聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
「……という出会いだったんだよ」
『ゆうしゃ』達の訓練場の片隅の休憩スペースにて、ブライアンは素っ裸で椅子にちょこんと座るマイヤを見た。前世の世界から戻って来てから表情が暗くなった彼女は、ブライアンとセッシウサイの出会いの話を聞き、いくらか気が紛れたようだ。
「そうして今に至る、というわけなんだね?」
「まあね。そしてオイラはセッシウサイ様の厳しい修行を受けて、この二刀を手に入れたんだ」
ブライアンは壁に立てかけていた二振りを手に取り、鞘から引き抜いた。どちらも漆黒の片刃剣だ。魔界の金属でできている。ミスリルの剣よりも切れ味が鋭く、丈夫な剣だ。刀身には白い象嵌が埋め込まれている。魔界文字だ。
「きれいな黒だね?」
「セッシウサイ様の名刀コレクションだよ。右のが『トシゾウ』で左が『ソウジ』って名づけたんだ」
「新選組かな?」
ちなみに本当の名は、右の剣が『雲切の鷹』、左は『乱世の隼』という。しかし魔界語だと20文字以上の読み方になるので、面倒くさいので短い名前にするようにした。この両刀だが、ヤギウセッシウサイが若い頃、付き合っていた女にプレゼントされたものだとか。
「昔の恋人の大事なものを、すんなりと与えちゃうってのが、どうにも淡泊なんだよな、あの人」
「たくさんいる中のうち1人、じゃないかなあ。セッシウサイさんはモテモテだし、1人のおんなのこに執着することは無いと思うよ?」
「あはは。もしかしたらサキュバスかもしれないね! で、次のオイラの対戦相手なんだけど……」
ブライアンとマイヤが合い向かっているテーブルの横に、『ゆうしゃ』のうち1人が立っていた。
「オーキのブライアン。早くしろ。次の相手はこの俺だ!」
「そうそう。そうだったね!」
ブライアンは『ゆうしゃ』達と剣での勝ち抜き試合に興じていた。勝てば彼等が連れて来た女の仲間(兼愛人)と一発やる権利か、秘蔵のマジックアイテムなどを貰う権利を得る。負けるとマイヤやブライアンと仲が良いサキュバスを抱かせる事となる。ブライアンにはあんまり痛みはない。
「ラグワイア大陸を救った『蒼炎の戦士』、オルモック=ガードセニがコテンパンにのしてやる……なんだよその目は! 本当に魔王を倒して救ったんだってば!」
オルモックは少しびびっていた。無理もない。これまでブライアンは10人抜きをしてみせたからだ。ただしどちらも単純な剣の技量のみで戦った。魔法や加護の力を使われたら、ブライアンも大いに苦戦するはずだ。なのだが、彼等はあんまり腕が良くなかった。
(わかいんだよなあ。みーんな。オイラとさして歳は変らないよ。)
ごつい顔のオルモックだって、20歳になるかならないかだ。どうも剣技とは違う、『別の力』で魔王に勝ったみたいだ。『ゆうしゃ』というのは大抵、そういうタイプのヤツが多かった。魔法が使え、魔剣を手にした土方歳三や沖田総司だったら、彼等の『ホーム』で無双できたかもしれない。
「じゃあやろう。マイヤねえちゃん。終わったらちょっと相手してよ?」
「うん。エルザさんにバレないようにしようね!」
「……そうなったら、ねえちゃんに首ったけなアナとラプンツェルさんに守ってもらうよ」
2人とも、マイヤの絶品クンニにはまっている。あのエルザもだ。エルザに至っては肛門に舌を入れられ、「あひ♡ あひ♡」とよがり狂ってしまったそうだ。そのせいかブライアンにアニリングスを求めるようになった。
試合場に入るとブライアンは木剣を手渡された。オルモックはグレートソード風のそれを構え、かかってこいと言った。試合はブライアンが勝った。脚の関節をやられて突っ伏すオルモックにこう言った。
