聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
イズヴァルトを1分で倒せると豪語したその大男は、開始の合図とともに組み付かれ、地面に叩きつけられ、背中をとられ、腕で首を締め上げられて気絶した。
「おい、待てよ!」
『ゆうしゃ』達の口から罵声が飛んできた。イズヴァルトにではなく、巫女の1人と後背位で性交を楽しんでいたツダサンチョーにだ。
「話がちがうじゃねえかチビっこ魔族!」
「完全に俺達の予想を外しているんですけどぉ! あんなバケモンと死合えっていうんですか? 本当に殺されちゃいそうなんですけど!」
「しかもあいつ、まだ剣を抜いてねえぞ! どうなってんだよこの世界の戦士ってのは! いくら俺達がアウェイでも、ちょっとおかしすぎるんじゃねーか!」
これでは剣法を習ったばかりの子供だけのわんぱく武術大会に、余裕で2桁ぐらいの実戦経験と殺害経験がある剣豪が殴り込んだようなものじゃないかと彼らは愚痴った。そのあまりのヒステリーぶりにイズヴァルトはため息をついた。
「はあ。なんとやかましく情けない。あれが世界を救った者の姿でござるか」
試合をセッティングしたポコリーヌに目を向けた。10メートル後ろにた彼女は、地面にベタずわりして自分を見つめたまま、何故か腰を揺らしていた。
「あふんっ♡ はうんっ♡」
「暇すぎて、まんずりをしている場合ではござらぬよ?」
「……はっ♡ ばれちゃいましたか♡」
イズヴァルトの戦いぶりを見て、ものすごくあそこがうずうずしてしまったのだ。まんこに砂がついてざらざらしていた。
「もっと遠くでやっていただきたいでござる。さて、世界を救ったほどの根性があるのに、どうしてあれほどぶうたれているのは、どういうことでござろう? 『ゆうしゃ』というものは、こういうものでござるか?」
「仕方ないですよ。うふっ♡」
ポコリーヌはついつい腰を振ってしまった。地面にクリトリスをつけてこするというのはあまり気持ちよくなれないが、身体が狂ってしまったから仕方が無かったのだ。
「仕方が無い、とは?」
自慰の快感で蕩けていたポコリーヌが、急に真顔になった。
「あいつら、気概とかやる気ってものを世界を救ったところで使い果たしちゃってますから……」
ポコリーヌは語った。どの『ゆうしゃ』も世界を救う、という大事業で人生において疲れ果ててしまった。人として燃えカスの一歩手前。いくら不思議な力や天才的な能力があるとはいえ、ものすごい戦いに身を投じたわけだ。体力はともかく、気力と運は使い果たしたと言って良い。
世界を救った後だが、彼らの殆どが、遊んでばかりの社会不適合者と化す。世界を救ったことでいろんな国々から財をもらい、遊びに行けば特別待遇でちやほやしてくれる。皆が『ゆうしゃ』となった彼らを、生き神様そのもののように崇拝するのだ。
それと、女達からも盛んに言い寄られるようになる。『昨夜はお楽しみでしたね』を言われことが1年中、ほぼ休みなく起きる。国王の姫や大貴族の娘はおろか、一般市民や農民の女や娘までもが迫る。よほどひどいのでは無い限り、『ゆうしゃ』は断ることはしなかった。やることが無くて暇なので、セックスで時間を潰す為だ。しかし体力がある彼らはつい、『荒淫』と呼ばれるところまで突っ走ってしまう。
「世界を救ってもその後はやることが無いし、別業種に鞍替えしても大抵うまくいかないそうなんで、遊んで暮らして深酒やおまんこで不摂生を繰り返すらしいです。『ゆうしゃ』って」
「そ、そうなのでござるか……」
更には美食や、闘争本能のせいで片付けられるわけのわからぬ理由での決闘沙汰にのめり込んでしまい、その大抵が40か50に届く前に身罷るそうだ。
「とはいえ子どもは大体100人以上できるみたいですし、子どもがどこかの国の王様や将軍様になるそうでして、存分に種の保存ができたのだからそれでよし、と言っても良いかと思いますよ」
そう言うとポコリーヌは再びイズヴァルトをじっと見て、腰を動かしてにょっきりと出た陰核を土でこすった。「はう♡」と悶える声を放ったが、イズヴァルトは気にしなかった。第二次試験を終わらせたくて、小さなことを気にしていられなかったからだ。
