※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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131 拉致

「つまりイズヴァルトは、和平交渉のためにスオニアにずーっととどめ置かれているってことなの?」

「そうらしいです。そしてスオニア王家は……仲が深いシマーヅ王国と結託してピピン王子様が、あれこれと説得しているようなのですが……」

 

 つまりはこうそそのかされているらしい。パラッツォ教からマハラ教に寝返れ。

 

「それがマハラとの和平の条件?」

「それだけじゃないようです。シマーヅ国のピピン王子様は、愛妾となられたエレクトラ=ガモーコヴィッツ副団長の身柄引き渡しも併せて求めているとのことです」

 

 ついでにピピン王子とイズヴァルトは衆道(どうせいあい)で結ばれているという。王子は十数名も妾がいて、この数年の間に30人以上の子を産ませる艶福家のくせに、男色もお盛んだ。

 

「……にひ♥」

 

 マイヤの目が細まり、弓形になった。これでもか、と口の両端がゆがんでいた。

 

「マイヤ様、なんかわるーいお顔をなされておりますね?」

「あらそう? まあでもイズヴァルトのことだから、ピピンさんのおちりのあなをほじくってばかりかもね」

「『おすもう』の武闘家でもあるらしいですね。筋肉はあるようですがでっぷりとしているようで」

「だきついちゃうんだろうなあ♥」

 

 また悪そうな笑みをマイヤは浮かべた。彼女は男同士のこういう話が大好きなのだ。前世では女性向け男性同性愛の専門誌をこっそり読んでいた。恋人にばれて気持ち悪がられることもあったが、無理やり認めさせて購読をやめなかった。

 

「ピピンさんってどんなかたなのかな♥」

「またまた悪いお顔を。オットー様とオルフレッド様がお顔を青くなされておりますよ?」

「ごめんごめん。さて……」

 

 ナントブルグから持ち込んできた話というのは、こうだ。パラッツォ教団側に手を貸すホーデンエーネンとしては、教団に恩を売るために外交で介入したい。適切な使者を立てて送りたい。

 

「落としどころはどうするのかな? セイン王はなんか言ってた?」

「間を取って、教団のイナーヴァニア方面軍の総大将あたりにイズヴァルトを置くとか、マハラ教団に賠償金を払わせるという方向で落ち着かせられねえか、とおっしゃっておりました」

 

 イズヴァルトをイナーヴァニア軍の総大将に。司祭騎士団長よりかはよくわかる出世だ。

 

「イズヴァルトが大将軍に……ちょっとおかしい感じがするなあ」

「なぜにです?」

「だって、イズヴァルトは大軍を指揮するのは向いていないと思うよ。どっちかというと最前線に出て切り込むタイプだから。ライナーさんも指揮官としての才能はあまりないと言ってたなあ。人に任せず自分でなんでもやっちゃうから、高所でものを見れないんだよ」

 

 大将軍になっても戦略や戦術は全部部下に任せっきりだろう。そうして自分は先陣を切って一番槍の手柄を立てる。イズヴァルトはそういう騎士だ。無双の豪傑であっても名将にはなれない。一番の激戦区に突っ込むから指示が出せないだろう。

 

「それで、私に意見をというお話だけど、本当のところはどうなのかな?」

 

 この度の件で介入するか否かの話が本題ではないとマイヤは思っていた。これはセイン王の取り計らいだろう。私を白羽の矢に立てた。

 

「その仲介役、私が引き受けるよ。陛下にはそう伝えておいて」

「そ、そうなされますか?」

「でも、シギサンシュタウフェンの滞在は1週間はさせてもらうよ。そこは譲れない。私がイズヴァルトのお父様お母様にお話を……」

 

 いや、この2人も巻き込もう。イズヴァルトの母はスオニアの名家・キッカワンテスの出だ。マハラ教団の巫女でもあった。イズヴァルトをホーデンエーネンに連れ戻す為の手助けをしてほしいと乞えば、きっと手を貸してくれるはずだ。

 

「その前にあっちに渡る準備をしないと……オットー、いい?」

 

 馬車に寄りかかりながら横で聞いていたオットーは、言われるまでもないと思ってこう答えた。

 

「わかっている。船と資金の手配だな。ホーデンエーネンの船は不安だ。イーガから手配させよう。マレーネ様を頼ればすぐにでも出してくれる」

「ヨーシデンから乗り込めないかな。セイン王には私から使いを出すからそのようにお願いできる?」

「やってみよう」

 

 そうと決まればとオットーはマイヤにサキュバスが化けた侍女2人と護衛をつけてもらい、ナントブルグへ戻っていった。マイヤは手紙をしたためてシギサンシュタウフェンに早馬を走らせ、それから馬車に乗り込んだ。

 

 祈るよりも動くべきなのかもしれない。そう思いながらマイヤの胸は高鳴っていた。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 シギサンシュタウフェンへと向かう道を、急ぎの馬が走った。そういう報告を受けてから2時間が経った。茂みの中にいたカヅノ=セイジは、そろそろか、とほくそ笑んでいた。

 

(『おしゃぶりひめ』とやらに会えるというわけだ。くくく……とっ捕まえたら存分に味わってやろう。)

 

 彼が加わる襲撃班は20名ほど。その中にアナキン=スカルファッカーの姿があった。彼は道の反対側の茂みに潜んでいる。マイヤの護衛、サキュバスの侍女を倒すのに大いに役立ってくれるはずだ。

 

(それにしても、イーガ側の護衛とやらが見つからんのだが。)

 

 倒したトールバルの部下たち。彼らはどこにいるのだろうか。あたりを探っても居場所をつかめなかった。

 

(いるとするならヨーシデン公の一隊に沿うように……しかしサキュバスどもに張り付かせても見つからん。馬車がこっちに向かってくるのはわかっているが……。)

 

 とはいえここから20キロ近く離れたところにいる。街道でもまわりが森に囲まれているところだ。

 

 1時間経った。まだ来ない。あのへんに張らせた連中からの知らせが無い。

 

(『おしゃぶり姫』め。あの辺で姉みたくおまんこのパーティーにでも狂っているのか?)

