聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
その頃、ミョーゲチャコフとダテーゾフの両軍は、ミョーゲチャコフ領最北端の要衝である、ユリアゲツクにて対峙していた。
両軍の戦争は、この地での砦や関所の取り合いに終始していた。そうした防備は奪ったり取られたりを繰り返しているがゆえ、柵や板壁はとうに燃やされ、崩れかかった土塁ばかりとなっていた。
相手の領土を制圧し、実効支配するという意味においては、戦況は遅滞していた。
ダテーゾフは総勢28000。
ミョーゲチャコフは、ヒッターチの援軍を併せると16000程。
数はダテーゾフのほうが優勢だが、兵の質と士気は俄然、ミョーゲチャコフ側のほうがはるかに上だった。
とはいえ、ミョーゲチャコフ側はこのところ、急激に疲れてきていた。段々と敵が制した砦を取り返せなくなり、ダテーゾフの優勢に傾きつつあった。
その原因が、ミョーゲチャコフ大公夫人が言った『困りごと』にあったのだ。
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世の人に英明をうたわれた若き皇帝、シゲニウス=アルゲアスも25の歳となった。
口には艶のある髭をたくわえ、身体つきは筋肉と贅肉がほどよくつき、王者の風格を伺わせるようになった。
その妃であるホージュリアといえば、イワキエル平野の遊牧民エルフの血を引いて美しく、しかも馬上で弓矢と剣をとれば、ヒッターチ最強の女騎兵と恐れられるほどだ。
それから彼には9人の妹がいた。一番上と二番目は政務の代行を頼める程に頭が良かった。成人の儀を終えた下の妹たちも、補佐の仕事をきっちりとこなせそうだと評判であった。
【ギルバート=カツランダルク注:シゲニウス帝の父・アキレウス帝は三十歳頃にみまかったが、シゲニウス帝を含む10人の子を遺した。ただ、シゲニウス帝には弟がいなかった。】
シゲニウス帝は統治だけでなく、兵法や軍制度にも知悉していた。
騎兵一辺倒だったヒッターチ軍に、投擲爆雷の兵団や通信魔道士を配した斥候兵団などを創設し、カントニアの軍事史を塗り替えたと後の世の史家にも褒め称えられた。
【ギルバート=カツランダルク注:シゲニウス帝の軍事の才は、『五色備え』を発案した次男のアイスアロスに受け継がれた。軍を大きく5つに分けて旗の色を塗り、速攻、防衛、突撃、水戦、決戦(本軍)と用途に分けて運用したという。アイスアロスは『黒備え』と恐れられる精強な本隊を率い、数々の決戦に勝利したという。】
シゲニウス帝の采配は、ミョーゲチャコフの猛者達も舌を巻くほどだった。ダテーゾフ側の砦をいくつも取り、敵将のうち2人を戦死させる程の勝利も収めた。
だが、敵は数が多く、砦はカントニアのそれとは違って簡素なゆえ、取り返されることもよくある。
戦いは優勢でも大勢に進展は無かった。むしろ、ヒッターチの武将らの間では、圧され始めていると言う者さえ出てきた。
「ううむ……この後はどうすべきだろうか?」
本陣にたてた天幕の中で、シゲニウス帝は腕組しながらぼやいた。砦の取り合いをするダテーゾフが、意外にしぶとくて手強い。
その理由は明らかだった。かの国にはオーガの兵団がいくつもあり、この戦いではおおよそ、600の戦士を投入していた。
とはいえ、ミョーゲチャコフには世界最強の軽騎兵集団と言われる、『騎馬愚連隊』がいる。
たかだか4000騎だが、対オーガの武装を施していた。毒を塗った
『騎馬愚連隊』はこの攻防で、300あまりのオーガの戦士を討ち取ったり捕虜にしてしまった。
