聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ 作:CHACOとJAGUAR
入り口にあった立て看板には、サカーイ及び他の港町への旅客船はしばらく運航停止。旅券の販売も禁止と張り紙がされていた。
それを思わず見逃してしまったイズヴァルトとマイヤは、建物の中に入るとたちまち数名の水軍武者に取り囲まれて詰問された。
「イズヴァルトさん! イズヴァルトさんではないですか!」
「しかもかわいいおしゃぶり姫さんも!」
「あははは! こんなところで奇遇ですなあ!」
いや、貴殿らは初めて見た顔でござるよとイズヴァルトが言おうとすると、まあまあまあ、となだめられて2人は連行された。向かった場所は軍港内にある海軍の司令部だった。
そこではしめやかに葬式が行われていた。現アジール海洋公とほか数名の棺が。
「こ、これはどういう事でござる?」
イズヴァルトは応対した海洋公の副官に尋ねた。昨日の夜、何者かの襲撃を受けて側近ともども討ち死にしたのだという。
「昨晩、どんな場所で討たれたのでござるか?」
「この軍港から南東にある街区でです。狭い路地を通りかかっていたところに上から矢を射かけられたようです」
どんな矢だったのかは調べがついている。しびれ薬をつけた矢であった。皆がまとっていたのは胴だけを守る簡素な革鎧だったから、突然の上から襲撃に為す術が無かったようだ。
矢自体はホーデンエーネンの各都市の武器屋で売っているような護身用の大量生産品。矢じりが細くて錐みたくなっていた。殺傷力は低い。獣や盗賊を追い払う時に使う様な代物だった。
ただ、遺体に刺さった矢は信じられないくらいに深々と肉の奥まで食い込んでいた。別の部屋で見せてもらった。矢先から『のう』にこびりついた血の痕を見てマイヤは考え込んだ。
「これ、弩弓を使ったのかな。はたまた連弩……いや、長いなあ。弩弓には向いてないかも」
「長弓などに使う矢でござる。いやしかしこんなに深くまで血がこびりついているとは」
相当強い弓で放ったようだった。イズヴァルトは強弓も扱えたが連射はできない。弓の師の速射を見たことがあり、それを思い出してまずは複数人が待ち伏せして海洋公らを討ったと考えた。
「……ところで、その南東の街区にどのようなご用事だったのでござろう? とても美味い飯屋があるのでござるか?」
「あの辺はこの街一番の歓楽街ですよ。妓楼は北街区にこそありますが、それに匹敵する娯楽が溢れているんです」
水軍武者らが言う。劇場や賭博場で有名であると。特に賭博場はカントニア南部にある博打好きの聖地・ヒラッカの街といい勝負。
「札当てやさいころ転がしはもちろんのこと、『すろっと』や『ぱちんこ』まであるんですよ」
「ぱ、ぱちんこでござるか?」
なんでござろうとイズヴァルトはマイヤに尋ねる。彼女はとても不思議そうな顔をしていた。
「ぱちんこ? あれがこの世界にもあるというの? ひょっとして私の様な転生人がもたらしたのかしら」
マイヤはイズヴァルトの腕をつかんだ。本当にそんなものがあるのか、確認したい。イズヴァルトは武者らに1つ協力する代わりに、サカーイ行きの小軍船を用立ててくれないかと頼んだ。
「下手人は捕まえる事ができぬかもしれぬが、拙者とマイヤで出来ることがあれば協力するでござる」
「実にありがたい。捜査は我々で致しますので、下手人が見つかれば助太刀をお頼みいたしますぞ」
□ □ □ □ □
「イズヴァルト。私ね、前世の世界でたまにこれをやっていたんだよ!」
「……ほう。もともとはマイヤの世界のものでござるか」
