聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
その箱の中に入っていたのは大きな刃だった。剣や槍の穂ではなく、真円に近かった。直径1メートルほどで中心に向かって刃が厚くなっていた。
だが完全な円ではなく、下のほうだけ出っ張っていて何かをはめ込むための穴があった。
「……なんでござる、この刃は?」
問われたイブン=マグリビーはこう言った。
「『大地神の戦斧』、世の人がそう呼ぶものでございます」
『大地神の戦斧』。サイゴークに伝わる最強の魔斧と呼ばれたもの。ドワーフらの祖たる大地の精霊神が作り上げたと言い伝えられていた。この刃に秘められた力は想像を絶するもので、山を穿ち海を割ると伝説には記されている。
しかしこの斧がどこにあるのかはこれまでずっと謎だった。在処を記した書物も無かった。それがスオニアにあったとは。イズヴァルトは鋼ともミスリルとも違う、全く別の物質でできた鈍い光沢を放つそれに恐れおののいた。
「これを……なにゆえここに?」
「イズヴァルト様にこそふさわしいかと思いまして、マハラの者が私に持ってこさせたのです。もし……」
これのちからを完全に引き出し、ホーデンエーネン各地にあるマイア=テクニカの兵器工房をことごとく破壊してくれると約束するなら、マハラ教団はパラッツォとの戦争を止めるだろう。
マハラが本当に恐れているのは、世界最大の人口を誇るパラッツォの国々が、ホーデンエーネンの新兵器を用いて世界大戦をけしかける、というものだ。
「1億5000万に届く勢いの信徒。8歳の小児より子を産むための交合を為し、40近くまで出産を続ける盛んな生殖。飲まず食わずでもそれだけで腹が足りる『甘露(アームリータ)』。魔法が盛んなカントニアでも通用する実力を持つ、司祭騎士といった魔法戦士たち」
パラッツォ教団は世界に、覇を唱える底力がある。そしてパラッツォ教団の『世界最強』を保証する、畏怖すべき人物についてマグリビーは言った。
「史上最大の魔道士を父に持ち、魔界で『大淫婦』というあだ名を持った母との間に産まれた……」
「コーザどのでござろう。マグリビーどの、だいぶ詳しいでござるな?」
「まあ、あいつとは学友みたいなものでしてな。120年ほど前、私とコーザは、マハラの総本山で同じ師の元で学んだことがあったのでございますよ……」
この老僧はとても大事そうなことをさらっと言った。イズヴァルトは詳しく聞きたがったが、マグリビーは至極、忌々しそうに舌打ちして大雑把に語った。
「師からは是非にも、マハラの神官僧にと求められたぐらいに優秀で……あと、あの頃から女どもにモテモテで、いろんな巫女や尼僧に手を付け、孕ませておった……儂なんぞは見向きもされんかったわい。ああくそ」
「……およしなされ。妬みをぼやくと余計に嫌われるでござるよ?」
イズヴァルトに諭されてイブンは咳払いをした。この人物だが生涯に5人の尼僧を妻に持った。子どもは10人ほどいた。やることはやっていた。それと、マハラ本山の巫女や若い神官僧見習いとも数え切れないほど媾わったりもした。とはいえそれは、マハラ教の基準で言えば『控えめ』であった。
それよりも『大地神の戦斧』である。完全に力を引き出せるのを条件に、イズヴァルトに譲りたいが、まずは力が引き出せるか試してみたい。
「このあたりにちょうどよい山はございませんか、とハリマーヌ公にお聞きしましてな。この街から西に3キロいったあたりにあるそうです」
「おやまでござるか……?」
「はい。この魔斧は完全なる力を引き出せれば、高い山を吹き飛ばし、大海原を割るそうでございます」
技名もあるそうだ。山を吹き飛ばすのを『大山斬』、海を割るそれを『海波斬』と。これまで、それを使えた者は数えるほどいないというが。
「では、是非にも習得させていただきたい」
マグリビーは頭をさげた。
「話が早いお方ですな。助かります」
そう言って従者達に呼びかけ、箱ごと馬車に載せてもらうと高僧はイズヴァルトと、食事をさっさと終わらせていたオクタヴィアとヘラを伴い、別の馬車に乗った。練習風景を見物したい者らは、食事と休息を終えたあとに見物に来ることとなった。
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ハリマーヌの城下町より西に3キロ。そこに打ち捨てられた集落跡がありその先に小さな山があった。はげ山で、木が1本も生えていなかった。切り株だらけだった。
