聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
「それで、『ご本家』の家臣というのは、サキュバスアイスクリームの店に足しげく通っているというわけか?」
ソーローの別邸にて。ソファに腰掛けるあるじに問われたカヅノ=セイジは、そうらしい、と答えた。
「その方々が帰った後、店員に尋ねましたところお得意様と聞きましたよ。トーリ=カツランダルクとよく一緒にいらっしゃっていたそうですね」
「なに? トーリはサキュバスのクソを食わせる店に来てたのか? 趣味が悪い……」
「貴殿らの『前当主様』は幼いサキュバスの肛門に口をつけての直食いを好んでいたそうです。やはり、性愛を尊んだというナントブルグ王国の直系の子孫というわけでね。ふふふ」
「ますます気分が悪くなる。その話はやめよう」
あるじことケノービ=ソーローは目の前にある煎り茶の杯を手に取った。ヨーシデンに移り住んだチュバッカが送って来てくれた茶だ。シマナミスタンのアワッヒド地方でとれた名物だという。
それを一口飲む。苦くて渋い。しかし喉を通り過ぎると爽やかな気持ちになった。正妻は非常に汚くて臭い芸事を貴族文化に広めた怪人だが、味覚についてはまともだ。お取り寄せしてくれるものは何もかもが良い。良いものをたくさん摂り過ぎてあんな狂気に奔ったのだろうか。
「で、その店員はどうだった?」
セックスについての話だ。セイジはあの夜、宿所にやって来た店員の身体を思い出してにんまりと笑った。
「男を知る前の乙女みたいな顔つきと生理前の子供な身体のくせして、すけべなことは大好きな淫乱年増女みたく積極的でしたよ。それはもう、一度くっついたら離れないという感じでしたね」
サキュバスの店員は行為の最中、ちっちゃな身体とばいんばいんなお乳を何度も痙攣させてかわいい叫び声をあげ続けた。最初はちょっこりとしぼんでいたおまんこは、カヅノの巨根に掘削されつづけて、終わった後は開きっぱなしだった。下級のサキュバスだがとても良い女だった。
「また会う約束をしましたが、この数日は満足できているからわすれているでしょう」
「ほう、どうしてだ?」
「ソゴプールの連中を紹介したからですよ。あいつらはとにかく、獰猛ですからね」
カヅノが連れていたソゴプール=エルフの男どもは、エルフにしてはあっちのやり方は猛々しい。洗っていないカスまみれのヴァギナでも猛烈に舐めて中を潤したら、休み無くピストンを繰り出していく。ベッドをぶち壊すぐらいにだ。不感症が多いニンゲンの女でも、必ず4度や5度は中イキしてしまう。
そんなのが数名も、よってたかってあのサキュバスを貪っていることだろう。今も。真昼間だがお構いなしだ。いや、連中はむしろ昼間やるのが大好きだと言っていた。自分と相手の生殖器の結合をしっかりと拝めるからである。闇の中でもぞもぞやって興奮するなど、弱雑魚が言い出しそうなものだと言わんばかりにである。
「獰猛か。いやはや、私もそうでありたいものだ!」
「その娘の話はともかく。トーリの遺臣について放しましょう……饅頭みたいななりですが、それなりに魔法は使えるようです」
カヅノはあのまんまるい生命体に魔力を感じた。そこそこ、といったところで恐れるまでも無いが、生かしておいては危害を加えられるだろう。捲土重来を期しての策だって思いつけるに違いない。
「そのお得意様……ピックプリト=ポロポロッテンというのはですね」
「……何だ、その名は?」
「魔界のサキュバスでも下っ端にいるそうですな。ゆえに覚えづらい名前なのだとか。ピックプリトは十数名のサキュバスを部下にしているそうです。住まいは、元アスカウ公の……今は、ヨーシデン公のナントブルグでの屋敷でしょう」
そこまで調べた。後はいるところを叩きのめすだけだ。セイジは盟友に決断を迫った。やるなら今しかない。最後まで息の根を止めるべきだ。カツランダルクご本家の。
「……わかった。しかし条件がある」
「なんでしょう?」
「実はカツランダルク本家を圧したいという『同志』がいてな。その者にやらせてはくれないか?」
自分以外にも手を組んでいる奴がいるのか。なかなか疑り深い男だとカヅノは思った。ケノービがその人物がアヅチハーゲン近郊の、クボーニコフ王国が占拠したパラッツォ信徒の集落にいると告げた。
「ジグ=ウォン。クボーニコフ海軍南軍の魔道士部隊の長だ。マイヤともう一人、タルッホの拉致を行った本人だ」
「……」
そいつに先を越されたのか。胸の内に沈んでいた怒りがこみあげて来てこめかみが震えてしまった。
「タルッホとマイヤは殺したそうだ。バラバラにして海の魚の餌にしたようだ。まあ、あの陣地にはオーガが沢山いるそうだから、死ぬ前に散々楽しんだろうがな」
……と、ケノービはジグ本人から聞かされた。本当のことだろうと思ってカヅノに聞いたままを告げた。マイヤは死ぬ前に、オーガ男のデカチンでたっぷりと可愛がられていたそうだぞ。一言そう付け加えて。
(そいつが邪魔をしなければ、俺は今頃『おしゃぶり姫』と楽しんでいたのだがな!)
