聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
この下男、もとい、元オルガスムナの騎士はとある仕事に携わっていた。亜人の暗殺者グループの仲介人だ。
窓口となる、とある娼館のあるじに依頼の話を聞き、彼等のところに持っていく。ナントブルグにも一味のアジトがあった。そこの暗殺者たちは病気や事故を装った殺し方を得意としていた。
こういう仕事は貴族の跡目争いや商人たちの競争に用いられてきた。そう簡単になくなるものでは無かった。その為、この下男はこれまで、数十もの案件に携わって来た。
今は亡きオルガスムナ前大公のメイスの嫡子である『うすのろ』サミュエルの溺死と、それを暗殺者に頼んだスピキオの刺殺。それから、メイス大公とサミュエルの子供らを放火で死に至らしめたのは、その暗殺団のしわざだった。
下男は仲介役としてだが、こうした闇の仕事に携わって来た。オルガスムナからスカルファッカーに鞍替えしてからも、何度か仕事をこなした。アナキンには秘密にしていた。
レーアに話をした翌日、勉強のために一旦王都の外にあるケノービの別宅へとアナキンとレーアが戻るのを見送った後、彼は王都にある暗殺者たちの出張所に向かった。南街区の商店街の裏手にある、シマナミスタンの雑貨屋がそれだ。
店主は女で肌黒のサヌキスタン人である。しかし長く伸ばした髪に隠れている耳は尖っていた。毒殺に定評があるゾウズジャヤ=エルフのクォーターだった。
「久しぶりだな。買い物に来たか?」
「コトピラプタ産のタバコを買いに来た。大麻みたいによく聞く草があったらそれも欲しい」
「タバコはいいが麻薬はあまりお勧めできないな。中毒になる。まあ、軽いものなら提供できるが……それ以外に所望は?」
棚に並べられた、あやしげな草が入った瓶を眺めながら下男は答えた。
「仕事を頼みたい」
「誰だ?」
「君らが頼まれた、サミュエル様やスピキオ様よりもっと上の大物だ」
「……できないことはないが、かなり金がかかるぞ?」
そのあてがあるのか。目鼻の大きな女店主はけげんそうに顔を
「私の全財産だ。オルガスムナにある家と国元に預けてある財宝。多分、大金貨500枚分になる」
およそ1億円ほどの価値である。いや、もっとするだろう。この下男は『従士』レベルの身分だったが、先祖が残した財産がかなりあった。しかしもしもの時の為に手を付けていなかった。スカルファッカー家に入ったのは、あるじが優しくてそこそこに給料を与えてくれるからだ。
「大金貨500枚か。とんでもない仕事を持ちかけて来たな」
そんな高額な仕事は、ほとんど受けたことが無かった。女店主はあごにてをやった。
「……確か、お前の家にはもう誰も住んでいなかったな、いや、召使いだけか。割と立派な家だと聞いている。多分それだけで金貨400枚いくだろう。財宝のほうは?」
「父の代まで蒐集したミスリルの小剣や小物。他は宝石や魔道具だ」
「……オルガスムナの仲間達に連絡して、お前の屋敷に鑑定士を送る。で、標的は誰だ?」
「ローザ=カツランダルク。前王の妾だよ」
「……本当に国王は死んだのか?」
わからない、と下男は答えた。しかし宮廷では既に次の王を誰にするかという話が始まっており、王弟のジューンショーンが選ばれそうになっていると答えた。ただしジョーケイン王子が成長し、玉座でしっかりと政務が行えるようになるまでの間だ。中継ぎの国王である。
そのロゼについては、こういう話があがっている。国王の愛人だがジューンショーンと恋仲である。それを知っている法務大臣らは是非ともロゼを彼の正妻にしたいと望んでいる。王妃あるいは王弟の正式な妻になった場合、殺せる機会がぐっと減る。
「その前に事を決めたい。急いで頼めないか?」
「王宮には確かに、一味が潜んでいるが、カツランダルク家の嫡流はまずいぞ。警護が厚い。隙が無い」
「いや、トーリ様の頃の様な万全の護りでは無いだろう。アスカウにうろついていたサキュバスくさい女達がぐっと減った、と耳にしている」
その情報はアナキンとケノービの話から盗み聞いたものだ。トーリの後継たるコリアンナや、ヨーシデンにいる彼女の弟たちの周りには、確かにピックプリトが雇ったサキュバスたちがいたが、全盛期の頃と比べると質は雲泥の差だ。殆どスポットワークの意識でやっている。命を懸けて守る、という気概を持つ者はいなかった。
