※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・まとめ   作:CHACOとJAGUAR

594 / 767
第七十八回

 イナンナが『天啓』と思ったそれは、ダテーゾフからやって来た派遣軍だった。

 

 ダテーゾフ大公はハルムノフの即位を聞きつけ、何事があったのかと驚いた。

 

 詳しく知れば、王家が『おおばば様』と崇める人物がやって来てなんやかんやあってタネムノフに譲位を勧めた、とまではわかった。

 

 しかし彼女が引き連れていると聞いた、2000あまりの軍勢はどこから引っ張り上げたかがわからなかった。

 

 アオバグラード一帯からなかなか進まないというので調べてみると、ミョーゲチャコフのゲオルギー公子らしい人物がいたということで、嘘か真かを確かめに来たのだ。

 

 ダテーゾフの軍勢の数は、およそ4000。

 

 その総大将は大公の実弟でこの時のタガレンコフの太守、ゲラシム=ダテーゾフその人であった。

 

 彼は6頭の馬に曳かせた、車体に純銀の板を張った豪華な装甲戦車に乗っていた。ダテーゾフは銀山を多く所有し、有り余るほどの財を得ていた。

 

 彼もまた、ミョーゲチャコフ侵攻軍の総大将と同じ様に、戦車に3人の妾を載せていた。この男はその他にも6人の側室を持っていた。

 

 彼は鎧を身に着けていなかった。薄着で丈の短い『きもの』と、綿のコートを羽織っただけの恰好だった。戦車の四方を囲む玉鋼の装甲板は、薄くても大型の鏃を跳ね返すからだ。

 

 それと、つまらぬ仕事と思う余裕のあらわれか、服の裾を割って黒々とした陰茎をさらけ出し、妾の1人にしゃぶらせているばかりでなく、もう1人の頭をコートの中に入れ、舌で己の菊門を愛でさせていたのだ。

 

【ギルバート=カツランダルク注:ムーツの武将や領主は、戦場であけっぴろげなことをよくする。自分はこれだけの胆力があり、余裕があると兵に知らしめる為だとか。】

 

 妾達の舌遣いは、ゲラシムの亀頭と肛門をせわしなく刺激していた。

 

「ふおおおお……」

 

 フェラチオとアニリングスの同時責めはたまらない。蕩け切った顔で快楽を享受する太守に、偵察から知らせを受けた武官が声をかけた。

 

「太守、よろしいでしょうか!」

「ああああ……」

「太守! 太守!」

「……んあ。ちゃんと聞いている。申し伝えよ」

「ははっ! アオバグラードに留まる、身元不明の騎馬武者たちについて、偵察隊より報告がございました」

 

 ミョーゲチャコフのゲオルギー公子と思しき人物の他、ヒッターチが連れて来たイワキエル地方の騎馬遊牧民の姿もあった。

 

「それから、シゲニウス帝のお后のホージュリア殿もおられたとのことです!」

「なにぃ!」

 

 ダテーゾフの大将は激高した。妾の頭をがっしりとつかみ、嫌がるのを無理やりに抑え込んで、腰を激しく動かした挙句、口の中にたっぷりとぶちまけた。

 

 げほっ、げほっ、と咳き込む妾の頬を引っぱたくと、ゲラシムは嫌な顔をする武官に憤懣(ふんまん)を吐き散らした。

 

「シゲニウスめ! ワターリ王家を動かす策に出たか! しかしカントニアの国がそこまでミョーゲチャコフに肩入れするとはどういうことだ! あやつらは兄上の偉大さに恐れを為さぬのか!」

 

 ゲラシムは号令をかけた。そのままアオバグラードの宿場町まで全軍を進めろ。

 

「しかし、敵は2000ほどの騎兵と聞いておりまする! 大公様に増援を呼びかけましょう!」

「ならん! たかだか2000が何だ? こちらは4000の兵がいる! しかも弩弓騎兵や鉄砲騎兵も備え、準備は万端じゃ! 対してミョーゲチャコフとヒッターチは、弓兵しかおらぬと聞くではないか!」

 

 南の戦況を知っていた武官は、兵装はあまり変わりないらしい、と助言したかったが、ゲラシムの怒鳴り声に圧されて言えなかった。

 

