聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
母を失った悲しみと不安もあったが、サマリーノはコーザをひどく頼りにしていた。教主にはひと目見てそう思わせる魅力、一種のカリスマともいえるそれが備わっていたから、仕方の無いことでもあった。
スオニア流のマハラ教の祭儀について、コーザは詳しかった。葬儀までの一週間、死人の祭りに関して全く存ぜぬサマリーノに、彼は館の執事らと一緒に手取り足取り彼女にアドバイスした。
「どうして遺体をすぐに火葬しないのでしょう? 腐敗してしまうじゃありませんか?」
「スオニアのマハラ教徒の伝説に、死後1週間して目覚めた領主の話があるからです。亡くなられても仮死状態、つまりは再び息を吹き返す場合もあります。また、マハーヴァラ様は死者の次の生を決めるのに、1週間をかけるという言い伝えもあるのですよ」
「祭壇に花束を投げ入れるのは?」
「次の生の前に花の蜜を吸って力を蓄えていただく、という意味合いがあります。特にスオニアははちみつの名産地ですからね。オーシラ教には紙銭。メシェイド教のひとつまみの砂糖や塩を死者にたむけるのは、転生の準備をする者のはなむけでもあるのです。それと同じことですよ」
スオニア式の跪拝のやり方や、鎮魂の歌にもそれぞれに意味があるとコーザは語った。横で聞いていたマグリビーは面白くない、という表情だった。間違いが無かったからだ。デュシャン僧正の話を、1から10まで覚えている。コーザの120年前の記憶は鮮明だった。パラッツォ教の教主なのもよくわかる。そこが癪に触るのだ。
「儀式の作法と流れはそれぞれに、いにしえの言い伝えがあるということを覚えておいてください。そうすれば理解も早いですし深まります」
「はい、わかりました」
「それから、この儀礼はあくまで富を持つ者の作法。貧しい者のものはもっと簡潔です。くれぐれも、やり方が違うからと言ってたしなめないようにしてください。故人を偲び、次の生を良く過ごしてもらいたいという祈りが、葬式の本質なのですから」
コーザがそんなことを言ったのは、スオニアでは一般市民が金のかかる葬儀で身を滅ぼす事例がよくあると知っていたからだ。貧しい家では葬儀の前に、娘を遊郭に売ることがあるほどだ。彼が修行していた頃からそうだった。これにはマグリビーが口をはさんだ。
「その話は余計だ。貴様はサマリーノ様に儀式だけについて教えればいい。スオニアのことに口を挟むな」
コーザは微笑んだまま答えなかった。下々の者までもそうした『厚い』葬儀を為すのを喜ぶ組織があった。それがマグリビーのいる、マハラ教団だった。
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葬儀まであと3日となった日の晩である。キャルベロナの遺体に追加の防腐加工を行っていたコーザは、サマリーノの侍女に呼び出された。
「お屋形様がお呼びでございます……」
「こんな夜分にですか? この仕事が終わったら私は寝ようかと考えておりましたが」
「お屋形様がお呼びなのです、コーザ様。この屋敷の中ではお屋形様は絶対、でございますよ」
話を通そうとする。仕方が無い。コーザは受ける事にした。入ったのはサマリーノの寝所であった。調度品が多い。宝石を散りばめたアプサラーの女神の彫像や、幼い頃の当主の自画像など。書物はどこにも見当たらなかった。キャルベロナの部屋には低くとも本棚はあったのだが。
サマリーノは寝台に腰掛けていた。浅黄色の絹のドレスをまとっていた。南サイゴークの若い貴族の娘が寝室用の服に使う、肌がすこし透けて見える涼し気なものだ。ただし、大抵は胸や腰を覆う色の濃い布を服の上か下に巻くのだが、彼女はそうしていなかった。大きな乳房に乗っている黒っぽい乳首が見えてしまっていた。
「お屋形様、夜分に何用でしょうか」
「ほんの1時間でいいから、私の話を聞いて欲しいの」
甘えがかった声だった。わかりました、と答えてコーザはベッドの真向いに置かれた椅子の上に座った。サマリーノの瞳は潤んでいた。脚を広げ、うっすらと股間に茂るものの色を露わにして、コーザの股間をちらと見た。それから彼女は侍女を引き下がらせた。
「お話とは、いかなることをでしょう?」
「夫の話よ。葬儀の日には戻ってくるようにお願いしたけど、返事が来ない……」
通信魔道士を介してのやり取りだ。 キッカワンテスから王都のハーギは馬車でおよそ2日という距離だが、この方法を使えば、ほぼリアルタイムでやりとりができる。いくら呼びかけてもハーギ側の通信魔道士からは、本人様に確認してみます、というはぐらかすような返事しか無いのだ。
「こちらに戻って来る準備をなされていると思われますが、一言ぐらいお返事しても構わないと思えますが……」
「……実は私、夫に嫌われているの。お腹の赤ちゃんを授かる前から」