枯れ果てるまでパイズリフェラを楽しもうと考えていたのに。怒りは劣情が原因のものだ。ケノービは彼の怒気に気づかないふりをして続けた。
「ジグ導師はイーガ人の血が流れている。亡きアドルフ王子に私淑していたそうだ」
「つまり、『カツランダルクの女王』」の一族を再興させたくない、という連中ですかな?」
「念には念を……つまりは、カツランダルク王国の旧臣たちも滅ぼしたいとお考えのようだ。貴公が語ってくれた話を聞いたらさぞやお喜びになられるだろう。ピックプリトの抹殺も自ら進んでおこなってくれるだろう」
この件はジグにやらせろ。その為に情報だけを与えてくれ。ケノービの申し出にカヅノはますます怒り心頭、といった心持ちだったが、気になったことがあったので彼に訊いてみた。
「策は、どのように?」
「全てジグの手でやらせようと思う。私の部下がやると面倒だからな。貴公の部下も亜人が多いから目立つだろう。あの男は転移魔法を扱える魔族を抱えているそうだ。アナキンが扱える魔物殺しの剣も使えるらしい」
「なるほど。ではお伝えいたしましょう。私は……クボーニコフの敵たるパラッツォ教徒が姿を見せてはいけませんね?」
「そうだな……隠れて見ていた方がよいだろう。ところで、聞きたいのだが」
血痕や遺体といった証拠を消す方法があったら教えて欲しい。サキュバスは塵になるから煤みたいなものが散らばるだけだと知っていたカヅノが首を傾げた。それから一瞬して言葉の真意を悟った。
「私が存じている神聖魔法にはございませんが、『扱える』精霊魔法ならそうした術式がございますよ」
「ほほう。では、その術式が得意な者は? ちょっと学んでみたいと思ってな。得意な者を紹介してほしい。授業料なら払うよ」
「有難きお言葉。ただ、お金だけでは講義は開けませんね。情報が欲しい」
決行の日と時間が決まったら俺に知らせろ。その要求を聞いたケノービは穏やかに笑った。陰謀には波長が合う仲間が必要だ。
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カヅノ=セイジという聞き慣れない名前の人物と会ってから1週間が経った夜分遅くのこと。ピックプリトはコンゴウアミダラデンからやって来たという魔族から手紙を受け取った。魔竜直筆の手紙だった。手伝いのサキュバスに読み聞かせてもらった。
「なんですって! マイヤ様が、コンゴウアミダラデンにいらっしゃっていた……!」
手紙によるとこうである。マイヤはさらわれてから数日後に、クボーニコフの海兵たちに輪姦され続けていたところをヤギウセッシウサイらによって救われた。だいぶ身体が疲弊していた。乱暴に扱われていたからではなく、オーガやクボーニコフ人の絶え間ない要求にアクメが過ぎてしまい、廃人同然になっていたそうである。
「神経はズタボロやったけど身体は……膣と子宮以外の内臓にガタがよう来てはったんやけど肉と骨は至って健康。生殖器はあんさんらサキュバスの血ぃが流れておるからびょーきはせえへん。そこだけは鋼でできておりますわぁ。ですって」
擦り切れてぐちゅぐちゅになっていたと思わんばかりにほぐれていたヴァギナ周辺は、数日してつるんとなってしゅん、となった。膣内も傷だらけだったのがつるつるに。しかし回復力はそこだけに集中している身体だ。マイヤは1か月ほど、要介護の寝たきりだったそうである。
「今はコンゴウアミダラデンのみんなと、魔界の牢屋から特別研修の名目で遊びに来ている『ゆうしゃ』ご一行と仲良くされているようで……大丈夫なのかしら。生きている異界の人と知り合うなんて」
「マイヤ様は魔界の血を継ぐおかたですから、気にすることはございませんよ。まあ、先祖返りを為されたら引き戻されそうですが……」
手紙にはマイヤの身体の診断結果も書いてあった。膵臓や肝臓に悪性腫瘍が広がっていたが、魔族の治療魔法でなんとかなった。根治には数年かかるが進行はとても遅いからなんとかなる。この世界の医療魔道ではどうにもならないだろうが。
「70年も80年も生きる為には、ここ5年はコンゴウアミダラデンに留めおきたい、と書かれておりますね。診断書の裏に」
「……致し方がありませんね。魔竜様のことです。しなかった場合にはどうなるか、と記していることでしょう。何が書かれているのですか?」
「これまでの処置で10年は生きられる身体だが、予断は許されないと」
「そうですか……5年も」
魔族にとって5年はあっという間だが、ニンゲンにとっては半端ないくらいに長い時間だ。ナントブルグ王国の再興は一旦あきらめるしかない、とピックプリトは判断した。病気を抱えたままのマイヤに再び国政を、というのはリスキーな話だからだ。
(それまではオルフレッド様とコリアンナ様に頑張ってもらわねば……コリアンナ様は成長できそうですが頼りにはならない。オルフレッド様は……)
ナーガハーマに行ったそのオルフレッドからも知らせを受けていた。おちんぽすっきりの面倒を見てくれているサキュバスにあてて書いた手紙からだ。ハンナが妊娠したが僕の子じゃないんだ。どうしよう。おろせ、と言った方がよいのかな。僕の子じゃないから愛情をかけて育てられる自信が無いんだよ。
(自分の子ではない貴方様を育てた人物がいたでしょうに、身近に! 当のルッソお父様がそうなのですよ!)