 しかしダテーゾフ軍は、アオバグラードの宿場にまで進む必要は無かった。ミョーゲチャコフとヒッターチの混成軍が、わざわざ荒野に出て来てくれたからだ。

 

 ただし、その『総大将』は、ゲオルギーでもホージュリアでも、ましてや、イズヴァルトでもなかった。

 

 その陣頭に、鎧をまといワターリ王家の軍旗をさげたイナンナが立っていた。

 

 ダテーゾフの軍の中から、何故カントニアの白エルフが、という声があがった。

 

 それを耳聡く聞き、イナンナが声を張り上げた。

 

「オラがこの軍の総大将、イナンナ=イセルローンだズラ! ワターリの18代目、ユキムネフの実の母で、いわばワターリのごせんぞとも言えるズラっ!」

 

 ゲラシムほか、ダテーゾフの武将や武官らはピンと来なかった。ワターリにエルフの血が混じっている事など、12代ほど前の昔の話であった。ダテーゾフの者は皆、忘れ切っていた。

 

「いわばこれは、不忠もんをこらしめるオラ直々の討伐軍みてえなもんズラよ! いいか、よく聞け! ここで降参して従えば殺しはしねえ! だが、どうしてもやるってんなら容赦はしねえ! 1人残らずぶっ殺してやるズラよ!」

 

 前面の陣で激しい啖呵を聞いたイズヴァルトは慌ててしまった。

 

「も、もう少し手心というものを……」

 

 しかし右隣にいて、騎馬愚連隊を率いていたゲオルギーは喜々としていた。

 

「そうそう! その意気だっぺや!」

 

 ゲオルギーが気炎をあげると、騎馬愚連隊の面々も目を輝かせ、鬨の声をあげた。

 

「ウラァーッ!」

「ウララァーッ!」

「ウーラァーッ!」

 

 イワキエルの遊牧民側も負けてはいなかった。それぞれが戦いの前のまじないの言葉をつぶやくが、

 

「我らが母、風の精霊に感謝の贄を捧げます」

「これより我らが流す血と、削り取る肉と骨をどうぞお受け取りください」

「命を刈り取る我らの姿を見た者は、その祖たる貴方様を讃え、拝むことになるでしょう……」

 

 強い殺意に満ちていた。その遊牧民らが展開する、左翼のホージュリアも様子がおかしかった。

 

 彼女は鞍につけたまんずり用の突起で剥き出た割れ目をごしごしとこすりながら、歯をむき出して「ぎひひ……」と笑い、ほくそ笑んでいた。

 

 ローラはオクタヴィアらと共に後方にあった。

 

「ふんすー!」

 

 憤っていた。この一連の作戦は、イズヴァルトのいくさ、ダテーゾフをやっつける『ゆうしゃ』の華やかな戦い、と定めて進めたかったのだが、イナンナにぶん取られた恰好となってしまったからだ。

 

「これはイズヴァルトさまの名を高める為のいくさだったのにぃ!」

 

 憤るあまりについ、ぶっ、とおならが出てしまう。オクタヴィアは彼女の頭を撫でてなだめてやった。

 

「仕方ねえずらよ。ムーツじゃイナンナさんの位が高い、ということなんだから、このいくさは諦めるずらよ?」

「うむむ……うむむ……」

「気難しい顔をしなくてもまあ、大丈夫かもしれねえずら。なんたってイズヴァルトさんが陣頭に立っているとなりゃ、いくらでも活躍できるというわけずらよ」

 

 ローラは憤りを一旦おさめることにしたが、釈然とした気になれなかった。

 

 陣立てはイナンナとゲオルギーとホージュリアが決めた。右翼の騎馬愚連隊は間隔を少し空けた、得意の鋒矢の陣形であった。

 

 左翼のは、5人の騎兵が1まとめになり、それが適度な間隔をとって陣形をとる、イワキエル式の円陣だ。

 

 そして中央は、イズヴァルトとイナンナの2人だけしかいなかった。しかしイズヴァルトは万夫不当の豪傑。1人で万に匹敵する猛者だから、むしろこちらのほうが良かった。

 

 イナンナは、携えていた旗を振った。

 

「ぶっころせ!」

 