『ゆうしゃ』達のツダサンチョーへの物言いは、まだ続いていた。イズヴァルトが声をかけると彼らが「うっさいだまれ!」と罵ってきたので、観客席で待つことにした。
ローラの席に向かうと、義手義足をつけた彼女は、エレナとオリガとウーゴ王子と一緒に、『げーむうぉっち』に興じていた。
「ほうほう。何をやられているのでござるか?」
「国盗りものっぽいものですな。とある女子禁制の城を独り占めすべく、互いに仲の悪いサキュバスのチームが拳で争うというものです。対戦ゲームというやつですよ」
ローラが握っているものの画面には、他の3人が操作しているサキュバスのチームの面々が映っていた。柔術サキュバスに拳闘サキュバス、功夫サキュバスといったユニットを動かし、戦わせてつぶしあい、最後まで生き残れば勝ちだ。
ローラが操作している拳闘サキュバスが、ウーゴ王子の柔術サキュバスが戦うことになった。画面が切り替わった。二頭身でたいへんかわいらしいデザインのサキュバス2人が出てきた。それぞれ、上は拳闘者の道着と柔術着を着ているが下は素っ裸だった。しかも上はでっかいおっぱいを出していた。
「随分とえっちでかわいらしいでござるな?」
「カイロネイア=エルフさんのゲーム工房で造っておりますからなあ。こうした『もえもえ』な絵になるそうですよ」
サガミニア=エルフとカイロネイア=エルフは、こうした魔道遊具の作品を数多く創っている。キャラクターは『げーむうぉっち』の上下左右ボタンで動かす。右側の4つのボタンで殴ったり蹴ったり寝技をかけるそうだ。
「おお、動いた! ……でも動くとおっぱいがボヨンと動くでござる。芸が細かいでござるな?」
「カントニアのエルフの『絵師』っぷりは、なかなかなものでございますからなあ」
かわいいで埋め尽くされている画面上のサキュバス2人が近づき、殴り合い始めた。叩かれるたびに「きゃっ!」と悲鳴をあげていたたまれない気持ちになるが、この声がたまらない、という者もいるそうだ。
【ギルバート=カツランダルク注:ちなみにだがそうしたゲームの音声はすべて、サキュバスの声が使われていた。サガミニアのエルフが捕まえたサキュバスを性的にいじめることで出した声を収録していた。女エルフたちは美声には自信ありだが、可愛らしく扇情的な声を出すのが苦手だったから、サキュバス本人の声を用いたそうである。】
「殴られるたびに声が出ておっぱいが揺れるでござる……よく見るとお腹、ちょっとぽよぽよでござるな?」
「ご慧眼。すけべボディというものは胸と尻と太ももだけでなく、お腹の肉も必須ですからな。えい! おりゃっ!」
ローラは大技をかけて勝負を決しようとしたが、ウーゴ王子の巧みな回避と小技の連撃によって打ちのめされた。ウーゴ王子はガッツポーズだ。
「やった!」
勝負が決すると、勝った方のサキュバスが、大股をひらいて伸びているサキュバスに魔法をかける。股からにょっきりとちんちんみたいなものが生えてくると、その上にまたがって気持ちよさげに喘ぎ始めた。
「つまり負けた方はちんちんを生やされて……精気を奪われる、というわけでござるな?」
「はい。そういう設定みたいですね」
乗っかられたサキュバスが「あうん♡」と叫んだ。彼女の股間が生えたペニスがびくんと動き、結合部から白いものがいっぱい溢れ出た。受精した方のサキュバスは満面の笑みを浮かべながらピースサイン。画面が切り替わってまたもとのフィールド画面に戻った。
「次はエレナさんのターンですな」
「ううむ。あっちの相談が続いたら、ちょっと代わっていただきたいでござる」
「そうですな。なかなか終わりそうもありませんな。では、私が代わりましょう。ただ、条件がございましてな」
ローラは何かを感じさせる含み笑いを浮かべた。それが何を意味するのかがわかっていたイズヴァルトは、つばを飲み込み、股間に血を集めさせてしまった。
□ □ □ □ □
エレナが操作する柔術サキュバスが、イズヴァルトの最後のユニットだった関取サキュバスに大外刈りを決め、ダウンさせた。
「まっ、また負けたでごじゃりゅ!」
のされた関取サキュバスにちんぽが生やされ、柔術サキュバスにのしかかられる。このゲームをかれこれ2時間、3戦ほど続けていたが、イズヴァルトは必ず最初に全滅した。
