聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
ホーデンエーネン王国暦でいうと、359年の8月のことである。
イズヴァルトが乗った船が、ヒッターチの王都・オアラポリスの港に入った。そこでシゲニウス皇帝に謁見し、これまでの話を聞かせようと期待していたが、現れたのは大臣と皇帝の妹たちだった。
皇帝の一番上の妹姫は、イズヴァルトを見て少しだけ頬を赤く染めながら、皇帝がどこにいるのかを答えた。
「兄上様はあいにく、ホージュリア様と一緒に国の外に出ております」
「国の外でござるか? なにゆえでござる?」
「野心にまみれたダテーゾフの大公が、我らの国の盟友たるミョーゲチャコフに攻め入ったからでございますよ」
「……なんと!」
話はこうだった。主君たるワターリ王家に何の相談もせずに、西のクボーニコフと同盟を結んだダテーゾフに、ミョーゲチャコフの大公が激しく抗議した。
「あんな馬鹿垂れ海賊国と手を組むなんて、アホにもほどがある、と罵ったそうですよ?」
「い、いい方が凄まじいでござる……」
「ミョーゲチャコフは海運国でもありますからね。クボーニコフの海賊たちに、たびたび荒らされて困ったこともありましたから」
ミョーゲチャコフはムーツ大陸の東部を治める、ワターリ王国の臣下国である。領土は大陸南東部にある、フタバニア平野一帯とその沿岸だ。決して大きくはない。
このミョーゲチャコフは、同じく名目上の家臣であるダテーゾフと仲が悪かった。ミョーゲチャコフはワターリ王家を重んじるが、ダテーゾフは足蹴にして冷淡である。
それと、ダテーゾフは王家の支流にあたるから、ことあるごとに偉ぶっていた。自分こそが本当のムーツ大陸東部の王者だ、などと思っている素振りを度々見せていた。そこに反感を覚えた。
「というわけで戦争がはじまりました。兵が弱糞ばかりのダテーゾフは一歩もミョーゲチャコフの土地を奪えてないみたいですけど。でも、兵の数の差があるので、兄上様は義姉上様と共に、1万の軍を率いてミョーゲチャコフ救援に向かったのでございますよ」
ヒッターチは北部にあるイワキエル平野の遊牧民を介して、ミョーゲチャコフと交流を深めていた。そのミョーゲチャコフだが、住民の多くは金色エルフやムーツのゴブリン族の血が流れている。
それと、住民の10分の1ぐらい、ヒッターチから流れて来た者がいた。そうなると対岸の火事だと放っておくわけにはいかない。
「イズヴァルト様とイナンナ様がたは、これからどこへ向かわれるので?」
姫たちの傍に侍っていた大臣が尋ねると、ムーツ大陸に向かうところだった、とイズヴァルトは答えた。
「ツダサンチョーどのがそこに眠る、『ぼくがかんがえたせかいさいきょうのぶき』レベルの秘宝を探しているそうでござる。それを受け取りに向かうのでござるよ」
「ああ。『
自分はオーガの里の出身だから話ぐらいは聞いたことがある、と額にツノが生えていない大臣は言った。
「ムーツ大陸全土を治めた伝説の英雄、アテールイさまが、宿敵タムラマーロとの戦いに敗れ、ヒラーイズミに逃げた際に見つけたのだとか」
「ほうほう。いやに詳しいでござるな?」
「あくまで、言い伝えだけですよ。ただ、アテールイ様は身長18メートルで、体重は43.4トンもあったという規格外のオーガ。果たして、そのような英雄が扱っていた武器を、イズヴァルト様は扱えるのでしょうか?」
「そ、そんなに大きかったのでござるか?」
あくまで言い伝えだと大臣は答えた。ツノが縦に伸びているのではなく、額にあるこぶから横に生えていたそうだ。
その宿敵だったタムラマーロもまた、とんでもなく大きかった。身長は17.3メートルもあり、ツノが頭の側面に生えていた。隻眼だったらしい。並みのオーガの3倍も動いて強く、『独眼竜』と恐れられていた。
そのような英雄が持っていた武器を、果たして使いこなせるだろうかとイズヴァルトは恐れた。しかし先の事を考えても仕方が無い、と自分に言い聞かせて強気にも聞こえることを言って見せた。
「むしろ、かような英雄の武器は是非ともお目にかかれたいでござる。果たしてどのような力を秘めているのか、わくわくするでござるな」
というわけで善は急げだ。ムーツへ渡り、シゲニウス皇帝の軍に加勢して、ダテーゾフを打ち破るべし、である。
是非ともシゲニウス帝の軍に加わりたい。それでは御免。そう言うと姫君がイズヴァルトこう言った。
「せっかくですし、1週間ぐらい逗留してみてはいかがでしょう? このヒッターチがどれほど栄えているか、お目にかかっていただきたいと思いますし」
□ □ □ □ □
オアラポリスの周囲は、園芸農場が多くできていた。イズヴァルトが訪れた10年前には無かったものだ。
シゲニウス帝は軍事だけでなく、農業や商業にも手を尽くしているという。
園芸農場には、透明で柔らかい樹脂の布を軽く強固な骨組みに張って作った、おまんじゅうの様な形をした構造物が、いくつも並んでいた。
その中だが、温風魔法の装置を動かして暖かかった。比較的寒冷なヒッターチでは獲れぬ、熱帯の果物や野菜が栽培されていた。
