聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
オルフレッドが討ち取ったのは、ノトゼタシア島を不当に占拠する植民者達のトップだ。この日を境に完全に瓦解した。その後もオルフレッドは転戦したが、戦わずの降伏ばかりが続いた。捕虜の虐殺はしなくなった。
ヒミスヴィークの戦いの後とそれ以後は収容所にしたヒミスヴィークに集めた。何故なら北側で転戦していた枢機卿・クニキダ=テツオから止められたからだ。
「皆殺しとはそういう意味で言ったのではない。皆に奴らを圧倒し、屈服せしめる戦意を抱いてもらう為だったが……」
そういう事だったか。オルフレッドはようやく腑に落ちた。
(枢機卿も案外ヘタレなんだな。でも……。)
ようやく、やりたくないことをしなくて済むようになった。女どころか子供にまで手をかけるなんて。自分にそう言い聞かせた。今でもかよわい娘達や、赤ん坊に手をかけた感触を手は覚えている。嫌悪感が残った。けれどもだ。
(イズヴァルト。僕はお前を超えて見せたぞ。お前がやれないようなことをした。)
取り返しのつかないかたちで、手を血で汚してしまった。後悔とともに自信がみなぎっていた。17歳という若く活力溢れる肉体は、彼を終わりのない衝動に突き動かし、果てしない活力にみなぎらせていた。
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「あの女はまた、オルランドゥの元に呼ばれたのか」
イヴァンが傍に置いていた金髪エルフの女が、今夜もオルランドゥのところに呼ばれた。捕虜仲間の話を聞いて、ベッドの上でイヴァン=ニシメーリンはそうつぶやいた。あの戦いで全身に毒がまわってしまったが、奇蹟的に一命をとりとめたのだ。今はまだ満足に身体を動かせなかったが。
「エフゲニー様に愛されていたというのに。エルフ女はこうも情が薄いのか?」
捕虜仲間はヘラヘラと笑った。愛があって総監としていたわけじゃないさ。むしろやらせてあげていたような感覚だろう。
「総監はちんぽこがでっかかったからな。それだけさ。死んじゃえばどうってことねえ」
「あいつの話によると、オルランドゥは総監のよりもでっかいそうだな。夜明けまでやり続けるらしい。そりゃあ鞍替えするって」
あの女エルフだけではない。オルフレッドは北の戦線から連れて来た女戦士も寝床に呼んだ。屈強な身体を持つ彼女達だったが、オルフレッドの愛撫を受け、極太い大きなペニスに貫かれて子宮を欲しいままにされた。この1か月間、彼に呼ばれた女の半数は孕んだ。パラッツォ教への宗旨替えも求められているという。妾にするためにだ。
「トーリ=カツランダルクの息子だからな、あいつは」
別の誰かが言った。詳しく聞かせろとイヴァンが前のめる。その名前を知っていた。いや、見たこともある。ユーリポフで出回っていた彼女を映して映像水晶でだ。
その映像水晶は、トーリが尻をめくって四つん這いになり、侍女の手でアナルビーズを出し入れされて「んんはっ♡」と悶える姿など、手淫用の動画が詰まっていた。
おっぱいは控えめそうだが、ものすごく美人でちんちんがいらいらしてくる容貌だった。思い切り膣内に放って種付けしたいという狂気にさいなまれながら、ちんちんしこしこを100回もやったのだ。イヴァンは。
「ホーデンエーネンの『女王』、おしゃぶり姫さんの肉親だったのか?」
「知らなかったのか、イヴァン。まあいい。で、オルランドゥの実の母が『どすけべ清楚系』のトーリさんで、親父さんがな……」
あのイズヴァルトさんらしい、と男は答えた。イヴァンは合点がいった。エフゲニーを討ち取る猛者が、そんじょそこらの精子と卵子から育ったものだと思えなかったからだ。ホーデンエーネンの『おしりぺんぺん番長』ならわかる。勝てるはずがない、あのオーガの出来損ないでは。
「ところでイヴァン。こんな話があるんだが……」
捕虜仲間の1人がこう持ち出す。『宗旨替え』へのお誘いがきている。今なら特別待遇で司祭騎士団員になれるそうだ。
「誰からのお誘いだ?」
「枢機卿っていうやつの直属の使いだ。オーガだったな。えらく弱そうだったがみてくれは良かった。亜人や亜人の血が混じっている者なら待遇がもっと良くなるみたいだ。お前、純血のオーガ族だろ?」
かなりの高待遇になるそうだ。しかしイヴァンは首を横に振った。
「なぜだ? お前だったらあのオルランドゥと肩を並べるぐらいには……」
「あんなのと肩を並べたくないからだ。あいつとの戦いで俺の知り合いの妻や子どもらが多く死んだ。
いずれは帰れるだろう。だが宗主国たるクボーニコフは再び戦争を企図するかもしれない。それでも。この島からはさっさと立ち去りたかった。
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クニキダ=テツオは苛立っていた。オルフレッドのことでである。同じ枢機卿のサクラウチ=シロウとツシマ=シュウジが彼をやたらとちやほやするのだ。
今回のノトゼタシア攻めにおける過剰な殺害も、戦術上仕方がなかったことだと論じてきた。その上オルフレッドに好意的な他の枢機卿や、司祭騎士らの主だったものを味方に引き入れ、オルフレッドは『実父に劣らぬ若き英雄』だと、教団内で吹聴している。
(あの男をそこまで教団にとどめ置きたいか?)