「とうちゃんのへたくそ!」
「こ、この『げーむ』がとっても難しいだけでごじゃりゅ!」
「必殺技ばっかり狙うから負けるんだよ! 細かい操作が必要になるからそれだけ隙ができちゃうんだよ! とうちゃんは実戦じゃ小技ばっかなのに、『げーむ』になるとすぐに欲張りになるなあ!」
「う、ううううみゅ……」
イズヴァルトは悔やむ。舌っ足らずになっていたのは抱いているローラのせいだ。彼女と合い向かって膝の上に座ってもらい、試合よりも夢中になれる交合を行っていたのだ。
「はうう♡ くやしがっているせいか、おちんちんのおっきがいつもより硬くなっておりまするぞ♡」
「たしかに。くやぢいでごじゃりゅ。でも拙者はローラどのとこうしておまんこをして、くやしさなんかすぐにちんちんから溢れ出ちゃうでごじゃるよ」
そう言うと温い膣にはまっていた亀頭が、無念の精液をぶびゅっと放ってしまった。これでもう10回目の射精であった。
イズヴァルトの席の周りはえげつないぐらいに、雨季の青葉のようなにおいが立ち込めていた。ウーゴ王子は少し赤面していたが、エレナとオリガはへっちゃらだった。むしろ、かぐわしいものと言わんばかりに大きく息を吸い込んだ。
「とーちゃんのせーしのにおい」
「とーってもいいにおいズラ〜♡」
2人とも、自分たちはこのにおいの元から作られ、生まれたのだと考えながら匂いを吸っていた。とてもなつかしくも感じられるにおいと言えた。自分たちもこのにおいの元で生き物としてのサガを味わいたい。そう思うと、赤面しつつも腰を振り、気持ち良さげに喘ぐローラを見て勃起していたウーゴ王子に寄りかかった。
「ウーゴちゃん?」
「な、なあに、エレナおねえちゃん。オリガちゃん?」
「ここでなかよしこよしをしようズラ!」
ええ、と王子が驚き、エレナの手が彼の腰巻きの中に潜り込んだその時だった。長らく『ゆうしゃ』との話し合いが終わったツダサンチョーが、とっくのとうに試合のことを忘れて膣肉がもたらす甘美に耽っているイズヴァルトに呼びかけた。
「試合始めるよ! ただし今日最後のね!」
「しゃ、しゃいごでごじゃりゅか?」
この3時間のうちにやめられず止まらない10度に及ぶ絶頂大射精を行ったものの、イズヴァルトの肉体は意気軒昂だった。むしろ、ローラの甘い牝臭と温かい身体が与えてくれる活力のせいで、日が変わる夜更けまで試合もやっていいぐらいにみなぎっていた。
「あのう、それでは試験として、いささか腑抜けておりゃぬでごじゃらぬか?」
「きみが想像以上の難敵だってことで、試合前に入念なウォームアップがしたいんだってよ! ほらほら、さっさと下に降りて、本日最後の3人目のやつと戦ってくれよ!」
本日最後とは非常に残念なことであった。しかし腑抜けてぐだってしまっている『ゆうしゃ』達が、やっとやる気を出してくれたことに感謝もした。イズヴァルトはヴァネロペが持ってきてくれたおしぼりで、女軍師の股をぬぐってやると、離れがたいその女の額にキスをした。
「すぐに終わらせてくるでござる。そうしたら、また、今の続きをするでござるよ?」
「ゲームのですかね?」
「こらっ。わかっているでござろうに!」
とぼけるローラの額を、指先でちょんと押すと、オクタヴィアに寄りかかってうとうととしているヘラの元に行った。
「そういうわけで、『獄炎の凱歌』を貸すでござる」
「むにゃ……ちょっとだけならいいよ……」
イズヴァルトはヘラの足元に転がっていた剣を手に取った。鞘から抜くと、遺跡から出土した古代の剣のような、不格好な炎の剣の縁から炎があがるのを見てもう一度鞘に収めた。ミスリルの剣はオクタヴィアに渡した。
「本気の本気で、やるっていうわけずらな?」
「さよう。持てる技をすべて用い、全力で戦う試合を致すでござるよ」
「……ローラさんとおまんこすると、一段といい男になるずらな、イズヴァルトさんは?」
イズヴァルトは微笑んでみせた。観客席から飛び降り、試合場に降り立つ。相手は2メートルほどある大剣を持つ、筋骨隆々とした若い『ゆうしゃ』であった。
さて、イズヴァルトは次の3戦目ではいかにして戦うのか?
