※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

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198 教帝という名前

 身体の相性。ヘラの旺盛な性欲。それと美少女ぶり。

 

 それだけでオルフレッドは教主が提示してきた話を承諾してしまった。パラッツォ教団の次の教主となる。ヘラ=ストーンマウントという娘との婚約の覚書にサインをした。

 

「うふふ♥ これから末永くよろしくね♥」

「どうぞ。僕のほうこそ。僕はまだ改宗はしていないけれど、君はパラッツォ教徒なんだし、お互い浮気し放題でいいよね?」

「教典に『浮気』という文字は無いよ♥ みんな気にせず、なかよしをすればいいんだよ♥」

 

 結婚が成立してから二週間は、オルフレッドはヘラと籠り切りになった。2人きりで深く強く交わり続けた。何せ子供を産みたいとヘラが望んだからだ。

 

 だが、それからヘラは「ちょっと遊びに行って来る」と言って、剣を抱えて出て行ってしまった。どこへ出て行ったのかとコーザに尋ねると、教主は申し訳なさそうな顔をしてこう答えた。

 

「ヘラさんは万事がああいう調子なのです。一つのところにじっとしていられない。ふらっとどこかへ出て行ってしまう」

 

 でも、数カ月もすれば戻って来る。きっとイズヴァルトを探しに行ったのだろうとオルフレッドは思った。彼女はあの男に懐いている様子が伺えたからだ。だから嫉妬心も生じた。

 

(所詮、僕はイズヴァルトの代わりというわけか。)

 

 でもその暗い気持ちも、すぐに忘れてしまった。自分を慕ってくれるアコ達や、囲った女達との逢瀬がそうさせてくれたのだ。それだけではなかった。乱倫と評するぐらいに性交がそこかしこで行われている街に出れば、オルフレッドは必ず情をねだる女に出くわした。

 

 エチウの女達はほとんどが巨乳である。おっぱい好きのオルフレッドは遠慮なく吸ってしゃぶり、激しく腰を振った。女達の幾人かは受胎した。

 

 そうして3月になるまで女達と貪りあってぼやぼやと過ごしていたところで、彼はとある人物の訪問を受けた。司祭騎士団の副団長で実質、コーザの参謀として頭角を現わしていた、イズヴァルトの元愛人である。

 

「初めましてでございますねえ。オルランドゥさん」

「ふうん。貴方が、噂の?」

 

 エレクトラ=ガモーコヴィッツだ。金髪の女児を腕に抱えていた。ヴィクトリアという名前だった。

 

「お尋ねをする機会が無かったものですから、失礼したとは存じておりますが」

「いやいや。司祭騎士団の副団長なんぞ所詮は裏方。表で活躍するオルフレッドさんに用事があるというのは無いもんでして。そりゃあそうとこの度は……」

 

 妹にあたるこの子の顔を見せに参りました、とエレクトラはおどけてみせた。要はヴィクトリアというのはイズヴァルトの娘だということを言っているのである。

 

(エレナにヴィクトリア……イズヴァルトのやつめ。)

 

 嫉妬心がわっと噴き出した。目の前の女、エレクトラは40の半ばを過ぎた年増女である。もうそろそろで初老の域だ。

 

 しかしエルフの血を引いているせいか、顔立ちは若々しくてとても美しい。イーガの王子を虜にしたという美貌がまだあった。小柄で胸は無さそうだが、十分にオルフレッドの獣欲をかきたてていた。

 

「あのう、すみません。今から押し倒して、その子の弟か妹を孕ませていいっすか?」

「あははは! オルフレッドさんはご冗談をおっしゃられるんですねぇ!」

「……何しに来たんですか? 僕を盛らせに? それとも、イズヴァルトがいなくなったから相手をしてもらいにですか?」

「いやいや、女を武器する歳じゃございませんぜ。もうすでにあそこはカラカラ。すっかりばあさんになってしまいましたよ、あっしは……」

 

 そうしおらしくうなだれるが全く信じられなかった。本能がこの女は、今も艶っぽいことをやっていると語っている。実際その通りだった。彼女は年増好みの信徒やコーザらと毎日『法悦』を楽しんでいたのだ。子供こそできなかったが。

 

「さて、冗談もここまでにいたしやしょう、旦那」

「僕はイズヴァルトみたいに、貴方の操り人形にはならないよ?」

「操る為の糸がかなり切れかかっておりましたけどねえ、あの方は……さて、ちょいとした話を持ち掛けに来たんでさぁ」

 

 そう言って彼女は、ヴィクトリアをオルフレッドに手渡した。義手となっている右腕の指をぱちん、とはじく。新入りの司祭騎士らがいろいろな紙を抱えてやって来た。

 

「さて、こっからが本題です。オルフレッドさん。王様になる気はございますかい?」

「……藪から棒に。何を言っているんです?」

「まあ、王様っていったって大したことはいたしやせん。殆どを部下に任せて自分は玉座でふんぞり返り、ヘラさんほかたくさんのおよめさんたちといちゃこらを繰り返してぽこぽこと赤ちゃんを産ませるだけの、簡単なお仕事なんですよ」

 

 それから彼女はこう言った。パラッツォが治めているこのエチウ諸島に、正式な国を建てる。教団が発布している掟やしきたりを、法律として正式に広め、事が起これば軍を率いる旗頭となる王を立てる。

 

「あっしと教主さまはその国を、パラッツォ教国、と名付けたんですがね……?」

「その国の王様にですか、僕を?」

「そうでさぁ」

 

 何故かちんちんのあたりをぺちぺちと叩いて来るヴィクトリアの膨れた下あごを撫でて返しながら、オルフレッドは少し考えた。

 

