聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
船の動力は風と人力だけでなく、風魔法を用いての推進もある。外洋を渡る帆船、特に軍船には必ず魔道士が数名乗っており、船がなかなか進まない場合は風を吹かせるのだ。
しかしそれでも、最速15ノットもいかない。海運国たるクボーニコフやゲースティア、魔法科学技術が著しく発展しているイーガの船のようにはいかなかった。
速く動くように船体構造は改良を重ねて来たが、ホーデンエーネンの船大工がいくら頑張ってもなかなか速く進まなかった。推進させる魔法を扱う魔道士も、そもそもあまり育っていない。いや、国内のできる魔道士は軍には所属せずに民間の海運会社で働いていた。軍隊で働くと死ぬほどこき使われるのを知っていたからだ。
軍に属する魔道士は高給を得るが、その代わりに過労で若くして死ぬ者が多かった。軍に入った魔道士らの間では、嫁に頭を下げてでも浮気をしろ、と言われていた。死ぬ前にたくさん性交を楽しみ、なるべく多くの子供を作れという、男の本能の願望を満たす為にである。魔道士の遺族はだいたい、数が多かった。
「えらくのっそりだが、北の海はこんなもんだったけかぁ……」
大海原を見据えるセイン王がつぶやく。傍にいた海将がうなずいた。
「アヅチハーゲン側とは違って潮が荒いですからね」
「タンゴバルドまでおおよそ1か月、ってところだったか?」
「いいえ、オバーマゲルクにいったん寄港し、それからオーキ島を伝ってヨナゴルグへ向かいます」
そちらの海流のほうが穏やかだからだ。ヨナゴルグから大陸沿岸を伝ってタンゴバルドに行く方が荒波に揉まれにくい。エルフの魔法船やクボーニコフの船だと荒海でも問題ないが、ホーデンエーネンの軍船だとそうはいかない。船の耐久性に問題がある。復原力などに少々難があるのだ。
「ちっ。この船はマイア=テクニカの工房に作らせたんじゃなかったのか?」
「いいえ、12年ほど前の船です」
セイン王が「くそっ!」と叫ぶ。その頃に造られた船と言えばろくなのが無かった。魔竜戦役と負け戦後の相次ぐ反乱の鎮圧で、軍事費がつかなかったのだ。
「それからマイア=テクニカの造船部門は戦艦をつくっておりません。荷船か客船でしたか……いや、小型の軍艦あたりはと記憶しておりましたが」
ところどころ修繕の跡がある甲板を見て、セインはしかめっ面になった。
「こりゃあ、イーガに注文したほうがいいかもな……なに。あっちだと王国造船所になんのか。かなりぼられるぜ……とするとゲースティアかクルシマーヴァラだな。どちらにしろぼったくられるか……」
ホーデンエーネンは近海用の船づくりは盛んだが、外洋を渡る船を造る会社がほとんど無い。それもアヅチハーゲンか自由都市のサカーイに2社あるぐらいだ。
この国は陸軍こそ備えが充実していたが、海軍はそれほどでもなかった。数百年前から。だから、何度も何度も海の外の国との戦争で負けた。
「……まあ、タンゴバルドの海賊どもをとっちめるぐらいには役立つだろうけどよ」
海運国との戦争ではすぐに壊れるだろうが、まともな投石砲を積んでいない海賊船にならば勝てるだろう。セイン王はとりあえず、相手の軍備の弱さを期待した。
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斥候や援護を任された海賊船の中で、モナファン海賊団が擁する3隻が段違いに速かった。西の方角へ行ったり来たりをするがまるで海の上を飛んで走っているようだ。
同じ仕事についた他の海賊船の船長らは、カイルらが指揮する船の動きに感心しきっきりだった。
「やるなァ」
船長は甲板の上に置いた腰掛けに座り、部下と共にモナファンの船の動きを観察していた。その船長だが、下半身を大きな毛布でくるんでいる。寒いのもあったが別の理由があった。
毛布の中に連れて来た愛人を潜り込ませ、ズボンの前の紐を解き、引きずり出したペニスをしゃぶらせていたのだ。海賊船にはそうした女が何人か乗っていた。海賊の偉い地位にいる者であれば、暇な日は一日中自分の女に奉仕させてばかりだ。海賊にお行儀を求めてはいけない。
「モナファンの連中、カイルに魔法を学んでいたか」
「それよりも船長。姐さんの『おしゃぶり』はどんなもんですかい?」
船長は亀頭を包む、生温かい女の粘膜にうっとりとしながら返した。
「最高に決まってんじゃねえか。何をいまさらだ。それより、カイルのやつにうちの連中を教育してもらえんだろうか?」
「モナファンの『ご隠居』はまだ健在。ぼったくってきますぜ? しかも親父さんゆずりのがめついクリスティーナさんが、そう簡単に首を縦に振っちゃくれないでしょうな」
頭領の座こそカイルが継いだが、モナファン海賊団の先代は未だ健在。それと、カイルの妻のクリスティーナはアジール海域の各海賊団のおかしらの妻や女達に影響力を持っている。元はと言えばモナファンこそがアジール水軍衆の本家みたいなものなのだ。ホーデンエーネンに負けていなければ、カイルはアジール国王を名乗っていたはずだ。