「この村は?」
「20年前までは人が住んでいたようですが、木を切り倒し尽くしたので、別の土地に行ってしまったと、聞き及んでおります」
「薪にし過ぎたずらな。ヘラのじょうちゃんみたく、炎の魔法が使えるやつがいれば、そんなことにはならんかったずら」
ヘラを肩車しながらオクタヴィアがつぶやくと、マグリビーは違うらしい、と答えた。
「燻製の職人が多く住んでいた集落だったそうで。その頃、ハリマーヌでは木の香りをつけた肉や魚の料理が流行っていたようでしてな」
「……単なる食道楽でやってたずらか。しょーもないずら」
斧はどんなものか。持って試したかったイズヴァルトは高僧に呼びかけた。老いたハーフのゴブリンは、馬車の中から青白く輝く棒を持ってきた。2メートル近くあるものだ。
「ミスリルでできたものでござるか?」
「さよう。鉄だとぽっきり折れるおそれがございます」
老人はそれを、開かれた箱の中に入っていた斧についていた穴に差し込んだ。それから柄をしっかりと掴んでゆっくりと持ち上げる。
「ネジとかで止める必要はござらぬか?」
「この斧には魔のちからがございます。念じるまで、穴に入った棒をしっかりと捉えてはずれなくさせるのです」
「便利だなあ」
ヘラは目を輝かせていた。棒を外れなくさせる穴、と聞いて仕組みを『法悦』に使えないかと考えた。
「その考えはあるかもしれぬが、ちんちんはへにゃっとなっちゃうものでござるよ?」
「それもそうだったね……」
「道具なら使えるずら」
「どうぐ? ああ、そっか♥」
ヘラはイズヴァルトの股間に目を向けた。四六時中挿れても外れず、中でぐにぐにと動くものに近かったからだ。マグリビーがくすりと笑う。
「……道具も何も。エルフの里にはそのような秘薬がございましょうに」
「まあ、そうずらな」
「そういった女性自身を喜ばせる道具や術式も、あったと聞き及んでおりますが?」
「そっちは北の姉妹たちが得意ずらよ。特にカタシナシュフの衆ずら。あそこは男があんましいないんで、ちんぽみてえなもんを作ってはめこんで遊んでいるのが多いずら」
エルフは女が多く産まれるが、カタシナシュフの者は特にそうだ。元々はカタシナシュフの分派だったナエバニアもである。対してヌマタラシュクの派閥の部族は、ニンゲンみたいに男がよく生まれた。比較的魔力が乏しく、よわっちいので生存競争に入ってしまったがゆえの変化だった。できるだけ胤を振りまくようになるのは、そういうことである。
「……さて、色っぽい談義はここまでにして、少し見物していただけますかな?」
そう言いながらマグリビーは斧を持ち上げた。重そうなそれを軽々とだ。袖からのぞかせる腕は細いのに。流石は亜人の血を引く人物だ、とイズヴァルトがつぶやいたが、マグリビーは違う、と返した。
「ゴブリン族は亜人の中では非力でございますよ。私がこれに『ちょっとだけ認められた』からに過ぎません」
「ちょっとだけ、でござるか……?」
「さよう。して、そのちょっとだけこの秘宝に認められた者がどれだけ扱えるのか、今からご覧に入れましょう」
小柄な老人は重そうなそれを抱えながら歩き始めた。集落を出て荒れ野へと出る。身体ははげ山に向いていた。
「ここで良いじゃろう」
腕を伸ばし、それを高々と持ち上げた。それから腰を少し落とし、斧を後ろに倒した。
「今からお見せいたしましょう……これが、『大山斬』」
言い終わった途端にオクタヴィアはしゃがみこみ、身重のヘラを肩から降ろして伏せさせた。マグリビーが持っていた斧を振り上げた。刃が土を叩きつけると、激しい爆風とともに彼の目の前の大地が割れた。
その風と土埃はイズヴァルトの心をゆさぶっていた。なんてすばらしい武器でござるか。おおよそ100メートルもの地割れと、5メートルもの亀裂が起こっていた。土だらけになったマグリビーは振り向いてこう言った。
「……いかがでしたかな?」
「すごすぎるでござる……」
「いや、私はあくまで、『ちょっとだけ認められた』程度でございます」
マグリビーは斧を持ち上げて抱えた。それから西に見えるはげ山を指さした。
「若様ならきっとこの斧の力を引き出せるはず。あのお山も真っ二つにできましょう」
およそ1か月、この斧を振るいその刃に眠る意志と通じ合い、その力を引き出せ。その斧を片手で持つマグリビーを見て、自分でもできるだろうとイズヴァルトは期待した。
