチウ地方の文化が濃厚な建築物でもあった。
「慣れぬ。目がちかちかするでござるよ……」
大礼拝堂へ向かう途中、イズヴァルトは同行するイプセンに聞こえるようにつぶやいた。壁が光を放つような真っ白で、天井にあれこれと絵画が施されていたからだ。背中に翼を生やしたニンゲンの男女が、様々な体位で絡み合う交合画であった。
床はつやつやとした大理石であり磨き抜かれていた。ときたまサンダルがすべってしまう。そもそもここは、大公の謁見の間に向かう大回廊だった。カナザワース公国は、豊かな海産資源と周辺諸島の鉱物資源とで巨万の富を得て、こうした立派な館を構えることができたのだ。
「天井はけばけば、壁はぴかぴか、床は気味が悪いぐらいにつるつる。こんなところを社殿にするなんて、悪趣味きわまりないでござるよ?」
ついでに円柱型の櫓や塔の玉ねぎ状の屋根は、金ピカに塗られていた。扉は金箔を貼り付けられていたり、派手派手しい色合いの絵画や彫刻が施されていた。
「カナザワース家の遺産の有効利用というものですよ」
「目が悪くならぬでござるか?」
「質実剛健を旨とするホーデンエーネン人の貴方には、全く相容れないもののようですね。エチウの文化は?」
「度が過ぎている。こうした毒々しい華美というものは大嫌いでござる。カナザワース島の草花は、ちっちゃくて色合い淡い、かわいい草木が多いというのに、建物は……」
まるで庶民から税を搾り取って建てたような感じがする。どうにも好きになれない。そうぼやきながらイズヴァルトはぼやき続けた。ヘンリックは苦笑いだった。
そうして2人は大礼拝堂の前に着いた。銀の縁が為された大きな扉は閉められていて、その前に年若い司祭騎士が立っていた。
「すみません。まだ中のお掃除の最中です」
大礼拝所の掃除は若い司祭騎士や『経典の巫女』たちの役目で数はいつも半々だ。彼らがなかなか掃除を終わらせない時がよくあった。仕事の最中に『神との対話』を行いたくなり、適当な相手と『法悦』を為してしまうからだ。そういう時の礼拝所は、入った途端にかすかな淫気を感じられた。
「この時間なら、とっくに終わっているはずですが?」
ヘンリックはその理由を尋ねた。
「申し訳ございません。副団長様に急な招集をかけられたものですから、始めたのが遅くなってしまいまして……」
「副司祭騎士団長様が?」
イズヴァルトとヘンリックが互いに顔を見て首をかしげた。イズヴァルトは何の会合があったのかを訊いた。
「いらぬ混乱を招かぬよう、今はまだ秘密だそうですが、若い見習いをアサークラントに向かわせるように、というお達しを教主様にお願いしたいそうです」
「若い皆さんがたを、でござるか」
その司祭騎士はまだ14にもならぬ、幼い少年だった。司祭騎士や巫女の見習い達の年齢は、だいたいそのぐらいだ。既に父や母であったが、戦場に向かい命を散らすような真似は、まだ早かった。
「あまり、良い話では無さそうでござるな」
イズヴァルトとヘンリックはため息を付いた。薄々だが、こうした動きが起きつつあることを、他の島々から戻って来た聖職者らから聞いていたからだ。特に列島の東側からだ。
大礼拝所の掃除はまだ終わらない。よって少し遊戯室で玉を突きながらで暇をつぶそうと2人でうなずき合うと、後ろから呼びかける声がした。
「その話、知ってるよ!」
小さな女の子の声だった。自分達に呼びかけてくるのを聞いて、振り返っると、イズヴァルトは向こうにいる相手に、忌むような視線を思わず投げかけてしまった。
いつも顔を合わせる相手であるが、その時は背中に剣を差していたからだ。見覚えがある、ではなく、かつての自分の身体の一部だとも言えた剣。それも、恐るべき力を秘める魔剣であった。
さて、司祭騎士イズヴァルトを睨ませたその声の主とは、一体何者だったのであろうか?
その続きについてはまた、次回にて。