※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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191 ナガオカッツェ王家の異能

 ヨーシアキレウス=ナガオカッツェはあまり喋らず、雰囲気も暗いから、人からは思索型の人物と思われている。だが違う。

 

 彼は直感型の人物だ。目にする人や訪れた街の気配、それから動物や植物をひと目見て、何かを感じた後に考え込んでしまう。

 

 それは、幼い頃からある2つの才能がそうさせていた。ひと目みて人の寿命がわかる力と、相手の才器を知る力である。

(ただし才器を見る能力のほうは、おおざっぱに大成するかしないか程度しかわからない。)

 

 その才能に気づいた時は6歳の頃だ。彼は父親の妾が産んだ弟と会った。バラ色の頬をした大層可愛らしい赤ん坊だったが、一目見るなり彼はこうつぶやいた。

 

「この子、なんかすごくまっくろだよ。それに、とても冷たい……」

 

 何のことかよくわからぬと周りの大人達は笑ったが、その子は半年も経たずに死んだ。ヨーシアキレウスが変なことを言ったからだ、という声があがると、彼は二度と言わないと心に誓ったが、そのかわりに周りの者にそれが見るようになった。

 

 父のヨーシハルトスのそれは、薄暗くてひんやりとしていた。兄のはまあまあ暖かいが、それほど輝いて見えない。

 

 父の妾や妹たち。あるいは、親族衆の家臣やその妻、娘など。気みたいなものが真っ暗で、ひんやりとしている子どもは大抵、何も為せずに早くに死んでいった。対してライナーみたいな才能ある者のは、そこそこ輝いていて暖かかった。

 

 そうなるとヨーシアキレウスは、自分の特質、人の命や才能といったものを『温度があるもやのようなもの』で知るという特質はどこから受け継いだのかを調べたくなった。

 

 古老や古い本などから調べると、案外早くにわかった。ナガオカッツェの家には、そうした能力を持つ者が生まれるそうだ。『死神アエーシュマの目から生まれた子』と呼ばれていた。

 

 アエーシュマは生きるものの死の時を見分け、それまでに築く力や財といったものも予測するという言い伝えがあった。ナガオカッツェにあった古代王家は、そうした才がある者が王に就いたという。つまり、ヨーシアキレウスの母方の先祖である。

 

(と、なれば、これからこれをどう、扱っていけばよいのだろう?)

 

 ヨーシアキレウスは悩んだ。そもそも父のヨーシハルトスは、こうした不思議な力というものを好かない性分だった。これを扱うと嫌われるだろう。そのために隠すことにした。父が病いで臥せる様になってから変化が起こった。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 ロゼを初めて見て「まるで違う」とつぶやいたのは、トーリやマイヤを見比べてのことだった。マイヤは彼女が経済長官として世に出るようになって話すようになったが、トーリについては10歳の頃に初めて会った。

 

 その時は新しい側室となった彼女へのご挨拶と、彼女との初めての『おちんぽの試し抜き』が目的で、魅了のちからにかかったが、彼女に大きな何かを感じた。要約するとこうだ。

 

「トーリさまは暖かい光そのものだ。とてもまぶしい。とんでもない何かを為すだろう」

 

 つまりは、とんでもない長寿を約束された英雄、あるいは王者としての才だ。しかしトーリは非業の最期を遂げた。彼の見立ては、たまにハズレることがある。

 

 マイヤもまたトーリに負けず劣らずだった。こちらはトーリよりも光輝いて見えた。その時代に君臨する王者レベルの話ではない。数百年もその名を轟かせる、偉大なる者が放つ光である。ただし、トーリと比べると、どうにもひんやりとしていた。

 

 そして、求愛の手紙を送っては性交止まりでお付き合いが発展しないコリアンナだが、トーリとマイヤに比べるとぼんやりとした輝きぶりだった。つつがなく統治を全うできる小領主ぐらいと見た。

 

 とは言えその光は、トーリと同じぐらいの温かみがあった。

 

(この娘は長生きできそうだ。)

 