その続きについてはまた、次回にて。
第四十九回
獄炎の凱歌は、使用禁止。
第三戦目でのあの炎の剣の威力にどよめいた『ゆうしゃ』達と、その後2時間も話し合いをさせられたツダサンチョーは、翌日の朝にそう言い渡した。
イズヴァルトは受け入れられなかった。あの『ゆうしゃ』が持っていた槍は『紫電砲』の様な電撃を10秒に1回の間隔で放てるとんでもない代物だった。あれなら確かに、異界の魔王とやらも倒せたはずだ。
「異議あり! で、ござる!」
「認めないよ? あいつらが土下座してまで頼んできたからね」
曰く、あんな殺意満々な魔剣があるとは知らなかった。あれを使わせるのはやめさせてくれ。
「……ということを延々と言い出すんだよ、あいつら。しまいにゃ、きみは魔法禁止にしろ、などとほざく始末でさ」
「なんと惰弱な……」
電撃を繰り出す相手に対抗しようと、イズヴァルトはあの剣の秘めた力のほんのちょっと、長さ30メートルほどの炎の刃を出して動揺させた後、側面で衝撃とけたたましい音を鳴らす魔法で脅かした。
相手が驚いて電撃の魔法を使わなくなると、そのまま間合いを詰めて飛びかかり、相手から槍を奪って喉元に突きつけた。
【ギルバート=カツランダルク注:その時に使ったイズヴァルトの魔法は、術式がきわめて特殊な魔法だったという。使った時、頭に輪のようなものが浮かんでいた。パラッツォ教団でも一部の者が用いたと言い伝えられる、『神聖術式』の特徴に近い。】
「異界とはいえ、その世界を救った『ゆうしゃ』どのらなら、どんなしょぼくれた戦いでも必勝を心がける武人としての意気込みと、どんな苦境や不意打ちにも耐える、不屈の闘志をお持ちでござろうに?」
「ポコリーヌくんが言ってたよね? へなへなになっちゃったんだよあいつら。あと、みんなキミと同い年だったりもっと若いのばっかりだからね。遊びたい盛りなのだよ」
ということで『覇王の剣』は使用禁止に。その代わりに相手にも得物を禁止にした。明日からは刃と切っ先をなまくらにした練習用の武器のみを使う。
「それなら同意いたす。それならばどちらも魔法無しでもお受け致すでござるよ?」
「あんまり、こてんぱんにやっつないでくれたまえよ? あいつら、プライドってもんがとても高いから、やられると本当に元気が亡くなっちゃうんだ。サキュバスの体液で強くしたちんちんまで、しょんぼりのまんまになるからね」
そうなると彼らの恋人や愛人達が文句を言い出してくる。それを聞いてイズヴァルトは震えてしまった。食いしん坊がメシのことで怒るぐらいに、すけべ女のおちんちんに対する怒りは、なかなかに収まらないものだからだ。
「……用心いたすでござるよ」
「そうそう。ほどほどにね。あ、一次試験みたく不完全燃焼でぶう垂れることはさせないから。この試験の最後に特別ゲストたちと戦ってもらうからね、全力で」
これまで以上に手強い相手と、力の限りを尽くした戦い。イズヴァルトは闘志が湧くと同時に激しく勃起した。性欲の底が無いローラのおまんことの千日戦争だけでなく、心が躍る戦いができるとは。武人冥利に尽きるというものである。
□ □ □ □ □
翌日の試合は中止となった。その日の早朝、ヘラに陣痛が起こったからだ。予定日よりいささか遅い出産となった。
出産の場所は泊まっていた宿の風呂場となった。スオニアの医者たちが提唱した、お風呂に浸かっての水中分娩である。すんなりと産みやすいと、かの国ではよく用いられた。
「うーん! うーん!」
うめくヘラは医者達の手で素っ裸にされた後、肛門に何かを差し込まれた。
「あふ! おしりに何挿れてんの?」
「下剤と分娩促進薬を兼ねたものです」