ダテーゾフ方に参加していた敵方のオーガの大将らは、騎馬愚連隊との戦闘で多くの部下を討ち取られ、後方に退くと言い出すようになったという。
オーガ兵はいわば、精鋭部隊だ。今はこれを封じた。後は数が多いニンゲン同士の激突のみ、というわけであるが、そこからが正念場なのだが、ミョーゲチャコフの士気は滅法下がってしまった。
理由はわかっていた。連れて来た女エルフたちのせいだ。
皇帝の近衛部隊には、サガミニアから来た者が。ざっと100人。10年ほど前の、ツックバーとコーガとの騒乱の折りに移住してきた者たちである。
イワキエル地方の遊牧エルフからは、800名もの女エルフがやって来た。これは、おおよそ部族の大族長の娘であるホージュリアに助太刀しようと志願した者たちだ。
戦況が有利になると、この女達がミョーゲチャコフの兵士たちに、性的なちょっかいを出すようになった。戦さの無い日や夜は乱交祭りだ。
それはヒッターチ軍もそうだったが、こちらは女エルフの貪欲さには慣れている。祖先がエルフ族だった者も多く、ちんぽから精を出す回数こそ少ないが、女どもの過酷な要求を凌げるぐらいには鍛えられていた。
しかし、ミョーゲチャコフの者は性愛に関して、いまいち大人しめである。エルフよりもゴブリン族の血が濃い者がいるからか、前戯こそねちっこいが挿入や射精がそっけない。
シゲニウス帝は今夜も、天幕の外から聞こえる、男と女の交歓の声を耳にしながら、戦いのゆくえについて真剣に考えていた。
が、頭は確かにいくさのことでいっぱいだったが、彼が着ていた騎兵のズボンは前を開けられ、剥き出た亀頭は白く大きな乳房によってくすぐられていた。その先端からはぬめった汁が垂れていた。
「むむ……考え事ができなくなった」
シゲニウスは足元を見た。白く大きなツノが生えた女オーガが、大きな乳房を寄せて陰茎をくすぐり続けていた。そのくせ、腹は引っ込んでいるのに、尻と太もももむちむちとしていた。
「ヒッターチの御殿様、こっからどうすっぺ?」
この女はヒッターチのもう1つの友邦・アイヅバルドの大公の伯母にあたる人物だ。5年前に夫に先立たれ、大公の紹介でシゲニウスが妾にもらった。
ニンゲンで言えば30ぐらいの中年女の歳だが、胸と尻と太ももは豊かで、顔立ちも若々しい。子も3人生んだというが、腹はまったくたるんでいなかった。
【ギルバート=カツランダルク注:諸説あるが、この女はこの時、220歳頃だったそうである。個人差はあるが、ニンゲンの30歳ぐらいだとオーガは200〜250歳である。】
ぶらさげていた金玉袋の中身が、張って重くなっている感覚があったシゲニウスは、相手に尻を向けろと呼びかけた。
「すぐに入れてすっきりしたい。前戯は省かせてもらう」
「さすけね。おれのべっちょはもういいあんべだよ。げすめどがひくひく動いてんの見えるだ?」
言われる通りである。オーガの妾の、剃ってやや青くなった陰裂からは女汁がどろりと垂れ、尻穴はひくひくと動いていた。すでに受け入れの準備が整っていた。
シゲニウスが考え事をしている最中、陰核と同じぐらいに感じやすい、この女のツノをくすぐったりさすったりしたのだ。
シゲニウスは脚を曲げ、妾の尻にしがみついた。でかいものに突かれてがばがばだと思われている女オーガの膣だが、締りはほどよくきつかった。
シゲニウスは女オーガのツノを優しく掴んでさすりながら、腰を振り動かした。
頭と下半身に快楽が走った彼の妾は、尻穴を開いたり閉じたりしながら、襲いかかる悦に浸った。
「んああっ♡ 気持ち良すぎて、ばっこでちゃいそうだべ♡」
