聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
オルフレッドはイプセンから、仕事帰りのドワーフがトールキン本人だと聞くと、カバンに入れていたナオエニア駐在の兵士たちからの手紙の束を、トールキンに手渡した。
「おお、ありがとうな。儂は筆不精でなかなか手紙を書いて出さんからのう」
「意外と手紙を書くのが好きだった様に思われましたが?」
オルフレッドの隣に立つイプセンが笑う。互いの顔を見合わせた時、2人は抱き合って再会を喜ぶほど仲が良かった。
「ああ。そうじゃったか?」
「もうお忘れになられましたか。けど、文を書くのが億劫になってしまう、という時期もございましょう」
そうじゃろうなあ。トールキンは笑ったが、目に力が無く虚ろだった。その目でオルフレッドの顔を見る。
「そういや、ナオエニアにおった頃は、イズヴァルトからはしょっちゅう届いたがのう。あいつは筆まめじゃからな」
オルフレッドの眉間がかすかに動いた。わかりやすいのう、と思いながら、トールキンはイプセンに尋ねた。
「この兄ちゃんは、イズヴァルトの倅か弟じゃったか?」
イプセンは何も言わず、肘でオルフレッドの脇腹をつつく。この男は変なところで責任逃れをするのだな、とオルフレッドは思った。
「黙ったか。図星のようじゃな」
「ほうずらか? だったら、今晩の飯は贅を尽くさないといかんずらな!」
クリスタが驚いてみせた。あまりにもわざとらしい言い方に聞こえたので、気づいていたくせに、と、パスカルとトールキンは心の中で毒づいた。
「オルフレッドさんは、イズヴァルトさんのお知り合いだったんずらな? あの人におらはたっくさんお世話になったずら! 日々の暮らしだけじゃなく、おまんこが疼くといっぺえ癒やしてくれたずらよ! 風呂の後、おらとしっぽりやるずらか?」
オルフレッドははしゃぐ彼女にしがみつかれた。このままでいてほしいと思ってしまった。なぜならクリスタは彼好みのボディの持ち主だからだ。大柄でとても柔らかく、おっぱいが極めて大きい。吸い付きたくなる柔らかさが服ごしでも伺えた。
イズヴァルトの子どもでもある、4人のちっちゃなハーフエルフ達も『兄』を興味深そうに見つめだした。
「どうなんじゃい?」
鼻をすんすんとさせながら、トールキンがニヤリと笑う。
(どうせバレるだろうな。隠しても。)
意を決して答えた。自分はイズヴァルトの隠し子だと。
「それから、僕の母親はホーデンエーネン国王の愛人でアスカウの領主だった、トーリ=カツランダルクだ」
抱きついていたクリスタが、冷えた眼差しをオルフレッドに向けた。
「……そうだったずらな」
警戒の色が濃い、
「確か、イズヴァルトから聞いたことがあるずらな。うすぼんやりとしか覚えてねえけど」
「母さんが死んだことは?」
「それは知っているずら。イズヴァルトさんが教えてくれたずら。おまんもいろいろとあったんずらな?」
ここでいつものクリスタなら、身体で慰めてやろうとアプローチをかけるのだが、彼女はオルフレッドから離れてしまった。
彼女の中ではまだ、ユミールの父親の事に決着がついていなかった。ヨーシハルトス暗殺未遂の件で、トーリをかばう為に死んだようなものだったからだ。
オルフレッドはやっと、空気がわかり出した。商館にいて同行しなかったミレイユも、自分に対して警戒の目を向けていた。
「……母さんが何をしたのかは、よくわからない。けど、すごい先祖がいたっていうのは聞いたことがある。でもその力は男には受け継がれないらしいんだ。警戒しなくてもいい」
「それは無理じゃと思うぞ、『皆殺しオルランドゥ』」
「……!」
そのあだ名を知っていたのか。とはいえ、サワータキャビク島まで広まるのも理にかなっている。この二つ名は今、エチウ全域では、教主の次の次ぐらいに有名になっていた。
「確かに、そう呼ばれているのは知っている。でもそれだけじゃない。僕はいずれ、エチウの俗界の王になる」
『教帝』という称号で呼ばれるだろう。コーザとエレクトラに求められ、枢機卿たちからも支持を受けた。自分は王者になるから是非ともその手助けをしてくれる優れた人物を集めたい。