 わけのわからぬ根拠だが、彼は自分が70歳や80歳は余裕で生きるだろうと信じていた。コリアンナは彼より少し年下だが同世代。歳が近くて長生きしそうな女が好みだった。

 

(ちなみにだがヨーシアキレウスが死んだのは、この時より70年ぐらい後である。)

 

 しかしローザである。彼女は見極めている自分を暗澹(あんたん)とさせた。あまりにも気分が悪くなり、彼女には目を向けずにジューンショーンやジョーケインに目を向ける。彼らは『明るい未来』が約束されている者たちだったからだ。

 

「……どうなされたました? あまりお気分がよろしくなさそうですけど?」

 

 食卓で相向かうローザに尋ねられ、ヨーシアキレウスは生返事を返した。

 

「ああ……ちょっと、食欲が無いもので」

「そうですか。けれども、本日はあまりお出しできておりませんわ」

 

 テーブルに並んでいるものは、さっぱりしたものばかりだ。雑穀を混ぜたパン。塩と香辛料で味付けした、ネギと根菜のスープ。あとは薄く切った焼き肉が何枚か。飲み物は水で薄めた赤ワインだ。

 

 タンゴバルド攻撃のための戦費を捻出するため、食事にかける金を削ったのだ。貧しいナガオカッツェだって日々の食事はもっと豪華なのにだ。

 

「王宮の料理人らは、ずいぶんと嘆いておられるでしょうね?」

「そうですわね。けれども仕方がございませんわ。海賊さんたちに勝利する為ですもの」

 

 大きくなった腹を撫でて言うロゼと、文句を言わずに美味しそうに食べるジョーケイン王子を見て、ヨーシアキレウスはふと思った。

 

(姫は知らないのだな……。忠誠を誓う貴族どもが、いくさの為にと倹約をしていないことを。)

 

 ナガオカッツェは一応、王家に遠慮はしているが、他の貴族たち、特に経済的に潤っている家は毎日宴会を催している。国王の必勝を祈願してという名目でだ。

 

 それだけでなく、今回の遠征で儲けたサカーイの商人たちは、シマナミスタンやチンゼーから高級な食材を買い付けて、味道楽に勤しもうとしている。

 

「どうなされたのです? 難しいお顔をされて?」

「そのうですね、実は、こんな話を聞いたのですが……」

 

 ヨーシアキレウスの脳裏に長兄の声が。その話題には触れるな。

 

「……いや、なんでもありません」

「あら、そうですの?」

 

 ロゼ姫に頭を下げると、テーブルの下で印を切り、念話で返した。

 

「頭の中を覗かれていたのですか?」

「俺程度のに気づかないとはまだまだだぞ。あのハーフリングの女にみっちりと教えてもらえ。まんこをほじくりながらな?」

 

 ヨーシヒデクスは強い口調で諭した。その話題を話すな。

 

「そもそもがセイン王が言い出したことだ。王家や同調した貴族が倹約するならわかる。しかし賛成しなかった連中までは従う義理は無いのだぞ?」

「かもしれませんが、忠義心というものが……」

「そのきれいな言葉に騙されるなよ? そんなもの、犬に食われてしまえとみんな思っている」

 

 賢いお前なら学び尽くしているはずだ、とヨーシヒデクスは言った。

 

「力あるものに従え。これが忠義というやつの本性だ。結局主と従っていうもんはそれに尽きる」

「兄様。父上とは随分と、考え方がお違いますね?」

 

 父は野心や欲で問題を起こし、ナントブルグの本家に対して何かとごねていたが、王国にたいする忠誠心だけはあった。でも、この長兄はなんだか突き放した感じである。

 

「親父殿は前国王の実弟だった。俺はセイン王とはいとこにあたるが、地位が違う。低い身分の女との子だからな」

 

 半ば厄介者だ。ゆえに遠いヒラジマッシモへ養子に出された。生まれてからこの数十年、ナントブルグのことはまるで気にせぬ日々を送った。

 

「俺に王への絶対の忠誠を望むなよ? 得か損かで動いているからな、俺はな」

「王家のためであれば、利で動く忠義というのもございましょう。人に謗られるいわれは、ございますまい」

 