突然の告白である。サマリーノは夫のことを語り始めた。スオニア王の弟である彼は、サマリーノの25歳も年上だ。夫は再婚だった。16の時に結婚をしたが死に別れた。サマリーノが12歳の時にこの家に来た。最初は優しかったが段々と冷淡になったという。
「それは仕方が無いかもしれません。なにせ親子ほど歳が離れているものですから」
「違うわ。嫉妬したのよ。キッカワンテスの女当主やその姫が、寝所に常に『竿男』をくわえるのをわかってなかったの」
『竿男』とは、精巣を取り払った一種の宦官である。召使いでもあり愛人だ。巨根で絶倫が多いチンゼーの男が選ばれることが多かった。条件があって妻子持ちでありこれ以上の子を望まぬ者だけがなれる。キャルベロナやサマリーノは、それぞれ6人の『竿男』を抱えていた。母子ともちんちんに対する好奇心がわきはじめた6歳の頃より、こうした男達と膣を用いた楽しみを繰り返していた。
「夫のものは小さいの。だから私の『竿男』たちにひがみを覚えた……おっきなちんぽを小さい頃から知っている私を恨んでいるのよ」
それから、セーニャ叔母が忘れられないのだと彼女は言った。サマリーノの夫は若い頃、マハラの総本山に通い詰めていた。目的は巫女のセシリア=セーニャの『祝福』だ。キッカワンテス一族の本当に良い遺伝をあらかた取り込んだ彼女は、性的な行為も天性の才があった。
サマリーノの夫は13にもならぬセシリアに夢中になった。歳が近かったから恋してしまったのかもしれない。整った容貌、柔和な性格なのに性交では激しく乱れる二面性。少女のものでも一番上質な肌と中の具合にのめり込み、王族の特権を用いて優先的に抱き続けた。勉強も鍛錬もすっぽかしてマハラの門前町に半年も宿を借りたという。果たしてセシリアは懐胎した。イズヴァルトの前に産んだ3人の私生児のうち1人は、この男の子供だった。
「……コーザ様には話すけど、これは人に言わない欲しいの」
サマリーノは苦み走った顔になった。忌まわしい言わんばかりに叫んだ。
「セシリア叔母様との間の娘を、夫は探し出して『養女』にしていたのよ! 私と結婚するずっと前から!」
要するに我が子でありイズヴァルトの『姉』を、サマリーノの夫は育てていたわけだ。セシリアがスオニアを去ってすぐに引き取った。母譲りの美人に育ちそうな、黒髪の女の子だったからだ。彼は実の娘だけでな本山に『巫女』にさせるために育てられていたセシリアのもう2人の娘も引き取った。
その娘らは『養女』というかたちで引き受けたが、大事に育てられた。3人ともチンゼー大陸北部にあるチクゼニアやオグラーヤの貴族に嫁いだ。スオニア王家係累の姫、としてだ。傍流や国王の身分の低い妾が産んだ子は、国交の為、諸外国に嫁がされるのが伝統だった。
「あんまりよ……あんまりよ! 人としての愛を全部その娘達に与えて、私には愛情を注いでくれないのよ、あの人は!」
王や王家の男が、娼婦やマハラの巫女が産んだ我が子を引き取って姫にするというのは、あまりないことだった。身分が著しく違う女が産んだ子は実子と認定しないのが常だった。つまり、サマリーノの夫は異端なことをやってのけたのだ。それが愛情によるものだったとは想像できるものである。
「まあ、声を荒げずに、お屋形様。背の君はハーギの都に離れられなくなったのかもしれません。なんだかんだで故郷はいいものですからね」
「そうでしょうけど、でも……」
サマリーノは大きく膨らんだ自分の腹をさすった。産まれて来るこの子を忘れて都から戻ってこないなんて信じられない。夫は妊婦となった妻につきっきりになるべきだ。そう思いながら彼女はさすり続ける。コーザは床をじっと見続ける目によくないものを感じ取っていた。
(僻みが強くて、嫉妬深いようですね。この方は。)
コーザは彼女に尋ねずとも心を読むことができた。もっと探るには近づいて身体に触れるほうがいい。よろしいでしょうか、と言って彼女の横に腰かける。サマリーノから身体を預けて来た。念じると彼女は目を閉じて眠った。抱きしめながら探り始めた。
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サマリーノの叔母、セシリア=セーニャが産みキッカワンテス当主の夫の『養女』となった3人についてを、コーザは眠っている彼女の記憶から確かめた。
全員が随分と評判が良い嫁になっている。謙虚で質素につとめているからだ。美人なのは言うまでもないが、かなりの性交好きで多産でもある。子だくさんを尊ぶチンゼーの貴族はこの手の女性が大好きだ。
サマリーノの夫の実の子は30歳になるが、もう8人の子を産んだ。なのに見てくれ乙女みたいに見えるという。魔法もある程度知っているそうだ。ただ、サマリーノそれが何よりも忌まわしかった。