そして柄を取り、彼と同じように片手で持とうとした。
「……えらく重いでござるな」
マグリビーは右眼を大きく開けた。嫌な予感がしたからだ。
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その日からイズヴァルトは、廃村に籠って修行することとなった。毎日1万回、大斧と仲良くなるための素振りをそこでするのだ。
とはいえこの村に残置されていた家具一式や照明石は壊れていて使い物にならなかった。マグリビーにお遣いを頼まれたクリスチャンは、街の家具屋をまわった。一番上等なものをキッカワンテスの若様に、という注文だったからだ。
「なんで貿易商が街中で買い付けなんぞを……」
同行するミツクニュモスがまあまあ、と同年代の男をなだめた。彼はウーゴ王子らを連れ、クリスチャンの買い付けの手助けに来ていたのだ。しかし本当の目的は、店の売り娘でいいのを見つけたら、ナンパすることだった。
「マハラのお山から、だいぶ心付けが貰えるんでしょ?」
「だからと言って、こんなつまらない仕事は引き受けたくないものですよ。どうせなら大陸の英雄、イズヴァルトさんの講演会を開くなど、商人らしいことをしたいものです」
「生真面目だなあ……」
ミツクニュモスは売り者のベッドの上で飛び跳ねる、エレナとオリガとウーゴらを見た。みんな嬉しそうにはしゃいでいた。が、寝っ転がった途端にオリガが笑いながら、ウーゴ王子の腰巻の中に手を突っ込んだ。
「ウーゴちゃん、きんたまぷにぷにしてるズラ!」
オリガは腰布の中にある、ウーゴ王子の玉袋を揉み始めた。王子のおきんたまは同じ年頃の子よりも倍近く大きかった。
「くすぐったいよー!」
ウーゴ王子が恥ずかしがりながら笑う。オリガの手はその内、勃起し始めたウーゴ王子の亀頭の雁をこすり始めた。王子のちんちんは生まれた時に割礼して、余計な皮は無かった。
「ちんちんがぴっちり勃ってるズラ!」
「ひゃううう~! や、やめてよう。くすぐったい!」
「やめねえズラよ! すっきり出すまでしごいちゃうズラ!」
まずい、とミツクニュモスは思った。ウーゴ王子はとっくに精通を果たして、ぴゅっぴゅと精液を出せるようになっていたかだ。止める店員はここにはいなかった。別の部屋で帳簿をつけていたのだ。
「オリガちゃん。ウーゴ王子、ここでそういうことするの、やめような?」
「え~? オラ、ウーゴちゃんのくっちゃくなったちんちんのにおいを嗅ぎたいのに~?」
「売りものなんだからさ、やめような?」
やだ。オリガはそう言ってウーゴ王子の亀頭の張り詰めた部分をしごいた。王子は「あふ。あふ」と喘ぎだし、瞬く間に鈴口から精液を押し出してしまった。
「はあ♥ はあああ♥」
エレナがうふふと笑いながら、ウーゴ王子の股間に鼻をつけた。
「くちゃい!」
オリガも面白がり、余韻に浸るウーゴ王子の亀頭をまたもしごきだした。王子のそれは、続けて2発も3発も打てるちんちんだった。父親みたいに旺盛なのだ。
「ひゃうう♥ ぬめぬめしているのでこすられると、たまらないよう♥」
「あははは~! ウーゴちゃん、続けてもう一発だしちゃえ!」
「う……うん♥」
そうはさせなかった。ミツクニュモスはオリガの身体を抱き止めた。驚いてオリガが手を出すと、ウーゴ王子のザーメンがベッドに付着してしまった。あたりに漂い出した王子の濃い生殖汁のにおいを嗅ぐと、クリスチャンは顔をしかめた。
「……はしたないですね」
「オリガちゃんはハーフエルフだ。ウーゴ殿下はおちんちんときんたまがとても立派なもんでね」
「そのベッドにいたしましょう。はああ……あんまり高く無さそうだけどな、これ」
その店にはもっと上等な寝台があった。けれどもこれを買うしかなかった。マグリビーにはそれしか無かったと伝えて納得させ、イズヴァルトが泊る家に持って行った。
「何も、ここまでしなくてもよいのにでござる」
わらを敷き詰めた寝床でいい、とイズヴァルトは失笑したが、クリスチャンはその場に居合わせていたマグリビーの顔色を伺いながら答えた。
「とはいえこれから修行をなさるのです。せめて寝台だけでも身体が充分に休まる、良いものを使わなくてはいけませんよ」
「ごもっともでござる。ご配慮、感謝いたすでござるよ」
かくしてイズヴァルトは『大地神の戦斧』を使いこなすべく、辛い鍛錬を始めることとなるがさて、その結果はいかなるものであったのか?
その続きについてはまた、次回にて。