 ヨーシヒデクスはにやりと笑った。あまり喋らないと思ったが、意外と話せる奴だ。

 

「ところでだ、お前が変なことを口走ってから、気になったんだ……そこのローザが早死にしそうか?」

 

 姫とはつけなかった。呼び捨てだ。ヨーシアキレウスはおぼろげながら、兄が姫のことをどう思っているのかわかった気がした。

 

「なかなかおもしろいことを言ったと思ってな。ナガオカッツェ王家の予見の力というやつか? 人の寿命がわかるっていう?」

 

 お見通しのようだった。この庶長兄はただの『ひよこ好き』の絶倫猪武者かと思ったが、違うようだ。歴史のこともよく知っている。

 

「明日以降になるが空けておいてくれ。俺と一緒にある人物に会ってもらいたい」

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 食事の後、ヨーシアキレウスはロゼ姫に言われた。

 

「あのう……すみません。この後どこか2人きりで、よろしいでしょうか?」

 

 姫がこのように誘う時は、ベッドでの性愛をご所望だ、とあらかじめヨーシヒデクスから教わっていた。その気は無かったから断ろうとすると、

 

「そのう……ぼそっとおっしゃった意味を知りたくて……」

「あれは、ただの独り言ですよ?」

「あっ、いえ……ヨーシアキレウス様は縁談を勝手に破談にされたのを、怒っていらっしゃるかと思っておりましたので……」

 

 その誤解を解くことにしよう。城の北側の中庭で話しましょうとヨーシアキレウスは誘った。姫は侍女2人を連れ、ヨーシアキレウスはベートーベンだけを伴なわせた。この男が12歳の姫に見とれていたからである。

 

 中庭には王族や召使らが一休みするためのベンチがいくつも置かれており、池があった。内堀から水を引いていて、水の上に浮かぶまあるい葉がびっしりと茂っていた。ナントブルグ蓮という品種だ。

 

「あのう、ヨーシアキレウスさま。お池の浮き草のお花を見に行かれませんか?」

「よろしいでしょう。ところで、この時期に花は咲いておりましたかな?」

 

 ナントブルグ蓮が花開くのは大体、夏頃だ。池には別の品種の植物も浮かんでいたから花は見えるだろう。しかし詩をよくするロゼが、花が開く季節を間違えることはおかしい。

 

「まあ、他にも花も咲いておりましょう。蓮の葉は見ていて面白い」

 

 二人並んで歩くことにした。傍らに立つロゼからは、下半身を興奮させる甘い匂いが漂っていた。サキュバスのものと同種のだ、とヨーシアキレウスは思った。あの種族を抱いたことは何度だってある。

 

 とはいえあまり早くは歩けなかった。ロゼの歩き方は、少々ぎこちがなかった。妊婦というのもあるが、尻のあたりをもぞもぞとさせている。とぼとぼ、という歩き方だ。何かを我慢しているような、そういう気配があった。

 

 背後にいるベートーベンは、前かがみで歩いていた。この姫が身体から放つ甘いにおいで、激しく勃起していたのだ。

 

(わかりやすいぞ、ベートーベン。もっとも、このにおいには私も股間に来る。やはりマイヤ様の御息女なのだな、姫は。)

 

 池の前に来た。やはりヨーシアキレウスが言う通り、ナントブルグ蓮はまだ花を咲かせていない。

 

 しかし中庭の池の蓮が一斉に花開くと、どれだけ見事なものになるのかを彼は存じていた。池のそばにあるベンチで、コリアンナとおまんこをしながら一緒に見たからである。

 

「ナントブルグへ来るのが早かったようですな?」

「そのようですね。あのう……」

 

 ロゼが侍女に目配せしながら言った。

 

「さっきからお腹がいたくて……うんちが、したいんですの……」

 

 だからか。池で糞を垂れたいが為に蓮の花を理由にしたのだ。目論見は親睦を深めるためにだ。ヨーシアキレウスは『カツランダルクの流儀』とやらを存じている。おけつを出してぶりぶりぶり、も、心をなかなか開いてくれない男の子を落とすための手段なのだ。

