聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
ホーデンエーネンがあるキンキ大陸より北東に400キロの先にある、エチウ諸島海域の島々である。
本島であるナオエニア島を中心に、大小10ほどの島が浮かんでいる。大昔から、漁業と中継貿易で栄えていた。
かつてはナオエニア大公家というものが治めていた。婚姻を通じてホーデンエーネン王家や大貴族らと血脈を混ぜた事があったほどの名家であった。
その一族はパラッツォ教団に屈した後、本家の一族のみが『名誉司祭騎士』に列せられた。数多くいた分家は一般市民に落とされたか、あるいは縁故を頼りホーデンエーネンやクボーニコフに逃げたのもいる。他のエチウの旧家の多くもまた、同じ様な末路をたどっていた。
とはいえこのナオエニアには他の1点だけ別なところがあった。パラッツォ教と徹底抗戦を繰り広げ、エチウ諸国では最後まで残った国、という事実だ。教団に降伏したのは50年近く前、ホーデンエーネン王国暦で言えば330年の末頃である。
防衛を保持し続けたのは、ナオエニア史上最高の武将と謡われる人物の存在があった。ナオエニアの武将の一族・ラングレン家のその時の当代で、弩と弾弓の名人でもあったチカロフである。
チカロフはゴブリンとニンゲンの間の子(ちなみにナオエニア当主一族はしょっちゅう亜人と結婚をしていたことでも有名。)で、教主やその子らが得意とする心理魔法がきわめて効きづらい体質でもあった。ナオエニア諸島を守っていた他の武将や騎士らもそうだった。
ナオエニアは特に、他の大陸からエルフやオーガの出入りすることも多かった。キンキ大陸の北部諸侯の助けもあった。教団はナオエニア攻略に30年も費やす事となった。数多くの司祭騎士や経典の巫女の首が刎ねられる、熾烈かつ血なまぐさい戦いであった。
しかしついにはナオエニアは落とされ、大公家は軍門に降った。チカロフ一家はキンキ大陸へと逃げた。ただ、その中にチカロフ本人はいなかった。
歴史書によれば、家族とは離れて1人、クボーニコフへ向かった。その海軍に招聘されて武官となり発展に貢献したが、ナエバニアのエルフの水軍との小競り合いで命を落としたという。
けれども彼の才を引き継ぐ者がいた。射手としての腕前については。それも、イズヴァルトと同時期に生まれた人物だ。
名をヴォルフ=ラングレンという。王国と教団との戦争時、アヅチハーゲン近郊で若き射手として名を挙げた。
最初は弓弩騎兵として。そして鉄砲を駆使する精鋭銃士隊にその人あり、と言われるほどに。
(イズヴァルトのサーガ・烈戦の編より一部抜粋。)
亜人を撃ち殺した射手とは誰だったか?
その者の顔はやけに若かった。痩せてはいたが顔のあちこちにニキビがついていたから、まだ20かそこらに見えた。
彼は銃を構え、仲間の突然の死に戸惑うオーガの海兵に向けて照準をあわせると放った。狙われたオーガは断末魔をあげることなく逝った。またも弾丸で討ち果たした彼は、他の射手達にこう呼びかけた。
「亜人だけを狙え。ビビらせれば退いてくれる」
ホーデンエーネンの軍装をまとった鉄砲武者達は、塁の上から次々と撃った。クボーニコフ側のオーガやエルフ達が次々と倒れていく。すると後方から銅鑼の音が鳴り、海兵たちは退いていった。
鉄砲隊の隊列の中心にいたその若い撃ち手は、「追うべきか」と尋ねた仲間にこう答えた。
「やめたほうがいい。わなを仕掛けているかもしれない」
射手は銃身をさげると塁から去って行った。イズヴァルトはどこか虚ろな気配のするその男を見つめながらトールキンに尋ねた。
「何者でござろう?」
「知らん。お前さんのお国の鎧と旗を持っておったじゃろうが」
「鉄砲隊は詳しく存じておらぬでござるよ。拙者は剣と魔法で生きる昔気質でござる」
兵をまとめて指揮官らに告げ、塁を守る態勢を整えなおさせるとイズヴァルトは砦のほうに向かった。砦の入口のあたりに、ホーデンエーネン王国の旗を掲げた一団が車座になって座り込んでいた。数はおおよそ50名といったところだ。
その中に一撃で亜人を射殺した若い武者の姿があった。兜を脱いでいた彼は、ブラシで筒の中を掃除していた。その集団は彼以外、イズヴァルトの姿を見ると立ち上がり、駆けて取り囲んだ。
「あのう、拙者は……」
「国を裏切ったイズヴァルト! この期に及んで何故顔を見せようとする!」
彼等は銃や剣を構えた。が、もう1人が「冗談だ」と笑って下げさせた。
「……驚いたでござる」
「いやあ、嬉しくてたまなんないんですよ。王国一の荒武者であり種馬男と出会えたんですからね。イズヴァルトさん。出会えて光栄です」