ゴブリンの薬師が作った出産用薬だ。骨盤が狭くて出産が難しい10歳ぐらいの少女でも、10人ぐらい産んだことがある40手前ぐらいの安産型尻の中年女みたいな出産ができるという優れものである。
【ギルバート=カツランダルク注:イズヴァルトの時代では貴族のみが使用していたが、現在では各国で、下層民にいたるまで使用が義務付けられている。特に幼い妊婦が多い国は、これで産褥死する女子がぐっと減った。】
「あと、膣の中に陣痛を促進して膣を広げる薬を塗りつけますから」
うんこを出さないと出産の時に必ず漏らしてしまう。オクタヴィアとともに側で励ましていたローラがうなずいた。
「私も出しちゃいましたからね。そりゃあもう、ぶりぶり、ぶりぶりと。すごいひねりましたよ」
「そ、そうなんだ……」
先に大便をしないと、生まれた赤ちゃんにお母さんのうんちがついてしまうことがある。ローラは子どもの出産で我が子をくさいものまみれにしてしまったと言った。
ヘラはオクタヴィアに介添をされて桶の上でしゃがむと、そのすぐ後にしぶきをあげながら大量の糞尿を垂れ落とした。湯をかけて清めると今度は股に薬を塗られた。
「あふう……」
思わず声が出てしまった。だがその気持ちよさはすぐに激しくなった陣痛と何かが降りてくる感覚に阻害された。膣口から羊水が流れ出すと、スオニアの助産師達は効くのがはやすぎる、とわめきながらヘラを湯の中に入れた。
「んん〜ん!」
湯の中でヘラの陰裂は大きく広がった。助産師達はこういう時の正しい呼吸法を呼びかけたが、彼女はおかまいなしだった。強靭なゴール族の肉体は彼女に安産をもたらしてくれた。いきってポン、のあまりにもあっけない分娩。そして、元気いっぱいな赤ん坊の泣き声が浴室内で響いた。
「おめでとうございます! おっきなきんたまがついた赤ちゃんですよ!」
助産師が湯の中で身体を拭ってやった男児を、ヘラに抱えさせた。その赤ん坊は乳首のあたりを中心に張っていたヘラの左乳に吸い付いた。この幼い娘は母乳を作り出すことができた。
「ナンブロシアの公子さまと、あたしとのあかちゃん……」
ヘラは涙をこぼして我が子を抱きしめた。皆とともにもらい泣きしたローラが呼びかけた。
「たいへん
「そうだね! 公子さまに手紙をおくってよ!」
「もちろんですとも! これで未来のナンブロシアの大公夫人の座は、約束されたものにございましょうな!」
「やだもん! どうせなら公子さまをカナザワースに連れ込みたい! あたし、未来の教主になるんだもん! 公子さまはヒモにしてあたしが養ってあげるんだから!」
ナンブロシアから文句を言われても公子を手元に置き、教主の座は絶対についでやる。それと。大魔道士の末裔でもあるゴールの娘は同席してはらはらとした様子で見守っていたイズヴァルトに呼びかけた。
「次はあなたの番だからね! 司祭騎士団長さん!」
次子の父親のことである。イズヴァルトは困り果てた顔で問いかけた。
「しばらく、そのあかちゃんをたっぷりと甘やかしてからが良いでござるよ? 3年ぐらい」
「やだ! 来年生むもん! パラッツォ教はたくさんまぐわって産めよ増やせよとおしえているんだよ!」
ヘラは赤ん坊に乳を与えながら、自分の手でクリトリスをいじって高ぶった。彼女は我が子が割礼を受けたのを見届けると、医療魔法を施してもらった。
その晩は、イズヴァルトのちんぽに食いついた。次の子を早く宿したかったからである。赤ん坊を産んだばかりの膣はかなりほぐれていて、その巨根とちょうどよい大きさに広がっていたから、朝までたのしめた。
□ □ □ □ □