「そうだよ。実は私、こういうのが得意なんだ!」
街区で一番大きな賭博場にある、『ぱちんこ』なる遊技台の前に座ったマイヤがつまみを回す。釘で通路があり、手持ちの銀玉を当たりや大当たりの穴に入るゲームであった。
自信たっぷりに向かった彼女だが、瞬く間に銀玉を吸いつくされた。あははこれはたぶん出ない台だよね。別の『ぱちんこ』の台に座り、銀貨1枚で買った沢山の銀玉を投入口に入れる、
「……またすっからかんになってしまったでござる」
「あはは……これは多分出ない台なんだよ」
「さっきもそう申したではござらぬか?」
「と、とにかく別の台を試してみるね!」
そこでも、次の台でもマイヤが買った銀玉は残らず消えてなくなってしまった。「むきーっ!」と声を上げてもうおしまい、と宣言して席を立つ。30分のうちに銀貨4枚を失ったマイヤを見て、イズヴァルトはやれやれだと嘆いた。
賭博場にはマイヤが前世の世界にあったと告げる、『ぱちんこ』や『すろっと』の台がいくつも並んでいた。入口から向かって前方のブースは殆どがそれだ。
その奥にはカードやさいころによる博打が行われていた。カードゲームの進行役やさいころ振りの女はおおよそ、14、5歳ぐらいの美少女ばかりだ。どういう手合いなのだろうかとイズヴァルトは武者らに尋ねた。
「この店はこの時間、若い娘を置いているようですね」
「ああいう対面の博打はきれいな女の子を置いているんです。なにしろ見栄えがいいですからね。男だと食いつきがよろしくありません」
しかしこの店限定であるが、面白い趣向を凝らしていると武者の1人が言った。カードゲームは進行役と勝負するのだが、進行役に勝つと服も脱いでくれる。
「何回か勝ち続けて、進行役が薄い下着1枚になったら客に尋ねてくるんですよ。女か、男かって」
「ふむ……?」
「その進行役の本当の性別を当てるんです……実は、この店のああいう『美少女』のうち、8割はついているんですよ」
イズヴァルトは驚いた。あそこに見える美しい少女が男かもしれないと。武者は当てれば「両方ともお持ち帰りができる」とささやいた。
「しかし、女装の男娼を聞いたことはござるが……ベートーベンどのから」
ベートーベンとは聖騎士団内でのイズヴァルトの二歳年上の同僚。共にマイヤのおしゃぶりを受けたり、彼女の尻穴をペニスで愛でるのを競う程の親友でもあった。
この時からベートーベンという男は、男色の愛好者となっていた。子を産ませ、妾にした平民の娘達の増長ぶりと辟易し、男との恋に逃げてしまったからだ。
「なかなかに上手なそうですよ。どうです?」
「あ、いや……その……」
それを聞いてマイヤが「にひ♥」と笑った。
「イズヴァルト、あそこで賭け事をしてみようよ♥」
「な、なにを言い出すでござる?」
「さあさあ、賭けてみようよイズヴァルト♥」
それは困るでござる。イズヴァルトは固く辞した。マイヤがふてくされて負け組達が集う酒場へと向かった。彼女は平気で酒を注文した。カウンターの店員が渋った。
「酒は15歳にならないと出せないよ?」
「私、こう見えても33歳です!」
「……えらく若作りだな。まあそのでかいおっぱいと背丈を見りゃ15は過ぎていると思えるが……顔立ちはせいぜい10歳ってところだな」
マイヤが目をキラキラとさせて見てくるものだから、店員は仕方なく言われた酒を出した。シマナミスタン名物のサトウキビ酒である。酒精がやや強めの為のんべえぐらいしか頼まないものだ。
マイヤはそれをちびりとやり、とても気持ちよさそうなため息をついた。それからにひひひひと笑い始め、変な鼻歌をうたいながらまたもちびちびと。