農場の案内役だが、皇帝の二番目の妹姫である。彼女はこうした農場の運営を兄から任されていた。マレーネと知り合いで、こうした農場でつくる野菜について手紙で教えてもらっているとのことだった。
「で、この黄色がかった果物が、シマナミスタン原産の糖タマゴの実でございますよ。兄上はマンゴーと呼んでおりますが」
姫君にナイフで切ってもらい、マレーネらとともに一口入れてみた。甘くてみずみずしい。ホーデンエーネンでは滅多にお目にかかれぬ味だった。
「……これはたまらぬ! ヒッターチの人々は誰もがこれを食すことができるようになったのでござるか?」
「まだ貴族や金持ち、あるいは、こうした農園で働く農民の間でしか出回っておりませぬが、これを凍らせたものをツックバーのメルビナさまにおすそ分けしましたところ、大層お喜びでしたわ」
しかしツックバーの皇帝は、まるでお気に召さなかったそうだ。
美食に慣れて舌が肥えているだろうから、おいしく食べていただけると思いきや、まずい、と呟いて吐き捨てたという。
【ギルバート=カツランダルク注:オーダレイオス二世のことである。サーガではまだ在位中としているが、史実では嫡子の幼いオーダレイオス三世に位を譲っている。メルビナの母である、ミナッカミニア=エルフのキファニア暗殺を企て、露見し、その償いの為というのが有力な説だ。オーダレイオスは譲位の前に、3人の側室を失っている。死因は歴史書に記されておらず、不明である。】
ツックバーの皇帝はお気に召さなかったが、こうした農園で栽培された果物は概ね好評だった。
銭になりそうなものに欲深い、コーガ王国の『大御所さま』こと、ヘファイスティオン=キツレティスは、シゲニウス帝に宝石と可愛い男児エルフのお稚児奴隷を贈呈して、この温室を作った会社を紹介してもらった。
シゲニウスの妹姫が、マレーネと付き従うオットーに笑顔を向けた。
「これも、イーガの皆様が誇る、『マイア=テクニカ』のおかげでございますわ!」
透明な樹脂製の壁と屋根の温室は、イーガの世界的魔法工房『マイア=テクニカ』の商品であった。
温室は、司祭騎士団長を捨てて玉の輿に乗ったあの悪女めが考えたものでは無かったが、彼女の部下が作り出した。鉄砲や『たぶれっとぱっど』よりも役立っていた。
【ギルバート=カツランダルク注:これは間違いである。マイア=テクニカの創設者であるマイヤは、樹脂製温室の製品化に参加していた。『栽培まん』という商品名も、彼女がつけたものである。】
「オアラポリス近郊の農場だと、このタイプの温室……『栽培まん』ばかりでございますが、もっと郊外の農場に行けば、兵舎のように長くて大きな、『大躍進豊作』を並べて育てておりますのよ」
「ほほう、なんだかうっさんくさい名前でござるな。これはどなたが名づけたのでござるか、マレーネどの?」
「……違いますわよ? そんなお素晴らしいネーミングセンス、わたくしにはございませんの」
イズヴァルトの隣にいたローラが眉間を引きつらせた。何か心当たりがあるのでは、思ったイズヴァルトは聞いてみた。
「な、なんでもございませんよ。あははは……」
この女軍師だが、『マイア=テクニカ』とは特に、繋がりがあるわけではなかった。
□ □ □ □ □
かくして。オアラポリスでのしばらくの逗留の後、イズヴァルト達はムーツ大陸へと旅立った。
そこではシゲニウス帝が皇帝妃・ホージュリアと共にミョーゲチャコフに攻め入るダテーゾフと激戦を繰り広げているという。
イズヴァルトは揺れる甲板の上に立ち、北からの冷たい潮風を受け、激しい波音をたてる荒れ海を眺めながら、船酔いのせいで桶に顔をつけて「おええええっ!」とえづくミツクニュモスとオットーをちらと見ながら、北の地で待っている苦難に思いを馳せていた。
「……シゲニウス殿は無事だと良いのでござるが。そしてこの旅の行方も」
「おええええっ!」といううめき声がもう1人加わった。ローラであった。
彼女は吐いた後にしがみつき、酔い止めの薬にとイズヴァルトの股間をねだりだした。
「い、イズヴァルトさまの股間から出るものが欲しいです。このままではまた吐きそう……」
イズヴァルトはズボンを降ろし、ちんぽを晒した。
それを見るなり、ローラは目を輝かせてすぐにしゃぶりつく。
舌と唇を激しく動かす吸い立てぶりに、たちまち輸精管のあたりがしびれを覚えた。
「う、うう……拙者のおちんちんが『おしゃぶり酔い』してしまうでござるよ……」
しばらくの後にイズヴァルトは、ローラがすぼめた口の中に『おくすり』をくれてやった。しかし、たった1発では済まされなかった。
そのまま2度3度放つまで吸い立てられ、揺れる甲板の上でとうとうへたりこんでしまった。
「倒れるとはなんとも情けないことでござるよ。とほほ……」
しかし、ローラが物欲しそうに尻を振り、交合が始まると、彼女の温かい身体と熱い蜜壺とで寒さを全く感じなくなった。
自分を愛し尽くしてくれるこの女とならば、酷寒の地でも躊躇わずに進める。
そう勇気づけられて北の大陸へと向かうが、さて、その旅の最初の地である、ミョーゲチャコフではいかなる事とあいなったか?
その続きについてはまた、次回にて。