クニキダはオルフレッドを憂いていた。教主が我が子のように目をかけ、ついこの間戻ってきたヘラと似たようなものだと思っていた。
(あれは役に立つだろうが狂犬だ。ヘラも。ドミトリー公子との子が駄目だったのは可哀想だったが、どうにも最近は不穏だ。)
何なら司祭騎士団の副団長と相談しようか。あの女はパラッツォ教にとっては信用ならない人物ではあるが、知恵者だ。会おう。カナザワースに飛ぼうと考え、子どもたち数名を引き連れ、ノトゼタシアにある本陣から、あらかじめ作っていた転移ポータルがある砦へ向かった。その道すがらでだ。
「おや、奇遇ですな?」
馬に乗る法衣姿の男。同じ枢機卿のカヅノ=セイジだ。
「君か、セイジ。ノトゼタシアに何の用だ?」
「貴殿への陣中御見舞と、近頃ご活躍なされている、『皆殺しオルランドゥ』とやらのお顔を拝謁したくて入ったのですよ」
互いに笑顔を交わす。ここからは念話術式。秘密の会話だ。クニキダ=テツオから切り出した。
「嘘をつくな。お前の兄なら信じられるが、お前は駄目だ」
「ふん。タカツキ=バンドは疑りやすいのばかりだから仕方がないな。本音で話さにゃならん」
「前世の話は大概にしとけ。裏切り者の代名詞、センダイ=バンドの名はあまり聞きたくないだろう?」
「まあな。前世……通算で400年ぐらい前のことか。
クニキダは目で肯定した。イズヴァルトに就かせるつもりだった『パラッツォ教国』という世俗の王に、オルフレッドを担ぎ上げる。そういう画策を準備している。
「イズヴァルトの代わりか。だったら同じバカでもまだ善良そうな、ヒッジランドのエドワード=ルーカスを担げば良いではないか? あの男のほうが武功をあげているだろうに」
「大事なのはネームバリューだよ。エドワードはあまり知られていない。しかしイズヴァルトはサイゴーク戦線で我々を苦しめた。教主殿には勝てなかったが実力は知れ渡っている。だから世俗の王として担ごうとした」
が、逃げられた。そのことについては、本当の信仰に戻っただけ、と教主が評した。もう諦めたそうだ。今はカントニアあたりをうろついているらしい。あそこはパラッツォ教徒の要職は入り込めない。エルフ達が目を光らせているからだ。彼らはイズヴァルトの味方だ。
「そこで『皆殺しオルランドゥ』というわけだな?」
「まあな。しかし俺は反対だ。あいつは目が血走り過ぎている。鹿角、血なまぐさいこと大好きなお前だったら気にいるだろうが」
「……バカを言え。トーリ=カツランダルクの血筋の者は好かん。いずれ皆殺しにしてやるよ。教主の、俺達にとっての面倒な敵になりうる」
あいつを排除するよい案は無いだろうか。クニキダがぼそりと言う。カヅノ=セイジは笑った。その話を持ちかけにきたんだよ。お前に。
「……話が早い。ホーデンエーネン側の『支援者』と話をしたのか?」
「もちろんだ。そもそもこの『人材派遣』は俺の協力者による提案だ」
ケノービ=ソーローのことだ。カツランダルク本家を敵視する彼こそが宮廷で、オルフレッドのエチウ派遣を強く後押ししていたのだ。
「オルフレッドがイズヴァルトの実子だとわかったからとんでもない待遇でエチウに取り込まれそうだ、と話したらひどく狼狽していたよ。そうなる前に葬れないか、と頼んできやがった」
「……物騒なお友達だな。で、いつ殺る?」
右目をつぶって自分を見るクニキダに近づき、その瞳に映る自分の顔を見つめながら言った。
「それじゃあ面白くねえだろ?」
「……どういうことだ?」
「殺すなんてあんまりだ、ということだ。あのトーリの息子ではあるがな。殺したらサクラウチとツシマが、お前と俺をつきとめに来るだろう。そっちのほうが面倒だ」
オルフレッドは今や教団の関係者で、2人の枢機卿のお気に入りだ。暗殺をすれば捜索は徹底的なものとなるに違いない。
「こういうのは人事を使った組織内政治で遠回りをさせるんだよ。オルフレッド……彼奴を1年ぐらい、別の仕事に就かせるというのはどうだ?」
「でもそれじゃあ、いずれエチウの王かなにかにされるぞ?」
「そりゃあ構わないだろ。大体、お前は俺達の使命を忘れていないか?」
カヅノ=セイジはクニキダの両肩に手を置いた。
「前世から抱く『大いなる志』を成し遂げる為に今を生きているのだ。寄生先の人事などどうでも良い、のが基本だ。俺達の事業を邪魔するような要因を取り除けばそれでいいんだ。それと……」
トーリ=カツランダルクの血脈の廃滅は、今は急がなくてもいいとカヅノは思っていた。あの女の汚れた血をあらかた清めるのは、もっと後でもいいだろう。