博打で金を吸い上げられた後に飲む酒もまた美味い。人生の敗北者は酒で憂さを晴らすのがよくわかる。などと独り言を発してぐいっと。
「ふい~っ。おじさん。もう一杯ちょうだい?」
カウンターの店員は戸惑った。おちょこの様なサイズのグラスであるが、その様な飲みっぷりでは身体を悪くしてしまう。マイヤは顔を赤くして目をきらきらと輝かせているから断り辛い。
そこにイズヴァルトがやって来た。マイヤは酒癖が悪く、酒場に連れて行くと彼はいつも苦労した。酔いすぎるとその場で脱いですけべえでへたくそな踊りを始めたり、男達におしゃぶりを施そうとしたりするからだ。
「これこれマイヤどの。その1杯だけでござる!」
「ええ~っ? けち! 負けた思い出を消し去ろうとしているのにどうして邪魔するの!」
「マイヤはまだまだ子供だからでござる。それにお酒は飲みすぎると頭が悪くなると聞いておる。飲んで嫌な思い出だけじゃなく、読んだ本の事まで忘れてしまうでござるよ?」
「いやいや。飲めば飲むほど思い出というか記憶が深くなるんだよ!」
「だったら、博打に負けたくやしさも深く刻み込まれるでござろうに?」
「ちぇっ。わかってないなあ! おじさん! ほらほらもう一杯!」
「……困ったでござる」
イズヴァルトはマイヤを抱き上げて便所に連れ込んだ。大便用の個室の中で、これで我慢しろと自分のペニスを取り出すと、マイヤは喜々としてそれにむさぼりついた。
れろれろれろとおいしそうに舐り、精飲を為させた。酒よりも美味しい飲み物に多幸感を覚えつつあったマイヤが「ちょーだい?」とねだって股を広げた。
彼女のそこはたっぷりと濡れていた。酒のせいでもある。マイヤは酒が入るとヴァギナの濡れ具合がとても良くなるのだ。イズヴァルトは温泉が湧き出る肉の洞穴に酔いしれ、彼女をよがらせた。
武者達は20分程待った。酔いながらもすまし顔になったマイヤと、少し疲れた顔のイズヴァルトが出てくるのを見た。近づくとイズヴァルトもマイヤも、夏草みたいなにおいを放っていた。
「あはは……とてもお盛んなんですねえ」
「面目ないでござる……」
「噂どおりだ。イズヴァルトさんのきんたまは無尽蔵だと。しかしこのにおい……くさいけどたまりませんなあ♥」
自分達のけつあなにも注いでみたらどうだ、と武者達がイズヴァルトをそそのかす。マイヤは「うひっ♥」と笑った。
男色は聖騎士団の中でも流行り、かのベートーベンとも友諠を深める為に何度も同衾した事はあった。お尻の穴での気持ちよさも覚えていた。しかしイズヴァルトは彼等の誘いを断った。
「ここに来た理由は博打やお尻のあなをほじる約束をする為ではござらぬ。海洋公はお忍びでここに来られたと聞いたでござるか?」
そうだった、と武者のうち無精ひげがひどい男がうなずくと、酒場で聞いた事を語った。海洋公はほぼ毎週通っていたらしい。側近を数名連れて楽しんでいたと。
「『ぱちんこ』や『すろっと』ではなく、あちらのさいころ博打やカード博打をもっぱら親しんでいたらしいですね。初耳でした」
「……実のところ海洋公の事を存じておらぬでござる。いかなる人物でござったか?」
「御大将としては及第点のお方でしたよ。無茶ぶりしないし部下もいじめない。ただ、マイヤちゃんぐらいの歳頃の女の子が大好物で、きれいな町娘に身の回りの世話をさせていた、と聞き及んでおります」
それとですね。武者は声を潜めて言った。前世の記憶が鮮明に残っている転生人であると。マイヤは目を輝かせた。どんな前世を送っていたかご存じですか?