「オイラはニンゲンなんだから、魔獣を狩る剣法を使っちゃだめだよ? それと余計に力を込め過ぎてるし」
「ううう……俺の世界ではこの剣術が最強だとされているのだ」
「君が住んでいた世界では、だろ? じゃあ、君の一団にいる『聖槍遣い』のシャレーナに話をつけといてよ。あのコはまだ、抱いたことが無いんだ」
オルモックは悔しがった。シャレーナは彼の大事な人だった。その世界でのとある国の姫君なのだ。ちなみにオルモックはシャーナの国のとある部族の族長の倅だった。冒険の間、一応は相思相愛の関係にあったのだ。
とはいえ、試合に負けたのだからブライアンに従うしかなかった。けれどもブライアンは嘘をついていた。シャレーナはちょっとした鍛錬で相手になって、仲良くなった。
オルモックがサキュバス達にはまったせいか、なかなか言い寄ってくれないから寂しい、と嘆かれたので、何度か相手をしてやった。すっきりとした美しいボディに胸についた2つの大きなメロンが魅力的だった。あそこはやや締りが悪かったが。ブライアンは知らなかったがシャレーナはこの時、彼の子を妊娠していた。
「ふーっ。終わった終わった」
「勝つのが早いね。見えなかったよ!」
「そうだね。オイラに勝てるのはたぶん、ニンゲンだとイズヴァルトさんぐらいかもな。亜人さんはちょっと自信が無いや」
その亜人達や『ゆうしゃ』達と会い、話をすることでマイヤはある大望を抱いていた。自分が死んだあとの前世の世界を見て、思い知らされたのもある。
(私……今の生涯をまだまだ十分に生きてみたいよ。欲深いからこのまま終わりにしたくない。)
マイア=テクニカ。ヨーシデンとナーガハーマの街づくり。ホーデンエーネンの姫。それだけではまだ足りない。そうだ。オルモックの想いびとシャレーナみたく、好きな人を盛り立てることもしてみたい。
「『ゆうしゃ』か。イズヴァルトもこの世界に、大魔王か邪神がいればそれを倒してそう呼ばれたかもしれないね?」
「大昔はいたみたいだよ。でも、エルフさんやゴブリンさんたちの凄腕の戦士がやっつけちゃったみたいだけどね」
「でも、ものすごくつよい、というのがわかる偉業を達せれば、イズヴァルトは『ゆうしゃ』と呼ばれるんじゃないかな?」
偉業。なるほどとブライアンはうなずいた。オルモックがシャレーナを連れてやって来たが、彼女はブライアンだけでなくマイヤにもうっとりとした視線を向けて恋人を嘆かせていた。シャレーナはマイヤにもおまんこをちゅうちゅうされたのだ。
「あのう……」
「やあ、シャレーナさん。今からでもいいかい?」
「ええと……エルザさんにばれないようにね?」
「エルザはただいま、亜人さんの街で浮気中だよ」
その前にマイヤと話したい。しきりに目で訴えかけている四肢の無い娘を見て、シャレーナは言った。
「何か聞きたそうですね?」
「ちょっと相談事に乗ってもらっていいですか、シャレーナさん?」
「はい。ちょっと失礼します」
シャレーナはマイヤを自分と顔を向かわせるように抱き上げると、そのまま椅子に座った。『だるま娘』に頬ずりをしてにおいをかいだ。
「うーん♡ かわいいにおい☆」
「そうするとシャレーナさん、長くなるからやだよう。話をきいてほしいの」
「やだ♡ ちゅーしちゃだめ?」
幼げな言い方でシャレーナが訊く。ちょっとだけだよ。シャレーナはおいしそうにマイヤの唇をむさぼった。ここだけは大人のキスだ。美しい顔にして随分と汚らしい感じだった。
「ぷはーっ♡ まんぞくしました☆」
「ちゃんと歯をみがいてる? シャレーナさん、食べかすがついていることがよくあるよ?」
「うふふふ♡ ばあやがいないからついついおろそかにしちゃいます☆ ところで聞きたいって、どんなことを?」
自分もシャレーナみたいな『ゆうしゃ』のお付きになりたい。その場合はどのような支援の仕方があるかと尋ねた。
