聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
ホーデンエーネン王国暦359年7月。王都のスカルファッカー家邸に来たケノービは、弟の前で朝議の話題を口にした。
「王の捜索はもうやめだ」
「あきらめるのですか、廷臣たちは?」
「陛下の生存は絶望的ということだ。タンゴバルドに報復合戦も挑まんようだ。腑抜けているが……これは良い機会だ」
廷臣らは泣きじゃくるジョーケイン王子と不安そうなロゼを部屋に戻し、次の王を誰にするかで話し合った。順当にいけば嫡子のジョーケインが次の王だが、幼い子供では心もとない。王弟のジューンショーンを、王子が成人するまで中継ぎとして王にたてるという案が有力だ。
「となると、ジューンショーン王子の妃を誰にするかで話し合いがあるでしょうね?」
「そうだ。そこで俺はレーアを押し込みたい」
法務大臣のヨハン=レマルクあたりが、未亡人となったロゼをジューンショーンの妻にと推すだろうが、あいにく国王の妾でも最低3年は寡婦のままとなるだろう。間男との間に子供が産まれても、姫の私生児として遇される。王位継承権は与えられない。
「しかし、中継ぎの王ではありませんか?」
「それでいい。ジョーケインは俺かお前の娘を嫁がせる。その為の布石だ」
レーアは自分達の繁栄のための道具に過ぎない。ケノービはそう言い切った。レーアこそが『中継ぎ』だ。彼女を操り、ジョーケインにこそソーロー家かスカルファッカー家の姫を嫁がせる。別に第一夫人でなくてもよい。ただし側室の筆頭。ねじ込めば晴れて王族だ。天下取りゲームが有利に進む。
「いくらご本家とはいえ、片田舎の宿屋の娘だった……片やロゼは、血筋から言えば先々代の国王陛下のひ孫にあたる……」
「ということであるがアナキン、ロゼについては噂を広める」
「……噂?」
どんな噂だろうか。
「こんな話がカントニアから入って来た。イズヴァルトによく似た武者が、女が乗った荷車を押して、サガミニアに出没しているようだ」
その荷車には2本の旗がさされているそうだ。『だいぶへんもの』と『げりべんおんなぐんし』という、まことにおかしなことが書かれているという。
「……なんですか、それは?」
「しかもだ、その荷車には後ろの方に尻とすじを出す穴が開いていて、乗っている女はそこから恥ずかしげもなく、しょっちゅう糞小便をやっているという……どこの誰かさんによく似ているな?」
「まさか、その女は黒髪で四肢が断たれているとでも?」
ケノービはうなずいた。そのまさかだ。噂のその女は肘と膝が無い。大層胸と尻が大きく、可愛らしい女らしいが。
「……生きていたか!」
「あの悪運の良さとしぶとさは是非とも見習いたいものだな。だがな、アナキン。その女はイーガ人のローラ=ラダトゥム=セアックと名乗っているそうだ」
漁師の網元の娘で早くに両親と死に別れたが、軍師として学問と仕官をカントニアで求めていた最中、イズヴァルトらしい人物と出会って一党に加わった、という触れ込みだ。
「ローラ=ラダトゥム=セアック? 漁師の娘でマイヤとそっくりな、ローラという女が……」
それは嘘だ。まぎれもなくマイヤだった。まだ信じきれなかったアナキンだが、改めて自分に言い聞かせる。ローラという女は……。
「よく聞け、アナキン。イズヴァルトらしい人物と旅をしているのはローラという女だ。マイヤではない」
「……?」
「マイヤでは無くローラ。『おしゃぶり姫』にそっくりなイーガの女。復唱しろ」
「どうしてです……?」
「いいから復唱しろ。自分に言い聞かせろ」
アナキンは言われた通りにした。それを聞いたケノービはこうささやく。
「マイヤはシギサンシュタウフェンへの旅の途中で襲撃され、行方知れずになった。もう死んでいるだろう。イズヴァルトが連れているのはよく似た女だ。死んだ恋人の身代わりのな」
「……そういう話にまとめるわけですね?」
「それからローラは……イーガ王国は否定するだろうが、マイヤの身代わりを務めた『影武者』だった。なんらかの事故に遭って両腕両脚が不自由になり、親を失って天涯孤独になっていたところを王家に拾われた。似たように事故で身体が不自由になり、自暴自棄になって恋人と別れてマルティン王子のお気に入りになったマイヤに代わり、イズヴァルトにしばらくあてがわれた。彼女はロゼ姫を産んだ」
(そんな噂を流すつもりなのか?)