「前世でも……提督だったらしいです」
「ほほう!」
「様々な海戦で勝利したと伺いました」
イズヴァルトは腕を組んで故人の死を嘆いた。相当な名将だったのだろうとぼやきながら。しかし『しんじゅわん』とか『みっどうぇい』とか『まりあな』などという戦いで全て勝利したと聞いたマイヤは、はて、と首を傾げた。
「なにそれ? 『しんじゅわん』で勝ったのは『にほん』だけど、『みっどうぇい』とか『れいてかいせん』で勝利したのは『あめりか』という国だよ?」
「マイヤさまはご存じでしたか! しかし海戦によって勝利した国が違う……大公様が前世で指揮をとっていた『ちんじゅふ』とは、水軍の傭兵部隊だったのでしょうかね?」
「『ちんじゅふ』? 『にほんかいぐん』の基地だったかな……多分ホラだと思うよ。前世でも将軍だったというのは」
それよりも自分と同じ年頃の娘を抱きたがるというのが気になった。大公の屋敷にはそのような妾がいるのか。あくまで聞き伝てだと武者は答えた。
「もしかしたらの話だけど。殺された路地の近くにその手の売春宿があったりします?」
「存じてはおりますが、その路地からはだいぶ離れておりまして。だいたい閣下が討たれたその道も、軍港に戻るにしては遠回りでして……」
そちらに行って見ましょう。マイヤが呼びかけると武者達に呼びかける連れ立った一団が現れた。
防寒具の上に金の鎖や宝石付きの紐帯を身に着けた、背の低いでっぷりとした若い男とそれを囲む屈強な男達だ。
「おうい! 誰かと思えば海洋公閣下の自慢の水軍武者様がたではございませんか! 勤務の合間にさぼって博打ですか?」
あの人は誰でござろう。イズヴァルトが武者達に問う。かの若者はこの街の一番の金持ちの御曹司であった。名前をコンラッド=プランクという。この街最大の企業・プランク商会の跡取りだ。
「ああ見えても歳は60を過ぎております」
「いや。どう見ても拙者と同じぐらいの年頃に見えるでござるが?」
「母親がサイゴークのドワーフ族だからです。御父上もドワーフとニンゲンとのあいのこですからね。愛人をたくさん囲って毎年のようにぽこぽこと子供を産ませるだけでなく、マイヤさんぐらいの年頃の男の娘を集めたおちんちんハーレムなるものを築いて親を困らせておりますが……なかなかのやり手です」
あの卓のさいころ博打やカードゲーム博打を考えたのも、『男の娘』好きのコンラッド。この他に男の娘メイドカフェだの男の娘ビアホールなども経営している。この街は男色家達のメッカでもあった。
御曹司は陽気に笑いながら、のっしのっしと歩いて近づいてきた。イズヴァルトはふと、かの男に残念そうな表情というものを読み取った。大柄で筋肉質の美少年は趣味の外らしい。
「初めて見る方々ですな……これはこれは、イズヴァルトさんじゃありませんか!」
「お初にお目にかかるでござる。して、なにゆえ拙者の顔と名前を?」
「そりゃあもう。映像水晶とかでお顔が見られますし、なにせ有名人ですから……」
御曹司は「ごりっぱなおちんぽのお持ち主ですね?」とささやいた。イズヴァルトは赤面して「言わないでいただきたいでござる……」と言ってうつむく。
マイヤはこの御曹司とその周囲の屈強な男達を見て目を輝かせていた。酒と性愛とで勘が鋭くなっていたのだ。この男達からは良質の味の良い精液が頂けると悟っていた。
己の乳房を無意識に寄せあげてみせた。おしゃぶりのお誘いだ。しかしコンラッドは至極残念そうな顔だった。このおでぶの御曹司は、おっぱいが大きな娘は好みでは無かったのだ。
「はじめまして……育ちすぎて魅力が半減してしまいましたね、おしゃぶりひめさま?」
「ぐぬ! そっちの趣味だったんですね!」
「ええまあ。ちっぱいが好きな性分ですから。でもお望みとあればこの者達をお貸しいたしますよ? しかしなにゆえ皆さまはこんなところに?」
コンラッドが首をかしげるとイズヴァルトと海軍武者達が説明した。まだ公式にはしていないが海洋公とその連れが何者かに襲われて殺された。コンラッドは口をあんぐりと大きく開けてわなわなと震えだした。
「も、もしかして……あのことが原因だったのかも……」
「あの事とはなんでござる?」