と、ピックプリトは返事してやりたかったがそうもいかなかった。増々しょげ込むかもしれないからだ。それだけオルフレッドの精神状態はよろしくなかった。オルフレッドは武勇に優れているし魔法戦士の才能もあるようだが、心が繊細に過ぎる。カツランダルクの次の女王の『中継ぎ役』を到底引き受けられない。
コンゴウアミダラデンでのマイヤの近況を記した手紙が読み終えられた。サキュバスはその手紙を引き出しにしまうと、ピックプリトに尋ねた。
「私、思うんです。マイヤ様は身体を治したらイズヴァルトさんと一緒に暮らすべきなんじゃないかと」
「そうですよ。マイヤ様はご自身のお仕事をしっかりとやられました。運命に立ち向かう事も。後は愛する男と仲良く。ちょめちょめといちゃいちゃをしながらゆっくりなされるのがよろしいと思っておりますわ」
しかし、マイア=テクニカに大きな事件が起きたら、再び戻るだろう。ヨーシデンの街についても。それからマイヤはイーガ王国にとって重要な人物でもある。政治の世界から逃れられない。けれど、今はたっぷりと骨休めをして欲しいとピックプリトは願っていた。
「ありがとう。貴方はもう帰りなさい」
「あの、もう少しここにいたほうが……」
「身体が男の精をいただきたくてうずうずしているしているでしょうに。ありがとう。私のことは心配しないで。この屋敷には兵士がいればニンゲンの侍女だっている。私を知るのは今も、ほんのごく一部ですが……」
ピックプリトはトーリがいた部屋を借りていた。前当主がひそかに飼っていた、まんまるい謎の魔獣という態でだ。ニンゲンの言葉をしゃべり、前の口の動き方と後ろの腔の挿れ具合は、男やもめや独り身女の良き『慰めペット』として認知されていた。
「ピックプリト様。それでは、失礼いたします」
手伝いのサキュバスが部屋を去った。ピックプリトは軽く念じて部屋の照明石の光を消した。テーブルの上でそのままうとうとし出して、うつら、うつらとなり始めると、窓が開いた音を聞いたので醒めて振り向いた。
「トーリ=カツランダルクの遺臣、ピックプリト=ポロポロッテンじゃな?」
紅く光る剣を抜いた老人だった。耳がかすかに尖っている。亜人の血が流れているのだとピックプリトは気づかされた。
「何者かしら?」
「頂戴に参じた。もらい受けよう、貴様の命を」
剣に強い魔力が蓄えられているのに気づいたピックプリトは身体の周囲に防壁を張った。初撃は跳ね返せるはず。下級の淫魔だがそのぐらいの実力と自信はあった。
が、身も心も両断される様な激しい痛みを感じた時、彼女は見誤った、と嘆じた。意識が散らばって失せていく。思念体ごと斬られた者が感じる、末期の瞬間だと聞いたことがあった。
(私は……マイヤ様を見届けられずに……トーリ様……カミラ……!)
彼女を討ったのはクボーニコフの老魔道士のジグ=ウォンだった。ナントブルグ王国の最後の遺臣を討ち取った彼は、塵となって消えていくピックプリトを見て、満足そうに笑みを浮かべていた。
その時の笑顔が、彼の生涯最後の笑顔となった。数分後、彼はカヅノ=セイジとソゴプールのエルフ達によって、連れて来た魔族ごと抹消されたのだ。