「ロゼは幸い、レーア様をたいへん愛おしんでおられる」
レーアの頼みならばロゼは必ず受けるだろう。
「手紙を書かせて呼び寄せる。秘密のお便りとしてだ」
手紙を出す場所は風光明媚な景勝地か、出産で傷ついた身体を癒す温泉地だ。幸い、レーアが住まわされているいくつかの館だが、そうした場所が近くにあった。ケノービは謀略の道具として彼女を側に置いていたが、一応は情操教育に良い環境を選んでいたのである。
「子供が産まれてからロゼはたぶん、掛かりきりで気分転換ができないだろう。少し疲れだした2~3カ月ぐらい先あたりに、計略を仕掛けたい」
下男の熱弁を聞いた女店主は腕を組み、机の上をじっと見た。
「王都の外ならば機会はぐっと増す。できないことは無いだろう。でも本当に、そのレーアとやらは、お前が全財産を賭けても良い相手なのか?」
下男は口角をあげた。力強い笑みだった。目は輝いていた。
「レーア様をこの国の歴史の名に残る姫にしたい。ケノービ様やアナキン様と同じものを目指しているんだ、私は。でも、マハーヴァラ様の名にかけて、率直に言おう」
生まれて初めて恋をしているんだ。あの
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1か月半後。
オルガスムナ領内にあるケノービの別荘に移っていたレーアは、王都にいる下男に言われた通り、ロゼにあてて手紙を書いた。
「おねえさま。今レーアが過ごしている館ですが、傍にきれいな湖がございますの☆ とてもとても大きく水が澄んでいる湖ですわ☆」
湖は館のすぐそこだった。毎日2回、レーアはベッドのお相手の男達と一緒に繰り出し、桟橋で尻を向けてぶりぶりとくそをひねる。
「そうしてうんちを湖にひねりますと、たくさんのおさかなさんたちが集まって来るのです☆ 中には元気よくはねて、ぽちゃん、ぽちゃんと音をたてるのもいるのですよ☆」
そして釣った魚は美味である。レーアの糞は魚たちに大好評だった。今ではすっかり、桟橋から彼女が尻を向けただけでわらわらと集まって来るようになった。水辺のいきものにとって、美食は死と隣り合わせである。
「まだ次の王様が誰になるか決まらないのでしょう? おねえさまもたまには羽を伸ばして外に出られたらいかがかしら? マレーネちゃんはコリアンナさま達に任せて、たまには年頃のおんなのことしての日々を過ごしたほうがよろしいんじゃありませんか?」
その手紙はロゼの元に届いた。彼女は生まれたばかりの赤ん坊にお乳を与えながら目を通した。赤ん坊の唇はしゃぶりつきたいぐらいに柔らかい。
「ひうっ♡ マレーネちゃん、す、吸いつきがよすぎておかあさん、こまっちゃいます♡」
ロゼは股の間をもぞもぞとしながらうめいた。彼女の乳房は申し訳程度のふくらみだったが、十分に母乳が出た。赤ん坊に乳を与える様になってから乳首の感度がすごく良くなっている。サキュバスやその血を引く女によくあることだった。
「ロゼちゃん、レーアちゃんからの手紙、なかなか読めてないね?」
遊びに来ていたジョーケインが尋ねた。ロゼは「ひうっ♡」とのけぞっただけで答えられなかった。
「お、おっぱい♡ すごい感じちゃうんです♡」
「いっつもそうだよね。僕もそうなのかな?」
「試しちゃいますか?」
母親の乳を吸い終えた赤ん坊が、今度はその膨らんだ乳首を舌でぺろぺろとするいじきたない行いにムラムラとする。ちんちんは既に勃起していて、先がこすれてむずがゆかった。
男も乳首を感じてしまうんだろうか。試してみる、と答えると、ロゼが赤ん坊を譲ってくれた。マレーネは王子の顔を見ると、きゃははと笑った。この赤子は彼にとてもなついていた。はしたない、と言う声をものともせず、王子は上着を脱いで胸を出した。
「あふう♡ 男の子も、どうなんでしょうね♡」
乳首で得た絶頂の余韻に耽りながら、ロゼはマレーネの頭を撫でてやった。
「ほらマレーネちゃん、ぼくもおっぱいあるよ。吸ってみる?」
きゃは、と笑って乳児が少年の乳首に吸いついた。ちゅぱちゅぱ。れろれろ。とんでもない『おしゃぶり上手』に育つ吸い方だった。
「あっ♥ ほんとだ♥ へんなきもちになっちゃいそう♥」
「そうなんですね♡ おとこのこも乳首を感じちゃうんですね♡」
「うひゅひゅ♥ マレーネちゃん、吸い過ぎだよ♥ ちょっといたいよー♥」
