聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
ルートヴィッヒ=ベートーベンは、ライナー=イナトミッテンフェルトの側近である。
ライナーはナガオカッツェ家の家老であり、新大公・ヨーシハルトスの実の姉2人を嫁に持つ親族衆でもある。もとは聖騎士団の副騎士団長であり、騎士団史上最も戦術と戦略に長けた人物、と歴史家たちに評された人物でもある。
側近たるルートヴィッヒもまた、元は聖騎士団に所属していた。13歳の時に出陣したヨーシデン地方の反乱を皮切りに、いくつもの内乱に従軍した。そして、聖騎士団内でのイズヴァルトの親友でもあった。
彼は聖騎士団で出世を望んでいた。だが、ライナー補佐のためのナガオカッツェ行きを国王に命じられてからは、鬱屈した気持ちの日々が続ていた。敬愛するライナーの元で働けるのは有難いが、聖騎士団からは離れたくなかった。俺は未来の団長になる男なんだぞ。
その気持ちは年を経るごとにますます強くなっていった。なのだが辞めることはできない。実家は捨て扶持も与えられないような貧乏領主。兄弟たちとの仲は悪い。不満たらたらでも、ナガオカッツェで暮らした方がまだ豊かだ。
それと、彼は3人の子がいた。14の時に一斉に子が生まれた。相手は同じ道場に通っていた女の子たちだった。彼女達とは離縁しているが、子供達への仕送りの為に稼がねばならなかった。大抵は彼女らの無駄遣いに消えていたが。でも、金を出さねば男が廃る。
その様な重りと鬱屈の日々の中、彼はもっとどんよりとさせられることとなった。ナガオカッツェの現大公の実弟、ヨーシアキレウスのナントブルグ入りの護衛である。彼は護衛隊長として、常に彼の傍につきっきりだった。
(ああ、虫が好かねえ……。)
馬車にあい向かう大公の弟を見て、そう思った。ヨーシアキレウスはえらく陰気な顔立ちをしている。しかもろくにしゃべらない。大抵は本を読むか、その隣にいる褐色肌で黒髪の小さな娘に、一言二言呼びかけるだけである。
娘の耳は尖っていた。ニンゲンではなくハーフリングだ。ナバイダという。シマナミスタンから来て、ヨーシアキレウスの側近となっていたが、夜の相手も務めていた。ヨーシアキレウスお気に入りの愛人でもあった。
「……ベートーベン。1つ聞いていいか?」
珍しくヨーシアキレウスが尋ねて来た。なんでございましょう、殿下。若い王族はナバイダが寄越した飴玉を口の中で転がしながら言った。
「陛下のタンゴバルド攻めは、目的を果たせるのだろうか?」
「わかりませんな。私は陸の武者でございますから、海のことはてんでわかりません」
「そうか。わかった」
それ以上、ヨーシアキレウスは何も言わずに閉じていた本を開いた。万事がこの調子である。自分も本か『げーむうぉっち』を持って来ればよかったと悔やんだ。
(まったく……付き合いにくい。)
この若様とはずっと仲良くなれない気がする。とにかくしゃべらないのだ、この人は。
なのに夜は、やかましいことこの上無かった。ベートーベンと彼と尻穴で通じていた部下は、夜中に何度も起こされた。ナバイダの声でだ。
「うわああああ♡ 若様♡ 若様♡ そんなに舐め続けられたら干上がっちゃいます♡」
(またはじまったか!)
ヨーシアキレウスのセックスは、とてもねちっこくて粘り強かった。連射ができない体質だが、発射の後にひと眠りすれば再開し、終わったらまた休んでしばらく経ったらもう一戦目に取り掛かる。しかも前戯……クンニリングスやアニリングスにかける時間が長かった。挿れるよりも舐めるのが好きな男だから、ナバイダはすっかりハマってしまった。
「おねがいだからああああっ♡ さっさと挿れて放って寝かせてくださあああいっ♡」
(俺がお前に言いたいよ!)
まあでもナバイダにのめり込む気持ちはベートーベンにわかった。11歳の小娘みたいな容貌で肌は黒かったが、美人で可愛らしい。それに、彼女と寝たという男はみんな、締りの良さとベッドでの愛くるしさを褒めていた。
ベートーベンも一度寝たことがあるから、ナバイダの膣の構造についてよくわかっていた。一晩に何回もしたくなる女だ。とはいえそれから音沙汰がないのは彼女が見切りをつけたのではなく、ベートーベンが男色を好んだからだ。
そうやって毎晩、ヨーシアキレウスにしつこく愛撫されるナバイダの声によって何度も起こされた。睡眠不足のせいか、ヨーシアキレウスに対する気持ちはますます悪しくなっていった。仕事も嫌になった。
隙をみてとんずらをして、イズヴァルトがいるエチウにでも逃げようかと考えるぐらいにだ。
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(やった……ナントブルグだ。)
出発から20日。ベートーベンは王都の東門を前に感極まっていた。これでようやく若様のお守りから離れられる。2~3日の間だけだが、自由行動が許されていたのだ。
彼はするべきことではなく、したいことばかりを考えていた、まずは色街の立ちんぼサキュバスを見つけよう。男色家であるがサキュバスや娼婦は別だった。あと腐れが無いからだ。
それはともかく城壁である。ナガオカッツェの公都のものより倍近く高い。国王一家と貧乏王族の差をまざまざと見せつけられているようだ。
「いやあ、ナントブルグはいいものですねえ……何もかもが立派だ」
「……そうだな」
ヨーシアキレウスがうなずくのに、ベートーベンは目を疑ってしまった。街に入ると公弟は顔をしかめた。
「どんよりとしている。街にいつもの活気が無い」
「はい? いつもと変わらないようですが?」
「……気のせいか。でもなんとなくなのだが、そう感じるのだ」
王宮に入るとヨーシアキレウスは眉間に皺を寄せた。まるで覇気を感じられない。よくわからないとベートーベンは思った。自分が特別な存在だと思い込んだ若い者によくある、人とは違っている感を演出しているだけなのだろうか?