 

 苛立ったカヅノは見てこようと思った。が、あちらに張らせた魔道士から急ぎの知らせがあった。

 

「大変です! ヨーシデン公の一隊が大騒ぎになっております!」

「なんなんだ、大騒ぎというのは?」

「……ヨーシデン公が、同乗していたタルッホ=ユッキカルとともにいつの間にか消えていたらしいんですよ!」

「……なんだと!」

 

 やられた。先を越されたに違いない。カヅノ=セイジは悔しがった。別の人さらいがいたのだ。転移魔法を使える奴を用いてマイヤともう1人をさらったのだ。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 マイヤは目を覚ました。古い納屋の中に閉じ込められていた。ほこりっぽいにおいを放つわらが背中と尻に触れる感触を覚えると、自分は裸にされていたことがわかった。

 

 いや、股のあたりに冷たく濡れるものが垂れており、甘ったるい余韻と疲労感に包まれている。気を失っている間に乱暴をされたのだ。目覚めてからずっと、お腹の奥がじんじんときている。とてもきもちいい。彼女のヴァギナは口を開いたままだった。大きく太いものにやられたのだ。

 

「ここは……どこ?」

「お目覚めになられましたか、マイヤさま?」

 

 タルッホの声だった。納屋の扉が開くと夜空が見えた。風が吹き込んできた。

 

「さむうううい!」

 

 南ホーデンエーネンの気候ではない。突き刺すような寒い風だ。どこだここ? これだけ寒いのに馬車にいた時と同じ服のままのタルッホにきいた。

 

「アヅチハーゲンの北側ですわ。パラッツォ教徒の街区があった……」

「あったって?」

「クボーニコフに襲撃を受けたところでしてね、男も女もみんな奴隷としてムーツに連れて行かれたそうですよ」

 

 つまりここはクボーニコフが占拠しているというわけだ。しかも不当に。あの王国はオーガの水兵をここに滞在させ、頑強に守っている。同盟国となったナンブロシアも一枚噛んでいるそうである。

 

「タルッホ、もしかして私を売ったの?」

「売ってはいませんよ。私もさらわれたんです……あいつら、転移魔法が使える魔族と結託していたようです」

 

 タルッホの言は本当のことだ。そうか。さらわれた時のことは思い出せなかった。マイヤは身体に勢いをつけて身を起こした。

 

「逃げる方法はないかな?」

「ありません。マイヤ様なら無事に済むでしょう。クボーニコフに連れて行かれるかと思われますが」

「じゃあ、貴方は?」

 

 部屋は灯火がほんの少しで薄暗かった。だから最初見た限りではわからなかった。近づいてきたことでマイヤは知った。タルッホは顔をあざだらけにしていた。

 

「タルッホ、拷問を受けたの?」

「気になさらないでください。それよりもマイヤ様こそ、お身体をお大事になられてください」

「私なら大丈夫だよ! せーえきさえ取り込めば身体が治る……あれっ?」

 

 目が慣れたことで彼女は異変に気づけた。視界がおかしい。左側の視界がずれている。常に左下を向いているのだ。

 

「あれ……あれ……?」

「マイヤ様はお忘れになられたのです。ここに連れ去られた時に暴れて殴られました。オーガの男たちに」

 

 タルッホの視界に映るマイヤは、顔のあちこちをひどく腫れ上がらせていた。乳房や腹にもひどいあざがあった。あまりにもひどい仕打ちを受けたマイヤは記憶を失ったのだ。

 

 本来は眼球も内臓も危うかった。しかしタルッホがほんの少しだけ使える治癒魔法でなんとかした。けれどもまぶたが腫れ上がった左目は、とうとうおかしくなってしまった。

 

「わ、わたし……何をされたの?」

「この3日間、クボーニコフの海兵に、何度も何度も犯されました。私の眼の前で、あいつらはニタニタと笑いながらあなた様を」

 

 うあ……。マイヤはその時の記憶がようやく蘇った。パラッツォ教にケツを振る雌犬が。死にぞこないのだるま女め。ありとあらゆる罵声を浴びせられ、殴られながら組み敷かれた。快感よりも痛覚がまさる輪姦だった。

 

「わ、わたしは……」

「マイヤ様。お気を確かになされませ。私が施した魔法でこの1週間、痛みは感じないはずです。安静にしてください」

「……タルッホは?」

「私のことは気になさいますな。いずれホーデンエーネンがこのことを嗅ぎつけるでしょう。それまで忍びましょう」

 

 それまでは時を待つのです。タルッホはマイヤをはげました。マイヤは力強くうなづく。好機を待つしか無い。

 

「と、お思いですかな?」

 

 入口から声が。男の低い声だ。目を向けると白髪の老人が1人と額に二本のツノを生やした『具足姿』のオーガが1人いた。

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