「でも、王様か。パラッツォ教国王。なんかしっくりと来ない」

「お引き受けしてくれるんですかね?」

「いや、王様とかその呼び名がどうも気に入らないだ」

「そうですかい。この国には教主様という本当の王様がおりますからね。まあ手っ取り早く言うと、あっしの前世にあった『にっぽん』の、天皇と征夷大将軍という2人の王様が並ぶ国になるわけでさぁ、パラッツォ教国ってえのは」

 

 ニッポン。その名前にオルフレッドはびりっとしたものを感じた。叔母マイヤの前世での故郷だ。天皇や征夷大将軍という名前だって聞いたことがあった。

 

「貴方もたしか……転生人でしたよね?」

「ええ。イーガ人として生まれる前は、マイヤさんと同じ世界で暮しておりましたよ。それもニッポンの。まああっしは、ロシア人の血が半分混じってましたけどねぇ」

 

 日本人の大富豪とその妾となったロシアの亡命貴族の娘との間に産まれた。それから日露戦争後の調子をこくようになった日本と、共産主義の国となったソ連の二重スパイとなった。ついでに中国共産党にも手を貸した。前世の名は藤本峰子。知る人ぞ知る美貌の女スパイだった。

 

「それ聞くと、なんか信用できない人って思えるんですが?」

「いやいや、まあ、このことを考えるための企画書や、エチウ各島の歴史や掟のレポートとかを持って来たので読んでおいてくださいな。それから、どうするか決めて行きましょう」

 

 そう言ったエレクトラは出て行こうとしたが、そうはいかなかった。ヴィクトリアが異母兄に懐いて「やだ!」とごねたからだ。

 

 仕方なくその夜は資料を読んでの勉強会となった。法律や風習は島ごとにそれぞれ違う。当然のことだ。エレクトラによる『まとめ』の話も聞いてオルフレッドはパラッツォの版図についての理解ができた。

 

(要約すれば……寄り合い所帯なんだ。ホーデンエーネンよりはいくらか意思疎通と統制がとれているけれど。)

 

 でもそれもコーザ=ストーンマウントというカリスマがあってのことだ。パラッツォのゆりかごの様な優しい教義だけではこうもいかない。この『集団』にはしっかりとした軸とまとめ役となるシステムが要る。それが国というやつだ。

 

(だからパラッツォ教国か。教主も、その本当の後継者になれそうな枢機卿らも長生きするとは思うけど……。)

 

 でもせいぜい、200年か300年だろう。教主とエレクトラは、パラッツォ教による国をもっと長く保たせたいのだと思った。その為の最初の『王』に自分が選ばれたのだとオルフレッドは思った。

 

(それをイズヴァルトは断ったんだろうな……だったら、僕がなればいいじゃないか。)

 

 王になろう。それがイズヴァルトを超える一番の道だ。オルフレッドはそう考えた。数回の説明の末、彼はヴィクリアにちゅっちゅをされて顔中よだれだらけにされながら、エレクトラに自分の意志を告げた。

 

「それでいいでしょう。パラッツォ教国、お引き受けいたします」

「おお! ヴィクトリアちゃんのハニートラップが効を奏したわけですな!」

「よだれをつけられているだけですよ……けど、王という名前はやはり、なんだか……」

 

 どうにも教主に位負けしているような気がする。だいいちホーデンエーネンといい、王様は大公に強請られて困っていたりするのだ。どうにも弱っちい感じがする。

 

「そういえば貴方とマイヤちゃんの前世と、カントニアにこういう名前で呼ばれている王様がいますよね?」

 

 皇帝。王たちのさらに上の存在、という意味らしい。エレクトラはにやりと笑った。

 

「エンペラー、ツァーリ、カイゼル、ファンティ……いいところに目を付けましたね?」

「このエチウの島々には、大公と言う名の王様がいた。でもパラッツォ教によって滅ぼされた。今、彼等は司祭騎士団の重職に就いて、その島々を差配しておりますよね?」

 

 ナオエニア島ほか、数多くの島は今も大公の一族が行政を担っている。大公の末裔が権限を大きく奪われて押し込められた、エチゴニアとカナザワースの二島は違う。パラッツォ教を激しく迫害した島の大公家がそうなった。

 

「おっしゃる通りです。万民平等という名目を掲げても、実質はそういうもんですぜ、世の中ってのは」

「なら僕は、その王たちを統べる王となります。『教帝』というのはどうでしょうか?」

 

 エレクトラはにんまりと笑った。教帝。なかなかに良い考え方だ。オルフレッドには英雄としての能より、王としての才があるのだろうと思った。しかし自分から打診して来るあたり、傀儡になってくれそうにない。

 

(トーリさんの息子さん、というわけですかね。だから思い切り任せてみてもいい、かもしれませんねぇ。)

 

 エレクトラの肚は決まった。教帝オルランドゥをこの世界の表舞台に立ててやろう。これからの10年、自分はその助力に貢献する。

 

 あとはイズヴァルトだと思った。エレクトラは彼を、キンキ大陸北部の王にすることを諦めていなかった。

 

 その行方を知っているはずのヘラは、イズヴァルトについて全く話してくれないでまた出て行ってしまった。教主も最近困り果てているという。彼女が考えていることと変化を、全く読めないそうだ。教主の神通力が衰えている証拠だった。

 

(だから、急がないとなりませんぜ。教主殿はうすうす感じている。自分が終わり時ってえのに向かっているのを。)

 

 だから、ヘラとオルフレッドである。これまでコーザが1人で担っていた聖と俗の、新しい担い手として彼等が選ばれたのだ。

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