「変なことを聞きますね。まあ、私は聖槍『グラン=トリノ』の使い手でしたし、オルモック様と一緒に魔王を倒す一行に加わりましたから……」
「たとえば、非力で両手両足の無いおんなが一緒に旅をするとなると、どんな助け方が思いつくかな?」
「うーん。そうですね。やっぱり、軍師というか参謀というか、旅の助言役ぐらいしか、なれないと思いますね☆」
その女が美人なら、まだカキタレとして大きな役目があるだろう。勇者一行が全滅した時の保険だ。『ゆうしゃ』だけでなく、優秀な戦士や魔道士の子を宿して残されるかもしれない。人類反抗の最後の希望の光を産むという、大事な役目ができるかもしれないのだ。
「子を産むは無理かなあ……でも、軍師か」
「マイヤさんならそっちが最適だと思いますよ☆ じゃあ、もう一回ちゅーしていいですか♡」
「仕方ないなあ。んーっ」
マイヤは唇を突き出した。しかしシャレーナが吸いついたのは彼女の乳首だった。女に飢えたおっさんみたく、汚らしいキスをマイヤの柔らかなそれに施す。
「ふええええん……」
ブライアンとオルモックは気の毒そうにそれを眺めた。シャレーナは普段は上品なお姫様だが、性愛のことに関するとえげつないことをしでかす。しょげるマイヤはお構いなしに、彼女は口唇の欲がおもむくまま、両方の乳首を味わい続けた。
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ホーデンエーネン王国暦で言うと、357年の9月の末頃である。マイヤにとあることを頼まれたサイカノマゴイチは、ポコリーヌとサキュバスのエルザを執務室に呼びつけて「進展はどうか?」と尋ねた。
「何の進展です?」
毎日おまんこから染み出る『たぬき汁』をマイヤに吸われ続け、すっかりへろへろになっていたポコリーヌが質問を返した。
「決まっとりまんがな。嬢ちゃんの『おねがい』のことやでぇ」
まずは十分な体力がついたのか。それは問題ないとポコリーヌは答えた。今のマイヤはサキュバスのムーランがやっている、ポールダンスの教室に通い始めたぐらいに元気なのだ。病気だってほぼほぼ完治している。後は、二度と発症しないように根絶を試みるだけだ。
「そのためには、わたしのまんこ汁をあと10ねんぐらい、ちゅーちゅーしてもらわないといけませんけどね……」
「嬢ちゃんは来月までに強行したいみたいやでえ。あの坊やがスオニアに入った、って聞いとるやろ」
「あ、すっかり忘れてました」
エルザが答えた。ハーマイオニーの知り合いの力を借りて、スオニアの情勢は逐一報告して貰っている。マイヤが言うには、『教団』の本拠からできるだけ遠く離れたところでおっぱじめたいそうだ。
「この計画にはセッシウサイほか、ヴァネロペも手伝いたいと言うておるで。あと、ツダサンチョーも無理やりにでも巻き込む所存や」
「そういや、セッシウサイさまの姿をお見掛けしませんね?」
「ムーツに向かっておるで。一旦目指しているとこの下見をしたいそうや」
オークの剣豪が向かった場所。オーガ族の聖地と呼ばれるヒラーイズミ山だ。そこに『覇王の剣』を超える武器が眠っている。いや、『獄炎の凱歌』をも凌ぐだろう。
「となると、アテールイ様のあの秘宝をとうとうイズヴァルトさんに手渡す意を決したわけですね」
「せやで。この世界最強の魔剣、『
これはマイヤが書いた筋書きだ。イズヴァルトに氷の剣を、たぶん魔法戦士として片腕になるかもしれないヘラという少女に『獄炎の凱歌』を持たせ、2人を不世出の『ゆうしゃ』になってもらう。その名を挙げる場所が、エチウと北ホーデンエーネンだ。
伝説の武器を手に入れた彼等がパラッツォ教団をいぢめる連中をやっつけ、二度と手出ししないようにする。その頃ホーデンエーネンでは、近衛騎士団を中心にパラッツォ教との敵対を盛んに言う声が広がりつつあった。