しばらくして船長は「うっ……」と呻き、毛布の中にいる愛人の口に精液を放った。女はそいつを余さず飲み込み、しゃぶるのを再開して船長をたじろかせた。
「姐さん、すっごい吸いつきっぷりっすね?」
「ま、まあな。どっちかの祖母か曾祖母にサキュバスがいるそうだぜ。うおおお、たまんねえなあ……」
舌と唇でくすぐられ、放ったばかりの陰茎は力を取り戻した。粘膜により亀頭の真下をしごかれると、射精欲がまたも股間を圧迫して来る。
「ほうう。たまんねえ。お、カイルの船からだ」
船首に立った海賊が、赤と白の旗を持って振り始めた。手旗信号だ。
「おい、望遠鏡で確かめろ」
「はい……異常なしってところですね」
「大体、タンゴバルドの連中はこんなとこにいやしねえっすよ。オーキの海域ですぜ」
オーキ諸島から南東に180キロといったところである。ホーデンエーネンとサイゴークの船が行き交うこの海域は穏やかだった。出航してからまだ一度も、この海域で時化に遭ったことが無い、
「ここでもめ事を起こしたら、パラッツォの海軍が飛んできますぜ?」
そりゃそうか。船長は尿道にまでせりあがった精液を、女の口に放つ準備を整えながら笑った。もしやるなら、タンゴバルド海域に入ってからだろう。
(いいや、連中はもっと北に誘い込むはずだ。今頃タンゴバルド諸島は捨てて、アサークラントやイナーヴァニアの基地に逃げているだろうよ。セイン王様はそっちの情報を知ったら進むはずだ。だが……)
北の海はタンゴバルド海賊団のテリトリーだ。よく荒れ狂っていて、ホーデンエーネンの船大工が造った柔な船では波に苦しめられる。カイルを含めた海賊団は、オバーマゲルクに上陸した時、セイン王にこう進言した。
「タンゴバルド諸島を占領して物資を送り、要塞化しましょう。海の合戦ではどう転ぶかわかりませんが、陸の戦いに持ち込んだら王国軍の勝ちです。あっちに土地勘があるとはいえ、海賊は陸のいくさがあまり得意ではありませんから」
そうすりゃいいのに。船長はそう思いながらペニスに意識を向けた。二度も放ってへなっていたペニスが、女の手でしごかれ出したのだ。そろそろ挿れろという合図だ。毛布の中が大きく動き、船長の腹のあたりに靴下止めのベルトがかかった、白い大きな尻が現れ出た。そこだけ茶色い窄まりが、ひくひくと動いていた。
「ふひひ。好き者め……」
船長はむわっとしたにおいを放つ尻穴を触る。ペニスに当たっていた女の園がぷるぷると震えた。弾力に満ちているそこに無理やり親指をねじり込み、それからもう一つの大きな『指』を、濡れそぼっているそこに突き入れた。
「仕上がってんじゃねえか」
毛布から出てしまった生尻が動き始める。それを見てほくそ笑んでいた部下達に気づいて毛布を引き上げた。顔は冷たい潮風を浴びるが、下半身は生温かく包まれている。その差異による心地よい感覚が、陰茎の血を集めさせた。
「おっ、おうっ……」
肛肉の圧力を指で感じながらの性交に、勢いがつき出したところでだった。別の海賊船からの急報。船団の一番後列の軍船から次々と火があがっている。
「なに! 頓馬な水兵が調理場で起こしたぼやさわぎじゃないのか!」
「違うようです! いきなり船が側舷から燃え上がり、瞬く間に炎が広がったそうです! しかもほんの数秒に4隻も!」
船団の後部に配置された10隻は、もう既に火だるまだという。ホーデンエーネン軍の船団は突如現れた敵に大混乱。全く統制が取れていない状態だそうだ。
船長の下半身が急に力を失った。タンゴバルド海賊団がこの海域に潜んでいた。しかも姿を隠しての奇襲だ。船長はそう考えた。
「他の船の連中に伝えろ! セイン王の言う通り、一旦離脱しろとな!」
「し、しかしそれじゃあ俺たちが加わった意味が無いじゃねえですかい?」
「逃げるんだよ! カイルにも伝えておけ! いや、あいつにはオーキ島に急行させろ! 俺達も後に続く!」
奇襲を受けた時はできるだけ早く恐慌の渦中から離れ、落ち着いたところで反撃に出る。少なくとも海のいくさではそういうセオリーだ。船長は部下に命じて、カイルたちの船に手旗信号を送った。
「……北に向かえ? 全速力で?」
カイルは東側でいくつも立ち上った黒煙に気づき、海賊たちに、風の魔法で急進する命令を与えたばかりだった。あちらの船からの連絡に戸惑う。彼の部下が「そうするべきですよ」と助言した。
「とにかく俺たちじゃどうにもならない異変が起きている、ってわけでしょう」
「王様も言いましたね。戦いは正規軍がやることだって」
「……そうだな。とにかくオーキへ向かうことにしよう。パラッツォ教の水軍に助けを求めよう……全隻、北へ!」
船が北へ舵を切った。帆布に風を送る係の海賊らが印を切り、布が北北東を向いて大きく膨らんだ。
カイルに連絡を送った船長の判断は正しかった。今、ホーデンエーネン海軍に起きている事は、数の少ない海賊船ではどうにもならない事態だったからだ。
北へと向かう船を見て、自分達も後に続くぞと船長は告げた。しかし彼と彼の船は最後まで追いつけなかった。先ほど送った手旗が、カイルに送った最後の信号だった。