何故、キッカワンテスの『捨て子』が産んだ娘を王家の姫にして育てたのか。叔母はこの家の『恥』だったから、マハラの御山に預けられて巫女となったはずだ。つまりは、穢れた身体で世に産まれた。そのはずなのに。
それと魔法の才である。エルフを片方の祖とするなら、当然キッカワンテスの一族は魔法も得意のはずだ。なのに、サマリーノはほんのちょっとしか使えなかった。扱えるのは犬をにゃーと啼かせる魔法とか涼しい風邪を1分だけ起こす魔法、みたいな手品レベルのものぐらいだ。キャルベロナもその程度だった。
あまり知られていないが、イズヴァルトの母は領内の魔道装置に魔力を充填する仕事を担っていた。イーガの中級魔道士ぐらいの魔力があるのだ。覚えている魔法は少なかったが、総量というのがかなりあったのだ。
(叔母なんか大嫌いだ。)
毎日神に祈りを捧げたり、信者達に身体を開くことでその穢れを清める一生を送るべきだったのに。サマリーノはそう思っていた。なのに産んだ子供らはスオニア王家の姫になったり、世界に名が知られている勇者となったりしている。
『出来損ない』が産んだ子らが、自分よりも名が知られて妬ましいのだ。劣等感を自分に植え付けていたのだ。キッカワンテスの当主になったからといって、それがすぐに解消するとは限らない。
(そうでしたか。それもある意味では、悲しいことですね。でも、その気持ちはいずれ薄らぐと思いますよ。)
教え導く必要は無いと思った。サマリーノがそれで狂ったりしないだろうと見たからだ。ただ、記憶を探っている内に彼女のもう1つの本心を知ってしまった。それだけはこれから叶えてあげることにしよう。コーザはサマリーノを目覚めさせた。
「あれ、コーザさま?」
「お目覚めですか、お屋形様?」
目を見開いた彼女は身体を預けたまま、コーザの腿をさすった。
「お屋形様は、嫌。サマリーノと呼んで?」
「そうですか。では、サマリーノ。貴方が今、欲しているものはなんでしょう?」
「……これで、忘れたいの」
サマリーノはコーザの下腹にあるものを掴んだ。『聖根』は衣の上からでも輪郭を見せるぐらい大きかった。握り、その大きさを確かめて彼女はとろんとした目になった。
「では、そう致しましょう」
コーザは起き上がり、衣を脱ぎ捨てた。筋肉質の裸身についていた雄大なそれはぶらさがっていたがすぐに上を向きだした。見事に過ぎるたくましい美品を見てサマリーノは思わずそれを手に取り、口元に近づけた。接吻をし舌で磨き始めて情をねだった。
「コーザさま、これを私にください。これで忘れさせてくださいませんか、夫のことを?」
「忘れさせることは難しいですが、今のお気持ちを和らげることはできるでしょう」
口戯はそこまでにさせた。コーザはサマリーノをベッドに寝かせた。彼女の服の裾をあげ、脚を開かせると銀色の草原が丘を覆っているのが見えた。その中央には蜜をしたたらせる泉があった。彼は腰を落とし、『聖根』の先をゆっくりとあてがった。
「はやく、はやく……」
「お腹の赤ちゃんに、差し障りが無いように致しますよ?」
「ありがとう……うぐっ……!」
幼い頃から巨根の『竿男』達を咥え込んできた彼女のそこは、コーザの大きすぎるものを押し返す事なく受け入れた。それでいて中は絡みこんで来る。そしてとても熱くて潤っていた。
コーザはゆっくりと奥まで進み、行き止まりに行くと軽く押し込んだ。それをやられるだけでサマリーノは喜悦の叫びをあげてしまった。太く大きな『聖根』を受け入れただけでそこから波が生じてのけぞってしまった。
彼女の絶頂を見届けると、今度は素早く腰を引いた。先端は入口近くの窪みがあるところで止めた。サマリーノはまたも叫んだ。『聖根』の恐るべき特質、押したり引いたりするだけで絶頂させる力のせいだ。
「うああっ!」
短い間に2度も絶頂したことにサマリーノは驚くほか無かった。コーザがもう一度奥まで押し込むと頭が真っ白になり考えられなくなった。後は身体から生じる悦びに酔いしれるだけだった。サマリーノは喘ぎ、叫び、悦び続けた。『聖根』がもたらしてくれる生の歓びのダイナミズムに身を委ねた。
「はうっ。あうううっ……」
全身を汗で濡らし、よだれを垂らしてよがり続ける彼女に、教主は呼びかけた。そろそろいつも通りの速さに致しますね。反復の速度が増した。膣全体を強く撫でられてサマリーノは増々悦びに包まれた。痴呆になりそうな数の波が繰り返えされた。
(馬鹿になる。何もかも、忘れてしまいそう……)
その波が一休みする時が訪れた。一番大きいのが来て多幸感のようなものが全身にくる大波の後にだった。『聖液』を放ったコーザは硬くて巨大な『聖根』を奥まで挿れたまま、涙が伝わっていたサマリーノの頬を優しくさすった。
「少しは、気が晴れましたか?」
サマリーノは涙をこぼしながらうなずいた。でも、これからだった。コーザを独占した場合の『法悦』は、一回だけで終わらなかった。彼女はその晩、何度も何度も気を失った。