気持ち良すぎてうんこを漏らしてしまいそうだ。そう喘ぎながら尻をくねらせる女の奥に、シゲニウスはどっぷりと精を注ぎ込んだ。
「ふうう……」
「も、もうおしまいだべ?」
「まだだ。今夜はもう2発ぶち込ませてもらう」
「
この女はイキ過ぎると、よく小便を漏らす。そのにおいがたまらなくいやらしいので、シゲニウスはいつもほじくり続けてしまうことが多かった。
しかしその晩のこの妾との交合は、もう1発を膣奥に放ったところで、終わってしまった。
オーガのくにくにとした陰裂の奥で、またも果てたところで、天幕の外で皆に大声で呼びかける副官の声を聞いたのだ。
異変を悟ったオーガの側室は、急ぎ桶にかけた濡れ手ぬぐいを取ってシゲニウス帝の股間を拭き、剣と甲冑を持って来た。
彼女も服を着始めたところで、催促してくるシゲニウスは「入れ!」と外にむけて声を放った。頼みにしている1人の副官が、ずかずかと入って来た。
「ご注進! 皇帝陛下、ダテーゾフが総掛かりで攻めてまいりました!」
「なんだと!」
珍しいことに、夜襲を仕掛けてきたのだ。ダテーゾフは夜、絶対に仕掛けて来なかった。
シゲニウスは諜報を通して知っていた。かの国の指揮官らは全員、戦場に愛人を伴っていた。向こうも夜はお楽しみに耽りたいのだ。
「……くっ! 向こうも夜の作戦は避けると思っていたが、気を緩めすぎたか!」
備えの前列では、既に交戦が始まっていた。
そちらには流石のエルフたちも、ちょっかいを出していなかったから立ち上がれたのだ。
「夜な夜な女エルフたちのやかましい声が聞こえるゆえ、仕掛けてきたのかもしれませんな!」
「御殿様、討って出るんだなし?」
「……待て」
この奇襲で、何か驚くべき策を用いるつもりかもしれない、とにらんだシゲニウスは、この本陣の後方にある後備えにも準備をさせろと命じた。
「後方及び側面も密集形態で固めさせろ。できれば方陣隊形で。ミョーゲチャコフにも伝えてくれ」
ダテーゾフ軍についてだが、魔道士があまりいなかった。いても優秀ではなく、魔法による面の制圧攻撃は考えられなかった。だから密集陣で良いと判断したのだ。
妾が着物をまとい、具足を身に着けた。突剣と薙刀を手に取った。彼女も敵が現れたら戦うのだ。オーガだから膂力と素早さは並みの戦士をはるかに超える。良い妾であり護衛であった。
シゲニウス帝もやって来た寝ぼけまなこの小姓達に手伝ってもらい、鎧に身を包んだ。
後はミョーゲチャコフ側からの回答と、自軍の守護神たる人物のお目覚めを待つばかりだ。
その人物だが、昼間の戦いで馬上の人となって、『騎馬愚連隊』に同行して大いに戦果をあげた。
しかし体力を人より多く消耗する馬の乗り方と戦い方をするので、夜は必ず深い眠りにつくことになっていた
「彼女が目を覚ましてくれれば、とりあえず背後を取られても問題ないだろう」
「……お目覚め、なさるんかよ?」
「本当はその前に、決着をつけたいんだけどな」
天幕を出た。既に本陣の兵士たちは装備を整え、剣や槍を携え待っていた。
馬上の人となった副官も配下の騎兵数名を伴って現れた。
小姓達が皇帝の愛馬を連れてくると、シゲニウスはそれに乗って号令をかけた。
「ヒッターチの荒武者達よ! まずは柵の後ろに、塹壕の中に籠もって守りを固めよ! 前列が劣勢になったら退かせ、敵兵が深入りしたら誘い込んで返り討て!」
その時だった。北の方角から何かが飛んできた、と声があがった。
「まさか、投石砲か!」
いや。顔を上げたシゲニウス帝が星空の光でかすかに見たものは、人型の影だった。
しかも1つや2つではない。100や200はくだらない。