また、パラッツォ教寄りが多い北部諸侯の一部に、港湾を不当に占拠するクボーニコフと紛争を始めた者もある。北ホーデンエーネンはどろどろとした戦いの時が再び訪れようとしていた。
「で、そこにイズヴァルトはんと、ヘラっちゅうゴール族の嬢ちゃんを割りこませて喧嘩両成敗、にさせるっちゅうのがマイヤの嬢ちゃんの目論見や。そのためにも『氷雪の栄光』がいる。ただし……」
世の中がもうちょっと混乱してからがいい、とマイヤの提案書に記されていた。彼女は今後、『ゆうしゃぷろでゅーさー』という名義も使うそうだ。『ゆうしゃ』を育成して輝かしいステージに立たせる。そういういかがわしいマネジメント業に手を出すつもりだ。己の欲を満たすために。
「はああ……作られた『ゆうしゃ』みたいで、あんまし気乗りせえへんけれど、致し方あらへんなあ」
まるで自分がハマっているアイドルのゲームみたいだ、とサイカノマゴイチはため息をつく。マイヤはこれからプロデューサーとしてイズヴァルトをマネジメントし、あちこちの紛争で『正義のゆうしゃ』として活躍させるつもりだ。
それからコンゴウアミダラデンを、この事業の拠点にするつもりだった。魔竜は『アイデアマン』のツダサンチョーをその業務のコンサルタントに、おまんこは自由過ぎるが法令遵守はきっちりやるヴァネロペを監査役に配することにした。
「ですよねえ。けど、マイヤちゃんとイズヴァルトさんがこの世界の『守り手』となれば、セッシウサイ様のお仕事もいくらか楽になるんじゃありませんか?」
ポコリーヌは乗り気だ。あほぬかせ、とサイカノマゴイチはため息をついた。ヤギウセッシウサイがやることは、せいぜいが悪い奴をこらしめることぐらいだ。国レベルの巨悪はなかなかこらしめられない。いや、してはいけない決まりだからできないのだが。
「まあ、この世界で一番危険なのは、コーザの坊やかミナッカミニアのキファニアはんやろうけどなあ」
コーザはいつ考えを覇道に変えるかで不安があったし、キファニアに至っては魔竜は相性が悪かった。水や氷の魔法の使い手は、魔竜が苦手なタイプである。しかも物理面では彼女の姉が担うだろう。カントニア最強の生物と言われる、ハーフリングのマリベーラのことだ。
キファニアは少なくとも、ウマヤーノ国の実権支配ぐらいは考えているそうだ。前会った時にハーフエルフの女の子達の扱いについて、少しばかり嘆いているのを聞いた。しかしカタシナシュフで面倒を見ないのは、ヌマタラシュクがうるさく介入するからである。
「ミーナタカトミのやつもキファニアさんの相棒ヅラしておるし、あっちが本当の不安材料やでぇ……」
「まあでも、ミーナさまがストッパーとなってくれるからいいんじゃないんでしょうか? ポコリーヌもそう思うよね?」
「そうですね。まあ、なんとかなりますよ!」
下級魔族のポコリーヌに励まされるのは何となくおかしいと思ったが、サイカノマゴイチは意を決した。まあ、キファニアはんはなんとかなるやろ。問題はコーザやで。あいつをまず、どうにか封じておこう。
(せやけど、あのトーリの嬢ちゃんが生きておったらな……。)
それこそ、この世界の最大の恐怖になり得ていたかもしれない。『ゆうしゃ』が倒さなくてはならぬ大魔王になりそうなのは、この世界ではトーリ以外に思えなかった。
明くる日、魔竜はスオニアへと向かうマイヤを見送り、事の成功を祈った。義手義足をつけ、学者みたいな地味な色合いの格好をしたマイヤは、とても希望に満ち溢れた笑顔を浮かべていた。
聖騎士イズヴァルトと、かわいくてスケベな侍女の、本当の旅の続きがこれから、始まろうとしていた。
カツランダルク戦記 第四章 ―了―
次回から聖王編の再開となります。