「例え陛下が不在でも、トーリ様やマイヤ様がいらっしゃった頃は輝き続けていたが」
「何のことでしょうかね?」
「気にしなくてもよい。ただの戯言だと思ってくれればよい。だが、ライナーやイズヴァルトならわかってくれただろうな。君には期待していない」
その2人よりも格下なのは認めざるを得ないが、何て言い方をするのだこいつは。それに、ものがわからぬ方ではない。ベートーベンは公弟にそう言い返してやりたかった。聖騎士団の団長になるという野望は、まだ捨て去っていないのだ。
□ □ □ □ □
ヨーシアキレウスは城の会議の間で2ヶ月ぶりに再会した長兄から、ローザ王女とジョーケイン王子に会うのは会食を兼ねて昼頃になると言われた。それまでは兄の執務室で身の上話だ。
「ははは。ライナーのやつは外に出られないというわけか?」
「はい。子をせがんでばかりの姉上2人の出産に、今年も立ち会う事になりそうです。これで合計10人。義兄様も大層な律儀者ですね。嫌だとおっしゃられているのにしっかりと勤めを果たしておられる」
「不本意だろうな。嫁たちが甘えん坊で領地から抜け出られないとは。亜人の女は妾にしないのだろうか? あいつはそっちの趣味があるだろ? 俺が見繕ってやろうか?」
「あはは。基本、淡白なお人ですからね。身が持たないでしょう」
ヨーシアキレウスはベートーベンの顔をちらと見た。敬愛するライナーがおちょくられて不満げだ。この男はすぐに顔に出るのだなと思った。
「ベートーベン、貴公、ライナーの娘婿になってみないか?」
笑いながら言うヨーシヒデクスにベートーベンは顔をしかめた。
「御冗談を。まだ9歳にもなっておりませんよ、ライナーのおやじの上の娘さんたちは?」
「9歳になったじゃないか。そろそろ育てがいがある年頃だ。自分好みに教育して、一生連れ添いたい女に仕立て上げれば良い」
それと、いろんなちんぽを味わってしまうと1本のちんぽでは物足らなくなるから、早いうちに膣をなじませてやれ、とヨーシヒデクスはおちょくった。
「浮気する嫁というのは大体、嫁入り前からやりまくっている。大体が旦那のちんぽの形と大きさがしっくり来ないからだ。だが、女の腹の中というのは一番多くはめたちんぽに合うようになる。特に子供の頃から親しくしているちんぽにだ」
ベートーベンはますます嫌な顔をした。
「よしてください。俺は男色1本でやってますんで……」
「ははは! 女の股より男の尻穴か! それも悪くない! だがな、跡継ぎぐらいはこさえておけ。どうせナガオカッツェに骨を埋めるだろう、お前なら。だったらライナーの娘婿になったほうがいい。俺や親父殿の孫娘でもいいぞ?」
ただし、全員が16歳以下。それ以上はとっくに嫁に行って空きが無い。ベートーベンがますます顔を曇らせるのを見てヨーシアキレウスは首をかしげた。
(……まだ7歳だったマイヤ様の尻穴を貪っていたと聞いたが、童女は趣味ではないのか?)