「海洋公殿はとんでもない事をやり始めていたのです」
ひそひそ声でコンラッドが語る。海洋公は2年前から、いわくつきの妾達を囲う様になった。この海域で動く海賊団の頭領の娘達をさらってものにしていたのだ。
海賊の娘らはお忍びでしょっちゅうこの街にやって来る。表向きは新しい服や装飾具を買いにという事だが、実のところここの様な賭博場でゲームを楽しむ為にであった。
海洋公は存じていたから彼女達を拉致したり、負けが込んでいる子の借金を肩代わりにするかわりに手籠めにした。
娘達が集められたのは、海洋公の隠れ家だ。厳重に隠匿して管理し、若い肌を思う存分むしゃぶりついていたという。
その娘達だが、なかなかに逃げようという気を起こさなかった。荒くれものどもの血を引く彼女達は、性に貪欲で海戦山千の技巧を持つ海洋公の愛撫と挿入に浸った。
それからおちんぽに対する欲求が野獣同然であったから、大公は面白がってお気に入りの側近や悪友達に楽しませていたらしい。
「私も誘われて楽しんだことがあるんですがね……」
どの娘もマイヤと同じ年頃かちょっと上ぐらい。全員が既に妊娠していたり子を産んだりしている。海洋公の歳はいくつぐらいとマイヤが訊くと、武者達は50近くだと答えた。
それを聞いて彼女は吐きそうになった。
「じじいに近づいている歳のおっさんが……私と同じぐらいの年頃の女の子を……」
「マイヤさん、むしろ誇らしいことではありませんか?」
「な、なんで?」
「初潮が始まったばかりの娘達を孕ませる程に、将軍は優れた胤袋をお持ちだということですよ!」
武者達が死んだ海洋公を褒め始める。年端もいかない娘に性の歓びを覚えさせ、子を産むという女の一大事業に手を貸した事は男冥利に尽きるものだと。しかも複数名の少女達とである。
「そんなに褒められる事じゃないと思うんだけどなあ?」
「なにをおっしゃいます! マイヤさまは男の夢をご理解されていらっしゃらないからそんなことが言えるのです!」
「美しい年増の人妻と筆おろしを為し、幼馴染の娘を少年の年頃で生涯の伴侶となる契りと共に子を産ませ、中年に至っては歳の離れた妹ほどの若い娘を恋人とし、老いては孫娘の様な年頃の童女を寵愛せしめるこそが、男児の誉れ言われているぐらいなのですぞ!」
死んだ海洋公はお気に入りの部下ばかりを可愛がるしょうもない人物であったが、その様な男の夢を叶えたのだから大人物である。
更に海洋公には17歳になったばかりの三番目の妻がおり、その妻は来月出産予定であった。生れ出る子の事にも思いを馳せて武者達が嘆き、涙を流しながら故人の死を悼むのを見てマイヤは呆れてしまった。
「イズヴァルト。男の子ってそういうものなのかな?」
「拙者に聞いていただきたくないでござるよ。それよりもコンラッドどの。海洋公どのの隠れ家とやらをご存じでござるか?」
コンラッドはうなずいた。この賭博場から離れているが、南街区の中にあると答えた。場所で言えば海洋公とその側近が射殺された現場の近くだ。
海洋公は5階建ての賃貸住居をまるまる借り切って、一部屋ずつ娘達を住まわせていた。コンラッドは一週間前、誘ってくれた海洋公と一緒にぽんぽこお腹になった少女達に肉棒の味を楽しませたばかりだから、住居が変わっているはずがないと答えた。
「今すぐそこに連れて行って欲しいでござるよ?」
「つまりは……今回の襲撃が海賊達の為したことだとお思いですね?」
「さようでござる!」
イズヴァルトは考えを開陳した。海洋公は取り巻きに馬車を出発させる準備を告げた。入口から出てみると、金メッキをかけた装飾がところどころについた黒塗りの豪華な馬車と、コンラッドの部下達の為の粗末な馬車とが横づけされていた。
「一緒に乗られますか、イズヴァルトさん?」
「拙者と武者どのらはお馬さんに乗って来たから心配ご無用でござる! しかしながらマイヤは乗せて行っていただこう」
イズヴァルトはコンラッド達に物欲しそうな目を向けていたマイヤを黒い馬車に乗り込ませた。馬車の車輪が回っている間、「うひいい!」と嬉しそうに悶える馬車の中の男達の声が漏れ続けていた。