 勢いよく飛び出していったのは、ミョーゲチャコフの右翼だった。騎馬愚連隊は最強の軽騎兵だ。鬨の声をあげながら、疾風のごとくダテーゾフ軍に飛び掛かる。彼等の馬はホーデンエーネンの軽騎兵の、倍の速さであった。

 

 ホージュリアも負けてはいられない。イズヴァルトが騎馬槍を構えて手綱を掴んだその時、彼女は遊牧民たちに突撃の号令をかけた。

 

「いじゃ! (いざ!)」

 

 遊牧民らも風のようだった。出遅れたイズヴァルトは自分達もとイナンナに呼びかけるが、「待て」と止められて機会を逸してしまった。

 

「なにゆえでござる!」

「オラたち中央隊は最後の最後ズラ! まずはあの2人に任せておけ!」

 

 右翼、左翼の騎馬隊は、ダテーゾフ軍の騎馬隊が迎撃に出ると進路を変えた。

 

 ダテーゾフの騎兵らは、まさか逃げるのか、と思ったが、しばらくしてこれは敵の戦法であることに気が付いた。

 

 向きを変えた騎兵らが、手綱から手を放して矢を射かけたのだ。素早い動きを得意とする弓軽騎兵の戦い方だった。

 

 しかも両騎兵とも、鏃にはもれなくしびれ毒が塗っていた。射かけられ、ばたばたと倒れていく。先手が倒れたのを見たゲオルギー公子は、弓を小脇に抱え、サーベルを抜いて怒号をあげた。

 

「突っ込めぇ!」

 

 騎馬愚連隊の面々もそれに倣う。白兵に切り替えた騎馬愚連隊は鋒矢の陣の隊形を取り、真っ先にゲラシムのいる中央の部隊に切り込んだ。

 

 

「死ねや! 死ねやーっ!」

 

 白兵戦に持ち込んだ騎馬愚連隊は、誰も欠けることなく次々と敵兵を屠っていく。ホージュリアの部隊は脚を速め、矢を射かけながら蛇行して、敵の追撃をかわして背後を取ろうと目論む。

 

 騎馬愚連隊の突貫とホージュリアの素早い迂回を目の当たりにするゲラシムは、信じられぬ、という面持ちであった。

 

「なっ! なんなのだ、これは!」

 

 何がなんだかわからず、ぼんやりとしている間にホージュリアの隊に背後を取られてしまった。

 

 彼女は腰を振って丸出しにした女陰に刺激を与えながら、一際大きな弓矢に持ち替え、一際鋭い鏃で太守の背中を狙った。

 

「キシェエエエエッ!」

 

 精神を統一し、狙い定めた一射はゲラシムの背後にいた妾の頭を打ち砕き、彼の背に激痛を奔らせた。

 

「うおっ!」

 

 同じ頃、ゲオルギー公子は果敢にサーベルを振り回しながらダテーゾフの武者を斬り伏せ、太守の姿を目の当たりにした。彼はその顔を知っていた。

 

「総大将はゲラシムだっぺかぁっ! くたばれええッ!」

 

 馬の鞍を蹴り、跳躍して戦車に突っ込む。彼が降ったサーベルの刃は、ゲラシムの首を刎ね飛ばした。うまく戦車の中に飛び込むと、悲鳴を上げるゲラシムの妾達を滅多斬りにし、主君の黄泉路への同行人にしてやった。

 

「総大将、ゲラシム=ダテーゾフ、このゲオルギーが、討ち取ったりぃいッ!」

 

 その声と共にダテーゾフ軍は瓦解。

 

 しかしゲオルギーとホージュリアは容赦しなかった。

 

 逃げ惑うダテーゾフ兵を切り殺し、イズヴァルトが止めにやって来る頃には返り血にまみれ、勝利の雄叫びをあげていた。

 

 凄惨な勝利にイズヴァルトはもはや、かける言葉を失ってしまった。

 

「あわ、あわわわ……こんなひどい戦い方、見たことが無いでござる……」

 

 このいくさで、ダテーゾフ側には生存者が一人もいなかった。

 

 しかしミョーゲチャコフとヒッターチは、けが人が数名いいただけで済んでしまった。

 

 かくして、アオバグラードでは圧倒的な勝利をおさめたが、さて、この先の戦いのゆくえは如何に?

 

 その続きについてはまた、次回にて。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。