それと、ナガオカッツェの家柄と、ヨーシハルトスの娘や孫娘はどれも器量よし、という評判を存じていれば安々と受けるはずだが。男色者はどうにもわからぬとヨーシアキレウスは思った。
「ところで、ヨーシアキレウス。親父殿の遺書はあらかじめ読んでみたか?」
「持ってきております。目も通しました。ナントブルグの方々に、失礼のない文とは申せませんが」
実物を渡されたヨーシヒデクスは、目を通して腹を抱えて笑った。
「恨み言ばかりじゃないか! これを見せると俺の首が飛んでしまう! ジョーケイン殿下の妃を我が家から出す代わりに、ヨーシデンの北半分を寄越せと書いているな! 親父殿はあの土地を奪われて、よほど悔しかったらしいな!」
「領していた頃はまるで手を加えなかったくせに、でございますな」
「言ってやるな! 親父殿は俺みたいに武辺者なのだ! が、まあ、あれほど領主として失格なのは王国の歴史でも珍しい。俺だって、領地の豊かな方の半分を没収されるようなズッコケはできんぞ? でも親父殿は歴史に残った! それだけが悔しくてならん! あははは!」
ヨーシアキレウスも笑った。長兄の言うことはごもっともだ。ちなみにだがこの兄が統治者としては意外とできているのを存じていた。ヒラジマッシモ領では反乱や犯罪が殆ど無かった。税金もかなり軽いほうだった。
「ははは……この遺書はお出しするのは却下、だ。ヨーシテルシウスに頼んで書き換えさせてもらっておけ。遺言書はなく枕元でこう聞いた、という態でな」
「承知いたしました。戻ったらヨーシテルシウス兄上にはそうお伝えいたします」
「そうしてくれ。もちろん、ヨーシデンの返還などもっての外だ。アスカウと争う事になったら、お前とヨーシテルシウスの顔が見れなくなる」
そのアスカウに暗闘を仕掛けるケノービの盟友だが、今はまだ全面戦争を持ちかけるには早い、とヨーシヒデクスは考えていた。
「ところでアスカウと聞きましたが……本日は、コリアンナ様はいらっしゃらないのですか?」
「ん? ああ……。明日か明後日に来るかもしれん。魔獣を乗りこなして半日で王都へ来れるそうだ。妹君らを連れてな」
「楽しみにしておりますよ。ふふ……」
滅多に笑わぬヨーシアキレウスが笑みを見せた。根っからの暗い性格の者が見せる笑みだから、周りの者にはぎこちなく見えたがヨーシヒデクスは理解していた。
ヨーシアキレウスだが、アスカウのコリアンナに恋心を抱いていた。城の中庭で催された『香道』の催し物で、チュバッカに促された彼女が皆の前で尻を出し、もりもりとひねった姿を見てからだ。コリアンナが9歳の時だった。
その姿はヨーシアキレウスの記憶に鮮明に残った。なにせその当時にカツランダルクの姉妹が支配していた王都に来る時は必ず、コリアンナが『香道』の為に来るのを狙った。
実際に会って話をし、恋文も送った。その都度、
「あたし、恋愛とか結婚とかよーくわっかんねえから、とりあえずおまんこして仲良くしよう。な?」
と、返されて、婚姻に関する返事はもらえなかった。もちろん、意中の相手と性交はしたが。膣の締まりは少々ガバかったが、娶るならこの娘を、と思わせる魅力があった。さっぱりとした気性の娘が、ヨーシアキレウスの趣味だった。
そのコリアンナは今日は来ない。ヨーシアキレウスは上着のポケットに入れていた飴玉入れを手に取った。あの田舎娘の領主のけもののにおいがするがばいおまんこのまわりを舐めまくりたい、という欲求を甘いものでごまかす。
落ち着いたところで、ベートーベンの顔を見た。ここにいるのが不本意そうな顔をしていた。早く休みをもらいたい様だ。
「夕方までだ。私は王都にいるのを2週間に延長するつもりだ。出発の日までは休んでよい」
「いや、それだと私の任務が……」
「国元の兄上にはごまかして報告するから安心しろ。本当に顔に出やすいな。お前は」
同席するヨーシヒデクスやハーフリングの女が笑った。しばらくして会食となった。ジョーケイン王子は何度も顔を合わせるが、ロゼ姫との実際の顔見せは、これが初めてだった。
食事場所の広間に案内され、その入口の前で姫はいた。肖像画や映像水晶で見た、マイヤとイズヴァルトとの間の子とされている、黒髪の美少女だ。彼女は妊婦となっていた。
ベートーベンの喉が、ごくりと鳴った。同じ歳ぐらいのマイヤよりも数段上に思える美人だったからだ。それとかすかに匂いう甘い気配。陰嚢が活発過ぎる彼は、股の付け根のあたりが苦しくなった。
「はじめまして、ヨーシアキレウスさま。わたくしはマイヤ=カツランダルクの娘のローザ=カツランダルクでございます。今はご出征中の国王陛下の温情により、王家の末席に加えていただいておりますの」
以後、お見知りおきを。そう言って丁寧に頭を下げるロゼを、ヨーシアキレウスは返事もせず凝視したままになっていた。いつまで経っても挨拶を返さないのを、側にいたベートーベンはこの姫の美少女ぶりに、たまげてしまったのだと思った。
「殿下……」
「……ちがうな。まるで違う」
「はい?」
ベートーベンはおろか、ロゼやヨーシヒデクスも耳を疑った。何が違うというのだ。ヨーシアキレウスの口は止まらなかった。
「あの娘は私の趣味ではないよ。顔を合わせれば私から縁談を断った。まるで感じられないのだ」
ヨーシアキレウスだけは確かに見えていた。可憐なロゼの全身と背後に、冷え冷えとして真っ黒なもやのようなものが、どんよりと漂っているのが、彼の目にだけ映っていたのだ。
「名を残す為の光というものが、長い生を約束する暖かさ、というものが……」