ヘラに金玉の中身がすっからかんになりそうなぐらいに搾り取られてもなお、イズヴァルトはその日の試合に臨んだ。2日間鍛え直した相手らは、初日の者たちよりも幾分が動きが鋭く、手強くなった。
しかしあらゆるところで規格外の、この武人を誰も倒すことがデキなかった。10合ほどやりあって負けを認めた相手は、観客席に戻りヘラが産んだ赤ん坊を抱いて可愛がる司祭騎士団長を見て、全くやってられぬと呟いた。
「ああくそ! 呑気に赤ん坊を見学させてんじゃねえよ!」
試合とは言え、戦いである。もっと神聖であるべきそこに、無垢で愛らしい存在を連れて来るな。そう思いながらほかの『ゆうしゃ』やその愛人たちとともにヘラが産んだ赤ん坊を見に行った。彼もまた父親だった。元の世界の女や魔族との間に、200人近くの子を為していた。だから他人の赤ん坊でも気になった。ほかの『ゆうしゃ』たちもである。
赤ん坊の顔を見ようと寄って来た『ゆうしゃ』たちは、イズヴァルトとローラから説明を受けた。
「この子が産んだ赤ちゃんでござるよ」
まだ11ぐらいのヘラが産んだことに、皆が驚いた。よく見ていなかったが金髪で美しくも可愛らしい少女である。こんなお菓子ばかり食べたがる年齢の娘が赤ん坊をと声をあげ、この世界のニンゲンはなかなかに頑強であるのだなと驚いた。
「ゴール族という、みなさんの世界では『ぐーる』とかいう鬼族のちが流れているそうですからね。まあでもとても元気いっぱいで可愛らしいお嬢さんですから、あかちゃんもすんなりと出てきましたね」
「ほお。『ぐーる』でしたか……こっちでは『ごーる』というのか」
人食い鬼、と呼ばれるのは大抵、皮膚がただれていたり色が灰色だったりする気色の悪い衛生害獣みたいなものだが、こちらの世界ではまったく違う。ニンゲンと同じ形をしている。
「やだなあ♥ あたしたちゴールって、エルフさんやゴブリンどもと同じく、亜人の一種なんだよ♥」
ヘラは笑った。首を傾げたり身を捻ったりしてしなを付け、いささか媚びていたが、『ゆうしゃ』たちは大変に可愛らしいと思った。そのうち何人かが彼女に淫欲をもたげてしまうと、その気配を察した連れの女に頭や股間を引っ叩かれた。
とはいえヘラは子どもといえども十分に、男の独占欲や生殖欲をくすぐる顔貌だった。大人しくローブをまとっていたが袖から見えた腕や首筋からは、男をむらむらとさせる女の子のにおいを放っていた。小悪魔のようなところがある。
『ゆうしゃ』たちの一部はもっと彼女に近づいて、あれこれと質問をしだした。小さい子には興味が無い男たちは、ローラやオクタヴィアにたかって「やだねえ」と苦笑して、彼女たちの気を引こうと躍起になった。
「こほん」
ツダサンチョーが咳払いを。まだ二試合残っていた。イズヴァルトは次の相手とあい向かった。手甲を身に着けた拳術使い。肩幅はドワーフの戦士ぐらい広く、とても太い腕をしていた。硬い岩盤を貫く鉄拳の持ち主。
ついでに股間のものは鉄よりも硬く、子どもの腕ぐらいに太い。これで252人の女の貞操と理性を破壊し、同じ数の子の父親となっていた。
ごつい顎をしゃくりながら、男はイズヴァルトに笑みを向けた。
「……言っておくが、おれはそんじょそこらの拳術士とは違うぞ?」
「『ゆうしゃ』でござったら、そんじょそこらとは思えないでござるよ……」
「いい心がけだぜ。ナメて気を抜くなよ、段平使い」
互いに10歩離れた後、戦いが始まった。相手が飛び出した。またたく間にぐっと距離を縮め、懐に入り込んできた。顎めがけて拳が飛んで来た。
イズヴァルトは鉄の剣を両手に掴み、最初の一撃を防ぐと思いきや、身を避けて拳をかわした。剣はいつの間にか飛んできた回し蹴りを防ぐために使った。
「……ぐっ!」