「そこで、あなたに頼みがある。イプセンとともに僕の片腕になってくれないか?」
「……!」
驚いたのはイプセンのほうだ。相談されていなかった。オルフレッドはそんなことを考えていたのか。
トールキンは笑ったままだ。オルフレッドの突然の申し出に驚く様子が無かった。
「その前に、まずは飯と風呂じゃ。その時にお前さんの身の上話をいろいろと聞かせてもらおうかのう」
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食いしん坊のエルフの料理は量が多いだけでなく、舌も満足がいくものだった。それから風呂は、診療所の裏手にあった。小さな家屋ぐらいの大きさの平屋がまるまる、それである。しかも鉱泉だ。
「小屋を建てたのと鉱泉を掘って風呂にしたのは儂じゃ。クリスタの家に居候させてもらっているからのう。その御礼でじゃよ」
洗い場で、石鹸につけた手ぬぐいで身体をこするトールキンが、並んで背中をこすっているオルフレッドに言った。どちらも鍛え上げられた身体で、あちこちに刀傷があった。
ドワーフのほうはもう1人のより数が少ないし痕は浅いが、戦いの経験はオルフレッドよりもはるかに上だ。なのに古傷で見劣りしてしまうのは、亜人の皮膚が頑丈だからである。
「このあたりもあちこちに鉱泉が?」
「そうじゃ。島のもんはあんまり存じておらん。蒸し風呂しか入らんからのう。パスカルの商会の社員は、その中で互いのちんぽをしごきあったり、舐めたりするのをしょっちゅうしておる」
あの男たちは男色家である。それは理解できるのだが受付にいる女エルフに手を出さないのがもったいない、とトールキンは笑った。
「あの女はあいつらとやりたくて、おめこを濡らしながらイライラしておるじゃろうな」
「なんなら僕が相手をしてやってもいいけど?」
「はは。さすがはイズヴァルトの倅じゃな。いや、トーリ=カツランダルクの息子じゃったか」
オルフレッドが身体に湯をかけ、身体についた石鹸を落とした。トールキンは横目でついつい見てしまう。エルフ女を相手してもいい、と言ってのける自信の源は、途方もなく大きい。
オルフレッドが立ち上がり、風呂に入るとそれがぶらんぶらんと揺れた。ほれぼれしてしまう。羨ましい。イズヴァルトといい何を食べればあんなにでかくなるのか、と思ってしまった。
とはいえトールキンのそれも20センチはあって、だいぶご立派なほうだ。大きさはオルフレッドには負けていたが、使いこなしている期間が長いからか硬そうで太かった。まるでボディビルダーの身体みたいのようである。
「風呂は気持ちええか?」
「僕の片腕だけでなく、教団の温泉技師になるのはどうだい?」
「戦士よりもそっちのほうが性があっておるわい。その役目だけならすぐにでも引き受けてやらんでもない。どうじゃ?」
「いいや。僕の近衛隊の隊長と兼ねてが条件だ」
「その話じゃったらのう……」
トールキンは風呂に足をつけ、オルフレッドとあい向かった。
「近衛には鉄騎将軍エドワード=ルーカスのほうが適任じゃろうて。儂は戦士にはなれるが武将にはなれんぞ?」
「なら、イプセンの側近になってほしい。彼はこれから僕の右腕となる男になる。地位がいきなりあがるんだから嫉妬を生むかもしれない。もしもの時の為の強力な護衛がいるだろう」
オルフレッドがトールキンの髭面をじっと見つめる。その眼差しはさっきの申し出よりも鋭かった。なるほど、とトールキンは思った。こちらが本当に考えていたことだろう。案外、この坊主は、小細工が得意な奴なんじゃのう。
「銀山町のダレンあたりに任せたらようじゃろうが。あいつらで十分じゃ。儂の出る幕はもう無い」
「だったら……僕があなたに勝てば考えを改めてくれるか?」
「そうきたか。お前さんは戦士じゃったな?」
「いいや、騎士だ。優れた人物を『従者』に加えたい、欲深いもののふだよ」
オルフレッドの意思の強さをトールキンは悟った。なかなかあきらめてくれなさそうだ。風呂から出ると儂の小屋へ来い、と言った。そこに鍛錬用の剣や棍棒がある。それを持って試合だ。
「勝てなかったら諦めてくれ。それと、喪に服しているもんが応じるんじゃ。負けたらふっかけるからから覚悟せいよ?」