彼等は皆、北部諸侯が抱える騎士であった。8年前に起こっていたパラッツォ教団との戦争では近衛騎士団の配下として動き、鉄砲騎兵として戦場を駆け巡ったという。
北部諸侯はクボーニコフの侵攻を受けたパラッツォ教団に、ナントブルグの国王家に無断で援軍を組織し、派遣したと語った。ナーガハーマには国王の代理たる近衛騎士団がいるのだが、彼等は何分判断が遅すぎる。手遅れになる前に諸侯らは決断した。
「それと、俺達は皆、パラッツォ教徒でもあるのですよ」
イズヴァルトを詰った騎士が語る。戦争前からじわじわと浸透していたパラッツォ教に祖父の代から帰依して、コーザをもう1人の王のように慕っている。『甘露(アームリータ』以外にも食物をとることを認められている『第二経典の徒』である。
ただ、近衛騎士団に隷属していた頃は肩身が狭かった。大陸南部の貴族が集まってできたこの騎士団は、マハラ教の信者ばかりであった。差別され冷遇され、陣地では粗末な食べ物を供されたという。
「……ひどい話でござる」
「仕方がありませんよ。マハラ教徒から見たら俺達は異端者です。同じ神様を崇めていますけどね」
「そもそも南の奴らは、俺達オーミゲニア人を馬鹿にしているのは百も承知ですよ。どうってことはありません」
(ギルバート=カツランダルク注:オーミゲニアとはキンキ大陸北部を示す言葉である。中央部、ナーガハーマあたりにあった大陸戦国時代のオーミゲニア王国が由来だ。かの王国は北部諸国の盟主として、大陸統一戦争をはかったホーデンエーネン王国と戦った。)
それよりも、彼等の鉄砲撃ちの腕が気になった。エルフの鉄砲撃ちに負けず劣らずの腕前だった。その中でも特に、今も向こうで筒の掃除をする若者が頭を突き抜けていた。
「ところで、あの御仁は?」
「あいつですか。アヅチハーゲンのヴォルフ=ラングレンですよ」
「俺達とは違い騎士の身分じゃないのですが、近衛騎士団の鉄砲隊で凄まじい活躍ぶりを見せてましてな。マハラ教徒なのですが拝み倒して来て貰い、手を貸してもらってます」
イズヴァルトは申し出た。ヴォルフにも是非ともお礼を述べたい。彼等に連れて来られると名乗り、感謝を述べた。ヴォルフは陰気そうな顔つきで小さくうなずいた。
「俺、礼を言われるほどのことはしてませんよ、聖騎士」
「素晴らしい腕前でござった! 貴殿は素晴らしい撃ち手でござるよ! いかなる出自でござるか? どうにも特別な者のにおいがするでござる!」
言い方は妙なれどつまりは『只者ではない』ということだ。普通のニンゲンの狙撃力とは違っていた。エルフやゴブリンの射手の様な正確さだ。きっとそちらの血が混じっているに違いない。
「ゴブリンの血が多く混じった家系、と親から聞いておりますが、アヅチハーゲンのしがない商人の子ですよ、俺は」
先祖はこのナオエニア諸島に住んでいた。ムーツ大陸のゴブリンの薬売りから品物を買って他の島に売る船商人の一族だったから、娘や息子のうち何人かがその薬売りと子を為す仲になったりした。自分には彼等の血が入り込んでいるのだとヴォルフは言った。
「けれどもパラッツォ教徒じゃなかったから、俺の祖父の代でナオエニアを離れたそうです。俺は三男だったから商人の道はやめて弓兵の道を選んだんですよ」
幼い頃から弓や弩弓の腕前は抜きんでていた。最初はアヅチハーゲンの防衛兵団に入り、弓手組となったが最新兵器の鉄砲が広まるとその撃ち手の部隊に加えられた。鉄砲でも彼は名手として有名になった。
「すごいでござる……拙者よりも若いのに、まさに『きりんじ』でござるな!」
「よしてください。俺、イズヴァルトさんと同い年ですよ。イズヴァルトさんこそ、10歳やそこらで魔竜戦役で活躍された神童じゃないですか?」
「神童というものはえてして平凡になっていくものでござるよ……拙者にあるのは馬鹿力のみでござる」
イズヴァルトは謙遜した。が、これは常に思っていることだった。今の立場は地位こそ良かれど不本意ではある。それに抗えず今ものんのんと過ごしているのはまさに平凡な者そのものではないのか。
「貴殿と皆様には、次のいくさも期待しているでござる。クボーニコフを追い払うでござるよ」
その呼びかけに騎士達は応、と叫んだ。砦に戻ると酷い怪我をして運ばれたヘラが運ばれた部屋に入った。治療の間、泣き叫び悲鳴をあげていたこの娘はすっかりくたびれていた。
「司祭騎士団長さん……」
「災難でござったな。しかし戦場というのは突出するとああなってしまうでござる。今後は気を付けるでござるよ?」
「うん……そうするよ……」