バカげている、とアナキンは思った。10年前のイーガとの紛争の後の会合で、イズヴァルトがどうしてマイヤと離れて留学先のイーガから姿を消したのかは知られている。マイヤ本人も貴族達に語ったと聞いている。
マイヤが何者かに拉致されて悪趣味な富豪好みの身体に改造された挙句に売り飛ばされそうになったのと、イズヴァルトが死病にかかって倒れたところを、カントニアのエルフ達に助けられたというのは、覆せない事実だ。なのに兄は、思いつきの嘘を広めようとしているのか?
「言いたいことはわかる。だがアナキン。事実を知っているのはほんの一握り。王都周辺の貴族だけだ」
「……!」
「ナントブルグから遠く離れた田舎貴族や庶民は、よく知らないそうだ。王都の頭の悪い民や武者もな。だが、そういった連中のほうがホーデンエーネンには多い。噂という武器を振るうに充分なんだよ」
だからもっと復唱しろ。自分を騙せ。本当にやる気だ、とアナキンは悟り、観念した。ではロゼは何なのだろう。
「ロゼは紛れもなくイズヴァルトの娘だ。但し、マイヤとではなくローラとのな。あの孕ませ上手のデカチン野郎は、12歳になったローラをマイヤの代わりに妊婦にした。その腹から生まれたのがロゼ姫だ」
「……はい」
「ロゼ姫はセイン王の妾であるだろう。だが、ジューンショーン王やジョーケイン王の后にはなれん。あの娘は若い寡婦として、王家の姫君の中でも位が低いマレーネ姫の母親として残りの人生を過ごすのだ。まあ、いろいろな男と浮名を流すだろうが、もう『国の母』にはなれんのだよ。いや、させてやるつもりはない」
□ □ □ □ □
レーアは息を荒くして廊下を歩いていた。ドアの向こうで義父とアナキンが話していたことを聞いたからだ。ただし、ロゼがマイヤの子では無い、というところだけである。
(そうだったの? そうだったの?)
そんな訳が無い。彼女は自分自身にそう言い続けた。ローザは確かに、自分と同じ『におい』がするのに。
(ロゼおねえさまは、私と同じカツランダルクの女の子ではなかったの?)
多分冗談だ。嘘に決まっている。レーアは知らなかったが彼女とロゼは実の姉妹だ。母はマイヤ。父はイーガの亡きアドルフ王子である。
自分とよく似た匂いをしている。顔立ちも「似ているね?」と言い合うぐらいだった。肌やヴァギナの質感も。甘い香りがして柔らかくて、吸いついてくる。代謝をよくする魔法を自分にかけていたレーアは一度風呂に入らないと、匂いでわかることは無理だったが。
本能と感覚は同じ一族、いや、もっと近しい関係だと気づいていたが、レーアの思考はそうではなかった。盗み聞きしてしまった義父の陰謀のための嘘を、本当なのではないかと思ってしまった。
部屋に戻ると、彼女を崇拝するお気に入りの下男が待っていた。レーアは寝台に身を投げ、脚を高々と上げてスカートに隠れていたものを余さずさらけ出した。
下男に目を向けた。彼は椅子から腰を上げ、レーアの脚の間に割って入った。この時を待ち続けていた勃起が彼女の股の間に潜り込み、生暖かい音を立て始めた。
「……んんっ♡ もっと、かきこねるようにして♡」
ぬめった肉壺が与えてくれる快楽に浸っていても、喘ぐ姫の顔と声に陰があることをこの男は感じ取っていた。
「姫様。ひどく悩んでいるようですね? どうなさいましたか?」
ヴァギナの奥を衝かれる悦に震えていたが、レーアはきっぱりと否定した。そんなことあるわけないじゃない。
「ここ最近、陛下がお姿を消されたことで、殿方からのお誘いが来なくなったからでしょうか?」
「……そんなわけないじゃない。アナキンがいればあんたやここの屋敷の男達が相手をしてくれるんだし」
「では、何をお悩みになられているのですか?」
「……しつこい」
しかし下男が景気の良い腰遣いをし始めたからレーアはすぐに陥落してしまった。激しい波が身体に起こって鎮まると、義父が言っていたことを話してしまった。
「ローザ様がマイヤ様の御子ではない、というわけですか?」
「本当か嘘かわからないわ。でも、そうらしいの」
「でしたら……」
下男は力強く腰をひねり、レーアの子宮を突き上げながら射精した。