小さく見えたそれらが大きくなると、ホーデンエーネンの騎兵の
「ニンゲン! 投石器で飛ばされた自殺部隊か!」
「いいや、そんなものの姿は見えなかったぞ! あれは飛翔術式の使い手だ! 魔法戦士だッ!」
飛んできた戦士たちは地上に向かうに連れ、速度を早めて急降下。本陣のあちこちで轟音や土埃がいくつも立った。
空からの突撃の直撃を受け、幾人かの兵士達が槍先に貫かれたり、着地時の下敷きになって肉と血を散らして果てた。
空からの槍兵らは、誰一人欠けること無く着地して、折れた突撃槍を捨てて剣や斧を手に取り、ヒッターチ兵に切りかかる。
その殆どが、ダテーゾフ人であった。金髪碧眼あるいは紅毛ではあるが、顔立ちがのっぺりとしている。どこかでオーガ族の血が混じったからだろう。東部ムーツ人によくある顔立ちだった。
しかし、顔立ちがまったく違う集団が混じっていた。およそ30名。その全員がダテーゾフ人よりも獰猛で、腕が立つのだが、その中でも特に酒臭く、どこか女に不自由しなさそうな無精髭の中年男が、段違いに強かった。
立ちふさがった数名を、またたく間に斬り伏せて、その男は思い切り酒臭い息を吐いた。
「シゲニウス=アルゲアス、どこだ! お命頂戴つかまつりに来た!」
「ここにいる!」
戦いに興奮し過ぎて、シゲニウス皇帝はついつい名乗ってしまった。男は目を雄叫びをあげ、単騎駆けで殺到する。
皇帝を守る近衛だが、ハーフエルフやオーガの血を引く猛者がいた。しかしその男にものの数合で構えを破られ、斬られた。命こそ奪わなかったが、利き手の腱や足元を切り裂く名手であった。
刺客の動きは素早い。酒のにおいが漂う疾風であった。シゲニウスの守りが薄くなった。
「御殿様!」
オーガの側室が前に出た。薙刀をぶん回して激しい風を起こした。刺客の剣士も間合いを取り、深呼吸をする。
「覚悟してくんつぇッ!」
動いたのはオーガだった。しかし相手は剣先で印を切った。突風術式をかけて飛び込み、うまい具合に女の胴丸とぶつかった。
「うわあっ!」
思ってもみなかった奇手をやられ、女オーガは後ろに倒れ込む。だが、相手は踏ん張って剣をふるった。彼女は右のツノをばっさりと切り落とされ、悲鳴をあげた。
「……女でも、オーガと正面きって戦うなんざごめんまっぴらだよ! 皇帝!」
その生命を貰い受ける。そう叫んで馬上のシゲニウスに切りかかった。シゲニウスは剣術も収めていたが、この男の剣さばきは別格だった。たちまち武器を弾かれ、相手に腕を掴まれた。
「恨みはねえけど命は頂く! 恨みっこなしだからな!」
刺客が皇帝の首めがけ、刃を突きこもうとする。しかし、男はその手を止めた。
「キシェエエエエッ!!」
激しく鳴る蹄の音とともに、怪鳥のような叫び声があたりに轟いたからだ。
「キシェエエッ!」
またも同じ声色でそれは叫んだ。黒い荒馬に乗った金色の髪の、20になるかならぬ年頃に見える顔立ちの女であった。
ただ、全裸であった。
背は160ほどであったが、とても鍛え込んだ体つきをしていた。腹筋は割れ、二の腕に力こぶができていた。
しかし愛らしさと凛々しさが同居する、美しい顔かたちをしていた。全裸であったが、思わず目が向いてしまう顔をしていた。
全裸よりも妙なのは、またがっているその鞍には縦に、ぷるんとした丸っこい柔毛の列がついていたことだ。
彼女は丸出しの下腹をそれにはげしくこすりつけ、「きしぇええっ!」と叫びながらシゲニウス帝のもとに馳せ参じようとしていた。
「くそっ! もう目覚めやがった!」
刺客は急ぎ、皇帝の命を討たんとするがさて、この女は一体何者であったのか?
この続きについてはまた、次回にて。