ヘラは言い訳することなくうなずいた。相当に手痛いダメージを身体に受けたからである。とはいえ2日も安静にすると元気を取り戻すと、朝っぱらからイズヴァルトにせがんできた。風呂に入っていない臭い身体をこすりつけてである。
「ほしいぃ♥ ほしいぃっ♥ おまたをじんじんさせるおっきなもんをちょーだい♥」
「仕方が無いでござる……」
イズヴァルトは彼女の腰布をはがすとふっくらとした割れ目を拡げた。分泌液でぬめっているが白いカスがところどころこびりついていた。彼女の尿と膣液が古くなったものと、2日前に膣におさめたイズヴァルトの精液が腐敗したものだった。
この男は女陰を手や口で愛でてからでないと満足できない。くさいにおいを放つ陰裂を湯を浸した布でぬぐうと口をつけた。童女の濃厚な味が口の中に広がった。
「ひううう♥ なめなめ、すごくいい♥」
この娘の性感は活発だった。5分もせぬうちに達すると絶頂の叫び声をあげた。
「お、奥も欲しいの♥」
イズヴァルトは巨大なものでヘラの中を愛で、『法悦』の極みまで昇り詰めさせ、自身も射精した。その後も交合は互いの絶頂を繰り返しながら2時間続いた。汗を垂らし、熱っぽくなったヘラはイズヴァルトに抱き着いた。
「えへへ♥ 久しぶりにするおまんこってきもちいいね♥」
「たかだか2日でござろうに。久しぶりとは言わぬでござるよ」
「パラッツォ教徒の2日っていうのは、お久しぶりになるんだよ♥」
それからはヘラはイズヴァルトにべったりだった。この娘は人懐っこい。寂しがり屋なのだ。赤ん坊の頃より母と兄姉らと離れ離れになって暮らしているというのを聞いていたから、イズヴァルトは慮って拒まなかった。
イズヴァルトは甘えるヘラをおんぶして島の防塁に向かった。昨日も戦いはあったが飛び道具での小競り合いで終わり、出番は無かった。一番の高台に向かうとそこに、トールキンとヴォルフ=ラングレンがいた。
「イズヴァルトさん、その娘さんは?」
「ヘラどのでござる。パラッツォの『ひみつへいき』でござるよ」
「言い方は悪いがそんなところじゃ。早い話、コーザの『秘蔵っ子』じゃよ。イズヴァルトの子を産むようにも言われておる」
「そうなのか……こんな小さい子が?」
ヴォルフが目を鋭くしてヘラを見つめると、彼女はイズヴァルトの背から飛び降りてしなをつくった。寒い潮風が吹いているというのに常夏のシマナミスタンの娘みたいな薄い腰布を、腰の位置までめくりあげてみせた。
「ふふん♥ そんな怖い言い方をしないで素直になりなさいよ?」
「これは……誘っているのか?」」
「そうよ♥ あたしとあかちゃんつくらない? 強いんでしょ、アナタ?」
ヴォルフは鼻息を鳴らして右手の掌を突き付けた。
「あいにく、あんたの様なお子様は興味ないんだ。甘えさせてくれる大人に頼めばいい」
「ふふふん♥ イズヴァルトさんを『おしゃぶり姫』から奪ったのが気に喰わないの? あたしは誰とでも『法悦』をするよ? エチウに来たからには、ホーデンエーネンの『りんり』なんて気にしなくたっていいんだよ♥」
「……やめておこう。俺はそんな気分じゃないからな。仕事の事があるし」
拒むヴォルフにヘラはふてくされた。イズヴァルトは狙撃手に尋ねた。ホーデンエーネンの鉄砲隊の物資の残りはどのくらいだろう。弾丸や傷薬は足りているのでござろうか。
「今のところは大丈夫です。おおよそ1か月は持つでしょう」
「輸送はいかがされているでござる?」
「エチウ諸島経由ですがちゃんと運ばれるように手配されております。しかし鋼の弾丸は少ないし工房でもあまり多くは造れない。ホーデンエーネンであれを造っているのは、マイア=テクニカだけです」
その工房もキンキ大陸北部ではなく、南部のナントブルグ近郊やあの『侍女』のおひざ元である、ヨーシデンの新興都市にしか無いのだとか。
ヴォルフはベルトにつけてあった小物入れから、その弾丸を1つ取り出した。細長くて銀色に輝く鋼の弾だった。マイア=テクニカの最新鋭銃は炸裂火薬を詰めて弾を入れた後、魔法の発火装置で遠くに飛ばす。火薬が入った『薬づつ』を後部につけた雷管式銃が世に出るのは、まだ先の話である。
「持ってきたのは20弾ぐらいです。それぐらい生産がされていない」
「あれが多くあれば助かるのでござるが……」
「で、そのことについて、さっきまで儂らは話していたんじゃよ」
トールキンはにっ、と笑った。
「工房はまだしも、こいつを造る為のそのあてがあるんじゃよ。この諸島にはのう」
うまくいけばこの弾をナオエニアで生産することができるはず。そう告げてトールキンは話したが、果たしてそのあてとは一体何だったのか?
その続きについてはまた、次回にて。