強い衝撃がかかった。受け止めきれずに転がって立ち上がる。相手の連打が始まった。気を抜くと追えない速さだ。イズヴァルトはそのことごとくをかわす。相手はなおも動くが避け続けて攻撃を仕掛けなかった。
「おい、どうした!」
拳闘士が挑発した。けれどもイズヴァルトは返事を発しなかった。相手の蹴りに注意しながら拳をかわす。風を切る音が凄まじかった。直撃すれば空高く跳ね上げられるだろう。
「剣士のくせに受け止められんのか! 臆病者だな、お前!」
相手はもっと罵声を浴びせた。イズヴァルトは黙ったまま。しかし攻撃はことごとく避けている。そうした2人の舞いが5分続いた。それからだった。
「……!!」
右側からの一撃が頬をかすめた時、イズヴァルトは身体を丸めて地面に倒れ込んだ。身を守るためだった。その拳と腕の周囲で、凄まじい闘気の塊が空気を虐め、激しい風鳴りを起こしていた。
「見切るとはな! だが!」
拳闘士は大声を発した。地鳴りと言わんばかりのそれが起こるとイズヴァルトは壁まで弾き飛ばされた。痛みをこらえながら起き上がると、拳闘士が空高く跳躍し、自分めがけて蹴りを食らわせようとしているのを目にした。
「この蹴りでトドメだあッ!」
イズヴァルトは察した。足に大きな闘気が込められていると見た。あれがこの拳術士の必殺技。イズヴァルトは動いた。持っていた剣を相手の伸ばしていた右足に投げつけた。
「無駄なことだ!」
が、剣がぶつかった途端、拳術士はまずいと思った。その剣から風魔法と思われる強烈な向かい風が、反発する大きな力場となったのだ。
「魔法戦士だったことをすっかり忘れていたぜ!」
しかしそれは言い訳だった。まさかここまで強い魔法を使えるとは。仕損じた。そう思った時にはイズヴァルトに身体を抱えられて地面に叩きつけられていた。足を絡まれて身動きが取れなくなってしまった。
捉えられてもなお、拳で殴りイズヴァルトを痛めつけたが、この司祭騎士団長の拳は負けず劣らずのものだった。両頬に数回食らったところで意識がふらつき出した。
「そこまで!」
ツダサンチョーの声とともに、イズヴァルトの拳が止まった。それから彼は自分と拳術士に治癒魔法をかけると、まだ引かぬ痛みに声を漏らしながらもこう言った。
「やはり、間合いを詰められると難しいものでござるよ……」
「身のこなしを見ていると、短刀も扱えるみたいだな。あと、格闘術はどこで学んだ?」
「拙者の故郷、ホーデンエーネンの聖騎士団での鍛錬と、ちょっとだけ、ナハリジャーヤ=エルフの術を学んだでござる」
「ああくそ。元の世界に戻ったら学び直しだな。まあ、技量は良いが才能はあんまりって感じだぜ。やはり段平使いだ。拳と蹴りには向かねえよ」
イズヴァルトは口についた血を手の甲でぬぐい、恥ずかしそうに笑った。久方ぶりの苦戦に満足した。ここで負けても仕方がない、という難敵であったが、どうにか倒すことができた。
「さて……本日最後の試合でござるが。相手はどなたかな?」
練習用の剣を握りしめて呼びかけると、ツダサンチョーからまたもや「待った!」と声がかかった。
「おろろろ……またも待ち、でござるか?」
「ちょっとやり方を変えたいんでね! 一番強いのを呼んで来るから!」
一番強いのを。どういうことか。観戦していた『ゆうしゃ』たちを見ると、やはり戦意が削げ落ちたような顔になっていた。それを見てイズヴァルトは合点した。
「今度のは本当に手強いから心してくれよ! さすがのキミも勝てないだろう。本当の本当だよ!」
気が早い気もするが、それを倒したら二次試験合格だと魔界のハーフリングは言った。
さて、イズヴァルトに姿を現す最強の『ゆうしゃ』とは一体、何者だったのか?
その続きについてはまた、次回にて。