王子が乳児によって乳首を開発されているのを横目で見ながら、手が空いたロゼは目を通す。湖にお尻を向けてうんちをぶりぶり。その話で旅への欲求が急激に高まった。
「あっ♥ そんな吸い方やだよう♥ マレーネちゃん、もっとやさしく吸って♥」
「ジョーケインさま、しばらくうちのマレーネちゃんにおっぱいを与えてあげてくださいね?」
「ん? なにを言っているの?」
ロゼは侍女に呼び掛けた。今すぐ旅の支度を。ジューンショーンには別の遣いをやって断りを入れた。すぐに返事が返ってきた。聖騎士団の何名かを寄越すから楽しんでいってきてよ。ここのところロゼが外出もせず、赤ちゃんにかかりきりであることをジューンショーンも心配していたのだ。
ロゼは満足な準備もせずに出発した。レーアがいる湖までは2日の旅程でいける。夕方には王都に出た。馬車の中で彼女は胸を高鳴らせた。
(レーアさんにやっと会える。わたしの『心の妹』に。)
本能が離れ離れになっていた肉親に、実の姉妹に会えることを嬉しがっていた。それには彼女は気づいていなかったが、まぎれもなくレーアはロゼの妹だった。
レーアとの再会をロゼは待ち遠しかった。その夜に泊まった宿で、護衛の者相手の性交でめくるめく快楽を受け、身体の栄養となる大量の精を得たが、その行為の最中でもレーアのことばかりを考えた。
その翌朝、ロゼは誰よりも早く目覚めた。横でいびきをかいて眠る護衛を起こさぬよう、ゆっくりと寝台から出て、寝室用の薄い衣を羽織って便所へ向かった。お腹の奥が排便を促す信号を送っていたからだ。
便所は客室がある建物の外にあった。中庭を挟んだところにある掘っ立て小屋がそれだった。サンダル履きの彼女は少し引きずり気味に歩いた。昨晩の性交の余韻がまだ膣奥に残っていて、大股で歩くと感じてしまうのもあった。
朝の光と中庭の木に止まった小鳥たちのさえずりで目を覚ましていきながら、掘っ立て小屋の中に入った。鼻にまとわりつく糞尿のにおいで、ようやく頭が覚めきった。
床にくり抜かれたはねっかえりが縁に付着した便穴をまたぎ、裾をめくってしゃがんだ。腹が起こしていた信号はもうすでに尻穴にまで続いていた。ふうっ、とため息を付いて排便の快感が来るのを待った。
彼女は敏感な肛門から何かが排出されるのを感じたのはそのすぐ後だった。しかしいつもと違った。肛門を押し広げるぶっといものや、ぶりゅりゅ、とけたたましい音を立てるぐちゅぐちゅとした便とは違った。
(下痢かな?)
まるでどろっとしたものが、少し開いた肛門から長々と流れていた。いつもと違うにおいがした。お菓子のようなにおいだと皆に言われた便ではなかった。金物くさくて生臭いにおいだった。生理の時に出る血のにおいによく似たにおいだった。
それは出るのがなかなか終わらなかった。試しに置いてあった雑紙で尻をぬぐってみた。薄暗い中でも色はなんとなくだがわかった。
「赤黒い……なにかしら……?」
すぐに気づいた。自分の体になにかとんでもないことが起こっている。ロゼは印を切って念話魔法で誰かを呼ぼうとした。だが遅かった。
「あ……れ……?」
ロゼはふらっとなって前のめりになった。身体が言うことを効かず、倒れてしまった。それから胸のあたりに激しい痛みを覚え、そのまま動かなくなった。
ロゼ=カツランダルク、逝去。享年13歳である。
出産で体力を著しく消耗したゆえに起こした心臓発作、が死因はとされたが、彼女の検屍に携わった者は見抜けなかった。彼女を殺したのは秘薬だ。
その毒薬だが、ゾウズジャヤ=エルフが細菌毒から作ったものだった。病死と見せかけて殺せる暗殺薬だ。彼女が飲んだ水に含まれたのが真相だった。
とはいえ真相を知らぬ者の中には、このような理由付けをする者もいた。
「やっぱり父親があれだから身体が弱かったんだろうね。いくらマイヤ様の真似事をしてたけど、あれがお命を縮めたんじゃないんだろうか」
彼女の出生に関わる噂の1つである、父親がイーガのアドルフ元王子だという説を取った者達である。ロゼがイズヴァルトの娘だという話は、彼女の体格を見て疑問符がついたままだった。ゆえに王家は検死結果から出る不都合な副産物を隠すことにした。
こうして、マイヤとイーガのアドルフとの、『呪われた子』のうち1人が死んだ。もう1人は生き残り、後に王妃となる運命が待っていた。
歴史の上ではレーアは姉以上の勝者となる。ほんの一時期だけ、となるが。