「信じてしまわれたらどうです、姫様?」
「……どういうことよ?」
自分の亀頭の先がレーアの膣の行き止まりとひっついているのを感じながら、彼はこう答えた。
「レーア様は素晴らしいお方です。姫様です。ナントブルグの女王の子孫として、きっと偉大な奥方として歴史に名を残すことでしょう」
「すっごい奥さん……?」
「姫君が歴史書に書かれるとなれば、それは王の妻になることでしょう。国王の跡継ぎを産み、育てる。それから世の人々に尊敬される貴婦人となる。姫君というものはそれが求められるのです」
例えば、セイン王の愛妾だったトーリみたいに。彼女は愛人という立場であったが、王宮ではもう1人の王、つまりは女王として君臨していた。国王を裏で支えるもう一人のあるじ。これこそが女がこの国で求められる最高の『かたち』だ。
但し、いくら有能でもマイヤの様になってはいけないと下男は注意した。彼女は才があり過ぎた。人々を豊かにする様々な技術や計画をつくったが、そのせいで民にかける税が重くなってしまった。庶民の間でマイヤは激しく嫌われた。
「マイヤ姫様の様な女性を、人は『じゃじゃ馬』と仇名します。最高の良き貴婦人とは、ただそこに君臨していれば良いのです」
「そういうのに、なって欲しいの?」
「欲しいのではありません。姫様はその為にお産まれになられたのでございます」
下男の陰茎が力を取り戻した。自分が放った精液とレーアの分泌液が混じった肉の通り道で、粘り強い往復が始まった。
「はあっ♡ ひいっ♡」
「このように姫様は皆を夢中にさせ、そして未来の夫となられるお方を射止めて頂きたいのです。夫となられるかたはやはり王者でなくてはなりません。しかしあのイーガ人の娘、ロゼ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーには、次の王の妻になって欲しくありません」
ロゼの元々の名前を口にしたことを、なぜかとレーアは聞いた。下男はこう答えた。自分は10年前のイーガとの紛争に従軍した騎士だった、と。
初めて聞いた事実だった。しかしこの男はこれまでずっと、性交を提供し崇拝の言葉を放つだけで、自分のことを1つも語ったことが無かった。
「アンタ、おさむらいさんだったの?」
「騎士といっても、従者と何ら変わらぬ身分でした。あのいくさで兄2人を亡くしました。オルガスムナ公様の代理で出られた、家老のハーネス様に率いられて……」
一大決戦となったモモチ高地で、イーガ側の巧みな誘導戦術と魔道による多面攻撃に晒され、兄2人をそこで亡くした。ハーネスもそこで討ち死にを遂げた。
「そうだったの……」
「だから今も、イーガのことを恨みに思っております。そこでぬくぬくと育ったロゼなど、私は好きません。ましてや、イズヴァルトさんを遠ざけ、かの国の王子と男児を為したマイヤ姫の娘なんか……いや、ロゼ様がイズヴァルトさんの娘だってこと自体が、疑わしい」
この屋敷の召使いや、彼の友人たちはロゼをイズヴァルトの子だという話は信じなくなった。今では疑っているという。何故なら彼の娘ならもっと体格が良くなるはずだ。ロゼはもっと骨太で健康的で、胸が大きくなっているはずだ。でも彼女は華奢だ。
「……」
「もっと別の男との間の娘、という話も噂されております。本当の父は王子マルティン、ではなく、その父親のアドルフだという噂が」
「そうなんだ……」
レーアはふさぎ込んでしまった。ロゼはイズヴァルトの娘ではないとして、では母親は本当にマイヤなのか。それにしたって顔が細くて華奢に過ぎる。マイヤは小さな丸顔だが、胸と尻はとんでもなく大きいと聞いたからだ。両腕両脚があれば、身長も160いくはずだとも。背が高い部類の女だ。
「おわかりいただけましたでしょうか。姫様こそが、次の王妃様にふさわしいのです」
「わからない。レーアには、まったく覚えられないよ」
「ご決断なさいませ。それと」
下男はレーアをかき抱き、それから腰を大きく振りながらささやいた。
「誰かに全部任せる選択も取ってはいかがです? 全てをやってもらうがままに進めるのです」
下男はそっとささやいた。自分には伝手がある。