 

(私がコリアンナ様がうんちをしているところを見て、恋に落ちたのを聞いたか。)

 

 ヨーシアキレウスは周りを見た。巡回の衛兵がいたのでこれからこうすると伝えると、相手はニカッと笑った。姫様ならどこでもうんちをしていいという意味だった。

 

(カツランダルク本家の特権か。あの兵士もさぞかし眼福な毎日を送っているだろうな。)

 

 というわけでその兵士を呼び寄せた。彼は近くにいる庭師やズル休み中の女召使いも呼んだ。『うんちぶりぶり姫』の御息女のおひねりの時間だ。肝心のロゼは顔を赤らめながら微笑した。

 

「はずかしいですわ……」

「それだけお母上様の跡継ぎを皆に望まれているのではないのでしょうか。マイヤ様がおしりからうんちをおひねりなさる姿、何度か拝見いたしましたよ。皆の前で、堂々たる脱糞ぶりでした」

「ま、まあ……お母様は、豪胆なかたとお聞きいたしましたわ……」

 

 姫もたおやかに見えるが、人前で尻を出せる胆力がある。羞恥は排泄の欲求に勝てなかった。侍女に頼んでスカートを捲り、妊娠によって肉をつけてきた尻を皆に見せるとその場でしゃがみ込んだ。

 

「あのう、お池に尻をお向けになったほうがよろしいのでは?」

「で、できればヨーシアキレウス様には見ててほしいのです。わたくしのおしりを……」

 

 懐柔する気が満々だったようだ。ヨーシアキレウスより先に、興奮していたベートーベンと見物人たちが尻に顔を近づけた。ロゼ姫の肛門の色と形はすでに、城の者達は誰もが知っていた。尻を突き上げると見えてしまう陰裂もだ。

 

 姫が気張り始めた。肛門が膨らんで窄まりが開く。皆がそれを見て喜んだ。ベートーベンもだ。彼はトーリとマイヤに性癖を壊された者の古参である。思わず言ってしまった。

 

「えへ。マイヤちゃんみたいな尻穴の膨らみ方をしてるなあ……」

「そうなんですの! おかあさまみたいなおしりの穴の形ですの?」

「あ、いやまあ。えへへ。姫様。そのまま景気よく出しちゃってくださいよ」

 

 その声はすでにだらけきっていた。尻穴にまだ目を向けていないヨーシアキレウスがにやりと笑った。

 

(わかりすぎるぞ、この男は。コリアンナ様にもっとお近づきになる為に、利用できるかもしれんな。)

 

 しかしロゼには興味を抱けない。と、思ったが考えを少しあらためる出来事がこの後に待っていた。ロゼの尻穴が大きく膨張し、茶色いものがにゅるりと出て落ちていく時にだ。

 

 思わず顔をしかめた。臭いからではない。むしろ顔を近づけてかぎつづけたくなるいいにおいだ。思わず味も確かめたくなるほどの。

 

 それほどの芳香であったが、コリアンナのうんちしたての尻穴の匂いを堪能するという行いを始めてから、亜人を含む、いろんな女の糞と尻穴のにおいを確かめるようになり培ってきた嗅覚が、この糞には異なものが混じっていると彼に気づかせた。

 

 甘ったるさの中に、緑林の空気の様な爽やかさがあった。あるいは香草か。ハッカやワサビのようなぴりりとしていてすうっとするにおいは、あの種族の糞便によくあるにおいだった。

 

(……これは、エルフのか?)

 

 途端に疑問が頭をもたげた。この娘の父親は本当に、イズヴァルトの胤による子どもなのか?

 

「あのう、ヨーシアキレウスさま?」

 

 恥ずかしいところを見せてごめんなさい、とロゼは言ったがその目は情愛を求める淫魔のそれの光を宿していた。けれどもヨーシアキレウスはその気になれなかった。

 

(この姫は本当に、イズヴァルト殿の娘なのだろうか?)

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