海洋公の隠れ家に近づくと街路は狭くなった。最初にコンラッドと付き人が馬車から出てくると、口の周りを上品そうにハンカチで拭くマイヤの手を大事そうに取ると抱えて降ろした。
コンラッドはマイヤが寒くないようにと自分のマントをかけてやるのを馬上のイズヴァルトは見た。どうやら彼女の魅力とおしゃぶりの両方にはまってしまったらしい。
「今夜、頼めるかな?」
「えへへ……イズヴァルトと一緒ならいいですよ?」
「そうじゃなくって、私はアナタと2人っきりで過ごしてみたいんだよ? たまには違うことも試すのもいいんじゃないのかな?」
コンラッドは口説きにかかっていた。マイヤはそれを笑って避けて、イズヴァルトに満面の笑みを浮かべて見せた。満足いく味と濃さの精液だったのだ。
「……コンラッドどの。浮気の相談は赦さぬでござるよ?」
「あははは。ほんの冗談ですよ。ほら、ここが海洋公殿の隠れ家です」
コンラッドは指で示した。外の煉瓦が崩れ、塗装がはげたみずぼらしい建物だった。海賊の娘とは言え、こんな貧乏人が住みそうな家に閉じ込められるのはストレスを感じていたかもしれない。
「……もう少し良いおうちに住まわせるべきでござるよ?」
「そうはおっしゃいますけどね、イズヴァルトさん。彼女達の実家はそれこそ漁民の掘っ立て小屋みたいなところばかりらしいですよ。風呂が無ければ寝台もノミだらけ」
その上夜這いをかけてくる身の程知らずの若衆がいたりもする。海賊の娘のうち1人は、姉が知らぬ間に腹を大きくして海賊団の中で騒ぎになったと語った。
「腹の子は櫂漕ぎの下男だったみたいで。その男は1週間逆さ吊りにされた後、切り刻まれて海の中にどぼん、ですよ」
「恐ろしい話でござるな……」
「海賊団の令嬢は、違う海賊団の跡取りや協力してくれる漁村の長への嫁入りがあったりとかで、大事に扱われるみたいですね」
「ふーん。なんだか貴族とあんまり変わらないんですね?」
しかし貴族と似ているのはしきたりまで。住まいはというとそれこそ海賊団のそれは粗末にも程があるものだったそうだ。
海洋公は拉致して赤ん坊を孕ませて産ませるみたいな鬼畜はしたけれど、彼女達の生活には気を配った。建物の外見はそれこそこんなものだが、中は意外ときれいにしているとコンラッドは教えた。
「風呂もあれば便所は水洗です。みんな、ここの暮らしのほうがいいとか言ってましたもん」
「余計なことでござるよ、コンラッドどの。まあしかしでござる。拙者の読み通りでなければ良いのでござるが……」
「つまり、連れ戻された後ということですね?」
「そういう事でござる。どこの海賊団の娘さんが、仲間から海洋公どのを討ち果たしたという話を聞き出せるでござろう。まだおられる場合でござるが」
イズヴァルトは自分から進み出て建物の中に入った。外見がぼろぼろの割りに中は床が張り替えられて新調されていた。入口には絨毯も敷かれていた。
人の気配はまるで無かった。しばらく1階の中をくまなく探し回り、誰もいないのを確かめると2階へあがった。ここで急に感覚が鋭くなった。
「……人の息遣いがするでござる」
イズヴァルトは背中の『覇王の剣』を抜き、耳をそばたてながら廊下を忍び歩く。人の気配は一番右奥の部屋にあった。待ち伏せに対処できるように気を引き締めた。
その部屋のドアをゆっくりと開いた。その部屋には確かに人がいた。部屋の隅で身体を丸めて床に座り込み、ぶるぶると震えていた。
イズヴァルトは剣を降ろして廊下にいた武者達に呼びかけた。イズヴァルトと入ってきた武者が目にしたのは細面の美しい少女。マイヤよりも少し年上という容貌だった。
フリルのついた前掛けをまとい、膝が見える短く黒いスカートを穿いている。背丈はそこそこあったが、何もかもが華奢に出来ていた。
「貴殿、海洋公どのが囲われた娘さんでござるか?」
相手の少女はイズヴァルトを見るなり、顔を伏せた。両手を伸ばして来ないで、と意思表示をする。きっと海賊団の娘のうち1人に違いないと思った。
きっと海洋公を襲撃した者達について詳しく話を聞けると希望を抱いたが、果たしてそれははかない夢となって潰える事となるのだが、さて、その理由は一体何故なのか?
その続きについてはまた、次回にて。